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2016年10月18日 (火)

キリンジらしくないKIRINJIの最新作

Title:ネオ
Musician:KIRINJI

堀込泰行脱退後、いきなりメンバーを5人追加し6人組バンドとなったキリンジあらためKIRINJI。前作「EXTRA11」は6人組となってから初のアルバム「11」をリアレンジしたような企画盤だっただけに、これが6人組となってからは純然たる2枚目のオリジナルアルバムとなります。正直なところ、KIRINJIのメンバーとしてあらたに加わった5人は、既にそれぞれ音楽シーンで活躍していたミュージシャンで、いわばスーパーグループ的なバンドであったため、バンドとして長続きしないのではないかなぁ、という懸念があったのですが、こうして無事2枚目となるオリジナルアルバムがリリースされました。

前作「11」でもいままでのキリンジではなかったバリエーション豊富な作風を聴かせてくれており新生KIRINJIとしての新たなスタンスを感じましたが、今回のアルバムに関してはその音楽的ふり幅がさらに大きくなっています。まずなんといっても1曲目「The Great Journey」。あのRHYMESTERが参加してのラップチューンなのですが、メインとなっているのはむしろRHYMESTERの方。最初、アルバムを聴くと「あれ?RHYMESTERのアルバムと間違えた?」と思ってしまうほどです。

さらに続く「Mr.BOOGIEMAN」はメンバーでもある弓木英梨乃がボーカルを取っているのですが、ちょっと90年代的な懐かしさを感じさせるガールズポップ。旧来のキリンジのイメージとはかなり異なる曲が並んでおり、この段階でおもわずCDをデッキから取り出して盤面を確認した人も少なくないかも???

続く「fake it」でようやく堀込高樹のボーカルが前に出てきてキリンジらしいシティポップチューンとなっているのですが、続くラウンジ風の「恋の気配」ではコトリンゴがボーカルを取り、さらに幻想的な雰囲気の「失踪」では千ヶ崎学がボーカルを取るなど、6人組という構成をフルに生かした展開となっています。

「日々是観光」はこれまた爽やかなシティポップナンバーとなっているものの、作曲はコトリンゴが手掛けているため堀込高樹作曲のナンバーとはやはりちょっと異なった印象を受けるポップナンバーになっています。

さらには弓木英梨乃ボーカルの「あの娘のバースディ」はピアノとアコギ、ウッドベースで哀愁たっぷりに聴かせるナンバー。弓木英梨乃の少女らしい透明感のあるボーカルが生きたナンバーになっています。そして「絶対に晴れて欲しい日」はスティールパンを取り入れたラテン調のナンバーと、最後の最後までバラエティーに富んだ展開に。6人組という編成をフルに生かしたアルバムになっていました。

非常にバラエティー富んだ内容はKIRINJIとしての今後の方向性を示唆したものになっています。なによりいままでの「キリンジらしい」曲がほとんどないという点でも新生KIRINJIとしての意気込みを2枚目にしてさらに強く感じさせます。そして驚くべきことにこれだけバラエティー富んだ内容ながらも、「日々是観光」でコトリンゴが作曲を手掛けており、「The Great Journey」でRHYMESTER、「失踪」で千ヶ崎学との共作となっているほかは、基本的に堀込泰行作曲になっている点。バラエティー富んだ内容ながらも、基本的に彼が作曲を手掛けているということは驚きですし、またこれだけバラバラな作風ながらもアルバム全体としてはどこか統一感を覚えるというのは、アルバム全体統一して堀込高樹の手による作品だからなのでしょう。

最初にも書いた通り、個々のメンバーそれぞれが活躍できるようなスーパーグループだけにこの6人組が今後も続くかはわかりません。ただ6人組であるこということが実によく生かされた傑作だと思います。それだけに、今後もこの6人でどんな新作が生み出されるか楽しみになってくるアルバムでした。これからもこの6人組に要注目です。

評価:★★★★★

キリンジ(KIRINJI) 過去の作品
KIRINJI 19982008 10th Anniversary Celebration
7-seven-
BUOYANCY
SONGBOOK
SUPERVIEW
Ten
フリーソウル・キリンジ
11
EXTRA11

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コメント

「堀込泰行」ではなく「堀込高樹」ですよ。

投稿: 通りすがり | 2016年10月22日 (土) 11時11分

すいません、ご指摘ありがとございました。修正しました。

投稿: ゆういち | 2016年10月25日 (火) 08時10分

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