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2016年10月11日 (火)

大人なエロス

Title:LUNATIQUE
Musician:石野卓球

電気グルーヴとしても今年はドキュメンタリー映画の公開が話題となりましたが、石野卓球ソロとしても久々となる新作がリリースされました。前作「WIRE TRAX 1999-2012」がWIREコンピレーションに収録されていたソロ曲を集めた作品だったので純然たるソロ作としては2010年の「CRUISE」以来6年ぶり。さらに前作「CRUISE」はミニアルバムの形態でしたのでフルアルバムとしては「TITLE#2+#3」以来、実に12年ぶりとなる新作となりました。

今回のアルバムでまず目立つのはそのジャケット写真。成人男子諸君にとってはどこかで見たことがあるような、という印象を受けるかもしれませんが、エロ漫画雑誌「漫画エロトピア」の表紙をピックアップしたもの。宇川直宏により今風の修正はほどこされているのですが、もともとは1978年に発刊された雑誌から拾ってきたそうで、よくそんなの見つけたな・・・。アートワークがやたらめったら凝っている電気グルーヴと比べると石野卓球のソロ作のジャケットは比較的シンプルという印象を受けるのですが、今回はこのジャケットに強いインパクトがあり、それだけにアルバムへの力の入れようも感じます。

楽曲は音数を絞ったシンプルな、熱量の低いテクノ。エッジの効いたリズムを聴かせる「Fana-Tekk」やトライバルな雰囲気を加えた「Amazones」など1曲1曲が違った顔をのぞかえるバラエティー富んだ作風ながらもどの曲にもしっかりメロディーラインが流れており、ポップにまとめあげています。リスナーの直感に反しないようなサウンドを聴かせる曲が並んでおり、いい意味でのわかりやすさ、聴きやすさを持ったアルバムになっています。

また今回のアルバム、このジャケットからもわかる通り「性」や「エロス」がテーマとなっています。もっとも最初から「エロス」をテーマとして楽曲をつくった訳ではなく以前からつくっていた100曲以上の曲のなかからテーマに沿った曲をピックアップしたとか。それだけに曲によって作成時期は異なるそうですが、それでもアルバム全体しっかりと統一感があるのはテーマに沿った選曲であるということもさることながらしっかりと石野卓球の個性が楽曲に反映されているからでしょう。

そんな「エロス」がテーマになった作品なのですが、そのエロスはガツガツとした雰囲気ではなくほのかなエロス。「Die Boten Vom Mond」とかタイトルチューンにもなった「Lunatique」などは単調な表現になるのですが、セクシーさやムーディーな雰囲気がいかにも「エロス」といった感じなのですが、アルバム全体にはむしろ上品さすら感じます。このほどよいエロティックさはまさに大人といっていいかもしれません。

電気グルーヴとはまた違った石野卓球の魅力が楽しめる傑作。ただその一方、そのポップな作風といい「エロス」というテーマ性といい、電気グルーヴからも地続きであることを感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★★

石野卓球 過去の作品
CRUISE
WIRE TRAX 1999-2012


ほかに聴いたアルバム

Dr.Izzy/UNISON SQUARE GARDEN

彼ら6枚目となるオリジナルアルバム。裏打ちのリズムを軽快に聴かせる「BUSTER DICE MISERY」やパンクロック風の「Cheap Cheap Endroll」などそれなりのバリエーションを聴かせつつ、基本的にいつも通りのポップなメロディーを前面に押し出したポップスロックを展開しています。ルーツレスなJ-POP路線のメロは相変わらずですが、全体的にはポップスバンドとしてのある種の余裕も出てきたような印象も。

評価:★★★★

UNISON SQUARE GARDEN 過去の作品
CIDER ROAD
Catcher In The Sky
DUGOUT ACCIDENT

Vacantly/toddle

元NUMBER GIRLの田渕ひさ子嬢を中心に結成された3ピースロックバンドの新作。基本的にはギターロックバンドなのですが、彼女と小林愛のツインボーカルで非常に美しいコーラスラインやボーカルを聴かせてくれるポップス色の強いギターロックが並んでいます。透き通ったような美しさを感じる世界観が魅力的なアルバムです。

評価:★★★★

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