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2016年10月

2016年10月31日 (月)

17歳現役女子高生シンガー

Title:はじめまして。17歳です。ハッピーエンド建設中。
Musician:にゃんぞぬデシ

「スイカを食べ歩くJK」として話題となった現役女子高生シンガーソングライターによるデビュー作。タイトルにも書いてある通り、アルバム作成当時17歳、現在でも若干18歳の彼女。あのヒャダインや綾小路翔も絶賛。タイトルからしてもいかにも17歳らしい今時さをかんじますし、「にゃんぞぬデシ」(にゃんぞうという飼い猫の弟子という意味らしい)という奇妙なミュージシャン名にも今風の言語感覚を感じます。

・・・・・・という彼女の紹介文に「ちょっと・・・」と思いあまり惹かれなかった方こそむしろお勧めしたのが本作です。

いかにも今時の女子高生シンガーソングライターというとイメージ的には例えばアイドル系だったりアニメソング系だったりとそんな方向のイメージ。またそんな今時のアイドル系、アニソン系にも重なるのですが情報過多のJ-POPというイメージ。彼女のアルバムを聴く前はそんな印象を持っていました。

しかし実際アルバムを聴いてみると彼女に対して持っていたイメージとは全く異なるタイプの曲が流れてきました。最初の「ハッピーエンド建設中」はホーンセッションも入れて若々しさのある明るいポップになっているのですが、そのルーツに流れるのはソウル。良く通る声の彼女のボーカルもこぶしが効いており力強さを感じます。既に高校生離れしたような表現力もあり今後の成長次第ではボーカリストとしてもおもしろい存在になっていきそうな予感もします。

また、昭和歌謡曲的な要素も強く、日本人の琴線に触れそうな哀愁感あるメロディーラインも魅力的。特にその魅力を強く感じたのは「ガール都営浅草線」。楽曲だけではなく歌詞も非常に魅力的な曲で

「まもなく終点 西馬込
寝過ごした訳じゃないんだよ ここが最寄り駅
なんだか切ない帰り道 
だんだんさめていく心 温かいとこから」

(「ガール都営浅草線」より 作詞 にゃんぞぬデシ)

という歌詞。西馬込という下町のイメージも相まって、聴いていて情景が浮かぶ歌詞が魅力的。この曲に限らず歌詞で歌われている情景や主人公の姿などがスッと心に入ってくるような曲が多く、作詞家としての実力も感じさせます。

一方ではこのようなある種の「老成」したような部分だけではなく、きちんと17歳の女子高生らしい部分もチラホラ。「BTB海岸」で「BTB溶液」なんて言葉が登場してくるあたり、いかにも現役高校生といった感じがしますし、「ナンパりんごマンゴー」「しろくま観覧車(しろくまin the 南極)」なんて言語感覚も若々しさを感じます。こういういかにも高校生らしい部分と高校生らしからぬ部分がちょうどよいバランスで同居している作品でした。

ただ、そんな「高校生」らしさが魅力となっている一方、その作詞能力といいメロディーセンスといい、「現役女子高生」という肩書がなくなっても十分に勝負できる才能を感じます。むしろ今後の彼女の経験の中で楽曲にさらなる深みが増してくることが予想でき、今後の彼女の成長も非常に楽しみになってきます。彼女を紹介する時に冠される変な「修飾語」なんて気にしないで、是非とも今聴いてほしい実力派シンガーソングライターのデビュー作です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

LOVELESS/ARTLESS /ハルカトミユキ

名前の通り、ハルカとミユキの2人組からなるロックユニットの新作。以前、偶然インストアライブで一度ライブを見たことがあるのですが、その時の感想は「まあ、悪くはないけど・・・」という程度。今回、結構メディア等でもプッシュされていたため、じゃあ聴いてみようかと思って聴いたのですが・・・感想としては一緒(笑)。まあ、悪くはないけど・・・。

基本的にギターロックを主体としつつ、エレクトロサウンドなどを入れてバリエーションも与えた楽曲。全体的にスケール感もあり、大物然とした雰囲気もあります。ただメロディーにしろ歌詞にしろインパクトはそこそこといった感じ。聴き終わった後、あまり印象に残らなかったというのが正直な感想。決して悪くはないのですが、もう一皮むけてほしい感じ。

評価:★★★★

DO MY BEST II/岡村孝子

岡村孝子ソロデビュー30周年を記念したオールタイムベスト・・・なのですが、おそらく20周年の時にリリースした「DO MY BEST」との重複を避けた選曲のためオールタイムベストとしては少々物足りなさを感じる選曲。あみん時代の曲もあるのですが、「待つわ」は入っていないし、「夢をあきらめないで」も2011verでの収録だし。

そういうこともあってか、全体的に楽曲はすべて似たり寄ったり。もともと大いなるマンネリ気味の彼女ですが、さらにその傾向が強まっている金太郎飴的な楽曲が並んでいます。安心して聴けるといえばその通りですが、正直、熱心なファンじゃないと辛いものがあるかも。次は本当の意味でのオールタイムベストを期待したいのですが。

評価:★★★

岡村孝子 過去の作品
勇気
After Tone IV

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2016年10月30日 (日)

様々なアイディアをコラージュ

Title:Freetown Sound
Musician:Blood Orange

ソランジュやスカイ・フェレイラ等、ミュージシャンへのプロデュースワークでも話題のBlood Orange。前作「Cupid Deluxe」も高い評価を得ましたが、この3年ぶりとなる新作も大きな話題となりメディア等でも高い評価を得ているようです。

私は前作「Cupid Deluxe」については聴きのがしていたので今回はじめて聴いたアルバムとなるのですが・・・まず聴いて感じたのはアルバム全体としてバラバラだな、といったことでした。様々なゲストボーカルが参加しているのはもちろんのこと、曲によっていろいろとバリエーションのある作風となっており、それがめまぐるしく展開していくような作品になっていました。

全体的には80年代風のフィリーなR&Bやそれに続くような今風のネオソウルがメインとなっています。ただ楽曲によってエレクトロサウンドの打ちこみが入ったり、ムーディーな曲があったりトライバルなリズムを聴かせたりと様々。楽曲ごとに彼の様々なアイディアがつまった作品になっています。

またこのバラバラといった印象を受ける大きなポイントとしては曲の長さが短いこと。長くても5分、平均2~4分程度の楽曲が次々と展開していく構成。ブラックミュージックというと比較的1曲あたりの曲長は長めという印象があるのですが、それだけに本作の1作あたりの短さが目立ちました。

さらにこの短い楽曲の中、様々なサウンドを入れてきたり、演説などのサンプリングしたり、Blood Orangeの様々なアイディアがつまったアルバムになっています。それだけに余計バラバラといった印象の強いアルバム。いわばBlood Orangeのアイディアが様々な形でコラージュされた作品とも言えるでしょう。

それだけに情報量の多い作品になっており、個人的にはもうちょっとすっくりまとめてそのメロディーをしっかり聴きたかったかな、といった感想も持ってしまいました。特に作品の中に流れるメロディーラインは実に美しく聴かせるものがあり、その世界をもっと長く味わいたかったなとも思ってしまいました。高い評価を受ける理由も十分わかるのですが、個人的にはそのメロディーをもっと味わっていたかったな、と思うアルバムでした。

評価:★★★★

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2016年10月29日 (土)

再結成後2枚目のアルバム

Title:HEAD CARRIER
Musician:PIXIES

1980年代後半から90年代にかけて活躍。オルタナ系ギターロックバンドの先駆的存在としてシーンに多大な影響を与えたPIXIES。1993年に解散を発表したものの2004年に再結成。その後、ライブなどを中心に活動を続けてきたのですが2014年に23年ぶりとなるアルバムをリリース。そこからわずか2年、早くも再結成後2作目となるニューアルバムをリリースしてきました。

この2年前の前作に比べて大きく変わった点、それは紅一点女性メンバーパズ・レンチャンティンが大幅に参加している点でしょう。前作「Indy Cindy」ではキム・ディール脱退後に加入したキム・シャタックもすぐ脱退。新メンバーとしてバズが加わりましたがレコーディングにはさほど参加していなかったようで、事実上メンバー3人によるアルバムという感じでした。

しかし今回のアルバムは新メンバーのパズがアルバムの中でも積極的に参加しています。「Bel Esprit」ではブラック・フランシスとのデゥオとなっていましたし、「All Think About Now」ではメインボーカルにもなっていました。ほかにもコーラスでも積極的に参加。やはりキム・ディールの影響を感じさせるボーカルなのですが、アルバムの中でも非常に目立ち、大きなインパクトになっています。

この女性ボーカルの参加によって前作に比べてグッと解散前の作風に近づいたような感じもする今回のアルバム。「Baal's Back」では実にPIXIESらしいシャウトを聴かせてくれたりして実にPIXIESらしいアルバムになっていたと思います。パッと聴いた印象としてあのPIXIESが戻ってきた、とすら感じる方も少なくないかと思います。

それだけに私も一度聴いた時はPIXIESらしいアルバムで満足、と思ったのですが、ただ聴き終わった後、どこか物足りなさを感じました。確かに今回のアルバムもPIXIESらしい心地よくノイジーなギターサウンドにメロディアスなメロディーが特徴的なアルバムになっています。ただ、アルバムを聴き終わった後、メロディーにいまひとつインパクトの不足しているように感じました。

解散前のPIXIESの作品といえば、破壊的なサウンドとは裏腹にキュートという形容詞すら似合いそうなインパクトあるメロディーが特徴的でした。特にサビについては一度聴いたら忘れられないようなフレーズも多様しており、「インディーバンド」という音楽ファン向けな位置づけのバンドとしてはヒットポテンシャルもあるなつっこいメロディーラインが大きな魅力でした。

残念ながら今回のアルバムにはそういった一度聴いたら忘れられないようなキャッチーで耳なつっこいメロディーラインはあまりありません。もちろん今回のアルバムについてもポップなメロディーラインが全編的に展開しているのは間違いありません。前作同様、ポット出のギターロックバンドがこのアルバムを作ってきたら絶賛していたと思います。ただPIXIESというバンドがつくりあげた実績はあまりにも大きすぎました。PIXIESのアルバムと考えるとどうしても物足りなさを感じてしまいます。前作同様、悪いアルバムではないと思うのですが・・・やはり昔の輝きを取り戻すのは難しいのかなぁ、ということを感じてしまうアルバムでした。

評価:★★★★

PIXIES 過去の作品
EP1
EP2

Indy Cindy
Doolittle25

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2016年10月28日 (金)

待ちに待った新作

Title:Fantome
Musician:宇多田ヒカル

待ちに待った・・・そういう表現がこれほどピッタリ来るアルバムはないかもしれません。2010年に「人間活動に専念する」として活動を休止した宇多田ヒカル。その後、散発的な活動はありましたが、ここに来て約8年半ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。オリコンチャートでは3週連続で1位を獲得するなど長いインターバルにも関わらず根強い人気を感じさせる結果となりました。

そんな久しぶりとなる彼女の新作なのですが、このアルバムを聴いてまず思ったのは、声、変わったなぁという印象でした。ま、ぶっちゃけていっちゃうと老けたなということなんですが(^^;;よくいえば「大人の声」になったということ。ただちょっと残念なのですが「大人の声」になって例えば色気が増したといった感じもなく、渋さが増したといった感じがなく、プラスアルファの要素がなくて残念な感じ。もちろん、もともと彼女が歌が上手いミュージシャンなだけに普通に聴く分にはもちろん気にならない話なのかもしれませんが。

そして肝心の楽曲なのですが、まず一言で言ってしまうと安定感が増したという印象を受けます。勢いと斬新さはあるものの若干安定感の欠けた初期の作品から徐々に楽曲の安定感が増してきた彼女でしたが、今回のアルバムに関してはある種の貫録すら感じました。特にどの曲に関してもしっかりと宇多田ヒカル色がついていたのも印象的。今回のアルバムでは豪華なゲスト陣も話題で、特に「二時間だけのバカンス」ではあの椎名林檎がゲストとして参加しているのですが、同じく非常に個性の強い椎名林檎とのデゥオにも関わらず、しっかりと宇多田ヒカルの曲となっていました。

ただ安定感が増しただけに逆にいえばアルバム全体としては落ち着いたなという感じがします。上にも書いたデビュー当初の勢いや楽曲の新鮮さはこのアルバムにはあまり感じません。例えば「道」のイントロのエレクトロサウンドや、バスドラのリズムを強調した「忘却」のようにいまどきの音を入れた楽曲もあるのですが、全体的には90年代あたりから変わらない雰囲気の楽曲。ジャパニーズR&Bともいうんでしょうか、日本人にもみみなじみやすいわかりやすいポップなメロディーラインをR&B風にまとめあげているポップ。デビュー時の「世界標準で最先端」というイメージは残念ながら本作では全く感じませんでした。

楽曲としては間違いなく高いクオリティーを持った曲ばかり。「俺の彼女」のようなユーモラスも交えてくるのも彼女らしい余裕も感じます。彼女もデビューから17年。そろそろ「ベテラン」に足がかかってくる頃ですが、まさにそんなキャリアに裏打ちされたアルバムだったと思います。活動休止前の作品には残っていたデビュー以来の勢いが今回のアルバムではなくなってしまったのが残念なのですが、一方ではキャリアをつんだミュージシャンならではのすごみも感じたアルバム。これからも安定して傑作を聴かせてくれそうな予感もするアルバムでした。

評価:★★★★★

宇多田ヒカル 過去の作品
HEAT STATION
This Is The One(Utada)
Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.2


ほかに聴いたアルバム

君の名は。/RADWIMPS

ここでもヒットチャートのコーナーで何度も取り上げたアニメ映画「君の名は。」。その大ヒットぶりが話題となっていますが、それに伴いチャートでも上位にランクインし続けているRADWIMPSによる映画のサントラ盤。基本的に映画主題歌の4曲以外は劇中でつかわれたインスト曲を収録しているだけのサントラ盤で、かつそのインスト曲も目立ったRADWIMPSらしいアイディアがある訳ではなく、映画を見ておらずこのアルバムを聴くとかなり辛いかも。というか、私がそうなのですが、正直言って、ほとんど楽しめませんでした。

主題歌の4曲にしてももちろん悪くはないのですが、比較的ストレートなポップナンバーであり、RADWIMPSの曲としては「普通・・・」といった印象。近いうちに彼らのアルバムリリースが予定されているので、映画のファン以外はそれを待った方がいいかも(もっとも、全曲収録されるわけではないみたいですが)。映画の中では彼らの曲が効果的に使用されていたようなので映画を見て気に入った方は聴いて損のないアルバムだと思いますが、それ以外の方はヒットしているからといって無理に聴く必要性は低いアルバムかと。

評価:★★★

RADWIMPS 過去の作品
アルトコロニーの定理
絶対絶命
×と○と罰と
ME SO SHE LOOSE(味噌汁's)

TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA~Selecao Brasileira~/東京スカパラダイスオーケストラ

スカパラのブラジルでの単独公演を記念して現地でリリースしたベスト盤。現地ブラジルのミュージシャンも参加し、よりラテンテイストにアレンジされています。最近、ポップ寄りの路線が強いスカパラですがこのアルバムで収録されている曲は初期スカパラを彷彿とさせる「やばさ」のような部分を強く感じる楽曲に。なにげにここ最近のスカパラに物足りなさを感じている方こそ満足できそうな内容になっていました。

評価:★★★★★

東京スカパラダイスオーケストラ 過去の作品
Perfect Future
PARADISE BLUE
WILD SKA SYMPHONY
Goldfingers
HEROES
Sunny Side of the Street
on the remix
Walkin'
欲望
Diamond In Your Heart
SKA ME FOREVER
The Last
TOKYO SKA Plays Disney
The Last~Live~

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2016年10月27日 (木)

まさかの4週連続

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

まさかの4週連続1位です。

今週も先週に引き続き宇多田ヒカル「Fantome」が1位獲得。売上枚数4万5千枚は先週の6万3千枚よりダウン。チャートの谷間的な週が続いた影響でしょうが、それでも強さを感じさせます。

初登場最高位は2位。韓国の4人組バンドCNBLUE「EUPHORIA」がランクインです。初動売上3万2千枚は前作「colors」の3万枚(1位)から若干のアップ。

3位4位は同一ミュージシャンによるアルバムが2枚同時ランクインです。アニメソング中心に活躍する女性シンガー藍井エイルの2枚のベスト盤「BEST-E-」「BEST-A-」がそれぞれ3位4位にランクイン。デビューの日からちょうど5年目の10月19日にリリースされたベスト盤。本人の体調不良のため現在無期限の活動休止中ですが、ファンはこのベスト盤を聴きながら首を長くして待っていたいところでしょう。初動売上はそれぞれ2万枚。直近のオリジナルアルバム「D'AZUR」の2万6千枚(4位)からはダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位にこれがメジャーデビュー作となるMy Hair is Bad「woman's」がランクインです。シンプルなオルタナ系ギターロックバンドでいきなりのベスト10入りはちょっとびっくり。初動売上は1万7千枚。インディー時代にリリースした前作「narimi」の1千枚(45位)から大きくアップしています。

さらにこちらも新人ギターロックバンド、フレデリック「フレデリズム」が7位初登場。こちらは神戸を中心に活動を行っている3ピースバンド。メジャーからはミニアルバムを3枚リリースしていますがフルアルバムは本作が初となります。初動売上は1万枚。直近のミニアルバム「OTOTUNE」の2千枚(46位)からこちらも大きくアップしています。

8位初登場はニコニコ動画の人気コーナー「歌ってみた」で人気を博した女性シンガーれをるを中心に結成された3人組ユニットREOLのデビューアルバム「Σ」がランクイン。初動売上1万枚。ちなみにれをるのソロ作「極彩色」は初動1万枚(9位)でこちらからは横バイという結果になりました。

9位には木村カエラの約1年10ヶ月ぶりとなるアルバム「PUNKY」がランクインしています。初動売上は8千枚。前作「MIETA」の1万1千枚(6位)からダウン。ここ数作、4万2千枚→2万1千枚→1万1千枚と急落傾向が続いており、本作は若干下げ止まったものの今後の動向が気になるところです。

最後10位にはLady Gaga「Joanne」がランクイン。全世界同時リリースのため金曜日発売となったためチャート的には不利な状況となっています。初動売上は8千枚。前作はTONY BENNETT&LADY GAGA名義の「CHEEK TO CHEEK」の1万1千枚(7位)よりダウン。Lady Gaga単独名義では前作「ARTPOP」の初動5万8千枚(1位)から急落。発売日の関係を考慮してもかなり厳しい結果となっており、一時期のLady Gagaブームは完全に去ってしまったといっていいでしょう。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2016年10月26日 (水)

勢いは続く

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

見事2週連続1位獲得です。

今週の1位は星野源「恋」が先週から引き続き2週連続1位を獲得しました。CD売上・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)でもついに1位獲得。ラジオオンエア数、PCによるCD読取回数,及びYou Tube再生回数で3位、Twitterつぶやき数で2位といずれも上位にランクインし、文句なしの1位獲得となりました。

ちなみにオリコンでは今週のランクは10位。ただ一方、iTunesのランキングでは上位に入ってきており、CD売上よりもダウンロードでの人気を伺わせます。まだまだ勢いは続きそうです。

2位にはピコ太郎「ペンパイナッポーアッポーペン」が3位からランクアップ。You Tube再生回数は今週も1位。Twitterつぶやき数は3位にランクイン。ただ一方実売数は29位でありさほど伸びていません。まあ、正直、You Tubeで見れば十分。わざわざ買うまでの曲ではないとは私も思うのですが・・・。ちなみに先週77位にランクインした本家アメリカのビルボードチャートでしたが今週は残念ながら圏外にランクダウンしています。

3位には約12年ぶりに復活したTHE YELLOW MONKEY「砂の塔」が先週の21位からランクアップしてベスト10入り。TBSテレビ系ドラマ「砂の塔~知りすぎた隣人」主題歌。実売数は3位でしたがラジオオンエア数及びPCによるCD読取数では見事1位を獲得しています。実にイエモンらしい歌謡ロックなナンバーで、ファンにとっても待ちに待った新作といった感じでしょう。オリコンでも見事2位初登場。初動売上は9万5千枚。前作「Romantist Taste 2012」の初動2万6千枚(5位)からアップ。ただし前作は解散後にリリースされたデビューシングルのリミックス盤。純粋な新曲としての解散前の前作「プライマル。」は初動9万4千枚(3位)でなんと前作よりアップ。「プライマル。」がリリースされた2001年はまだ普通にCDが売れていた時代だっただけに、この時の水準よりアップしたというのは驚き。それだけ待ちに待ったファンが多かったということでしょうし、この12年(実質は2001年以来活動休止していたため15年)で新たなファンが増えた、ということなのでしょう。

続いて4位以下の初登場曲です。4位にはジャニーズ系Sexy Zone「よびすて」が初登場でランクイン。日テレ系ドラマ「ガードセンター24 広域警備指令室」主題歌。ちょっと懐かしさを感じる歌謡曲なナンバーになっています。実売数及びPCによる読取回数では2位でしたがラジオオンエア数39位が足を引っ張った形でのベスト3落ち。ちなみにオリコンではこの曲が初動11万4千枚で1位獲得。前作「勝利の日まで」の9万3千枚(1位)からアップ。

6位にはサカナクション「多分、風。」が先週の29位からランクアップしベスト10入り。資生堂「アネッサ」CMソング。エレクトロビートがちょっとディスコ風なサカナクションらしいエレポップのナンバー。実売数5位、PCによるCD読取数4位の他、ラジオオンエア数では2位を獲得しています。オリコンでは初動2万6千枚で4位にランクイン。前作「新宝島」の1万8千枚(9位)よりアップしています。

7位にはハロプロ系女性アイドルグループアンジュルム「上手く言えない」が初登場でランクイン。実売数は4位ながらもラジオオンエア数68位、Twitterつぶやき数31位といずれも下位に。特にPCによるCD読取数も28位とベスト10を大きく下回っており、かつiTunesチャートでも上位に入ってきていないため、6種同時発売というCD形態からのファンによる複数枚買いが大きく影響しているものと思われます。ちなみにオリコンでは初動3万1千枚で3位初登場。前作「次々続々」の5万2千枚(2位)からダウンしています。

8位には乃木坂46「サヨナラの意味」が初登場でランクイン。CDリリースは11月9日ですが、Twitterつぶやき数で1位を獲得し、CDリリースに先駆けてのベスト10入りとなりました。ただTwitterつぶやき数以外はラジオオンエア数54位、You Tube再生回数24位にランクインしただけで事実上、Twitterつぶやき数のみをもってのベスト10入り。以前から疑問を呈していますが、Twitterつぶやき数の妙な比重にかかり方にまたもや疑問を抱いてしまう結果でした。

最後9位にはDream、E-Girlsのメンバー、Dream Ami「Lovefool -好きだって言って-」が初登場でランクイン。懐かし~~!かつて日本でも大人気だったスウェーデンのバンド、The Cardigansが歌って日本でもヒットした1996年のナンバー。個人的にThe Cardigansの大ファンなだけにちょっと複雑な心境。ただ声質は似ている感じで、日本語に訳されている以外は比較的原曲に沿ったカバーになっています。実売数は11位、PCによるCD読取数18位、Twitterつぶやき数26位。一方でラジオオンエア数は9位にランクイン。アイドル系としては珍しくラジオオンエアが好調な結果になっています。確かにこの曲はFMラジオ受けしそうですもんね。オリコンでは初動1万4千枚で9位初登場。前作「トライ・エヴリシング」の1万2千枚(6位)から若干アップしています。

今週のHot100は以上。アルバムチャートは明日!

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2016年10月25日 (火)

いまだに若々しさも

Title:Give a Glimpse of What Yer Not
Musician:Dinosaur Jr.

2005年の再結成後、比較的マイペースながらも着実に活動を続けているギターロックバンド、Dinasour Jr.。これが約4年ぶりとなるニューアルバム。作品としてもここ11年で4枚目という比較的スローペースながらも、Dinosaur Jr.らしい安定したクオリティーを保ち続けています。

まず1曲目「Goin Down」から、ギターをアンプに差し込んだ時のノイズからスタート。否応なしに期待がたかまりつつはじまった楽曲は、疾走感ある心地よいギターサウンドにポップなメロディーがのる、いかにもDinosaur Jr.らしい心地よいナンバー。続く「Tiny」も心地よいノイジーなギターリフが主導になりつつ、ポップでキュートともいえるメロディーラインが心地よい感じ。最初のデビューから30年以上たつというのが信じられないくらいの若々しさすら感じるポップなギターロックナンバーになっています。

その後も切ないメロディーラインが魅力的な「Be A Part」「Love Is...」といったナンバー、ちょっとハードロックテイストのへヴィーなギターサウンドが耳を惹く「I Walk For Miles」、ファルセット気味のボーカルでしんみり聴かせる「Knocked Around」などといったナンバーが続きます。

ただ基本的にノイジーなギターサウンドにポップなメロディーラインを聴かせるといったいかにもDinasour Jr.らしい楽曲がならんでおり、楽曲の構成も比較的シンプル。良い意味で安心して聴いていられるアルバムになっています。ただ、ポップなメロディーにしてもみずみずしさがあり、ノイジーなギターサウンドに関しても勢いがあります。上にも書いたとおり、既に最初のデビューから30年、一度解散して再結成をしたバンドなのですが、マンネリ、あるいは惰性で活動を続けているといった感覚は皆無。いつまでもインディーギターロックバンドらしい、いい意味での荒っぽさも感じます。

そういう意味でギターロック好きなら間違いなく要チェックの1枚。マイペースな活動はこれからも続きそうですが、彼らの活躍にはまだまだ期待できそうです。

評価:★★★★★

Dinosaur Jr. 過去の作品
beyond
Farm


ほかに聴いたアルバム

1 Hopeful Rd./Vintage Trouble

このジャケット写真のたたずまいからしてもいかにも、なにですが・・・黒人ソウルシンガー、タイ・テイラーを中心にアメリカで結成されたソウルロックバンド。2012年にはサマソニでも来日し話題となりました。個人的にはブルースやソウルをゴリゴリに聴かせるブラック色の強いバンドを想像していて、そして思った通り、確かにブラックミュージックの色合いは強いのですが・・・ただ、基本的にはよくありがちなブルースロック。ソウルの色合いが濃い曲もチラホラあるのですが、思ったよりも薄味だったかも。もう一癖、個性が欲しい感じがするのですが。

評価:★★★★

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2016年10月24日 (月)

ポップシンガー平井堅

Title:THE STILL LIFE
Musician:平井堅

シングルは比較的コンスタントにリリースしていたものの、そういえば最近、アルバムを出していないな・・・という印象だった平井堅。で、気がついたらオリジナルアルバムとしてはなんと5年ぶりとなる新譜。途中、カバーアルバムのリリースはあったものの、かなり間はあいてしまいました。

平井堅といえばブレイク時は「R&Bシンガー」というくくりで売り出されていました。彼が「楽園」でブレイクした2000年はちょうどMISIAが大ブレイクしていた頃で、女性R&Bがひとつのブームになっていました。平井堅もどちらかというとその流れに乗って売り出されたという印象を強く受けます。

ただその後の彼の活動を見ると、確かにR&B寄りな楽曲は多いものの、R&Bという枠組みにとらわれないポップシンガーを目指しているのは明確でした。彼のカバーアルバム「Ken's Bar」シリーズでもジャンルにとらわれない楽曲をカバーしていますし、アルバムにしても「FAKIN'POP」というタイトルだったり「JAPANESE SINGER」というタイトルだったり、「ポップ」であること、あるいは単なる「歌い手」であることを強調したアルバムタイトルが続いています。

そんなジャンルにとらわれないシンガーという彼の目指す方向性が今回のアルバムではある意味、これでもかというほど強調されたアルバムになっています。冒頭を飾る「Plus One」は彼らしい聴かせるラブソングなのですが、今風なエレクトロサウンドで味付けがされていますし、「告白」はアレンジもストリングスも入り歌詞を含めてベタでダイナミックな歌謡曲路線。PVをインドで撮影した「ソレデモシタイ」はどこかインド風なリズムも。「驚異の凡人」はエレクトロも入れたパンキッシュなナンバーになっていますし、「君の鼓動は君にしか鳴らせない」はストリングスやホーンセッションでスケール感のあるバラードナンバーに仕上げています。

特にカッコイイのが安室奈美恵とのコラボで話題になった「グロテスク」。どちらかというと安室奈美恵らしいEDMナンバーなのですが、やはりそのテンポのよいリズムがカッコイイ。平井堅、安室奈美恵ともに個性あるボーカリストなだけにしっかりそれぞれのキャラが立ったデュオを聴かせてくれます。

もっともバラバラな作風とはいってもいつもの彼らしいメロディーラインは全編に流れていますし、なによりその個性的なボーカルは健在。アルバム全体、バラバラという印象は受けるのですが、全体を貫く平井堅らしさがあるため、散漫という印象は受けません。またリリース期間が長かった影響もあり、シングル曲、タイアップ曲などインパクトある曲が多いこともこのアルバムの大きなプラス要素となっています。

また今回のアルバムに関しても歌詞もなかなかユニーク。例えば「魔法って言っていいかな?」では

「君を笑顔にする魔法はいくつか持ってるんだ
帰り道の 犬の鳴き真似 あの日の本音
君の寝言の話 そして大好きのキス」

(「魔法って言っていいかな?」より 作詞 平井堅)

と素朴ながらも恋人への愛情が伝わる素敵な歌詞が彼らしい感じ。

また不倫をテーマに歌った「ソレデモシタイ」もボディーソープを介した女性の心境を歌った歌詞がなかなかユニーク。サビ一発目にいきなり「チクショー!」というインパクトあるフレーズを持ってくるのもとても楽しい曲に仕上げています。

そんな感じで、様々な楽曲をアルバムの中で歌うことによって、平井堅はひとつのジャンルにとらわれることない、あくまでもポップシンガーだ、ということを強く主張しているようにも感じられたアルバムでした。久しぶりのアルバムなだけに名曲がたまっていたともいえるかもしれません。ともかく、はずれ曲なしの傑作アルバム。彼のシンガーとしての実力、またミュージシャンとしての実力も存分に感じられた1枚でした。

評価:★★★★★

平井堅 過去の作品
FAKIN' POP
Ken's Bar II
Ken Hirai 15th Anniversary c/w Collection '95-'10 ”裏 歌バカ”
JAPANESE SINGER
Ken's Bar III


ほかに聴いたアルバム

diverse journey/YEN TOWN BAND

正直言ってかなりビックリしました。YEN TOWN BAND、約20年半ぶりの新作。YEN TOWN BANDはもともと1996年公開の映画「スワロウテイル」の劇中バンドで、Charaと小林武史を中心に結成されたバンド。「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」が大ヒットを記録し一躍話題となりました。その後、アルバム「MONTAGE」をリリースしましたが、もともと企画モノだっただけに活動はそれだけ。2003年に散発的に集まってライブをやったことがあったようですが、目立った活動はありませんでした。

それが昨年、突然復活ライブを実施。さらにはシングル2枚をリリースした後、ついにニューアルバムのリリースとなりました。この久々となるニューアルバム、ストリングスやシンセを用いた分厚いサウンドが良くも悪くも小林武史らしい楽曲。ただちょっとサイケな雰囲気もまじった楽曲が妙にCharaのボーカルとマッチしていました。またアルバム全体に漂う90年代っぽさもちょっと懐かしさを感じ、「Swallowtail Butterfly」をリアルタイムで聴いていた世代の心に響いてきそう。90年代のYEN TOWN BANDっぽさ・・・というかCharaっぽさがいい意味で残されたアルバムになっていました。

評価:★★★★★

Next One/GLIM SPANKY

男女2人組デゥオのフルアルバムとしてはメジャー2枚目となる新作。ルーツ志向の60年代70年代あたりのロックをJ-POP的なポピュラリティーを混ぜつつ聴かせるスタイル。ただこれは以前聴いたミニアルバムの時も感じたのですが、イメージ的には完全にSuperflyにかぶってしまいます。あえていえば松尾レミのボーカルがしゃがれ声でインパクトがあるかな、といった感じか。あと、Superflyに比べると若干グラムロックやガレージロックの色合いが強い点も特徴といえば特徴かも。ただそれでもどうしてもSuperflyの二番煎じという印象がぬぐえないのが残念なところ。もうちょっとなんとか彼女たちだけの個性を引き出してほしいところなのですが。

評価:★★★★

GLIM SPANKY 過去の作品
ワイルド・サイドを行け

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2016年10月23日 (日)

ラストアルバム??

Title:AIM
Musician:
M.I.A.

彼女自身、タミル系スリランカ人で、父親はスリランカで武装闘争を行っていたLTTEのメンバーであり、いまなお消息不明という異色のキャリアを持つ女性シンガーソングライター。そんな彼女の約3年ぶりとなる新作。ジャスティン・ビーバーとのコラボなどで話題となったプロデューサー、ディプロも参加。ジャスティン・ビーバーとM.I.A.というある意味、全く相いれないようなミュージシャンだけに大きな話題となっています。

さらに今回はOne Directionの元メンバーZAYNも参加。こちらもM.I.A.というミュージシャンイメージからすると異色ともいえる組み合わせで驚かされます。そんな彼が参加した「Freedun」はM.I.A.らしいレゲエ調の強いビートは流れているのですが全体的にメロディアスに仕上げているナンバー。ZAYNもメロウな歌声を聴かせており、M.I.A.のイメージするとかなりポップというイメージを受けます。

そんな異色ともいえるコラボも話題の新作なのですが、アルバム全体としてはM.I.A.としてのイメージを全く損ねることない今回もトライバルなリズムやレゲエなどを取り入れた独特なサウンドを作り上げています。例えばスクリレックスが参加して話題の「Go Off」はシンプルで力強いトライバルなリズムのみを軸としてつくられたナンバー。リズムトラックのビートが荒々しさを醸し出しているM.I.A.らしいナンバーに仕上がっています。

他にも冒頭を飾る「Borders」はダンスホールレゲエの影響をうけたようなリズムのインパクトにまずは耳を惹きつけられますし、「Ali R U OK?」あたりもパーカッションの奏でるリズムがアフリカ的な雰囲気を醸し出しつつ、壮大さを演出しているような独特なリズムトラックが魅力的。彼女らしい荒々しい個性的なリズムは本作も健在です。

ただそんな楽曲がありつつ、前述の「Freedun」やラストを飾る「Survivor」みたいなストリングスを取り入れて爽やかに仕上げたポップなナンバーもあったりと、聴きやすい側面もあったりして、ポップという側面でも目立つアルバムになっていたと思います。そういう意味では彼女の独自性とポピュラリティーがほどよくバランスされたアルバムのように感じました。

そんな本作ですが残念ながら売上的にはさほど芳しくなく、本作はデビュー作以来はじめて、ビルボードのベスト40入りを逃したとか。ただこれだけのアルバムをつくったんだから次回作はきっともっと売上を伸ばしてくるはず・・・と思ったらなんでもこの作品、本人曰く「アルバムというフォーマットでは最後のリリースになる」とのこと。うーん、それは残念なニュース・・・と言いたいところですが、ミュージシャンのこの手の「最後」という約束は得てして破られるケースが多いだけに、何年かたったらあっさり「新作リリース」とかになりそう(笑)。もっとも彼女は「他にしたいことがあるから、少し休みたい」と言っているそうで、次のリリースは少々先になるかもしれませんが、彼女ほど個性的なミュージシャンは他にいないだけに、まだまだ新作を聴きたいところ。次の作品のリリースがいつになるかわかりませんが、首を長くして待っていたいところでしょう。

評価:★★★★★

M.I.A. 過去の作品
KALA
MAYA
MATANGI

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2016年10月22日 (土)

あの「アイドル」たちへ楽曲提供

Title:あかりの恩返し
Musician:町あかり

まるで昭和40年代か50年代からタイムスリップしたようなスタイルで昭和のアイドル歌謡を歌って話題のシンガーソングライター、町あかりのメジャー2枚目となるニューアルバム。今回は非常にユニークなコンセプトに貫かれた作品になっています。それは「町あかりが今まで影響を受けてきた歌手のみなさんに楽曲提供の依頼を受けたら」というコンセプトで曲を書き上げた全14曲。「まるでこんなヒット曲が本当にあったかのようなパラレルワールドへ貴方を誘います。」というコンセプトもなかなかユニークです。

そんなコンセプトに貫かれているため、アルバム全体の楽曲に統一感はありません。いかにもアイドル歌謡曲というナンバーも多い一方で、「あなた普通のサラリーマンでしょ?」はロックンロール風、「追いかけられる夢」はムード歌謡曲、「東京名物・人混み」は盆踊りとバラバラ。ただコンセプトがコンセプトなだけに、この楽曲のバラバラさが逆にアルバムの味になっているようにも思われました。

なお、どの曲が誰に向けて作られた曲なのかは公表されていないようなので(「誰に向けてつくられたのでしょうか」というクイズ企画が実施されているよう)、どの曲が誰向けなのか想像しながら聴くのもこのアルバムの楽しさ。私自身、昭和アイドル歌謡曲に全く詳しくないので、的外れの予想かもしれませんが、マイナーコードでアップテンポな「言ってもいいこと悪いこと」は中森明菜あたり?ちょっとメタ視点っぽい歌詞の「よくある質問Q&A」はキョンキョンといったところか?爽やかなお嬢様風の「ビビッドなおしゃべり」は岩崎宏美あたりを想像しましたし、最後を飾る「カラフルあげます」は松田聖子といった感じでしょうか。「あなた普通のサラリーマンでしょ?」はそのロックンロールな内容といい歌詞といい森高千里を想像したのですが、これはちょっと「昭和歌謡」の範囲外だから違いそう・・・。

そんな感じで最初から最後まで非常に聴いていて楽しいアルバムで、歌謡曲が光り輝いていた昭和のあの頃にタイプスリップした錯覚に陥るよう。なによりも彼女自身の昭和アイドル歌謡に対する愛情も感じるアルバムになっています。ただ一方で、前作同様、どうも気になるのがその歌詞。それなりにインパクトあるフレーズをもってきていてユニークではあるのですが、歌詞のインパクトばかりを重視していてちょっと上滑りしている感も否めません。

例えば「夜は早く寝て」はタイトルにもってくるのもなかなかインパクトあるフレーズなのですが、歌詞の内容としてはそれ以上何も言っておらず、正直、うーん、と思ってしまいます。「東京名物・人混み」あたりも忘れられないようなタイトルながらも、このタイトルをつかったサビと盆踊り風のメロディーラインがどうもチグハグ。いまひとつメロディーと歌詞が上手くリンクしていないように感じてしまいます。

聴いていて楽しいアルバムなのですが、この歌詞の部分がどうもひっかかってしまう点がマイナス。ちょっと残念に感じてしまいました。まあもっとも、それを差し引いても十分楽しいアルバムだとは思うのですが。

評価:★★★★

町あかり 過去の作品
ア、町あかり


ほかに聴いたアルバム

Quest/WHITE ASH

WHITE ASHがアプリゲームを題材としたアニメ「モンスターストライク」のタイアップ曲のみから構成した企画盤的要素が強いミニアルバム。前作「SPADE3」ではじめてきちんとWHITE ASHの曲を聴いて気に入ったですが、本作に関しては悪い意味で良くありがちな今時のギターロックバンドといったイメージを強く感じてしまって(特に1曲目の「Monster」)、「SPADE3」ほどははまれませんでした。とはいえ、「Mad T.Party (1865-2016) 」のような洋楽テイストの強いオルタナ系ギターロックはやはり魅力的。まあ、いかにもなタイアップ曲が並んだだめ、WHITE ASHの魅力を捉えきれていない、といったところなのでしょうか。

評価:★★★★

WHITE ASH 過去の作品
SPADE3

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2016年10月21日 (金)

ライブで見て気になったので・・・。

Title:Faransiskiyo Somaliland(邦題 愛しきソマリランド)
Musician:SAHRA HALGAN TRIO

今回紹介するアルバムは、今年8月にライブへ足を運んではじめてその曲を聴いたソマリランド出身のシンガー、サハラ・ハルガンを中心に結成された3人組バンドのアルバム。ライブに足を運ぶまでは全く知らないミュージシャンだったのですが、8月に行われたスキヤキ・ナゴヤのステージで彼女たちのライブに魅了され一気に気になる存在となり、さっそく(といいつつ、ライブから2ヶ月近くの月日が経ってしまいましたが・・・)聴いてみた彼女たちの最新アルバムです。

その時のライブレポはこちら

ソマリランドというのは、国際社会の中ではアフリカ北部の国、ソマリアの中の一部とされている地域。ソマリアは時々日本でも話題になるのですが、内戦状態が続いており、全く統一された国として機能していないいわば「戦国時代」状態が続いている国なのですが、その中で独立を宣言しているソマリランドはソマリアとは対照的にアフリカの中でも珍しい平和で治安のとれた状態が続いている国だそうです。

彼女はもともとソマリランドでシンガーとして活動していたそうですが、内戦状態の中で1992年にフランスへ亡命。その後、国外で活動を続けていく中で、スイスのギタリスト、マエル・サラートとBKO QUINTETとしても活躍しているパーカッションのエムリック・ルロールの3人でバンドを結成したとか。その後、ソマリランドの状態が安定したこともあり彼女は故郷、ソマリランドへ戻ったようですが(その模様を記録したドキュメンタリー映画が本作にDVDでついています)、ソマリランドに戻る前の「記録」的にリリースされたアルバムともいえるのが本作のようです。

ライブで彼女たちの曲を聴いた時の印象としてはサハラ・ハルガンの力強いボーカルが印象的で、かつこぶしを効かせる楽曲はどこか日本の演歌にも通じるような部分を感じ、親近感を抱きました。その印象はアルバムを聴いても基本的にはかわりません。「DAGAL」「GUNTANA」などはまさしくそういったこぶしを効かせた力強いボーカルを聴かせてくれる楽曲。アルバム全体としても基本的にサウンドはシンプルでサハラ・ハルガンの歌が主軸となっており、哀愁感あふれるメロディーラインは日本人の琴線にも触れそうなもの。いい意味で日本人にとっても聴きやすいアルバムだったと思います。特に「ALAH INU KU DHAWRO」などはアコギの演奏と彼女の歌だけのシンプルな構成。悲しげなメロディーラインと彼女の包容力あるボーカルが心に突き刺さる「歌」を聴かせる楽曲になっています。

ただ一方でアルバムで聴くとライブの時は強く印象には受けなかった「アフリカ」的な部分も多く見受けられます。「HOBAA LAYOOW HEEDHE」をはじめコールアンドレスポンスをメインとした構成にトライバルなパーカッションを入れた楽曲が多く、アフリカの音楽は「アフリカ音楽」と単純に一言では言い表せられない多様性があることは重々承知なのですが、いかにもアフリカらしい構成の楽曲が目立ちます。最後を締めくくる「BOTOR」などはまさにコールアンドレスポンスとパーカッションのみから構成された楽曲で、非常に土着的な雰囲気を感じます。

ソマリランドの伝統音楽に西洋的な音楽を加味したような楽曲は私たちにとっても聴きやすく、またそのメロディーラインは日本人の琴線に触れそうな親近感も。一方ではソマリランドの空気もしっかり伝えてくれるような楽曲になっており、ライブで感じた魅力をCDでも味わえた一方でライブとはまた違った魅力にも気が付かされるアルバムになっていました。

ちなみに上にも書いた通り、彼女が亡命先からソマリランドへ帰還するドキュメンタリー映画のDVDが付いてきます。残念ながら国内盤でも日本語字幕はないのですが、英語字幕はついているのでそれを追いかければなんとなく内容は理解できるかも。亡命前の彼女の姿をうつした貴重な映像や現在のソマリランドの様子も映し出されており、非常に興味深いドキュメンタリー映画となっていました。

そんな訳でアルバムは文句なしの傑作でお勧めの1枚なのですが・・・ただちょっと苦言を・・・今回、ライスレコードからリリースされた国内盤をリリースされていたのですが、国内盤の仕様にはかなりガッカリしました。Amazonでは輸入盤が2,246円に対して国内盤が3,657円と1,000円以上の差があるのですが、違いがライターによる紙1枚の解説のみ。歌詞の和訳もなければ上にも書いた通り、ドキュメンタリー映画の日本語字幕もついていません。

ライスレコードは様々なワールドミュージックを日本に紹介してくれるレーベルでその活動には敬意を表したいのですが、さすがに今回のアルバムに関しては国内盤で1,000円以上金額を上乗せしているのは酷い・・・。ライターによる解説も、ソマリランドの歴史の解説にWikipediaを平気で使用しているし・・・金をとるプロのライターが参考文献にWikipediaを使うなよ(怒)。

そのため、上のリンクはあえて輸入盤の方をはっています。内容的には文句なしの傑作。ただし気になった方は国内盤ではなく輸入盤で十分だと思います。

評価:★★★★★

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2016年10月20日 (木)

3週連続1位獲得

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

なんと3週連続の1位獲得となりました。

宇多田ヒカル「Fantome」が先週に引き続き今週も1位獲得。売上枚数は6万3千枚で先週の10万3千枚よりダウン。さすがに今週に関してはチャートの谷間的週に助けられた形とはいえ、見事3週連続1位獲得。宇多田ヒカルがいまだに根強い人気を獲得していることを実感させられる結果でした。

初登場最高位は2位初登場のHappiness「GIRLZ N' EFFECT」。E-girlsとしても活動しているEXILEの事務所、LDH所属の女性アイドルグループによる4年ぶりとなるニューアルバム。初動売上3万2千枚は前作「Happy Time」の1万1千枚(10位)よりアップしています。

3位は韓流。人気俳優チャン・グンソクとサウンドプロデューサーBIG BROTHERによるユニットTEAM H「Monologue」がランクイン。初動売上1万9千枚は前作「Driving to the highway」の2万2千枚(5位)からダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤。まず6位にはamazarashiのミニアルバム「虚無病」がランクイン。amazarashiは独特の世界観(中二病的ともいう)を持つ歌詞が特徴的な2人組ロックバンド。初動売上1万2千枚は前作「世界収束二一一六」の1万7千枚(4位)からダウン。

7位には韓国のアイドルグループ防弾少年団「WINGS」がランクイン。韓国で発売されたアルバムの輸入盤だそうです。初動売上1万2千枚。直近作は日本盤のアルバム「YOUTH」の7万6千枚(1位)でこちらよりは大幅ダウン。

8位初登場はillion「P.Y.L」。こちら、現在「君の名は。」関連の楽曲が大ヒット中のRADWIMPSのボーカリスト、野田洋次郎によるソロプロジェクトによる2枚目のアルバム。初動売上は1万1千枚。前作「UBU」は輸入盤がリリースされていた影響で、初動売上はベスト10圏外。最高位7位を記録した時の売上は1万7千枚で、その売上よりダウンしています。

ちなみにRADWIMPS「君の名は。」は今週も1万7千枚を売り上げ4位にランクインしており、RADWIPSの旧譜の方が新譜よりも上に来るという結果になっています。今回のillionの売上に関しては「君の名は。」の影響はあまりなかった模様。さて、続くRADWIMPSのニューアルバムの結果はいかに?

最後9位には元AKB48の高橋みなみのソロアルバム「愛してもいいですか?」がランクイン。初動売上は9千枚。2013年にリリースしたシングル「Jane Doe」以来のソロ作となりますが、前作の初動売上8万5千枚(2位)より大きくダウンする結果となりました。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2016年10月19日 (水)

もっとも勢いのあるミュージシャン

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

おそらく今、もっとも勢いのあるミュージシャンの一人と思います。

今週の1位は星野源「恋」が先週の2位からワンランクアップ。ベスト10入りから4週目にしてついに1位獲得となりました。CD売上・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)では2位どまりでしたが、ラジオオンエア数3位、PCによるCD読み取り数4位、Twitterつぶやき数1位、You Tube再生回数4位と満遍なく上位にランクイン。見事1位獲得となっています。

一方、この曲は今週オリコンでは6位にランクダウン。オリコンで1位獲得したのが関ジャニ∞「パノラマ」だったのですが、こちらはBillboard Hot 100で2位止まり。実売数及びPCによるCD読み取り数で1位だったのですが、ラジオオンエア数11位、Twitterつぶやき数15位という結果が足を引っ張り初登場2位となりました。ある意味、CD等のみならずほかの媒体から総合的に「ヒット」を読み取ろうとするBillboardらしい結果になっています(が、今回もTwitterつぶやき数の順位が妙に総合順位に強く影響しているような印象が・・・)。

ちなみにフジテレビ系アニメ「モンスターハンターストーリーズRIDE ON」主題歌である本作は、アニソンらしい元気のよいナンバー。オリコンでは初動売上16万2千枚で、前作「罪と夏」の27万5千枚(1位)より大きくダウンしています。

3位には今話題のピコ太郎「ペンパイナッポーアッポーペン」が先週4位からランクアップして見事ベスト3入り。実売数では23位と奮いませんが、Twitterつぶやき数2位、You Tube再生回数で1位を記録し、ヒットを続けています。さらにはなんと本家アメリカのビルボードでも77位にランクインし、大きな話題に。正直「ネタ」の方はさほど笑えるネタとは思わないのですが、妙な中毒性があり、なおかつわかりやすい英語というスタイルが日本を飛び越えて世界レベルで受けているのでしょう。ちなみにCD発売はしていないためもちろんオリコンではランク対象外。もうCDの売上だけではヒットを追えないという実例がまたひとつ増えました。

続いて4位以下初登場曲です。4位にACE OF SPADES×PKCZ(R)feat.登坂広臣「TIME FLIES」がランクイン。GLAYのHISASHI、EXILEのTAKAHIRO、RIZEなどで活動したベーシストのTOKIE、THE MAD CAPSULE MARKETSの宮上元克によるユニットの4年ぶりとなる新作。映画「HiGH & LOW THE RED RAIN」主題歌。本作では三代目J Soul Brothersの登坂広臣とコラボ。結果としてかなり甘ったるいボーカルが浮いてしまっている、いかにもEXILE系な曲になっています。実売数3位、PCによるCD読み取り数では2位を記録しましたが、ラジオオンエア数で54位と奮わずベスト3入りは逃しました。ちなみにオリコンでは初動売上7万9千枚で2位初登場。4年前の前作「WILD TRIBE」の6万3千枚(3位)からアップしています。

今週、ベスト10初登場はあと1曲。9位に上白石萌音「なんでもないや」がランクイン。上白石萌音は大ヒット中の映画「君の名は。」の主演宮水三葉役を演じる女優。本作は同映画の主題歌でRADWIMPSバージョンのカバー。先週の19位からランクアップし、見事ベスト10入りとなりました。実売数は17位でしたが、Twitterつぶやき数5位がランクを引き上げたものと思われます。ちなみに配信オンリーのためオリコンではランク対象外。

ちなみにRADWIMPS「なんでもないや」も今週順位をあげ、先週の12位から8位にランクアップし、2週ぶりにベスト10入り。「前前前世」は先週の3位からランクダウンするものの、5位をキープしています。

今週のHot100は以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2016年10月18日 (火)

キリンジらしくないKIRINJIの最新作

Title:ネオ
Musician:KIRINJI

堀込泰行脱退後、いきなりメンバーを5人追加し6人組バンドとなったキリンジあらためKIRINJI。前作「EXTRA11」は6人組となってから初のアルバム「11」をリアレンジしたような企画盤だっただけに、これが6人組となってからは純然たる2枚目のオリジナルアルバムとなります。正直なところ、KIRINJIのメンバーとしてあらたに加わった5人は、既にそれぞれ音楽シーンで活躍していたミュージシャンで、いわばスーパーグループ的なバンドであったため、バンドとして長続きしないのではないかなぁ、という懸念があったのですが、こうして無事2枚目となるオリジナルアルバムがリリースされました。

前作「11」でもいままでのキリンジではなかったバリエーション豊富な作風を聴かせてくれており新生KIRINJIとしての新たなスタンスを感じましたが、今回のアルバムに関してはその音楽的ふり幅がさらに大きくなっています。まずなんといっても1曲目「The Great Journey」。あのRHYMESTERが参加してのラップチューンなのですが、メインとなっているのはむしろRHYMESTERの方。最初、アルバムを聴くと「あれ?RHYMESTERのアルバムと間違えた?」と思ってしまうほどです。

さらに続く「Mr.BOOGIEMAN」はメンバーでもある弓木英梨乃がボーカルを取っているのですが、ちょっと90年代的な懐かしさを感じさせるガールズポップ。旧来のキリンジのイメージとはかなり異なる曲が並んでおり、この段階でおもわずCDをデッキから取り出して盤面を確認した人も少なくないかも???

続く「fake it」でようやく堀込高樹のボーカルが前に出てきてキリンジらしいシティポップチューンとなっているのですが、続くラウンジ風の「恋の気配」ではコトリンゴがボーカルを取り、さらに幻想的な雰囲気の「失踪」では千ヶ崎学がボーカルを取るなど、6人組という構成をフルに生かした展開となっています。

「日々是観光」はこれまた爽やかなシティポップナンバーとなっているものの、作曲はコトリンゴが手掛けているため堀込高樹作曲のナンバーとはやはりちょっと異なった印象を受けるポップナンバーになっています。

さらには弓木英梨乃ボーカルの「あの娘のバースディ」はピアノとアコギ、ウッドベースで哀愁たっぷりに聴かせるナンバー。弓木英梨乃の少女らしい透明感のあるボーカルが生きたナンバーになっています。そして「絶対に晴れて欲しい日」はスティールパンを取り入れたラテン調のナンバーと、最後の最後までバラエティーに富んだ展開に。6人組という編成をフルに生かしたアルバムになっていました。

非常にバラエティー富んだ内容はKIRINJIとしての今後の方向性を示唆したものになっています。なによりいままでの「キリンジらしい」曲がほとんどないという点でも新生KIRINJIとしての意気込みを2枚目にしてさらに強く感じさせます。そして驚くべきことにこれだけバラエティー富んだ内容ながらも、「日々是観光」でコトリンゴが作曲を手掛けており、「The Great Journey」でRHYMESTER、「失踪」で千ヶ崎学との共作となっているほかは、基本的に堀込泰行作曲になっている点。バラエティー富んだ内容ながらも、基本的に彼が作曲を手掛けているということは驚きですし、またこれだけバラバラな作風ながらもアルバム全体としてはどこか統一感を覚えるというのは、アルバム全体統一して堀込高樹の手による作品だからなのでしょう。

最初にも書いた通り、個々のメンバーそれぞれが活躍できるようなスーパーグループだけにこの6人組が今後も続くかはわかりません。ただ6人組であるこということが実によく生かされた傑作だと思います。それだけに、今後もこの6人でどんな新作が生み出されるか楽しみになってくるアルバムでした。これからもこの6人組に要注目です。

評価:★★★★★

キリンジ(KIRINJI) 過去の作品
KIRINJI 19982008 10th Anniversary Celebration
7-seven-
BUOYANCY
SONGBOOK
SUPERVIEW
Ten
フリーソウル・キリンジ
11
EXTRA11

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2016年10月17日 (月)

若干16歳のトラックメイカー

Title:MANUAL
Musician:Takaryu

昨年行われたアマチュアミュージシャンのコンテスト「RO69JACK 2015 for COUNTDOWN JAPAN」で優勝し、デビューが決定したトラックメイカー、TakaryuのデビューEP。同コンテストでトラックメイカーが優勝したのは初という快挙だそうですし、また、若干16歳というその若さも話題となりました。

本作は全7曲入りのEP盤なのですが、うち2曲はイントロとインターリュードなので実質的に5曲入りという作品となります。

で、これが聴いていて非常に心地の良い傑作に仕上がっていました。基本的には心地よくリズミカルなエレクトロトラックがメイン。透明感あふれる音色が特徴的で、非常に熱量の低いサウンドが大きな魅力となっています。ジャケットはあきらかにドナルド・フェイゲンの名盤「ナイトフライ」を意識しているのですが、音色から感じるイメージとしてはその「ナイトフライ」に通じるものも感じさせます。

またうち3曲は歌モノ。「Layer」は綿めぐみというシンガーに、そして「Save」「Software」の2曲はボーカロイド初音ミクを起用しての作品となっています。正直、どちらも若干癖のある「シンガー」なのですが、熱量の低いサウンドであるにも関わらず楽曲の中にうまく溶け込ませています。楽曲もちょっとメロウでAORの雰囲気も感じさせるメロディアスなポップチューン。メロディーメイカーとしての実力も垣間見ることが出来ます。歌とサウンド、メロディーのバランスが非常によくとれており、このバランス感覚の良さにも天性の才能を感じさせます。

この熱量も低いサウンドもそうなのですが、いい意味で老成している感じすらする大人な音を聴かせてくれており、若干16歳という若さが信じられないほど。逆に参加シンガーの選択として綿めぐみや初音ミクを起用するあたりは16歳という若さならでは、といった感じもします。

ロッキン・オン主催のコンテストで優勝したということもあって聴く前はいわゆるロケノン系みたいなイメージもあったのですが楽曲のタイプとしてはむしろミュージックマガジン近辺が好みそうなタイプの音かも。そういう意味でもし「ロケノン系」みたいなイメージで忌避していたとしたら非常にもったいない感じもします。天才という呼び声も高い彼ですが、その評価は間違いないと思います。次にリリースされるであろうフルアルバムも非常に楽しみ。今後の活躍が要注目な新人ミュージシャンです。

評価:★★★★★

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2016年10月16日 (日)

20年目のくるり

Title:くるりの20回転
Musician:くるり

今年、結成20周年を迎えたくるりのオールタイムベストアルバム。先日はくるりの20周年を振り返るインタビュー本を紹介しましたが、そのインタビュー本とあわせて聴きたいベスト盤・・・というよりも昨日のインタビュー本がこのベスト盤とあわせて読みたい、という紹介の方が正しいでしょうか?

さて今回のベストアルバム、デビューシングル「東京」からスタートし、先日EP盤としてリリースされた「琥珀色の街、上海蟹の朝」までリリース順に曲が並んでいます。へヴィーなバンドサウンドのロックあり、エレクトロあり、カントリーあり、クラッシックを取り入れた曲あり、ラップあり、民謡あり、ポップスあり・・・とバラエティー豊かな作風なのはここでわざわざ言及するまでもない話かもしれません。くるりのメインライターである岸田繁のその時々の音楽的興味がダイレクトに反映されているわけですが、日本のミュージシャンでこれほど作風を変えてくるバンドは彼らくらいかもしれません。

それにも関わらずこの3枚のベスト盤通じて作風がバラバラという印象はあまり受けず、むしろくるりとして統一感があるということをこのベスト盤を聴いてあらためて認識させられます。おそらくその大きな理由は岸田繁の書くメロディーライン。派手ではないもののリスナーにしっかりと印象を与えるそのメロディーはこうしてベスト盤であらためて聴くと、その良さが際立って聴こえます。

特にメロディーラインの良さが印象に残るのが、くるりが岸田・佐藤の2人組となった「JUBILEE」あたりからの作品。ここらへんからいい意味で肩の力が抜けたような感じがして、くるりとしてひとつモードが変わったという印象を受けました。

この「モードが変わった」という印象、ここ最近の作品に関してはさらにひとつ、くるりとしてのモードが変わったという印象を受けます。先日紹介したインタビュー本「くるりのこと」の中で「ロックンロール・ハネムーン」から曲の作り方が変わった、ということを語っていました。その「変わった」という意味も具体的に同書には書いていましたが、正直言って音楽的な詳しいことはよくわかりません。ただ聴いた時に耳に入ってくる音の気持ちよさが、ここ最近の曲だとさらに深化したような印象を今回のベスト盤から受けました。

ベスト盤としては3作目。アルバム初収録の曲はあるものの、新曲もなく映像作品の収録もないという意味では構成として若干物足りなさを感じさせるのも事実。そのためか売上としてもベスト盤の割にはさほど奮いませんでした。ただそれでもくるりの歴史を網羅的に把握できるという意味ではファンでもあらためて通して聴いてみたいベスト盤だと思います。昨日紹介したインタビュー本を片手に、くるりの魅力にあらためて触れるには最適なベスト盤です。

評価:★★★★★

くるり 過去の作品
Philharmonic or die
魂のゆくえ
僕の住んでいた街
言葉にならない、笑顔を見せてくれよ
ベスト オブ くるり TOWER OF MUSIC LOVER 2
奇跡 オリジナルサウンドトラック
坩堝の電圧
くるりの一回転
THE PIER
くるりとチオビタ
琥珀色の街、上海蟹の朝


ほかに聴いたアルバム

スカイ イズ ブルー/百々和宏

MO'SOME TONEBENDERのギターボーカルによるソロ第3弾。今回も前作までと同様、モーサムとは異なるシンプルなギターサウンドにポップなメロディーの優しい雰囲気を感じさせるアルバムになっており、メロディーメイカーとしての百々和宏の実力を感じさせます。ただ本作は「死」を感じさせる歌詞が登場するなど、ドキリとさせられる部分も。一筋縄ではいかない「ポップアルバム」となっています。

評価:★★★★★

百々和宏 過去の作品

ゆめとうつつとまぼろしと

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2016年10月15日 (土)

くるりの歴史を語る

本日は最近読んだ音楽関連の本の紹介。今回は、先日発売されたくるりのインタビュー本です。

元ロッキンオン・ジャパンのライターでもある宇野維正氏がくるりの岸田繁と佐藤征史に結成からいままでのくるりの歴史についてロングインタビューを実施した一冊。くるりといえばデビュー以来ほぼアルバム毎にその音楽性を変え続けてきたミュージシャン。さらに言えばバンド結成以来、メンバーの出入りが日本のバンドとしては珍しく、非常に激しいバンドとして知られています。それだけにくるりは今もっともその「歴史」について語ってほしいミュージシャンと言えるかもしれません。

それだけにいろいろと「今だからこそ言える話」を期待してこの本を読んでみたのですが、これが非常におもしろく、かつ興味深い内容に仕上がっていました。それこそ岸田、佐藤の生い立ちからスタートし2人の出会い、くるりの結成、デビューからブレイク、おなじみ「ワンダーフォーゲル」などのヒットやその後の活躍までインタビューでかかなり突っ込んで話を聴いています。特にアルバム制作の背景や狙いまでも岸田繁が語っており、この本を読んだ後、あらためてくるりの過去のアルバムを聴きなおしたくなるような、そんな一冊になっていました。

で、おそらくこれを読む方の多くが気になるであろうくるりのメンバー加入、脱退の理由についてなのですが、これがきちんと期待通り、かなり赤裸々な理由が述べられています。これに関してはあくまでも岸田、佐藤側からの見解であり、脱退した側からの言い分もあるのでしょうが(森信行に関しては別途インタビューを受けていますが)、読んでいてある種の納得感はありました。結局、個々にメンバーが増減した理由はわかるのですが、くるりというバンドが全体としてなぜこれだけメンバーの増減が多いか、という理由は語られていません。ただ、インタビューからうかがえる岸田繁の行動の随所からもうかがえるのですが、良く言えば音楽に対して真摯に取り組んでいる、悪く言えばやはり少々自分勝手できまぐれな部分がある・・・今回のインタビューから読み取れる理由はこんなところでしょうか?

また今回のインタビューの中でちょっと意外にも思ったのは佐久間正英とのエピソード。彼のプロデュースワークって(以前もここに書いたことがあるのですが)少々混線気味のミュージシャンの音の交通整理をしている、という印象を受けていたのですが、岸田曰く「ピンポイントですぐその場で結果が出ることだけを言ってくる」ということ。彼自身も佐久間正英について「今の今まで、本当にすごいなって思ったプロデューサーは、佐久間さん以外はあんまりいない」と語っており、このインタビューからも佐久間正英のすごさを感じられます。

さらに印象的だったのが佐藤征史に関するエピソード。インタビューの中で岸田繁は「佐藤は佐藤で狂ってるから」という言葉を何度か口にしたそうですが、時に「岸田のワンマンバンド」と称されかねないくるりというバンドの中における佐藤征史の位置づけについてもしっかり語っています。まあ、確かに岸田繁という才気あふれる、ある意味「狂った」人物と上手くやっていっている佐藤征史が凡人なわけないよなぁ・・・。音楽的側面からも佐藤征史のすごさを語っており、これも非常に興味深い内容でした。

最初から最後まで興味深いエピソードの連続で、くるりが好きなら必読の1冊。期待した以上に濃い内容でした。

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2016年10月14日 (金)

数多くのミュージシャンへ影響

Title:ソウル・フラワー・ユニオン&ニューエスト・モデル・トリビュート

ここでも何度も紹介している、私個人的に大ファンでもあるミュージシャン、ソウル・フラワー・ユニオン。今年はその前身バンドであるニューエスト・モデルの結成30周年という記念すべき年。先日、そのニューエスト・モデルのベスト盤がリリースされここでも紹介させていただきましたが、本作はその30周年記念企画の第2弾。タイトルそのままソウル・フラワー・ユニオンとニューエスト・モデルの楽曲を彼らを慕うミュージシャンたちがカバーしたトリビュートアルバムです。

参加ミュージシャンはthe 原爆オナニーズや仲井戸麗市、スピッツ、フラワーカンパニーズのようなベテラン勢からくるり、曽我部恵一、MONGOL800、BRAHMANといった中堅どころ、さらには大森靖子、チャラン・ポ・ランタンといった若手までズラリ。ニューエストやソウルフラワーがいかに多くのミュージシャンへ影響を与えたかがわかるトリビュートとなります。

今回のトリビュートアルバム、様々なミュージシャンがニューエスト&ソウルフラワーの曲をカバーしたのですが、それであらためて感じたのは中川敬のボーカリストとしての力でした。正直、中川敬は声色はしゃがれ声で決して「きれいな」声ではありませんし、圧倒的な声量があるわけではありません。ただ渋みのあるそのボーカルはいわゆる「味」があり、泥臭さもあるため土着の音楽を楽曲に取り込んだニューエスト&ソウルフラワーの楽曲にピッタリマッチ。今回のカバーでは特に若手のシンガーに関しては聴いていて違和感を覚えました。

それでもフラワーカンパニーズの「そら~この空はあの空につながっている」や仲井戸麗市の「最前線ララバイ」あたりは中川敬に負けずとも劣らない味わいあるボーカルを聴かせてくれてさすがの感はあります。逆に岸田繁の「潮の路」なんかは選曲についてはさすがといった感じなのですが、ボーカルとしては(くるりの曲では全く感じなかったのですが)ちょっと弱いなぁ・・・とも思ってしまいました。

また基本的にカバーは原曲を重視したカバーが多く、ファンにとっては安心して聴けるカバーが多かった反面、意外性あるようなカバーがなかったのはちょっと残念。意外性がないというのは参加ミュージシャンに関しても言えて、全体的にソウル・フラワー・ユニオン近辺といって想像できそうなメンバーが揃っていて、こんなミュージシャンも参加するのか?といった意外な面子がなかったのはちょっと残念でした。逆に参加ミュージシャンといいカバーの雰囲気といい、意外性がないだけに安心して聴けるという意味では事実なのですが。

そんな中でも個人的におもしろかったのがスピッツの「爆弾じかけ」。これに関しては意外という意味では楽曲ではなくスピッツの演奏。かなりパンキッシュな演奏は今のスピッツのイメージとはかなり異なり少々驚かされます。最初期のスピッツはパンクバンドだったという話は聞くので、ある意味、これは最初期のスピッツらしい曲なのかなぁ、とも思ったりもしました。

またアコーディオンだけで聴かせるチャラン・ポ・ランタンの「風の市」も楽曲やチャラン・ポ・ランタンのイメージそのままながら軽快な雰囲気でとても楽しいカバーに仕上がっていましたし、中田裕二の「青天井のクラウン」も、ジャジーなカバーに仕上げており、中田裕二らしいカバーなのですが、この曲に関してはちょっと原曲とは異なった雰囲気になっており、なかなか聴かせるカバーとなっていました。

そういう感じで、いい側面を強調すれっば安心して聴ける良質なカバーが揃ったアルバム。悪い側面を強調すればちょっと意外性がないカバー、といった感じでしょうか。とはいえファンならばとりあえずチェックしておいて間違いないアルバムだと思います。参加ミュージシャンのファンにももちろんお勧めした1枚でしょう。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

best [and/drop]/androp

ギターロックバンドandropの初となるベストアルバム。全体的にシンプルなギターロックが目立つ。J-POP的な前向きな歌詞やインパクトあるメロも多く、良くも悪くも売れそうな印象が。歌詞はちょっと中2病的な部分がSEKAI NO OWARIと似た系統を感じます。ただし全体的にどうも中途半端な印象も。メロもインパクトがあるのですが、一度聴けば忘れられないようなフレーズは皆無ですし、歌詞もセカオワやあるいはamazarashiほど突き抜けていないためにいまひとつ印象薄。決して悪くはないのですが、ベスト盤として代表曲を聴くとバンドのウイークポイントを強く感じてしまいました。

評価:★★★★

androp 過去の作品
door
relight
one and zero
period
androp

マリアンヌの革命/キノコホテル

レコード会社の移籍があったため約2年ぶり、ちょっと久々となったキノコホテルの新作。歌謡曲テイストが強く、ムーディーでちょっと場末のキャバレー感があふれる楽曲はいかにもキノコホテルといった感じ。キノコホテルというバンドに対してどのようなものが求められているか、よくわかった上での期待に応えた仕事ぶりを感じます。その分、若干マンネリ気味な部分を感じるのですが、キノコホテルの久々の新譜としては十分満足感が味わえるアルバムになっていました。

評価:★★★★

キノコホテル 過去の作品
マリアンヌの憂鬱
マリアンヌの休日
クラダ・シ・キノコ
マリアンヌの恍惚
マリアンヌの誘惑
キノコホテルの逆襲
マリアンヌの呪縛

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2016年10月13日 (木)

見事2週連続1位獲得

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

見事2週連続1位を獲得です。

今週1位は宇多田ヒカル「Fantome」が先週から引き続きの1位獲得となりました。2週目の売上枚数は10万3千枚。こちらも十分1位獲得に値する堂々たる売上だったと思います。8年半というインターバルを経てなお根強い人気を実感する結果となっています。

初登場最高位は2位。東方神起「Two of Us」がランクインです。彼らの既発表曲をある1日を想定したプレイリストとして並べ、リアレンジした企画盤。初動売上2万7千枚。直近作は韓国で発売された「Rise as God」の輸入盤で、こちらの初動1万8千枚(6位)よりはアップ。ただオリジナルアルバムとしての直近作「WITH」の初動23万3千枚(1位)からは大幅にダウンしています。

3位は先週2位EXILE「EXTREME BEST」がワンランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場盤ですがまずは4位にNORAH JONES「DAY BREAKS」が入ってきています。ご存じ日本でも高い人気を誇るアメリカのジャズシンガー。ジャズといってもポップス、ソウル寄りの作風でジャズという枠組みを超えた人気を獲得しています。ただ久々の新作ながらもここまで高い順位だったのにはちょっとビックリ。初動売上1万8千枚も「Little Broken Hearts」の1万1千枚(8位)からアップ。根強い人気を感じさせました。

5位初登場はアニメソング中心に活動を続ける人気女性声優南條愛乃とミュージシャン八木沼悟志のユニットfripSide「infinite synthesis 3」が入ってきています。初動売上1万8千枚は前作「infinite synthesis 2」の1万9千枚(3位)から若干のダウン。

7位には女性アイドルグループBiSH「KiLLER BiSH」がランクイン。アルバムでは初のベスト10入り。初動売上1万3千枚は前作「FAKE METAL JACKET」の8千枚(13位)よりアップ。

8位にはアメリカの人気パンクバンドGREEN DAY「Revolution Radio」が入ってきました。「¡Uno!」「¡Dos!」「¡Tré!」と3作連続でリリースされたアルバムから約4年ぶりとなる新譜。初動売上1万2千枚は前作「¡Tré!」の1万9千枚(10位)よりダウンしています。ただし本作は全世界リリースとあわせて金曜日リリースとなる作品。今回の初動売上大幅減はその影響も多いと思われます。

初登場最後は9位にX4「4 MY BABY」がランクイン。韓流・・・ではなく、松下優也率いる日本人のアイドルグループ。初動売上1万1千枚は前作「Funk,Dunk,Punk」の8千枚(10位)よりアップしています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた明日!

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2016年10月12日 (水)

ハイスタの売り方は「パンク」なのか?

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

突然のリリースが大きな話題となりました。

16年ぶりの新作となるHi-STANDARD「Another Starting Line」が今週1位を獲得。今回、大きな話題となったのがその売り方で、事前告知一切なし。発売日(の前日)に突然CDショップにCDが並ぶというサプライズを演出しました。ちなみに配信はおろかAmazonなどの通信販売もなし。「CDショップに足を運んでCDを買ってそれをプレイヤーで聴くワクワク感」を意図した演出と思われ、配信時代に逆行するその売り方に彼ららしいと大絶賛で迎え入れられました。オリコンでももちろん1位を獲得。その初動売上で13万5千枚を記録し、16年前の前作「Love Is A Battlefield」の初動14万7千枚(3位、ただしオリコンではアルバム扱い)からほとんど変わらないという結果に、多くのリスナーがハイスタを待ち望んでいたことが伺えます。

・・・・・・が、個人的には今回のハイスタの売り方に対する大絶賛にはもやもや感をぬぐえません。

だってそもそも「CDショップに足を運んでもらおう」という発想自体が古臭いおやじ世代的な価値観。ましてや「CDで買ってもらおう」というスタンス自体、CDを制作し流通させCDショップで発売するという旧態依然とした既存のシステムを守ろうとするスタンス。既存の価値観、システムをぶっとばそうとするパンクのスタンスからはむしろ真逆のように思います。これってやり方は異なれど握手券をつけてファンに大量にCDを買わせようとするアイドルの商法と根っこの部分の考え方は一緒なんじゃない?

例えばここのサイトでも以前紹介したことがあるアメリカのラッパーでChance The Rapperというミュージシャンがいるのですが、彼などはいままでリリースした曲はすべて無料での配信。それにも関わらず高い人気と評価をあつめ、ついには有料で販売した作品のみというグラミー賞の規定を変えさせるのではないか、とまで噂されるほど。ある意味、こちらのやり方の方がよっぽど「パンク」なようにも思います。今回の売り方について「配信時代のアンチテーゼ」という評価も見受けられたのですが、その「アンチテーゼ」の結果、「CDで聴く」という昔のスタイルに戻るのって、パンクどころかかなり保守的な考え方だと思うのですが・・・。

2位には先週9位にランクインしていた星野源「恋」がCD発売にあわせて一気にランクアップしてベスト3入り。CD売上・ダウンロード数・ストリーミング数(以下「実売数」)及びPCによるCD読取数で2位、ラジオオンエア、Twitterつぶやき数で1位、You Tube再生回数でも5位と万遍なく上位にランクインしています。ちなみにオリコンでも初動売上10万2千枚で2位初登場。前作「SUN」の5万1千枚(2位)からも倍増という結果に。間違いなく今、もっとも勢いのあるミュージシャンと言えるでしょう。

3位はまだまだ強いRADWIMPS「前前前世」。先週の2位からワンランクダウンながらもベスト3をキープ。ただ残念ながら「なんでもないや」「スパークル」は今週、ベスト10から落ちてしまい、RADWIMPSの複数枚同時ランクインの記録も途切れてしまいました。

続いて4位以下の初登場です。まず4位にも今話題の曲がランクイン。自称千葉県出身のシンガーソングライターピコ太郎「ペンパイナッポーアッポーペン」が配信オンリーながらもこの位置にランクイン。楽曲としては1分程度のネタ動画で、元底ぬけAIR-LINEの古坂大魔王演じるピコ太郎によるネタ。ただその中毒性ある歌詞が話題となり、あのジャスティン・ビーバーも絶賛。1週間のYou Tube再生回数が世界一を記録するなど、大ブレイクしています。チャート的には実売数は31位ながらもYou Tube再生回数ではもちろん1位を記録。Twitterつぶやき数でも3位を記録しており、初登場で見事ベスト10に食い込んできました。

続く5位にはSEKAI NO OWARI「Hey Ho」がCDリリースにあわせて先週の26位からランクアップしベスト10入りしています。彼ららしいストリングスやホーンを入れてファンタジックに仕上げたポップナンバー。実売数で4位を記録しているほか、ラジオオンエア数及びPCによるCD読取数でも3位を記録しています。オリコンは初動5万9千枚で3位初登場。前作「SOS」の5万7千枚(1位)よりアップ。ただし前作は金曜日発売となっており集計期間が短く初動売上枚数を落としていました。

6位初登場はE-girlsの藤井萩花・藤井夏恋の姉妹ユニットShuuKaRen「UNIVERSE」が先週の37位からアップしてベスト10入り。ちょっと90年代っぽさも感じるEDMチューン。実売数では3位、PCによるCD読取数で7位、Twitterつぶやき数で9位を記録していますがラジオオンエア数は23位と伸び悩みました。なおオリコンでは初動売上5万5千枚で初登場4位を記録しています。

7位にはAAA「涙のない世界」が先週の14位からランクアップしこの位置。実売数は5位、Twitterつぶやき数6位の一方、ラジオオンエア数34位、PCによるCD読取数は73位という結果に。iTunesのランキングを見る限り、配信でもそこそこ売れているようですが、全9種リリースによる複数枚買いの影響もありそう。オリコンでは初動売上4万7千枚で5位初登場。前作「NEW」の3万5千枚(3位)からアップ。

最後9位には男性アイドルグループMAG!C☆PRINCE「Over The Rainbow」が初登場でランクイン。実売数6位以外はすべてチャート圏外という結果に。CDの発売形態は7種同時リリースだったようですが、複数枚買いの影響も大きそう。オリコンでは初動売上4万枚で6位初登場。前作「Spin the Sky」の3万8千枚(2位)からは微増。

今週のHot100は以上。明日はアルバムチャート!

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2016年10月11日 (火)

大人なエロス

Title:LUNATIQUE
Musician:石野卓球

電気グルーヴとしても今年はドキュメンタリー映画の公開が話題となりましたが、石野卓球ソロとしても久々となる新作がリリースされました。前作「WIRE TRAX 1999-2012」がWIREコンピレーションに収録されていたソロ曲を集めた作品だったので純然たるソロ作としては2010年の「CRUISE」以来6年ぶり。さらに前作「CRUISE」はミニアルバムの形態でしたのでフルアルバムとしては「TITLE#2+#3」以来、実に12年ぶりとなる新作となりました。

今回のアルバムでまず目立つのはそのジャケット写真。成人男子諸君にとってはどこかで見たことがあるような、という印象を受けるかもしれませんが、エロ漫画雑誌「漫画エロトピア」の表紙をピックアップしたもの。宇川直宏により今風の修正はほどこされているのですが、もともとは1978年に発刊された雑誌から拾ってきたそうで、よくそんなの見つけたな・・・。アートワークがやたらめったら凝っている電気グルーヴと比べると石野卓球のソロ作のジャケットは比較的シンプルという印象を受けるのですが、今回はこのジャケットに強いインパクトがあり、それだけにアルバムへの力の入れようも感じます。

楽曲は音数を絞ったシンプルな、熱量の低いテクノ。エッジの効いたリズムを聴かせる「Fana-Tekk」やトライバルな雰囲気を加えた「Amazones」など1曲1曲が違った顔をのぞかえるバラエティー富んだ作風ながらもどの曲にもしっかりメロディーラインが流れており、ポップにまとめあげています。リスナーの直感に反しないようなサウンドを聴かせる曲が並んでおり、いい意味でのわかりやすさ、聴きやすさを持ったアルバムになっています。

また今回のアルバム、このジャケットからもわかる通り「性」や「エロス」がテーマとなっています。もっとも最初から「エロス」をテーマとして楽曲をつくった訳ではなく以前からつくっていた100曲以上の曲のなかからテーマに沿った曲をピックアップしたとか。それだけに曲によって作成時期は異なるそうですが、それでもアルバム全体しっかりと統一感があるのはテーマに沿った選曲であるということもさることながらしっかりと石野卓球の個性が楽曲に反映されているからでしょう。

そんな「エロス」がテーマになった作品なのですが、そのエロスはガツガツとした雰囲気ではなくほのかなエロス。「Die Boten Vom Mond」とかタイトルチューンにもなった「Lunatique」などは単調な表現になるのですが、セクシーさやムーディーな雰囲気がいかにも「エロス」といった感じなのですが、アルバム全体にはむしろ上品さすら感じます。このほどよいエロティックさはまさに大人といっていいかもしれません。

電気グルーヴとはまた違った石野卓球の魅力が楽しめる傑作。ただその一方、そのポップな作風といい「エロス」というテーマ性といい、電気グルーヴからも地続きであることを感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★★

石野卓球 過去の作品
CRUISE
WIRE TRAX 1999-2012


ほかに聴いたアルバム

Dr.Izzy/UNISON SQUARE GARDEN

彼ら6枚目となるオリジナルアルバム。裏打ちのリズムを軽快に聴かせる「BUSTER DICE MISERY」やパンクロック風の「Cheap Cheap Endroll」などそれなりのバリエーションを聴かせつつ、基本的にいつも通りのポップなメロディーを前面に押し出したポップスロックを展開しています。ルーツレスなJ-POP路線のメロは相変わらずですが、全体的にはポップスバンドとしてのある種の余裕も出てきたような印象も。

評価:★★★★

UNISON SQUARE GARDEN 過去の作品
CIDER ROAD
Catcher In The Sky
DUGOUT ACCIDENT

Vacantly/toddle

元NUMBER GIRLの田渕ひさ子嬢を中心に結成された3ピースロックバンドの新作。基本的にはギターロックバンドなのですが、彼女と小林愛のツインボーカルで非常に美しいコーラスラインやボーカルを聴かせてくれるポップス色の強いギターロックが並んでいます。透き通ったような美しさを感じる世界観が魅力的なアルバムです。

評価:★★★★

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2016年10月10日 (月)

唯一のライブ盤が初のCD化

Title:LIVE AT THE HOLLYWOOD BOWL
Musician:The Beatles

ここ最近、秋口になると何らかの形で新たなアイテムをリリースしているThe Beatles。今年はドキュメンタリー映画「ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK-The Touring Years」の公開もあったのですが、これにあわせる形でリリースされたのが本作。もともと1977年にリリースされたThe Beatles唯一の公式ライブ盤をCD化してもの。もともとから公式盤であったものの、なぜかいままでCD化されておらず、内容的にも非常に気になるものでしたが、当初のリリースから40年近くが経過してようやくCD化となりました。

本作は1964年8月23日と30日にロサンゼルスのハリウッド・ボウルで行われたライブの模様を収録したもの。もともとは録音状態があまりにも悪いためリリースを見合わせたようですが、リミックスなどをほどこして1977年にようやく発売に至ったそうです。

今回、CD化によりはじめてこのライブアルバムを聴いたのですが、まず目立つのはすさまじいまでの観客の悲鳴。楽曲がはじまっても全く衰えることはなく、このアルバム全編にわたって観客の悲鳴が流れ続けています。そりゃあ、これだけの悲鳴の中じゃあ、なかなか上手く録音できないよな。ただ本作に関しては悲鳴が流れる中でもしっかりThe Beatlesの演奏は収録されており、あの時代によくこれだけ録音ができたなぁ、と感心してしまいます。

The Beatlesといえばご存じの通り、その活動の後期にはライブをやめ、もっぱらレコーディングミュージシャンとなりましたが、その理由のひとつとして当時のPAでは音の出力がいまひとつでライブの最中、自らの音が観客の悲鳴にかきけされ、自分たちも演奏を聴くことができないほどだった、ということがあるそうです。実際にこのライブでも本人たちも自分たちの演奏がほとんど聴こえない状況の中で演奏していたとか・・・今では信じられないようなエピソードです。

ただ、そんな最悪な状況にも関わらずこのライブ盤では非常に迫力のある演奏を聴かせてくれます。今の耳で聴いても骨太さを感じる迫力のある演奏は、彼らが正真正銘のロックバンドであるという当たり前の事実をあらためて認識させられます。というよりも自分たちの演奏がほとんど聴こえない状況でありながらも、これほどしっかりと息のあった演奏を聴くことができるという時点で驚きです。

メンバー全員素晴らしい演奏を繰り広げているのですが、その中でも耳を惹いたのが「Dizzy Miss Lizzy」によるリンゴ・スターのドラミング。実に力強い演奏を聴かせてくれています。正直、後半に関してはさすがにこの環境の中だからでしょうか、若干だれている印象も否めないのですが、このライブ盤で、ライブミュージシャンとしてのThe Beatlesの実力がはっきりとわかる内容になっていました。

唯一の公式ライブ盤の初のCD化・・・なのに思ったほど騒がれず、チャート的にも3位にとどまったのはちょっと意外な感じもしたのですが・・・The Beatlesのアルバムとしては間違いなく聴くべき1枚だと思います。音楽的な側面で高い評価を受ける彼らですが、そのライブも一流だったということを実感できるアルバムです。

評価:★★★★★

The Beatles 過去の作品
LOVE
On Air~Live At The BBC Volume2
1+ (邦題 ザ・ビートルズ 1+)


ほかに聴いたアルバム

Burning Bridges/BON JOVI

ギタリスト、リッチー・サンボラが突然の脱退。3人組となったBON JOVIによる新作。楽曲としてはかなり泥臭い雰囲気。ハードロック色は強いのですが、いままでのBON JOVIのイメージであるスケール感はあまり感じない作品。わかりやすいフックの効いたメロは少な目ですが、その分、渋みの増したアルバムになっています。

評価:★★★★

BON JOVI 過去の作品
Lost Highway
THE CIRCLE
GREATEST HITS-THE ULTIMATE COLLECTION
What About Now

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2016年10月 9日 (日)

いつも通り

Title:Here
Musician:TEENAGE FANCLUB

イギリス・スコットランドはグラスゴー出身のギターロックバンドTEENAGE FANCLUBの新作。ここ最近、JONNYやThe New MendicantsなどNorman Blakeのサイドプロジェクトが目立った彼ら。まあマイペースな活動が続いていますが、そんな中、久々6年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

TEENAGE FANCLUBといえばその美しいメロディーラインを聴かせる優しいギターロックが特徴的なバンド。以前からそのスタイルに大きな変化はなく、またそんな美メロを聴かせるゆえに大きな変化がなくても聴いていて飽きることがありません。そして今回のアルバムに関してもいい意味で変わらないメロディーラインを聴かせてくれる作品になっていました。

ご存じの通り、TEENAGE FANCLUBはメンバー4人のうちNorman Blake、Raymond McGinley、Gerard Loveの3名がそれぞれライターとして作曲を手掛け、個々その音楽性の微妙な違いがアルバムにバラエティーを加えています。今回のアルバムでもメンバーそれぞれが作曲を手掛けていますが、おそらく一番TFCらしい美メロを聴かせてくれるのがNoramn Blake。今回のアルバムでも「I'm In Love」「The Darkest Part Of The Night」など、ちょっと抑え気味のメロディーラインはとても優しさと切なさを感じられ、とても胸に響くものがあります。

一方、Raymond McGinleyは「I Was Beautiful When I Was Alive」「Steady State」などが楽曲からはちょっと憂いを帯びた印象を受けるメロディーが印象的。Gerard Loveはその中間といったイメージなのですが、今回のアルバムで言えば「I Have Nothing More To Say」などは美しいハーモニーで聴いていて切なくなるような、実に魅力的なメロディーを聴かせてくれます。

そんな訳で今回のアルバムに関してもいわば「いつも通り」ではあるのですが、いい意味でいつも通りの変わらぬ魅力がつまったアルバムになっています。今回もまたTEENAGE FANCLUBの魅力を存分に感じることが出来る傑作でした。

評価:★★★★★

TEENAGE FANCLUB 過去の作品
Shadows

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2016年10月 8日 (土)

デビュー35年!

Title:香港的士-Hong Kong Taxi-
Musician:クレイジーケンバンド

デビュー以来、ほぼ1年に1枚のペースでアルバムリリースを続けるクレイジーケンバンド。今年もしっかりとアルバムをリリースしてきました。ただし今年リリースしたアルバムは純然たるニューアルバムではありません。今年は1981年に横山剣がクールスRCでデビューして35周年という記念すべき年。その35周年を記念して、彼が他のシンガーたちに提供したのセルフカバー作品が本作。タイトル「香港的士-Hong Kong Taxi-」からして94年に女性シンガー神崎まきに提供した楽曲だそうです。(余談だけど神崎まきって「GOOD DAY I・N・G」の人だよね。懐かしい~!ただ90年代ガールズポップシンガーのアイドル的な明るいイメージがあって横山剣のイメージとは合わないんですが・・・意外だ・・・)

他にもTUBEに提供した「タイムトンネル」、SMAPに提供した「退屈な日曜日」、和田アキ子に提供した「女ともだち」などもセルフカバー。さらにクレイジーケンバンドとしての新作が収録されているほか、終盤にはクレイジーケンバンドの前身、ダックテイルズ時代の曲や、さらにクールス時代の曲も収録されています。

さすがにこれだけ様々なシンガーへ提供した曲が並んでいるだけあってアルバムとしては非常にバラエティーに富んだ内容になっています。例えば野宮真貴とのデゥオになる「T字路」は軽快なレビュー風ですし、「オヤコのマーチ」は子ども向けのポップス。「アルゼンチン逃避行」はラテン調で哀愁たっぷりに聴かせますし、ダックテイルズ時代の楽曲「PLEASE」はドゥーワップを聴かせるオールドスタイルのアメリカンポップ。その内容は実にバラエティーに富んでいます。

ただ、これだけバリエーションあるが曲調があるにも関わらずその一方でアルバム全体にはちゃんと統一性が感じられます。もちろん横山剣がボーカルを取って、クレイジーケンバンドとして演奏しているからということもあるのでしょうが、なによりも個々の楽曲に横山剣の色がしっかりとついているから、というのが大きいのではないでしょうか。横山剣のライターとしての才能をあらためて感じさせます。

例えばその典型的な例が「欧陽菲菲」。あのグループ魂に提供した楽曲で、歌詞に人名を入れてくるあたり、完全なグループ魂の「ネタ」なのですが、クレイジーケンバンドとして歌うとしっかりクレイジーケンバンドの曲として聴かせてくれ、グループ魂的な「ネタ」な部分は聴いていてほとんど感じられません。

他の人に提供した楽曲だからということもあるのでしょうか、いつものクレイジーケンバンドの楽曲よりも、よりポップに感じられるアルバムになっていました。もっとも、楽曲全体にはいつもの彼ららしいエキゾチックなアジアンテイストも感じられ、しっかりとクレイジーケンバンドのアルバムとして成り立っているのは間違いありません。誰に提供したとしても横山剣の曲は横山剣の曲なんだな、という当たり前の事実を再認識させられる1枚でした。

評価:★★★★★

クレイジーケンバンド 過去の作品
ZERO
ガール!ガール!ガール!
CRAZY KEN BAND BEST 鶴
CRAZY KEN BAND BEST 亀

MINT CONDITION
Single Collection/P-VINE YEARS
ITALIAN GARDEN
FLYING SAUCER
フリー・ソウル・クレイジー・ケン・バンド
Spark Plug
もうすっかりあれなんだよね


ほかに聴いたアルバム

味の向こう側~入り口~/DJみそしるとMCごはん

毎回、「食」をテーマにユーモラスな脱力ラップを聴かせてくれるDJみそしるとMCごはん。今回は「あなたや私と味の関係」がテーマ。ユーモアセンスも感じられる軽い感じの脱力ラップが楽しめます。「食いモンドウ[苦手編]」では光浦靖子と森本レオという豪華ゲストが参加。ちょっとした対談形式になっていてなかなかユニーク。ラップが苦手でも間違いなく楽しめるユーモラスなポップチューンが並んでいました。

評価:★★★★

DJみそしるとMCごはん 過去の作品
ジャスタジスイ

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2016年10月 7日 (金)

生存者のためのアルバム

Title:アダンバレエ
Musician:Cocco

約1年10ヶ月ぶりとなるCoccoの新作。前作ではEDMの曲にも挑戦しリスナーを驚かせた彼女でしたが今回の作品は比較的彼女らしいシンプルな構成になっており、あくまでも彼女の歌を聴かせる内容に。そしてその内容は「Coccoの曲を聴いたなぁ」という満足感のあるものになっていました。

基本的にシンプルなギターロックをバックにCoccoが歌い上げるというスタイルはいままでと一緒。ミュージカル風の「椿姫」やヨーロッパのトラッド風の「Rosheen」なんて曲もあったり、「常情嬢」なんかは「パヤパヤ」なんていう昔の昭和歌謡風なコーラスがユニークなハードロック風ナンバーだったりとそれなりのバリエーションも楽しめますが、なによりもCoccoの歌が印象に残る作品になっています。

今回、CDの帯には「今を生きるすべての生存者<サバイバー>に捧げます。」というメッセージが書かれていますが、今回のアルバムは「生存者<サバイバー>による生存者<サバイバー>のためのアルバム」がテーマだとか。Coccoといえばデビュー以来、自らの命を削り取って歌を紡いでいくようなスタイルを続けており、いつか消えてしまうのではないかという危うさを感じていました。ただ、それを乗り越えた今、「生存者」としてあらたに自らを見つめるアルバムというのが本作、ということなのでしょうか。

実際、今回のアルバムはCoccoらしい現実に対する悲し気な視点を感じつつも、一方では全体的に明るさも感じます。特に最後を締めくくる「ひばり」では

「どうして世界を
諦められよう?
あなたが歌う
歌が聞こえるわ」

(「ひばり」より 作詞 Cocco)

と、非常に明るい未来を見つめたような歌詞で締めくくられますし、終わった恋について歌った「有終の美」でも

「いつだって きっと
ちゃんと 笑ってるよ
私は 大丈夫」

(「有終の美」より 作詞 Cocco)

と前向きに締めくくっています。そんな前向きな感情を歌っているだけにデビュー当初の彼女のような一度聴いたら忘れられないようなどぎついインパクト満点の歌詞はありません。ただ、「生存者」となった彼女は、そんなどぎついフレーズをわざわざ歌う必要が今となってはなくなったのではないでしょうか。

ただインパクトあるフレーズが減ったのは事実ですが、力強いCoccoの歌声に聴きはじめると知らず知らずと惹きつけられる傑作なのは間違いありません。Coccoにしか作れない、彼女の個性がしっかりとつまったアルバムでした。安定感とある種の貫録すら感じられるアルバム。Coccoを聴いた、という満足感を味わえるのと同時に、初期のCoccoでは感じられなかった未来に対する明るさも感じられるそんな1枚でした。

評価:★★★★★

Cocco 過去の作品
エメラルド
ザ・ベスト盤
パ・ド・プレ
プランC


ほかに聴いたアルバム

ANTITHESE/MY FIRST STORY

最近、人気上昇中のロックバンド。本作では初となるベスト10ヒットも記録。ボーカルHiroはONE OK ROCKのTakaの弟ということでも話題に。楽曲はダイナミックなロックナンバー。タイプ的にはONE OK ROCKに似ている感じが。1曲1曲はカッコいいけども似たような曲ばかりで正直、最後の方は飽きてきた・・・。ONE OK ROCKの亜流的なイメージも強く、もうちょっと楽曲のバリエーションとバンドとしての個性が欲しいところ。

評価:★★★

lovefilm/lovefilm

活動休止中のthe telephonesの石毛輝と岡本伸明が、The PatやPINK POLITICSで活躍する高橋昌志とさらにモデルで女優の江夏詩織を迎えて結成した新バンド。the telephonesの後釜的バンドながらもディスコ色は薄く、むしろポップスバンドといった感じ。ポップなメロに男女デュオというスタイルで、どこかN'夙川ボーイズと似たような感じのするバンド。そういう意味では嫌いではないのですが、インパクトという面ではN'夙川ボーイズほどのインパクトはなく、若干二番煎じというイメージも・・・。

評価:★★★★

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2016年10月 6日 (木)

約8年半ぶりの新譜が1位

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

今週のアルバムチャートの目玉はなんといっても1位でしょう。宇多田ヒカルの約8年半ぶりとなるニューアルバム「Fantome」が見事1位を獲得しています。

2010年に「人間活動に専念する」と宣言。その後、配信でのシングルリリースなど限定的な新曲発表はあったものの、純然たるオリジナルアルバムとしては約8年半ぶりのリリースとなりました。

初動売上は25万2千枚。オリジナルアルバムとしての前作「HEAT STATION」の初動48万枚からは大幅ダウン。8年半というインターバル、そしてこの間のCDをめぐる環境の変化を考えると健闘の結果ではないでしょうか。ちなみに直近作としては2014年3月に「First Love -15th Anniversary Edition-」をリリースしており初動1万枚(10位)を記録しています。

ちなみに2ndアルバム「Distance」リリース時にチャート上、デッドヒートを繰り広げた浜崎あゆみの最新作「M(A)DE IN JAPAN」は初動3万枚・・・この2人がチャート上、熾烈な1位争いをしていた時代から隔世の感がありますね・・・。また、国民的人気を誇るミュージシャンとしてはサザンオールスターズの直近作「葡萄」は初動30万枚、Mr.Childrenの直近作「REFLECTION」は初動35万5千枚、B'zの「EPIC DAY」は20万9千枚。一時期の勢いから考えるとちょっと寂しい感じもしますが・・・それでも堂々たる売上とは思います。

2位初登場はEXILEのベスト盤「EXTREME BEST」が獲得。2014年にベスト盤「EXILE BEST HITS -LOVE SIDE / SOUL SIDE-」をリリースしていますがそれに続くベスト盤。デビューからちょうど15年目となる9月27日にリリースしています。初動売上は17万8千枚。直近のオリジナルアルバム「19 -Road to AMAZING WORLD-」の20万4千枚(1位)よりダウン。またベスト盤として前作「EXILE BEST HITS -LOVE SIDE / SOUL SIDE-」の38万2千枚(1位)よりも大幅ダウンしています。

3位にはワルキューレ「Walkure Trap!」が初登場。アニメ「マクロスΔ」に登場する音楽ユニットによるアルバム。7月にリリースされた「Walkure Attack!」に続くアルバムで、初動売上5万5千枚は前作の7万7千枚(2位)よりダウン。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位。BUCK-TICK「アトム 未来派No.9」がランクインです。ご存じ30年以上のキャリアを誇るロックバンドによる2年ぶりの新作。初動売上は1万7千枚で前作「或いはアナーキー」の1万8千枚(4位)から若干ダウンしています。

6位には人気俳優桐谷健太「香音-KANON-」がランクイン。これが初のアルバムとなる彼。いままで配信でのシングルリリースや河野勇作(桐谷健太)×THE イナズマ戦隊名義のシングル「喜びの歌」のリリースはありましたが、ベスト10入りはこれが初。初動売上は1万3千枚を記録しています。

9位初登場はマオ from SID「Maison de M」。ミュージシャン名義どおり、ヴィジュアル系バンドシドのボーカリストによるソロデビューアルバムとなります。初動売上は9千枚。6月にはシングル「月」をリリースしていましたが、こちらの初動売上2万1千枚(4位)から大幅ダウン。またシドとしての直近作「SID ALL SINGLES BEST」の1万3千枚(6位)からもダウンしています。

最後10位には「30周年記念盤 ゼルダの伝説 ゲーム音楽集」が入ってきています。ご存じ大人気のアクションアドベンチャー「ゼルダの伝説」シリーズ。第1作目「ゼルダの伝説」が発売されてから今年で30年となるのですが、それを記念して第1作目から最新作「ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス HD」の名曲を厳選したゲーム音楽集がリリースされました。初動売上9千枚で見事ベスト10入り。どのあたりの世代が主な購入層なのか気になるところなのですが、私と同年代くらい、小学生のころ、第1作目をプレイしたようなアラフォー世代も多く買っているんだろうなぁ・・・。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2016年10月 5日 (水)

まだまだ強い「君の名は。」

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週、ついに1位を獲得したRADWIMPS「前前前世」。その勢いはまだまだ止まりません。今週は残念ながら2位にランクダウンしましたが、You Tube再生回数では1位を獲得。CD販売・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)では3位、ラジオオンエア数では4位と上位をキープ。まだまだ勢いは続いています。さらに「なんでもないや」が7位から4位にランクアップ、「スパークル」も先週から変わらず8位キープと、今週も映画「君の名は。」人気を反映して、RADWIMPSが歌う主題歌がベスト10圏内に3曲もランクインしています。

さて、そんな中1位を獲得したのはK-POPのアイドルグループ、iKON「DUMB&DUMBER」でした。実売数で1位を獲得したほか、Twitterつぶやき数で8位を獲得。ただし、PCによるCD読取数は36位と、販売形態が11種類にも及んでおり、ファンによる複数枚買いの影響が大きい模様。ちなみにオリコンでも初動売上4万8千枚で1位を獲得しています。

3位には米津玄師「LOSER」がランクイン。初音ミクを使用してニコニコ動画サイトに楽曲をアップした、いわゆるボカロPとして注目を浴びた彼ですが、いまやすっかり「ボカロP」としての過去を忘れさせるような活躍を繰り広げています。先週の57位からCDリリースにあわせて一気にランクアップし、ランクイン3週目にして初のベスト10ヒットとなりました。ちなみにオリコンでは初動売上4万7千枚で2位初登場。前作「アンビリーバーズ」の2万6千枚(4位)から大幅増になっています。

さて、ちょっと今週のチャートで気になったのですが、この1位iKONと米津玄師の順位。実売数でも2位を獲得している他、ラジオオンエア数3位、PCによるCD読取数3位、Twitterつぶやき数9位と軒並み上位にランクイン。全体的には実売数以外、まったく上位に食い込んでいないiKONよりもよっぽどヒットしているようにも見受けられます。じゃあ実売数で差があるのか、というとオリコンの結果の通り、差は1千枚未満という僅差。正直、今回のHot100の順位はかなり疑問です。オリコンよりヒットの実態を把握した総合チャートということでここではHot100を取り上げていますが、特にヒットの「規模」としての指数のようなものは公表していませんし、実売数やラジオオンエア数など様々な媒体の順位をどう混合させているのかも不明。そういう意味ではある意味、実売数を公表しているオリコン以上に不明瞭といえますし、日本においてオリコンを上回れないのはそういうところに不透明さ、使いづらさがあるからだと思うのですが・・・正直、即効で改善してほしいものです。

続いて4位以下の初登場曲です。7位にはハロプロ系女性アイドルグループカントリー・ガールズ「どーだっていいの」がランクイン。オールドスタイルのロックンロール風のナンバー。実売数こそ4位ですが、ラジオオンエア数47位、PCによるCD読取数60位、Twitterつぶやき数50位と軒並み下位にランク。発売形態は6種リリースなので、あきらかに複数枚買いが影響していると思われます。オリコンでは初動2万5千枚で4位初登場。前作「ブギウギLOVE」の4万1千枚(2位)より大幅ダウンしています。

初登場はもう1枚。10位に清水翔太「My Boo」がランクインです。10月5日にCD発売予定のシングルからの先行配信。実売数は18位でしたが、Twitterつぶやき数7位が順位を引き上げてベスト10入りしてきた模様です。

ただこちらも順位に疑問がある点があり、例えば今週12位のUNDEAD「DESTRUCTION ROAD」などは実売数7位、PCによるCD読取数5位とあきらかに清水翔太より上。残念ながらそれ以外のランキングがいずれも圏外という影響も大きいのでしょうが、それをいうなら清水翔太もTwitterつぶやき数以外はYou Tube再生回数が39位で、それ以外は圏外。正直、普通に考えるとUNDEADの方が上に来るような感じがします。

どうもなんとなくなのですが、今のHot100、Twitterつぶやき数を過度に重視しているような印象が否めません。上でも書いたiKONと米津玄師の順位もTwitterつぶやき数の順位が決定的な要素になっているような感もします。ただこのTwitterつぶやき数は単なる「ミュージシャンと楽曲の両方をツイートした数」だそうで、ヒットへの結びつきとしてはそんなに大きな要素じゃないように思うんですよね・・・。上にも書いた通り、即効の改善をお願いしたいところです。

いろいろと納得のいかない今週のHot100は以上。アルバムチャートはまた明日に。

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2016年10月 4日 (火)

「歌」がメインなのは変わらず

Title:Blonde
Musician:Frank Ocean

Frank

前作「Channel Orange」が大ヒットを記録。アルバムの内容も非常に高い評価を受けグラミー賞も受賞し話題となったFrank Ocean。その4年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。8月にはApple Music限定でビデオアルバム「Endless」がリリースされ、その2日後に突然配信でリリースされた本作。突然のリリースも多くの音楽ファンを驚かせています。

前作も基本的にシンプルに「歌」を聴かせるアルバムだったのですが、今回のアルバムもその路線が続きます。アルバムの全編に流れるのはあくまでも「歌」がメイン。エレクトロサウンドによるアレンジが軸となっていますが、中心に据えられているのは歌ということは本作も変わりありません。

アルバム1曲目「Nikes」はいきなりエフェクトのかかったボーカルからスタート。前作の内容から本作でも「歌」を期待していたらちょっと出鼻をくじかれた感もあります。しかし続く「Ivy」はメロディアスなポップ色強いナンバーを聴かせてくれますし、3曲目「Pink+White」はバックに小鳥のさえずりも聴こえてくる爽やかなフィリーソウルナンバー。彼のボーカルが実に心地よく響いてきます。

中盤は「Nights」のような硬度の強いエレクトロナンバーや「Close to You」のような今風の複雑なリズムを強調したナンバーなどが並びつつも、こちらもしっかりと「歌」を聴かせてくれます。

特に彼の歌の美しさに聴き入ってしまうのが終盤。アコギのシンプルなアレンジで静かに聴かせる「White Ferrari」はコーラスラインと共に聴き入ってしまう美しいボーカルを聴かせるソウルナンバー。「Godspeed」はゴスペル風なナンバー。こちらもオルガン風な音をバックに美しいボーカルを聴かせてくれます。

今回、基本的に配信オンリーでのリリースのため情報は少なめ。ケンドリック・ラマーやカニエ・ウエストなども参加しているようなのですが、どのような形での参加なのかは聴いただけだと正直わかりません。さらになんと日本人ラッパーのKOHHも話題・・・なのですが、こちらは同日に配布された無料雑誌「Boys Don't Cry」にのみついてくるCD版でのみの参加だとか。このCD版、入手はかなり困難なようで非常に残念に感じます。

繰り返しになりますがアルバム全体としてはソウルフレーバーの強いストレートなポップナンバー。エレクトロサウンドやHIP HOPなど今風の要素も強い反面、ベースに流れているのはソウルだったりゴスペルだったり昔からのブラックミュージックの要素を強く感じます。サウンドもボーカルもメロディーも実に美しく、終始聴き入ってしまう作品。前作が気に入った方ならば間違いなく気に入る傑作だったと思います。基本、配信オンリーのため、歌詞の内容がいまひとつわからないのが非常に残念なのですが・・・。前作に引き続き、文句なしのポップアルバムです。

評価:★★★★★

FRANK OCEAN 過去の作品
channel ORANGE


ほかに聴いたアルバム

STORIES/Avicii

今年8月のイビザ島でのライブを最後にライブ活動を休止したEDMミュージシャンAviciiの2枚目となるアルバム。EDMというイメージとは異なりアルバムはメロディアスなエレクトロポップがメイン。ロック、R&B、カントリーなど作風も多彩で屋内で聴かせるアルバムになっています。前作「TRUE」では後半、ダンスチューンが並んでいましたが、本作では全編聴かせるポップな楽曲が並んでいます。ライブは休止になってのですが、音源は今後もリリースしていくのでしょうか?それならポップな作風もいいですが、バキバキなダンストラックも聴きたいところですが。

評価:★★★★

AVICII 過去の作品
True
True:Avicii By Avicii

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2016年10月 3日 (月)

阿波踊りの魅力

Title:ぞめき六 徳島阿波踊り 粋

久保田真琴プロデュースの下、阿波踊りを「音楽」として捉え録音を続けている「ぞめき」シリーズ。2010年からはじめて6年目、これがタイトル通り6作目のアルバムとなります。今回は徳島の4つの連の演奏を収録。特に「のんき連」は阿波踊りの世界で91年という歴史を持つ最古参の連になるそうです。

今回の「ぞめき」に収録されている曲は比較的シンプル。その音色はどちらかというと「聴きおぼえがある」ような感じのある、いわばいかにも阿波踊りとったイメージの曲になっています。

「のんき連」の1曲目は三味線の音からスタート。やがてお鈴や笛の音が響いてきます。BPMは遅め。ゆっくりとしたペースですすんでいきます。笛の奏でる音色は私たちにとっては夏祭りの会場でよく流れてきそうな聴きおぼえのあるフレーズ。そして2曲目も中盤からようやく太鼓のリズムが登場。ここからのリズムで独特のグルーヴ感を奏でており、BPMは遅めながらも聴いていてトリップできそうな感覚も。楽曲的には8曲程度の曲ながらも、これが延々と続いたらとても楽しいだろうなぁ・・・と感じる曲になっています。

「うずき連」の曲には唄が加わります。太鼓の音色は非常に軽快でリズミカル。飛び跳ねるような感じのリズムが魅力的な楽曲。続く「天保連」も同じようにシンプルな演奏ながらもリズムに他とは異なる独特のテンポが加わって癖になりそう。個人的にはこのアルバムの中で一番の好みかも。

そして「悠久連」は最初は伸びやかな壮大な雰囲気を感じさせる笛の音色からスタートするものの、途中からBPMが一気にアップ。今回の収録曲の中ではもっとも疾走感あるリズムを聴かせてくれます。

さらにラストには「のんき連」がもう1度。楽曲的にはおそらく序盤と同じ曲なのでしょうが、より賑やかにある種狂乱的なノリすら感じられる楽曲は、このリズムで踊ると非常に盛り上がれそうな予感もする楽曲で締めくくりとなりました。

今回のアルバム、いわば「いかにも阿波踊り」といったイメージの楽曲が並んでいたのですが、あらためて「曲」の部分のみをCDで聴くとその魅力を再認識できます。そういう意味で「ぞめき」の目的にも沿ったようなアルバムと言えるのかも。日本に昔からあるリズムの魅力にあらためて触れることの出来る1枚でした。

評価:★★★★★

ぞめき 過去の作品
ぞめき伍 個性派 徳島 高円寺 阿波おどり個性派

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2016年10月 2日 (日)

ベタな90年代J-POP

Title:WE
Musician:家入レオ

これが4枚目となる家入レオのニューアルバム。今回の彼女の作品、大きく変わった点がひとつありました。それは前作までプロデュースを担当し、作曲編曲の多くを担当していた西尾芳彦に変わり、Superflyのメインライターとして活躍している多保孝一が多くの曲の作曲編曲、さらにはプロデュースを担当していること。4枚目にして他の作家と組んで新たな一歩を歩みだしたといったイメージでしょうか。

ただし、基本的な路線はいままでの彼女と大きくは変わりません。イメージとしては90年代初頭のバンドブームあたりのガールズロック路線。以前のレビューでも書いたのですが、いわゆる「おっさんホイホイ」的なよくも悪くもわかりやすさのある楽曲。それは今回のアルバムでも健在でした。

しかしいままでの作品と比べて今回のアルバム、その路線がさらに明確に強まったような感じがします。いままでの楽曲に関しても90年代のJ-POP路線が鮮明であった一方でそれなりに今風のヒット曲路線ともリンクさせたような曲が目立ったのですが、今回の作品についてはもろ90年代J-POP。ある意味懐かしさを感じてしまうほどの楽曲で、90年代バンドブームで出てきた女性ボーカルのロックバンド、例えばプリプリやレベッカ、LINDEBERGあたりにダイレクトにつながりそうな楽曲が展開されています。

今回メインのライターが多保孝一に変わりましたが、彼がメインで活躍していたSuperflyといえば、むしろ70年代のロック志向が強い楽曲が特徴的。そういう意味で90年代J-POP路線は彼の得意分野ではないはず。あくまでも推測ですが、彼が家入レオの楽曲を担当することになり、彼女のいままでの楽曲のイメージから90年代J-POPというイメージをふくらませていった結果、彼がいままで手掛けてこなかったようなジャンルであることもあって、逆に「ベタ」な路線に走ってしまった・・・そんな印象も受けてしまいました。

楽曲によっては90年代というよりも「シティボーイなアイツ」「そばにいて、ラジオ」のように80年代っぽさすら感じさせる楽曲もあったりして。特に「そばにいて、ラジオ」は福岡のラジオ局のキャンペーンソングという性格上、仕方ないのかもしれませんが、

「いつの間にか忘れてた
大切な思い出と共に
変わらずに そばにいて、ラジオ」

(「そばにいて、ラジオ」より 作詞 家入レオ)

なんて歌詞、悪いけど今21歳の彼女が、そんなにラジオを聴いていた、とは思えないんだよなぁ・・・。なんとなくちょっとわざとらしさも感じてしまいます。

さすがにデビュー当初の彼女のような「中2病」的な要素を感じさせる歌詞はなくなりましたが、前向きな応援歌的な歌詞は良くも悪くも相変わらず。また「中2病」的な歌詞がなくなった代わりに、歌詞のインパクトも少々薄くなってしまったのは残念。ここらへん、20歳を過ぎて大人になってきた彼女がその人生経験の中、いかに新たな歌詞の世界を構築できるかもこれからの課題ような気がします。

そんな訳でアラフォー世代で90年代初頭のバンドブーム時代の楽曲になじんできた私にとっては懐かしさもあり楽しめたアルバムでしたが、いろんな意味で気になる要素も多いアルバムでした。個人的にはこの手の方向性も楽しめるものの、やっぱりもっと「今の音」を追及してほしいと思うんだよなぁ。前作まで感じた安定感がちょっと薄れて、今後のベクトルがちょっとぼやけちゃった感じもする新作。まあ、それがあらたな作家起用の狙いなのかもしれませんが。

評価:★★★★

家入レオ 過去の作品
LEO
a boy
20

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2016年10月 1日 (土)

これぞオブリ

Title:DIRT
Musician:OBLIVION DUST

OBLIVION DUSTは2001年に解散。その後、2008年に一度活動を再開。その後、また活動休止時期を経て2010年に活動再開を宣言していました。・・・が、その後も散発的なツアーなどを実施しつつ、いまひとつ「本格的」というのは物足りない活動が続いています。今回のアルバムも新作としては4年3ヶ月ぶり。それも7曲入りのミニアルバムとそのスローテンポは気にかかるところです。

しかしアルバムの内容としては、これぞOBLIVION DUSTといった印象をまず受けるようなアルバム。おそらく待ちわびたファンにとっては満足度の高い作品になったのではないでしょうか。リスナーがOBLIVION DUSTに対して何を求めているかということをまさに体現化したアルバムになっていました。

OBLIVION DUSTの魅力といえば疾走感あり適度にへヴィーなギターサウンド。メロディアスなメロディーライン。そしてKEN LLOYDの端整なボーカルと流ちょうな英語詞。そのKEN LLOYDの英語詞の楽曲に強い洋楽テイストを感じつつも、一方ポップなメロディーラインは邦楽リスナーにもアピールできるようなポピュラリティーがある・・・OBLIVION DUSTの魅力といえばそんなところでしょうか。まずはストレートにロックを聴いたという醍醐味を味わえるのが彼らの最大の魅力だと思います。

今回のアルバムは終始一貫して疾走感あるバンドサウンドが楽しめる全英語詞による7曲。前作「9 Gates For Bipolar」では若干サウンドの軽さが気になったのですが今回のアルバムに関してはむしろいままでの作品に比べてへヴィネスさが増していたような印象も受けました。

そんな訳でまさに聴いていて満足感たっぷり。OBLIVION DUSTの魅力が詰まった傑作に仕上がっていた・・・・・・・のは間違いないのですが一方ではミニアルバム30分弱の長さなら文句なしだけど逆にフルアルバムだとちょっと厳しいかも、と思ってしまう部分もあったのが正直な感想。

はっきりいってしまうと7曲全部似たような印象の曲が並んでいたというのがその理由。確かに「Nightcrawler」など打ち込みを入れてインダストリアル色の強いナンバーもあり、それなりにバリエーションを加えようとしているのですが、通して聴いた感じとしてはそれほど強い変化は感じません。メロディーもそれなりにインパクトはあるのですが、一度聴いたら忘れられないようなフックの効いたフレーズはあまりなく、勢いだけで聴ききれるような、本作の30分程度の長さならば文句なしなのですが、これがフルアルバム1時間程度の長さになるとちょっと厳しいかなぁという感想も持ってしまいました。

とはいえ、本作に限って言えば文句なしに傑作なのは間違いありません。OBLIVION DUSTというバンドの魅力がしっかりつまった7曲。そのちょうどよい短さといい、オブリを聴いたことない方に彼らの魅力を伝えるにも最適なアルバムだと思います。次はもうちょっとバリエーションが増えると面白いと思うのですが・・・というよりも、次回作はもっと短いスパンで聴きたいなぁ。

評価:★★★★★

Oblivion Dust 過去の作品
OBLIVION DUST
9 Gates For Bipolar

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