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2016年10月28日 (金)

待ちに待った新作

Title:Fantome
Musician:宇多田ヒカル

待ちに待った・・・そういう表現がこれほどピッタリ来るアルバムはないかもしれません。2010年に「人間活動に専念する」として活動を休止した宇多田ヒカル。その後、散発的な活動はありましたが、ここに来て約8年半ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。オリコンチャートでは3週連続で1位を獲得するなど長いインターバルにも関わらず根強い人気を感じさせる結果となりました。

そんな久しぶりとなる彼女の新作なのですが、このアルバムを聴いてまず思ったのは、声、変わったなぁという印象でした。ま、ぶっちゃけていっちゃうと老けたなということなんですが(^^;;よくいえば「大人の声」になったということ。ただちょっと残念なのですが「大人の声」になって例えば色気が増したといった感じもなく、渋さが増したといった感じがなく、プラスアルファの要素がなくて残念な感じ。もちろん、もともと彼女が歌が上手いミュージシャンなだけに普通に聴く分にはもちろん気にならない話なのかもしれませんが。

そして肝心の楽曲なのですが、まず一言で言ってしまうと安定感が増したという印象を受けます。勢いと斬新さはあるものの若干安定感の欠けた初期の作品から徐々に楽曲の安定感が増してきた彼女でしたが、今回のアルバムに関してはある種の貫録すら感じました。特にどの曲に関してもしっかりと宇多田ヒカル色がついていたのも印象的。今回のアルバムでは豪華なゲスト陣も話題で、特に「二時間だけのバカンス」ではあの椎名林檎がゲストとして参加しているのですが、同じく非常に個性の強い椎名林檎とのデゥオにも関わらず、しっかりと宇多田ヒカルの曲となっていました。

ただ安定感が増しただけに逆にいえばアルバム全体としては落ち着いたなという感じがします。上にも書いたデビュー当初の勢いや楽曲の新鮮さはこのアルバムにはあまり感じません。例えば「道」のイントロのエレクトロサウンドや、バスドラのリズムを強調した「忘却」のようにいまどきの音を入れた楽曲もあるのですが、全体的には90年代あたりから変わらない雰囲気の楽曲。ジャパニーズR&Bともいうんでしょうか、日本人にもみみなじみやすいわかりやすいポップなメロディーラインをR&B風にまとめあげているポップ。デビュー時の「世界標準で最先端」というイメージは残念ながら本作では全く感じませんでした。

楽曲としては間違いなく高いクオリティーを持った曲ばかり。「俺の彼女」のようなユーモラスも交えてくるのも彼女らしい余裕も感じます。彼女もデビューから17年。そろそろ「ベテラン」に足がかかってくる頃ですが、まさにそんなキャリアに裏打ちされたアルバムだったと思います。活動休止前の作品には残っていたデビュー以来の勢いが今回のアルバムではなくなってしまったのが残念なのですが、一方ではキャリアをつんだミュージシャンならではのすごみも感じたアルバム。これからも安定して傑作を聴かせてくれそうな予感もするアルバムでした。

評価:★★★★★

宇多田ヒカル 過去の作品
HEAT STATION
This Is The One(Utada)
Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.2


ほかに聴いたアルバム

君の名は。/RADWIMPS

ここでもヒットチャートのコーナーで何度も取り上げたアニメ映画「君の名は。」。その大ヒットぶりが話題となっていますが、それに伴いチャートでも上位にランクインし続けているRADWIMPSによる映画のサントラ盤。基本的に映画主題歌の4曲以外は劇中でつかわれたインスト曲を収録しているだけのサントラ盤で、かつそのインスト曲も目立ったRADWIMPSらしいアイディアがある訳ではなく、映画を見ておらずこのアルバムを聴くとかなり辛いかも。というか、私がそうなのですが、正直言って、ほとんど楽しめませんでした。

主題歌の4曲にしてももちろん悪くはないのですが、比較的ストレートなポップナンバーであり、RADWIMPSの曲としては「普通・・・」といった印象。近いうちに彼らのアルバムリリースが予定されているので、映画のファン以外はそれを待った方がいいかも(もっとも、全曲収録されるわけではないみたいですが)。映画の中では彼らの曲が効果的に使用されていたようなので映画を見て気に入った方は聴いて損のないアルバムだと思いますが、それ以外の方はヒットしているからといって無理に聴く必要性は低いアルバムかと。

評価:★★★

RADWIMPS 過去の作品
アルトコロニーの定理
絶対絶命
×と○と罰と
ME SO SHE LOOSE(味噌汁's)

TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA~Selecao Brasileira~/東京スカパラダイスオーケストラ

スカパラのブラジルでの単独公演を記念して現地でリリースしたベスト盤。現地ブラジルのミュージシャンも参加し、よりラテンテイストにアレンジされています。最近、ポップ寄りの路線が強いスカパラですがこのアルバムで収録されている曲は初期スカパラを彷彿とさせる「やばさ」のような部分を強く感じる楽曲に。なにげにここ最近のスカパラに物足りなさを感じている方こそ満足できそうな内容になっていました。

評価:★★★★★

東京スカパラダイスオーケストラ 過去の作品
Perfect Future
PARADISE BLUE
WILD SKA SYMPHONY
Goldfingers
HEROES
Sunny Side of the Street
on the remix
Walkin'
欲望
Diamond In Your Heart
SKA ME FOREVER
The Last
TOKYO SKA Plays Disney
The Last~Live~

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アルバムレビュー(邦楽)2016年」カテゴリの記事

コメント

宇多田さんの新譜ですが、確かに若干の物足りなさは感じるものの楽曲それぞれよく出来てて平均点としては高いという印象でした。まあその物足りなさも8年ぶりという期待値の高さゆえですが、出来はほんとにいいアルバムだと思います。
今回は、彼女にとってお母様のこと、結婚、出産のこともあってそれらが作品に反映されていつになくコンセプチュアルな内容になったそうで、このようなアルバムは二度と作れない(作らない?)と明言してるのでもしかしたら次作はがらりと方向性を変えてくるかもしれませんね。

投稿: 亮 | 2016年10月28日 (金) 23時56分

>亮さん
>今回は、彼女にとってお母様のこと、結婚、出産のこともあってそれらが作品に反映されていつになくコンセプチュアルな内容になったそうで、このようなアルバムは二度と作れない(作らない?)と明言してる

なるほど、そうですか。確かにここ8年半、彼女にとってはあまりに様々なことがありましたもんね・・・。次回作がどんな作品になっているか、今から楽しみです!

投稿: ゆういち | 2016年11月 1日 (火) 01時09分

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