ANARCHYはセルアウトしたのか?
Title:BLKFLG
Musician:ANARCHY
前作「NEY YANKEE」でなんとメジャーデビュー。ANARCHYについてはそれだけでも驚かされるのですが、さらにEXILEのHIROが総合プロジェクトをつとめているドラマ「HiGH&LOW」に出演。アンダーグラウンド的なイメージが強かった彼が非常に「芸能界」的存在であるEXILEとからむということで、個人的にもかなり驚きました。
そのメジャーデビュー作「NEW YANKEE」はいままでの彼の作品と比べるとかなりポップに走った作品。駄作とまではいわないものの「凡作」というイメージが強い作品になってしまっていました。また、今回のEXILEドラマへの出演とあわせて、どうしても「セルアウト」というイメージも強くなってしまいます。
おそらくそのような批判は彼の耳にも入ったのではないでしょうか。今回のアルバムに関しては現在の自分の状況に対しての決意表明、反論のようなリリックが目立ちます。
「誰にもガタガタ言わせない ほら
いい音楽が流れる場所があるだけで
まずありがとう
クラブ 野外フェス 街角
だって楽しんだもん勝ちでしょ」
(「CRADLE TO THE GRAVE feat.MIGHTY CROWN」より 作詞 Mighty Crown(Masta Simon&Sami-T)/ANARCHY)
「なんて言われてもいい
好きな事ばっかやってる僕らは
なんて言われてもいい
笑われたって笑っていたい」
(「WHATEVER」より 作詞 ANARCHY)
「What What What What
So What What What What
全然聞こえない君のディス
俺は自分で選んだ道にキス」
(「SO WHAT?」より 作詞 ANARCHY)
もともと自分の生い立ちを綴ったリリックが多い彼ですが、今回のアルバムに関しては今の立場についての自信を感じさせるリリックが多かったような感じがします。
そしてそんな今回のアルバム、ポップ方面に大きく傾いた前作と比べると再びハードコア路線に戻って来たように感じるアルバムでした。エレクトロサウンドを用いつつ、音数を絞ったかなりタイトなトラックが耳を惹きます。雰囲気としてはインディーズ時代の匂いも感じるアルバムだったと思います。
ただ、全体的な雰囲気としてはポップで聴きやすいという印象も強く受けます。リリックにしろサウンドにしろアンダーグラウンド的な雰囲気をかもしつつも卒なくまとめているような感じがあり、「ヤバさ」みたいなものはあまり感じませんでした。
そういう意味ではアンダーグラウンド的な空気感とポピュラリティーを上手く両立させたアルバムと言えるのかもしれません。これを「セルアウト」と言ってしまえば否定はできないかもしれませんが、個人的にはANARCHYとしてのあるべき姿についていろいろな立場から求められる中、上手くバランスを取ったアルバムにまとめあげたように感じました。
もっとも一方で、既に今、必ずしもわかりやすいポップな音を出さなくてもメジャーシーンで活躍しているミュージシャンはたくさんいます。そういう意味ではANARCHYも、メジャーシーンの中でもっとインディーズ時代のような楽曲も追及できたのではないか、とも思ってしまいます。そういう意味ではまだまだ彼なりのやり方があるようにも感じました。今後の彼がどのように進むのかはわかりませんが・・・これからも彼の活動に注目していきたいのは間違いないでしょう。
評価:★★★★
Anarchy 過去の作品
Dream and Drama
Diggin' Anarchy
DGKA(DIRTY GHETTO KING ANARCHY)
NEW YANKEE
ほかに聴いたアルバム
まほう/ASA-CHANG&巡礼
新メンバーとなった後、初となる7年ぶりとなるオリジナルアルバム。毎回、実験的な作風に挑戦していますが今回も声をコラージュしたような作品や宗教音楽ような荘厳な作品、セリフのみの作品など多彩。いままでの作品は実験的すぎて聴いていて正直ちょっと辛い部分もありましたが今回は比較的ポップで聴きやすくまとめられていました。
評価:★★★★
ASA-CHANG&巡礼 過去の作品
影の無い人
ASA-CHANG&蒐集(ASA-CHANG)
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