祝祭と終焉
Title:LAY YOUR HANDS ON ME
Musician:BOOM BOOM SATELLITES
この作品がリリースされる直前、5月31日にBOOM BOOM SATELLITESの公式ブログにアップされた文章に、音楽ファンの間で衝撃が走りました。
posted by nakano 2016.5.311(公式ブログ)
そこに書かれているのはこれが彼らにとって最後の作品になるということ。その理由としては川島道行の脳腫瘍による後遺症のためということ、さらにはその後遺症のために既に彼は正確な意思疎通を取ることすら難しいという事実・・・。川島道行が長らく脳腫瘍という病気と闘ってきたことはファンなら周知の事実でしたが、その予後が決して良い状態ではないという事実は非常にショッキングな事実でした。
そして最後の作品となる本作は全4曲22分からなる作品。収録曲数の関係で、オリコンチャートなどでは「シングル」として取り扱われていますが、上のブログでは「10枚目のアルバム」と言い切っています。ここでは本人たちの意思も尊重し、「アルバム」として紹介させてもらいたいと思います。
そんな彼らの10枚目となるアルバムはバンドとしてラストとなるアルバム、あるいは川島道行にとってもそのミュージシャン人生にとっておそらく最後となるであろうアルバムという後ろ向きな感覚は微塵も感じられません。ブログでも「祝祭と終焉、静けさ、そして新たな始まり」と表現されていますが、むしろ非常に明るさと、前向きなメッセージを感じさせるアルバムでした。
タイトルチューンでもある1曲目「LAY YOUR HANDS ON ME」はテンポよいスペーシーなトラックは前へ前へと突き進む希望あふれるナンバーになっています。幼い女の子が笑顔で飛び跳ねるPVもとても印象的で、未来への希望にあふれるナンバーになっています。
続く「STARS AND CLOUDS」も静かにはじまりつつ、スケール感あるサウンドに明るさを感じるナンバー。
「I and I
I'm in your heart
Here I go on
I go on」
(和訳 身も心も
現れては、また去っていく
僕と僕
君の心の中にいる
ここに居続ける
ここにい続けるんだ)
(作詞 BOOM BOOM SATELLITES 「STARS AND CLOUDS」より)
という歌詞もまた、彼らからの前向きな強いメッセージを感じると同時に、川島道行の心境も感じられ、少し切ない気持ちにもさせられます。
そして後半「FLARE」「NARCOSIS」は静かで美しいインストのナンバー。静かに幕を下ろしていくこの2曲は、「祝祭と終焉」で言うところの「終焉」ということでしょうか。ただここにも「終わる」というだけの暗さは感じません。むしろ「終焉」の向こうの希望を感じられるナンバーでした。
まさに本作1枚22分の中で様々な物語が展開し、彼らのメッセージを強く感じされるナンバー。わずか4曲の中で様々に詰め込まれた彼らのメッセージは、本作が「アルバム」と称するにふさわしいものを感じます。
彼ららしいエレクトロ主体のナンバーなのですが、全体的には静かに美しいサウンドで構成された本作。BOOM BOOM SATELLITESらしいバンドサウンドのダイナミズムは薄めなのですが、その反面、美しいサウンドの向こうに壮大な光景が見えるような、そんなアルバムだったと思います。
BOOM BOOM SATELLITESという偉大なバンドの最後を締めくくるにふさわしい傑作だったと思います。ちなみに初回盤には写真集が同封されているのですが、そこには砂浜でたたずみ笑い合う川島道行と中野雅之2人の姿が・・・この写真集にもグッと来るものがあります。しかし、これが最後という悲しみよりも、2人で音楽を出来たという喜びにあふれる作品・・・BOOM BOOM SATELLITESというバンドを好きでよかったとすら感じさせてくれる、彼ら10枚目となるアルバムでした。
評価:★★★★★
BOOM BOOM SATELLITES 過去の作品
EXPOSED
19972007
TO THE LOVELESS
EXPERIENCED
REMIXED
EMBRACE
EXPERIENCEDII
SHINE LIKE A BILLION SUNS
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コメント
今はただ、ブンブンサテライツに「感謝」以外の言葉がありませんね。
投稿: ひかりびっと | 2016年8月 9日 (火) 11時31分
>ひかりぴっとさん
本当に「感謝」という言葉しかありません。いままで素晴らしい音楽をたくさん届けてくれたことに、ただただ感謝です。
投稿: ゆういち | 2016年8月10日 (水) 01時04分