ゲイリーのパーソナリティーが前に
Title:PIRATES of Dr.PANTY
Musician:モーモールルギャバン
前作「シャンゼリゼ」からほぼ1年ぶりとなるニューアルバム。今回のアルバムは録音方法に特徴があるそうで、ゲイリー・ビッチェの作ったデモ音源にユコ・カティが必要最小限の音だけ加えて、出来る限りデモ音源に忠実な音に仕上げたそうです。そのため、全体的には非常のラフな音像が出来上がっている印象。シンセの音はちょっとソウルテイストのファンキーな雰囲気になっているのですが、非常に粗々しさを感じさせる出来。まさに意図したことなのでしょうが、デモ音源のようなシンプルさを感じます。
また今回、もうひとつの特徴が全作詞作曲をいままでのモーモールルギャバン名義からゲイリー・ビッチェの個人名義へと変更になっている点。同じくゲイリー・ビッチェが作り出した音源をそのまま完成形として利用している点とあわせて考えると、ゲイリー個人のパーソナリティーを色濃く反映させることを意図したアルバムと言えるのではないでしょうか。
そう考えると今回の歌詞。情熱さを強く感じさせるラブソングが並んでいるのですが、ゲイリー個人の身の回りに最近起こった出来事ではないのか?と勘ぐってしまいます。例えば「美しい思い出だけじゃないけど」もある種の別れを想像させるようなタイトルですし、
「真夜中 君からの着信は拒否さ
もう何も言いたい事はない だから
さようなら 君らしくあるべき人よ
どうやら美しい涙は出ない」
(「イグノアの娘」より 作詞 ゲイリー・ビッチェ)
と「イグノアの娘」ではストレートに別れを歌い上げています。さらに最後を飾る「なにもかも忘れたよ」も
「だけどさよなら 求めあった日々は終わった
止めどない涙はいつか枯れますか
さりげない言葉で全てが終わった
止めどない涙はいつか枯れますか」
(「なにもかも忘れたよ」より 作詞 ゲイリー・ビッチェ)
も同じく別れを感じさせる歌詞が印象に残る内容に。楽曲は全体的にシンセのアグレッシブなサウンドが前面的に押し出されている曲が並んでいるのですが、歌詞に関してはとても悲しいラブソングが目立ちます。これをゲイリー個人名義の作詞作曲で発表するというのは・・・という勘繰りもしてみたくなるミニアルバムでした。
ただ聴いていて、このパーソナルな要素が表に出ている作品なだけにアレンジ的にはシンプルな反面、特徴的なアレンジは少ないですし、メロディーに関してもインパクトは薄い印象。全体的には彼らにしてはちょっと物足りなさも感じてしまいました。まずは楽曲として煮詰める前に、今、歌いたいことを早く曲にしたといった感じかなぁ。それだけにインパクトは薄いもののある種のパッションを感じる1枚でした。
評価:★★★★
モーモールルギャバン 過去の作品
クロなら結構です
BeVeci Calopueno
僕は暗闇で迸る命、若さを叫ぶ
モーモールル・℃・ギャバーノ
シャンゼリゼ
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2016年」カテゴリの記事
- ファンによる選曲がユニーク(2016.12.27)
- パンクなジャケット写真だけども(2016.12.24)
- バンドの一体感がさらに深化(2016.12.23)
- 初のフルアルバムがいきなりのヒット(2016.12.20)
- 10年の区切りのセルフカバー(2016.12.17)
コメント