KANのアナザー・サイドの魅力
Title:弾き語りばったり #19 今ここでエンジンさえ掛かれば
Musician:KAN
KANのライブといえば、最初から最後まで演出たっぷりに練りこまれた非常にエンタテイメント性高いステージが魅力的です。ここのサイトでも何度かライブレポートで紹介しましたがファンでなくても楽しめる抱腹絶倒のショーとなっています。その一方、そんなライブツアーの合間合間に行われているのが彼がひとりだけでのステージ。「弾き語りばったり」と名付けられたライブシリーズは彼のピアノの弾き語りにより曲をしっかりと聴かせるライブ。通常のライブツアーとはまた異なる魅力あふれるステージも高い人気を呼んでいます。
今回リリースされたアルバムはそのライブツアーの模様を収録したライブアルバム。2008年には同じ「弾き語りばったり」シリーズからのライブアルバムをリリースしていますが、それに続くライブアルバムとなります。通常のライブツアーは映像作品としてリリースされる一方、このようなライブアルバムの形態では発売されていません。一方「弾き語りばったり」シリーズは早くも2枚目となるライブアルバム。それほどKANがこの単身弾き語りライブを重要視しているかもわかります。
このライブアルバムの最大の魅力は、なんといってもピアノ1本での弾き語り。例えば本作でいえば「世界でいちばん好きな人」のようなもともとピアノでの弾き語りバラードナンバーなんかがあったりして、そういう曲ももちろん魅力的なのですが弾き語りライブならではの新しさはありません。その一方、この弾き語りライブならではなのがバンドアレンジの曲をピアノ1本で聴かせるナンバーでしょう。本作で典型的なのが「桜ナイトフィーバー」。原曲はディスコアレンジのダンスナンバーなのですが、こちらはピアノ1本での弾き語りでかなり意外性があります。その結果、バンドアレンジでは見えにくかった楽曲のメロディーラインや歌詞の魅力をより感じることができるライブアルバムになっています。
そのためこのアルバムは単なるライブアルバムというよりは、ピアノ1本でのアレンジによるリミックスアルバムという見方もできるかもしれません。原曲とはまた違う、ピアノのみのアレンジだからこそ感じられるKANの曲そのものの魅力をよりよく感じられるアルバム。このライブシリーズからのアルバムが早くも2作目となる理由はそんなところにもあるのかもしれません。
またこのライブアルバムのもうひとつの魅力がカバー音源が収録されていることでしょう。前のライブアルバムでもBilly Joelの「ALLENTOWN」とMr.Childrenの「抱きしめたい」のカバーが収録されていましたが、本作でも再びBilly Joelの「Laura」、そして秦基博の「アイ」が収録されています。KANちゃんの音楽的ルーツと、また邦楽の中で「KAN」的な要素を感じる楽曲のカバー。この2曲のカバーの間に彼のオリジナル作品「MAN」が挟まっているのですが、まったく違和感がありません。それだけKANの楽曲の雰囲気に近い曲を選んでいるということでしょうし、また彼なりにしっかりと彼の楽曲としてアルバムの中で調理しているということなのでしょう。
ライブ音源としては途中、手拍子が入ったり、客を盛り上げたりするシーンはあり、MCは収録していないものの、会場の臨場感を伝えるような録音状態となっています。実は私、彼の通常のライブツアーは何度か足を運んでいるものの、この「弾き語りばったり」シリーズは一度も行ったことがなかったりします。そんな私にもライブの魅力が伝わってくるような1枚・・・うーん、やはり一度「弾き語りばったり」ツアーに行かなくては!KANの魅力の一面を伝えるライブ盤だけに「最初の1枚」としてはお勧めしにくいのですが、一度彼のオリジナルアルバムを聴いて気に入った方にはぜひともチェックしてほしいライブ盤です。
評価:★★★★★
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6×9=53
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