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2016年10月16日 (日)

20年目のくるり

Title:くるりの20回転
Musician:くるり

今年、結成20周年を迎えたくるりのオールタイムベストアルバム。先日はくるりの20周年を振り返るインタビュー本を紹介しましたが、そのインタビュー本とあわせて聴きたいベスト盤・・・というよりも昨日のインタビュー本がこのベスト盤とあわせて読みたい、という紹介の方が正しいでしょうか?

さて今回のベストアルバム、デビューシングル「東京」からスタートし、先日EP盤としてリリースされた「琥珀色の街、上海蟹の朝」までリリース順に曲が並んでいます。へヴィーなバンドサウンドのロックあり、エレクトロあり、カントリーあり、クラッシックを取り入れた曲あり、ラップあり、民謡あり、ポップスあり・・・とバラエティー豊かな作風なのはここでわざわざ言及するまでもない話かもしれません。くるりのメインライターである岸田繁のその時々の音楽的興味がダイレクトに反映されているわけですが、日本のミュージシャンでこれほど作風を変えてくるバンドは彼らくらいかもしれません。

それにも関わらずこの3枚のベスト盤通じて作風がバラバラという印象はあまり受けず、むしろくるりとして統一感があるということをこのベスト盤を聴いてあらためて認識させられます。おそらくその大きな理由は岸田繁の書くメロディーライン。派手ではないもののリスナーにしっかりと印象を与えるそのメロディーはこうしてベスト盤であらためて聴くと、その良さが際立って聴こえます。

特にメロディーラインの良さが印象に残るのが、くるりが岸田・佐藤の2人組となった「JUBILEE」あたりからの作品。ここらへんからいい意味で肩の力が抜けたような感じがして、くるりとしてひとつモードが変わったという印象を受けました。

この「モードが変わった」という印象、ここ最近の作品に関してはさらにひとつ、くるりとしてのモードが変わったという印象を受けます。先日紹介したインタビュー本「くるりのこと」の中で「ロックンロール・ハネムーン」から曲の作り方が変わった、ということを語っていました。その「変わった」という意味も具体的に同書には書いていましたが、正直言って音楽的な詳しいことはよくわかりません。ただ聴いた時に耳に入ってくる音の気持ちよさが、ここ最近の曲だとさらに深化したような印象を今回のベスト盤から受けました。

ベスト盤としては3作目。アルバム初収録の曲はあるものの、新曲もなく映像作品の収録もないという意味では構成として若干物足りなさを感じさせるのも事実。そのためか売上としてもベスト盤の割にはさほど奮いませんでした。ただそれでもくるりの歴史を網羅的に把握できるという意味ではファンでもあらためて通して聴いてみたいベスト盤だと思います。昨日紹介したインタビュー本を片手に、くるりの魅力にあらためて触れるには最適なベスト盤です。

評価:★★★★★

くるり 過去の作品
Philharmonic or die
魂のゆくえ
僕の住んでいた街
言葉にならない、笑顔を見せてくれよ
ベスト オブ くるり TOWER OF MUSIC LOVER 2
奇跡 オリジナルサウンドトラック
坩堝の電圧
くるりの一回転
THE PIER
くるりとチオビタ
琥珀色の街、上海蟹の朝


ほかに聴いたアルバム

スカイ イズ ブルー/百々和宏

MO'SOME TONEBENDERのギターボーカルによるソロ第3弾。今回も前作までと同様、モーサムとは異なるシンプルなギターサウンドにポップなメロディーの優しい雰囲気を感じさせるアルバムになっており、メロディーメイカーとしての百々和宏の実力を感じさせます。ただ本作は「死」を感じさせる歌詞が登場するなど、ドキリとさせられる部分も。一筋縄ではいかない「ポップアルバム」となっています。

評価:★★★★★

百々和宏 過去の作品

ゆめとうつつとまぼろしと

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