「0」に戻って・・・
Title:0
Musician:スネオヘアー
3年ぶりとなるスネオヘアーの新作。前々作のタイトルがセルフタイトルの「スネオヘアー」。前作は8枚目のアルバムなので「8」と、ある意味そのままなタイトルが続いていましたが今回の最新作のタイトルは「0」。ゼロにもどって初心に帰るアルバムという意味もあるのでしょうか。
ただそんな「ゼロに戻る」というイメージからするとイメージ的に裏切られるスタートかもしれません。1曲目「Typhoon」はいきなりエレクトロサウンドのインストチューン。わずか1分強のインスト的なナンバーに続くタイトルチューン「0」もエレクトロポップな楽曲。スネオヘアーというとどちらかというとギターロック路線というイメージが強いだけにちょっと意外に感じられるスタートかもしれません。
今回のアルバムは比較的、このエレクトロサウンドを取り入れた曲が目立ちます。「Raindrops」もピコピコエレクトロポップな楽曲ですし、「LOVE」もエレクトロアレンジの作品となっています。ただ、このエレクトロアレンジのみならず今回のアルバムに関してはバラエティーに富んだ楽曲が目立ちました。例えば「帰って行くのね」はレゲエ風なアレンジ。「最高TONIGHT」はへヴィーでトライバルなリズムが印象に残る楽曲に仕上げています。
そういう意味では今回のアルバムタイトル「0」、原点回帰というよりは「0」に戻ってのリスタートという意味が強いのかもしれません。スネオヘアーとしてのリスタートで様々なジャンルに挑戦したアルバムと言えるかもしれません。
ただし基本的な路線は大幅には変わっていません。まずデビュー以来のスネオヘアーの最大の弱点は残念ながらそのまま。とにかく地味(苦笑)。マイナーコード主体のミディアムテンポの楽曲がメイン。アレンジは上に書いた通り、本作ではそれなりにバラエティーがあるものの、あくまでもメインはメロディーラインと歌なのでそれだけで聴かせるほどのパワーは持っていません。
もっともパッと聴いた感じは地味なのですが、良質なメロディーラインのポップスを書いているという良い意味でもいままで通り。特に「バンカーランプ」は抑えめながらもちょっと泣きメロが入ったメロディーラインが印象的。ギターサウンドにピアノやシンセを加えた分厚いアレンジも心地よい作品になっています。アニメタイアップのついた「無くした日々にさよなら」もメロディーラインにインパクト十分な作品。サビ先という構成もいかにもタイアップ付きの楽曲らしい、「売り」に出たような楽曲となっています。
良質なポップアルバムであることは間違いないと思うのですが、いかんせん全体的にインパクトが薄くて地味なアルバムなのはいままで通り。申し訳ないけど彼のボーカルスタイルもとにかく地味。個人的には彼はどちらかというと他人に楽曲を提供する職業作家的な素質があると思うんですが・・・。ただ楽曲的にはバリエーションが富んでおり、彼のここ数作のアルバムの中では一番の出来だったようにも感じます。このご時世だからこそ、アイドルへ楽曲提供すればヒットを飛ばせそうな気がするんですが・・・。
評価:★★★★
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