幅広いジャンルに挑戦するものの・・・
Title:On My One
Musician:Jake Bugg
音専誌、特に「rockin'on」で顕著にみられるのですが、デビューアルバムを大絶賛して積極的に取り上げるものの2枚目や3枚目となるとほぼ無視。少しのインタビュー記事やCDレビューでチラッと取り上げてお終い。いままであんなに推していたのに??と感じるケースが多々あります。
デビューアルバム「Jake Bugg」が大プッシュされたイギリスのシンガーソングライター、Jage Buggについてもそんな感じ。前作「Shangri La」までは比較的プッシュされていたのですが3枚目となる本作については「え?いつのまに発売されていたの??」なんて思うくらい。本国イギリスではデビューアルバム「Jake Bugg」が最高位1位に対して「Shangri La」は3位、本作は4位と徐々にダウンしているものの、しっかりベスト10上位には食い込んでおり決して人気がなくなった訳ではありません。
そこらへん、少々音専誌の無責任さというか気まぐれさを感じて残念に思うこともありますが、今回のアルバムに関しては確かに少々音専誌からのプッシュが弱まった理由も正直わかるようにも思います。残念ながら1枚目、2枚目に比べてJake Buggの魅力が薄まっているように感じました。
その理由は簡単で最大の原因は今回のアルバムでいろいろなジャンルに手を広げているから。例えば「Never Wanna Dance」などはフィリーソウルっぽいナンバーになっていますし、「Bitter Salt」ではへヴィーでダイナミックなバンドサウンドも聴かせてくれます。「Ain't No Rhyme」などはちょっとHIP HOPな味付けさえ感じますし、「Livin'up Country」などは(ある意味タイトル通り?)カントリー風なナンバーに仕上がっています。
ここらへんの新しいタイプの曲に関しても出来は決して悪いわけではありませんが、彼らしいフォーク寄りのギターロックなナンバーと比べると個性は薄く、音楽の幅を広げるために無理やり挑戦した感は否めません。もちろん現状に満足せずに新たなジャンルに挑戦するというのはミュージシャンとして決して間違った方向ではないのですが、現状、残念ながら彼にとってプラスに働いている感じはしませんでした。
もっとも、とはいうものの1曲目でありタイトルチューンでもある「On My One」は彼らしいアコギメインに聴かせるナンバーですし、「Put out the Fire」も彼らしいポップなメロを軽快に聴かせてくれます。最後の「Hold on You」もいかにもイギリスらしいギターロックのナンバーで個人的には好み(笑)。Jake Buggの良さもきちんとアルバムの要所要所で感じることが出来ました。
そういう意味では確かに1枚目2枚目に比べて物足りなさは否めないものの、もうちょっと取り上げられてもいいアルバムなのでは?とも思ってしまいます。今回、手広く挑戦したジャンルが次のアルバムではきちんと花開けばおもしろいアルバムが出来るような感じもするのですが・・・。そういう意味では本作の評価は次回作以降に定まるのかもしれません。次回作が要注目といった感じでしょう。
評価:★★★★
JAKE BUGG 過去の作品
JAKE BUGG
SHANGRI LA
ほかに聴いたアルバム
1955年5月14日。映画「暴力教室」の主題歌としてビル・ヘイリーと彼のコメッツの「ロック・アラウンド・ザ・クロック」がビルボードチャート1位を獲得。いわゆるロックの最初のヒット曲として語られるこの曲が全米1位を獲得して昨年で60年が経過しました。そのいわばロック誕生60年を記念して「LET IT ROCK!」と題する企画が実施されたのですが今回紹介するのは、その企画に参加したレコード会社よりリリースされたロックの原点ともいえる曲をまとめたオムニバスアルバムです。
レット・イット・ロック!~ロックン・ロール60周年-ソニー・ミュージック編
まずソニーミュージック編。Elvis Presleyの「That's All Right」からスタートしています。
レット・イット・ロック!~ロックン・ロール60周年-ユニバーサル・ミュージック編
で、こちらはユニバーサルミュージック編。前述のロックンロール最初のヒット曲とされるBill Haley&His Comets「Rock Around the Clock」も収録されています。
レット・イット・ロック!~ロックン・ロール60周年-ユニバーサル・ミュージック編
で、最後がワーナーミュージック編です。
いわゆるビートルズ誕生以前のロックンロールの名曲を収録したオムニバスなのですがユニークなのはロックンロールのみならず、そのルーツとなった曲も収録している点。ブルースやR&B、カントリーやガールズポップ、さらにはNeil Sedakaのようなポピュラーミュージックのシンガーまで収録。ただどの曲もロックンロールにつながるような音楽性を感じることが出来、ロックンロールという音楽が様々なジャンルから影響を受けて成立したことがわかる興味深い選曲になっていました。ロックの原点を知るという意味でもうってつけのオムニバスアルバム。かなりのボリュームの内容ですが、ロックンロールの歴史を網羅的に知るのはうってつけの企画盤だと思います。
評価:どれも★★★★★
そしてさらにもう1枚。
The Strypes presents Let It Rock~Rock 'n' Roll 60th Anniversary
上のレコード会社別オムニバスがビートルズ以前のロックンロールを収録していたのに対してこちらはエルヴィス・コステロやTHE JAM、THE WHOなどビートルズ以降のロックバンドも収録。ジャンル的にはガレージロックがメインでレコード会社別オムニバスほど曲の幅はありませんが、The Strypesの原点となった曲ばかりでThe Strypes好きには間違いなくお勧めできるし、ガレージロックが好きならば間違いなく気に入りそうな曲ばかり。The Strypesのルーツを知るという意味でも、またガレージロックの歴史を知るという意味でも非常におもしろい企画盤でした。
評価:★★★★★
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