くるりの歴史を語る
本日は最近読んだ音楽関連の本の紹介。今回は、先日発売されたくるりのインタビュー本です。
元ロッキンオン・ジャパンのライターでもある宇野維正氏がくるりの岸田繁と佐藤征史に結成からいままでのくるりの歴史についてロングインタビューを実施した一冊。くるりといえばデビュー以来ほぼアルバム毎にその音楽性を変え続けてきたミュージシャン。さらに言えばバンド結成以来、メンバーの出入りが日本のバンドとしては珍しく、非常に激しいバンドとして知られています。それだけにくるりは今もっともその「歴史」について語ってほしいミュージシャンと言えるかもしれません。
それだけにいろいろと「今だからこそ言える話」を期待してこの本を読んでみたのですが、これが非常におもしろく、かつ興味深い内容に仕上がっていました。それこそ岸田、佐藤の生い立ちからスタートし2人の出会い、くるりの結成、デビューからブレイク、おなじみ「ワンダーフォーゲル」などのヒットやその後の活躍までインタビューでかかなり突っ込んで話を聴いています。特にアルバム制作の背景や狙いまでも岸田繁が語っており、この本を読んだ後、あらためてくるりの過去のアルバムを聴きなおしたくなるような、そんな一冊になっていました。
で、おそらくこれを読む方の多くが気になるであろうくるりのメンバー加入、脱退の理由についてなのですが、これがきちんと期待通り、かなり赤裸々な理由が述べられています。これに関してはあくまでも岸田、佐藤側からの見解であり、脱退した側からの言い分もあるのでしょうが(森信行に関しては別途インタビューを受けていますが)、読んでいてある種の納得感はありました。結局、個々にメンバーが増減した理由はわかるのですが、くるりというバンドが全体としてなぜこれだけメンバーの増減が多いか、という理由は語られていません。ただ、インタビューからうかがえる岸田繁の行動の随所からもうかがえるのですが、良く言えば音楽に対して真摯に取り組んでいる、悪く言えばやはり少々自分勝手できまぐれな部分がある・・・今回のインタビューから読み取れる理由はこんなところでしょうか?
また今回のインタビューの中でちょっと意外にも思ったのは佐久間正英とのエピソード。彼のプロデュースワークって(以前もここに書いたことがあるのですが)少々混線気味のミュージシャンの音の交通整理をしている、という印象を受けていたのですが、岸田曰く「ピンポイントですぐその場で結果が出ることだけを言ってくる」ということ。彼自身も佐久間正英について「今の今まで、本当にすごいなって思ったプロデューサーは、佐久間さん以外はあんまりいない」と語っており、このインタビューからも佐久間正英のすごさを感じられます。
さらに印象的だったのが佐藤征史に関するエピソード。インタビューの中で岸田繁は「佐藤は佐藤で狂ってるから」という言葉を何度か口にしたそうですが、時に「岸田のワンマンバンド」と称されかねないくるりというバンドの中における佐藤征史の位置づけについてもしっかり語っています。まあ、確かに岸田繁という才気あふれる、ある意味「狂った」人物と上手くやっていっている佐藤征史が凡人なわけないよなぁ・・・。音楽的側面からも佐藤征史のすごさを語っており、これも非常に興味深い内容でした。
最初から最後まで興味深いエピソードの連続で、くるりが好きなら必読の1冊。期待した以上に濃い内容でした。
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