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2016年8月30日 (火)

デビュー25年目でも「醒めない」

Title:醒めない
Musician:スピッツ

スピッツの約3年ぶりとなるニューアルバム。メジャーデビュー25年目を迎える今年。よくありがちな25周年記念のベスト盤リリースなどはないんですね。それがまた彼ららしい感じもするのですが。

今回のニューアルバムに関してざっと聴いてまず感じたのは卒ない出来という印象でした。スピッツらしい作品。別に今回のアルバムに限らないのですが特に目新しいサウンドに挑戦といった感じはありませんし、シングル曲についてはそれなりにインパクトを持っているものの、一度聴いたら思わずフレーズが口から出てくるようなインパクトを持ったキラーチューンという曲はありません。

ただそんな中、今回は比較的ロック寄りの作品が多かったような印象を受けます。例えば「八の針」などはへヴィーなギターリフが楽曲全体に流れていますし、「ガラクタ」もノイジーなギターサウンドが前面に押し出したロックテイストが強い楽曲になっています。なによりタイトル曲「醒めない」という曲自体、

「まだまだ醒めない アタマん中で ロック大陸の物語が
最初ガーンとなったあのメモリーに 今も温められてる
さらに育てるつもり」

(「醒めない」より 作詞 草野正宗)

とまさにロックの初期衝動から「醒めない」という曲になっています。この曲をタイトルチューンにもってくるあたり、まさにロックテイストの強いナンバーをあえて持ってきていることは明確。また初期衝動から醒めないと歌っているように、比較的スピッツの初期中期あたりの雰囲気を感じさせる曲が多く、そういう意味でもスピッツらしいアルバムという印象を強く感じる要素となっています。

さらに最後に収録されている「こんにちは」はブルハ直系のパンクテイストの強いナンバー。もともとインディーズ時代の彼らはパンクロックを演奏していたということ。そういう意味ではこういう曲を最後に持ってくるあたりも初期に立ち返った「醒めない」と似たようなスタンスを感じさせます。

そんな今回のアルバム、最初聴いた時はちょっと地味な印象も受けてピンと来ない部分もあったのですが、2度3度聴くとそのメロディーラインの妙を感じ、徐々にはまっていく名盤になっていました。先行シングル「みなと」やデジタルシングルとしてリリースされた「雪風」なども彼ららしいミディアムチューンを聴かせてくれる名曲ですし、SUBARUのCMソングとなった「ヒビスクス」も哀愁感あふれるメロディーが心に響くスケール感ある名曲。

他にも軽快なギターロック「ガラクタ」も楽しくなってくるポップチューンですし、大サビで分厚いコーラスでタイトルを連呼する「子グマ!子グマ!」もユーモラスで楽しいポップとなっています。

アルバム全体としてはデビュー25年としてのベテランらしいいい意味での安定感、センスが光るメロディーラインを感じる一方、25年がたつのにいまだに若手バンドのよう瑞々しささえ感じさせる部分もある名盤でした。まだまだ彼らはたくさんの名曲を世に送り出してくれそうです。

評価:★★★★★

スピッツ 過去の作品
さざなみCD
とげまる
おるたな
小さな生き物

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