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2016年11月13日 (日)

かつて一世を風靡したガールスデゥオ

Title:ザ・ピーナッツ トリビュート・ソングス

1960年代から70年代にかけて数多くのヒット曲を世に送り出し、圧倒的な人気を得た女性デゥオ、ザ・ピーナッツ。双子姉妹である彼女たちの生誕75周年を記念して、彼女たちの曲を今のミュージシャンたちがカバーしたトリビュートアルバムがリリースされました。

個人的にお目当てだったのはこの作品と同時リリースだった「ザ・ピーナッツ オリジナル・ソングス」の方。ザ・ピーナッツの代表曲をお手軽にまとめて聴けるということもあって興味を持ったのですが、「オリジナル・ソングス」はこのトリビュートに派生して発売されたもの。それだけにじゃあ、トリビュートの方も聴いてみようか、と思って聴いてみました。

ただ正直、こちらに参加しているメンバーには最初、いまひとつ惹かれるものがなく、あまり期待はしていませんでした。あえて言えば、ドリカム吉田美和と浦嶋りんこのユニット、FUNK THE PEANUTSが参加したことが気になったことくらいでしょうか。

しかし、これが予想以上に素晴らしい出来でした。もちろん本作が良かった理由としてもともとのオリジナルの良さもあります。歌謡曲のスタンダードナンバーともいえる楽曲ばかりが並びもともと耳なじみがあったという点もありますし、彼女たちが活躍していた昭和30年代の歌謡曲は、まさに「昭和歌謡」絶頂期。のちの時代の様式化してしまった演歌やムード歌謡と異なり、洋楽からの影響も色濃く残っています。ほどよくあか抜けた楽曲は今聴いても非常に魅力的に感じます。

カバーは基本的に原曲に忠実で歌詞とメロディーとしっかりとなぞって聴かせる良心的なカバーばかり。目新しさみたいなものはありませんでしたが、原曲の良さをしっかりと伝えています。特によかったのは森口博子とマルシアが組んで歌った「大阪の女」。しんみりと大人の色気も感じさせるカバーで、なによりこの2人の高い歌唱力が光ります。またちょっと意外だったのが華原朋美とmisonoの「銀色の道」。両者ともに歌唱力は全く期待していなかったのですが、意外と上手い・・・。特に華原朋美は、彼女がよく歌っている高音部が多い楽曲よりも、こういう低音でしんみり聴かせる曲の方があってるんじゃないの?

中川翔子と平野綾が歌う「モスラの歌」も、いかにも声優とアニメ大好きなしょこたんが歌う曲らしく妙に感情過多なドラマじみた歌い方になっているのですが、この曲に関してはそんな歌い方が曲に見事にマッチ。「ふりむかないで」をカバーしたLittle Glee Monsterはさすが「ボーカルグループ」として売り出しているだけあって歌唱力はあります・・・が表現力がいまひとつな平坦な歌い方が惜しい感じ。ここらへんは今後の成長次第で楽しみな存在といった感じでしょうか?逆に「情熱の花」を歌った相田翔子と森高千里は昔は歌い方が平坦で表現力に乏しいように感じたのですが、さすが今となってはお姉さま歌手として大人の魅力たっぷりに歌い上げています。期待していたFUNK THE PEANUTSは個人的にもっとファンキーにぶっちゃけてもよかったような気もしたのですが・・・彼女たちのパワフルなボーカルを久しぶりに堪能できました。

ほとんど期待していなかったアルバムだったのですが、予想外に良い内容に満足。非常に楽しめた1枚でした。参加しているミュージシャンのファンは是非ともチェックしてみてほしいアルバムです。

評価:★★★★★

Title:ザ・ピーナッツ オリジナル・ソングス

で、こちらは今回トリビュートアルバムで選曲された13曲のオリジナル盤に1975年NHKホールで行われた彼女たちのラストライブの音源3曲が収録されたザ・ピーナッツのベスト盤。ザ・ピーナッツといえば個人的には私の親世代で流行った曲。ただここで収録されている曲は私にとっても耳なじみのある曲が多く、それだけ歌謡曲のスタンダードナンバーとして日本人に親しまれてきたことがわかります。

上にも書いた通り楽曲自体はまさに昭和歌謡曲全盛期の曲。様式化された演歌的な楽曲ではなく積極的に洋楽の要素も取り入れているのも大きな魅力。前述の通り、垢抜けた感じのする楽曲も多く、J-POPになじんだ耳で聴いてもすんなりなじむことが出来る楽曲が多いように思います(だからこそ今日でも、今回のトリビュートに限らずザ・ピーナッツの曲は多いのミュージシャンにカバーされているのでしょう)。

また2人のコーラスワークも実に絶妙。このピッタリと息の合ったコーラスはさすが双子の姉妹といった感じでしょうか。時には迫力たっぷりに、時には優しく歌い上げるボーカルは表現力の幅も広く、ボーカリストとしての卓越した実力を感じます。上のトリビュート盤のAmazonの紹介ではAKB48やももクロにつながるガールズグループの元祖として紹介していますが、ボーカリストとして格が違うような・・・。というよりも昨今の歌手って(アイドルを含めて)歌唱力が異様に軽視されていてザ・ピーナッツのようなガールズグループはもう二度と出てこないのではないか、と悲しくなります(そういう意味ではトリビュートアルバムに参加していたLittle Glee Monsterはおもしろそうな存在ではあるのですが)。

トリビュートアルバムに参加していたミュージシャンのファンでトリビュートアルバムを聴いたなら、次は是非、こちらのオリジナルソングスを聴いてほしいところ。おそらくどこかで聴いたことある曲も多いはずですので、思ったより聴きやすい内容かと思います。まさに歌謡曲の魅力がつまったアルバムともいえるかもしれません。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Request Hits/THE COLLECTORS

デビュー30年を迎えたベテランバンドTHE COLLCTORSのベストアルバム。今回はファンによる人気投票に基づいた全30曲入りのベストアルバムになっています。THE COLLECTORSを聴くのは2005年にリリースされたベスト盤「THE GREATEST TRACKS」以来。ほどよくノイジーで心地よいビートロックが気持ちよく、以前リリースされたトリビュートアルバムにも参加しているthe pillowsあたりが好きなら間違いなく気に入りそうな音。ただ全体的にインパクトが薄く、後に印象が残るような曲が少なかったのが残念。このインパクトの薄さが、ミュージシャン人気が高くてもブレイクできない理由のような・・・。

評価:★★★★

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