ラストアルバム??
Title:AIM
Musician:M.I.A.
彼女自身、タミル系スリランカ人で、父親はスリランカで武装闘争を行っていたLTTEのメンバーであり、いまなお消息不明という異色のキャリアを持つ女性シンガーソングライター。そんな彼女の約3年ぶりとなる新作。ジャスティン・ビーバーとのコラボなどで話題となったプロデューサー、ディプロも参加。ジャスティン・ビーバーとM.I.A.というある意味、全く相いれないようなミュージシャンだけに大きな話題となっています。
さらに今回はOne Directionの元メンバーZAYNも参加。こちらもM.I.A.というミュージシャンイメージからすると異色ともいえる組み合わせで驚かされます。そんな彼が参加した「Freedun」はM.I.A.らしいレゲエ調の強いビートは流れているのですが全体的にメロディアスに仕上げているナンバー。ZAYNもメロウな歌声を聴かせており、M.I.A.のイメージするとかなりポップというイメージを受けます。
そんな異色ともいえるコラボも話題の新作なのですが、アルバム全体としてはM.I.A.としてのイメージを全く損ねることない今回もトライバルなリズムやレゲエなどを取り入れた独特なサウンドを作り上げています。例えばスクリレックスが参加して話題の「Go Off」はシンプルで力強いトライバルなリズムのみを軸としてつくられたナンバー。リズムトラックのビートが荒々しさを醸し出しているM.I.A.らしいナンバーに仕上がっています。
他にも冒頭を飾る「Borders」はダンスホールレゲエの影響をうけたようなリズムのインパクトにまずは耳を惹きつけられますし、「Ali R U OK?」あたりもパーカッションの奏でるリズムがアフリカ的な雰囲気を醸し出しつつ、壮大さを演出しているような独特なリズムトラックが魅力的。彼女らしい荒々しい個性的なリズムは本作も健在です。
ただそんな楽曲がありつつ、前述の「Freedun」やラストを飾る「Survivor」みたいなストリングスを取り入れて爽やかに仕上げたポップなナンバーもあったりと、聴きやすい側面もあったりして、ポップという側面でも目立つアルバムになっていたと思います。そういう意味では彼女の独自性とポピュラリティーがほどよくバランスされたアルバムのように感じました。
そんな本作ですが残念ながら売上的にはさほど芳しくなく、本作はデビュー作以来はじめて、ビルボードのベスト40入りを逃したとか。ただこれだけのアルバムをつくったんだから次回作はきっともっと売上を伸ばしてくるはず・・・と思ったらなんでもこの作品、本人曰く「アルバムというフォーマットでは最後のリリースになる」とのこと。うーん、それは残念なニュース・・・と言いたいところですが、ミュージシャンのこの手の「最後」という約束は得てして破られるケースが多いだけに、何年かたったらあっさり「新作リリース」とかになりそう(笑)。もっとも彼女は「他にしたいことがあるから、少し休みたい」と言っているそうで、次のリリースは少々先になるかもしれませんが、彼女ほど個性的なミュージシャンは他にいないだけに、まだまだ新作を聴きたいところ。次の作品のリリースがいつになるかわかりませんが、首を長くして待っていたいところでしょう。
評価:★★★★★
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