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2016年7月25日 (月)

今、もっとも話題のミュージシャン・・・ですが・・・。

Title:BASIN TECHNO
Musician:岡崎体育

最近、もっとも話題となっているミュージシャンの一人、岡崎体育。ミュージックビデオのあるあるをまとめた、本作にも収録されている「MUSIC VIDEO」のPVがYou Tubeでも大ヒットを記録。星野源やセカオワのFukase、きゃりーぱみゅぱみゅといったミュージシャンがTwitterで評価していたりしたことも話題。本作はチャート的にもベスト10入りしてくるなど、ブレイクを果たしています。

Amazonのレビューでも高評価を受けていますし、各種音楽メディアでも絶賛。まさに評価、人気面いずれにおいてももっとも勢いのあるミュージシャンのひとりといっていいでしょう。

でもごめん、そういう状況をわかっていてはっきり言わせてもらうんだけど

これ、本当におもしろい??

正直な話、聴いていてイラっと来ました。

彼の歌詞の大きな特徴として「メタ視点」というのがあげられます。「MUSIC VIDEO」におけるあるあるネタなどは典型例ですし、ただ楽曲の構成を歌詞にしただけの「Expain」という曲もありますし、ライブ中のミュージシャンの心の声を歌詞にした「Voice of Heart」なんて曲もあります。

でも、この「メタ視点」的な歌詞が非常にイラっと来ます。そもそもメタ視点からの笑いということ自体、まったく目新しさはありませんし、ミュージックシーンでもマキタスポーツが既に取り組んでいるネタで、もっと言えばここでもよく取り上げるKANがよくやる特定のミュージシャンの特徴を曲に取り込んだ「物まね」ネタもまさにメタ視点。そういう意味では「よくありがち」という印象を受けます。

さらに「メタ視点」というネタ、ともすれば「私はこんなに客観的に物事を見れるんだよ」という上から目線を感じてしまうのですが、彼の楽曲に関して感じたのはまさにこれ。ちょっと慣れ慣れしいような歌い方もどこか上から目線を感じますし、聴いていてかなりイラっと来ました。

よくよく考えれば昨今の音楽シーン、この「自分はわかってますよ」的な「メタ視点」の論評が目立つような感じがします。よくも悪くも一歩さがって醒めたような見方。特にネットが普及して万人が評論家と化した現在、こんなサイトを運営している私が言うのも何なのですが、リスナーがどこか一歩下がったような評価で曲を聴いていて、昔のように「ロックこそ最高」のようなある種のこだわりを持った聴かれ方をするケースが少なくなってしまったように感じます。

個人的には以前からそんな音楽に対する一歩下がったような見方に関して疑問を抱いている部分があったのですが、まさに彼の書く「メタ視点」の歌詞は私が疑問に思っている音楽に対する「聴き方」を体現化してしまっている内容。正直、「MUSIC VIDEO」のようなあるあるネタも食傷気味ですし、ほかの曲に関しても最初から最後までクスリともできませんでした。

サウンドに関しては彼曰く「盆地テクノ」と命名したテクノポップよりのエレクトロサウンド。比較的、トランスの要素も多いように感じます。こちらは歌詞に関してしっかりと真面目に作りこまれたサウンドになっているのですが、歌詞で感じた「イラっ」を解消できるほどのインパクトは残念ながらありませんでした。

最後の2曲「スペツナズ」「エクレア」は真面目な内容でメロディアスなポップソングになっていて好印象だったのですが・・・こちらに関してもアルバム全体の印象を覆すほどの内容ではありませんでした。

このアルバムの印象を一言で言ってしまうと、私がここ最近のミュージックシーンに対して感じている違和感を凝縮して体現化してしまったアルバム。最初から最後まで違和感のぬぐえないアルバムでした。

評価:★★

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アルバムレビュー(邦楽)2016年」カテゴリの記事

コメント

ゆういちさん、こんばんは。

僕は今回のCDを聴いた感想は『僕は気に入ったけど、これゆういちさんにはハマらないだろうな』だったんですが、想像以上の酷評にビックリしてます。

でも最後の2曲に関しては好印象を持ってくれたみたいでそこはよかったです。
(岡崎体育自身本当にやりたいのは『スペツナズ』のような真面目路線の曲なので)

まあ今は、あざとかろうが何だろうがたのしめればそれでいいって考えが主流なんだと思います。

投稿: 通りすがりの読者 | 2016年7月26日 (火) 00時05分

>通りすがりの読者さん
アレンジやメロ自体はそれなりに良かったと思います。それだけに真面目路線の曲については悪くありませんでした。ただ正直、歌詞に関しては「なにがおもしろいのかわからない」というよりも「なにをおもしろがせようとしているかわかった上でおもしろくない」んですよね。申し訳ないんですが・・・。
>あざとかろうが何だろうがたのしめればそれでいいって考えが主流
個人的にはやはりこの風潮に関しては少々疑問です。まあリスナー側はそれでもいいと思うのですが、演っている側はある種の「こだわり」をもってほしいと思うんですよね・・・。

投稿: ゆういち | 2016年8月 1日 (月) 23時23分

お久しぶりです(;´д`)

『MUSIC VIDEO』がもろにそうなのですが、音源だけじゃなく、さういうギミックがないと、売れない時代なのかもしれませんね…

投稿: yono | 2016年8月 2日 (火) 23時59分

>yonoさん
そうなんですよね。そういうギミックがないと売れないというのはとても寂しいような感じがします・・・。

投稿: ゆういち | 2016年8月10日 (水) 01時03分

はじめまして。
アルバムを聞いてイラっとした感覚を余りにも的確に説明してくれていて驚いたのでコメントします。

この人のメタ視点の使い方は本当に上手くないですよね。
僕が思ったのはメタ視点のためだけのメタ視点に腹がたちました。

例えば僕もKANが好きなんですけど、「英語でゴメン」「Happy Time Happy Song」「IDEA」あたりはメタ視点を入れることが他の歌詞をより強固なものにする上手さがあります。

じゃあ岡崎体育の場合はというと別に何の作用もしない、ただ単に笑いを取るだけの手段です。
そもそもメタ視点って要は反則技な訳で、それを主軸にしちゃうのはネタものとしても誠実だとはとても思えないです。

吉澤嘉代子のアルバムでコラボしているものは割と良かっただけにこういう路線で行くのは勿体無いです。

ちなみに昨日のMステにも出てましたがとっても残念なパフォーマンスでした。でもツイッターでは面白いとつぶやく人が多数。

多分もう引き返せないとこまで来ちゃいましたね。


投稿: らいおん | 2016年10月15日 (土) 18時39分

>らいおんさん
はじめまして。共感していただいてありがとうございます。
そう、確かにこの人のメタ視点って、ただメタ視点だけが「オチ」であって他に何も機能していないんですよね。
ご指摘の通り、KANちゃんってメインとなる主張をサポートするためのメタ視点といった感じですよね。彼って、電気グルーヴに影響を受けているみたいで、確かに電気グルーヴもトークなどは世の中を斜めから見たような醒めた視点が多いんですが、ただ彼らって音楽に関しては非常に誠実で、醒めたような視点どころかむしろ熱さすら感じるんですよね・・・。
Mステのパフォーマンスは見ていないんですが、このメタ視点が受けているあたり、個人的に早速の風潮にかなり違和感を覚える部分なのですが・・・「真面目」な曲に関しては悪くないだけに非常に残念です。

投稿: ゆういち | 2016年10月15日 (土) 23時33分

恐らくこういうのって音楽に限った話ではないんでしょうね。
映画「亡国のイージス」、「ローレライ」、「ガンダムUC」の原作者の福井晴敏氏が
今のコンテンツはお粥化していると発言したこともあります。受け手が咀嚼(理解しようと考える)を
しなくてもいいものが多いというような内容だったかと。

別に何も考えずに楽しめるコンテンツがある分には別に問題ないと思いますが
そういうコンテンツばかりになってしまうことには危惧を覚えています

投稿: Toshi | 2016年10月17日 (月) 01時24分

>Toshiさん
コンテンツのお粥化という言い方はいいえて妙ですね。確かに無駄にわかりやすさばかりを求めるコンテンツが多いように思います。特に日本のコンテンツは説明過多なような気がしますし。そういうコンテンツも悪くはないけど、そればかりになると嫌だなぁ。

投稿: ゆういち | 2016年10月22日 (土) 01時14分

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