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2016年7月29日 (金)

まさかのメジャーデビュー作

Title:UMA
Musician:水曜日のカンパネラ

個人的に昨年来、もっともはまっているミュージシャン、水曜日のカンパネラ。昨年リリースされたアルバム「ジパング」も、2015年の私的ベストアルバムNo.1としましたが、そこからわずか8ヶ月、早くも新作がリリースされました。それも今回の作品でなんとメジャーデビュー!本作はそんなまさかのメジャーデビューアルバムとなります。

彼女たちの作品はインディーズではかなり挑戦的な作品を続けてリリースされてきました。そんな彼女たちがメジャーデビュー。その作風はどのように変化するのだろう・・・と期待半分不安半分で聴いてみた本作なのですが、これがメジャーデビューで「売れ線」にひよることは全くなし。むしろインディーズ時代の作風以上に挑戦的なアルバムに仕上がっていました。

水曜日のカンパネラといえばいままでの作品でまず目立ったのはコムアイが歌うユーモラスなラップでした。例えば代表曲ともいえる「桃太郎」にしても「千利休」にしても音楽的な出来にも注目は集まっていましたが、コミカルなその歌詞にまずは注目が集まっていました。

それが前作「ジパング」ではケンモチヒデフミのつくるトラックがグッと前に出てきていままで以上に「音楽的」な作品になっていました。さらに今回の作品ではコムアイのユーモラスなラップが後ろ下がり、むしろケンモチヒデフミのトラックがアルバムに主人公に躍り出てきました。

そして1にも2にも、このケンモチヒデフミの作るトラックがカッコイイ!今風の分厚くリズミカルなエレクトロサウンドなのですが、1曲目「チュパカブラ」ではエッジの利いたリズムはファンク的な要素すら感じますし、続く「ツチノコ」もトランシーなリズムながらも音数を絞ったサウンドがスケール感を覚えるナンバーになっています。

3曲目の「雪男イエティ」は序盤とは一風変わり、幽玄なサウンドに和風な雰囲気を感じるトラック。さらに「ユニコ」はピアノを主導としたアコースティックな雰囲気も感じさせるナンバー。悲しげなメロディーラインを前に押し出した「歌モノ」なのですが、それを支えるトラックにもメロディアスな哀愁感を感じさせます。

さらにそのトラックに圧巻されたのが「バク」。序盤はトライバルなビートで盛り上げつつ、途中から複雑さを増すビートに終始惹きつけられます。ケンモチヒデフミがこれでもかというほど好き勝手に作り上げた、という印象を受けるサウンドが実に魅力的でした。

一方残念ながら今回のアルバム、コムアイのユーモラスなラップは影をひそめます。確かにところどころにコムアイが強烈な個性を醸し出しているのは間違いありませんし、「チュパカブラ」や「雪男イエティ」にはユーモラスな歌詞も見受けられます。ただ、「ジパング」以前の作品のような歌詞を期待すると正直肩すかしをくらってしまうようなアルバムだと思いますし、水曜日のカンパネラのポピュラリティーの源泉だったコムアイのラップが後ろに下がってしまったことにより、メジャーデビュー作でありながらもインディー時代の作品よりもポピュラリティーはむしろ後退してしまったという事態が生じています。

しかし、こんなマイナスポイントを補ってあまりがありすぎるほど、本作に収録している楽曲はすごいことになっています。最初から最後までそのサウンドの世界から耳を離せない展開になっていますし、もちろんコムアイの聴かせどころも要所要所にあり、いい味を出しています。そしてそれ以上に水曜日のカンパネラにケンモチヒデフミあり、を主張しているアルバム。いや、まさかこんなにも挑戦的なアルバムをメジャーデビュー作でリリースしてくるとは思いませんでした。

前作からわずか8ヶ月という短いスパンながらも大きな変貌を遂げ、なおかつこれほどレベルの高い作品を2作続けてリリースしてくるとは驚きです。前作に続き間違いなく今年の年間ベスト候補の傑作。水曜日のカンパネラ、とんでもないミュージシャンになりつつあるなぁ。ポップスファン必聴の大傑作です。

評価:★★★★★

水曜日のカンパネラ 過去の作品
私を鬼ヶ島へ連れてって
ジパング

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