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2016年8月28日 (日)

「今」のR&Bを知るために

まず今日は音楽関係の本、2冊の紹介から。

こちらは昨年の7月に出された「新R&B入門 ディアンジェロでつながるソウル・ディスク・ガイド1995-2015」、そしてもう1冊が

こちらは今年発売された「新R&B教室 マイケル・ジャクソンでつながる ソウル/ブギー・ディスク・ガイド1995-2016」。どちらも音楽評論家の林剛氏と荘治虫氏による共著。タイトル通り、現在の視点からR&Bの名盤を取り上げたディスクガイド。それぞれディアンジェロ、マイケル・ジャクソンという重要な2人のミュージシャンを取り上げ、それにつらなるミュージシャンたちを紹介するというスタイルを取っています。

「新R&B入門」はディアンジェロの音楽からマーヴィン・ゲイ的な要素、プリンス的な要素、カーティス・メイフィールド的な要素・・・と様々なミュージシャンの要素に分解した上で、そこにつらなるミュージシャンたちのアルバムを紹介しています。ジャズやファンクという音楽性を取り込みつつ、比較的挑戦的な音楽性を感じるディアンジェロからつながるミュージシャンなだけに、本書のIntroでも書かれている通り、ビヨンセやニーヨ、アッシャーなどの現在の王道系のR&Bシンガーは紹介されていません。

一方「新R&B教室」はおなじくマイケル・ジャクソンをスタートに「メロウ/センシティヴ編」「キッズ/ヤングスター編」などといった様々な要素に分解しそこに連なるミュージシャンを並べています。音楽的なつながりが強い「入門」に比べて「教室」はどちらかというとマイケルのスタイルに着目した分類のため、王道系のシンガーも取り上げられたりしており、より幅広いジャンルをフォローしています。

ただどちらの本にも共通するのが、林、荘両氏の主張がかなり強く出ているという点。取り上げられているのは最近のミュージシャンが多いため正直評価が定まっていない部分も大きいため、「誰?」といった感じのミュージシャンも少なくありません。またそのため著者両氏の主張がより強く出ているスタイルとなっているのでしょう。そのため、例えば本書を10年後に読んだ場合、かなり違和感を覚えてしまう可能性も否定できません。ただ一方、現時点で見た「聴くべき」ミュージシャンたちのアルバムを取り上げているだけに、非常にリアリティーがあり、2016年の今、R&Bを聴くリスナーとしてはひとつの指標としてとても参考になるのは間違いないかと思います。

さて、そんな本書に基づいたオムニバスアルバムがリリースされました。

Title:New R&B primer ~新R&B入門

こちらは「入門」の方のオムニバス。1曲目にディアンジェロからスタートし、「入門」で取り上げられたミュージシャンたちの曲が並びます。

Title:New R&B school~新R&B教室

で、こちらは「教室」の方のオムニバス。こちらもマイケル・ジャクソンからスタート。「教室」で取り上げたミュージシャンたちの曲が並びます。

まず感心するのが両方ともきちんとディアンジェロ、マイケル・ジャクソンの曲が収録されている点。ディアンジェロはともかく、マイケルなどはなかなかこの手の企画盤オムニバスへの収録許可が下りなさそうな印象があるのですが・・・。ここらへん、関係者の尽力に頭が下がります。

またこの両作品で素晴らしかったのは楽曲の構成。ディアンジェロ、マイケルからスタートし、違和感なく、彼らの音楽性の伝播あるいはルーツの模様がわかるようになっています。例えば「New R&B primer」ではディアンジェロの「Brown Sugar」からスタートしつつ、その雰囲気を徐々に変化させながら14曲目Musiq「Newness」までたどり着くのですが、この曲は完全にフィリーソウルな楽曲。この流れによって、ディアンジェロの音楽が元をただせばフィリーソウルに行き着くことが非常に自然な流れで理解することが出来ます。

一方、「New R&B school」はマイケル・ジャクソンの「Love Never Felt So Good」からスタート。書籍「教室」の方はマイケルのスタイルに沿ったセレクトになっていましたが、オムニバス盤の方はいわゆるマイケルっぽい曲が並んでおり、マイケル・ジャクソンの音楽的影響の広さがわかります。

ただこちらもマイケルっぽいとはいえいろいろなタイプの曲が並んでおり、このつなぎ方が見事。序盤はファンキーな曲を並べておきながら徐々にスタイルを変え、中盤のメロウな女性ボーカルのナンバーへ上手くつなげています。後半は音楽的には少々異なるものの「兄妹つながり」ということでJanet Jacksonの「No Sleep」が収録。この若干他とはタイプと異なるナンバーも他のメロウな女性ボーカルの曲を上手く挟むことによって違和感なく聴くことが出来ます。

そういう意味で両方とも実に構成を考えこまれている素晴らしいオムニバス盤になっていました。またどちらのアルバムもまさに今という時代を知れる楽曲が並んでおり、それぞれ書籍を読みつつ並行して聴くとワクワクしてくる曲にたくさん出会える選曲になっています。R&Bの今を知るためには最適なディスクガイドとオムニバス盤。逆に2016年の今しか読めない/聴けない作品かもしれませんが、そのリアルタイムさも大きな魅力だと思います。ブラックミュージックに興味があるならとりあえずはチェックしておきたい作品です。

評価:
どちらも ★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Montage of Heck: The Home Recordings/Kurt Cobain

2015年にリリースされたNIRVANAのカート・コバーンのドキュメンタリー映画のサントラ盤。とはいえ本作は映画音楽ではなく、カート・コバーンのデモ音源集。それもタイトル通り、自宅でおそらくカセットテープを使用してレコーディングしたかなりラフな録音集で、カセットテープを切る音まで収録されている生々しい音源。カートの息の音まで聴こえてきそうな音源で、後々のNIRVANAの楽曲につながるようなどこかで聴いたようなギターリフから、お遊びと思われる録音まで収録されています。ただ、それだけに普通に楽曲を聴く感覚でこのアルバムを聴くとかなりキツイものがあります。どちらかというと貴重な資料集という感じの作品。そのためNIRVANAのファン以外には全くお勧めできない反面、NIRVANAのファンにとっては絶対にチェックしておきたい貴重な1枚。下記評価は普通のリスナーにとっての評価ですが、NIRVANAのファンにとっては文句なしに5つだと思います。

評価:★★

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