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2016年7月30日 (土)

雰囲気はいつものレッチリと異なれど

Title:The Getaway
Musician:Red Hot Chili Peppers

賛否両論。レッチリのニューアルバムに関してはまさにそんな言葉がピッタリ来るアルバムになっています。約5年ぶりとなる新作で話題となったのはまずそのスタッフ勢。プロデューサーにはGorillazやBeckなどのプロデュースで知られるデンジャー・マウスを起用。さらにミックスにRADIOHEADのプロデューサーとしても知られるナイジェル・ゴッドリッチを起用しています。

そんな非常に豪華な顔ぶれが参加した今回のアルバムが賛否両論なのは何よりもいかにもなレッチリらしさがあまり感じられないという点が大きいのではないでしょうか。レッチリといえばこれでもかというほどのファンキーなバンドサウンド。さらには否応なく耳を惹くインパクトあるメロディーライン。そんなレッチリらしい雰囲気がこのアルバムではあまり感じられません。

今回のアルバムに関してまず感じるのは楽曲が非常に落ち着いているという点でした。1曲目はタイトルチューンの「The Getaway」からスタートするのですが、バンドサウンドにしろメロディーラインにしろかなり抑えめという印象。2曲目の「Dark Necessities」にしてもメロディー主体でバンドサウンドは控えめ。その後も例えば「The Longest Wave」にしてもメランコリックで静かなギターサウンドで聴かせるナンバーになっています。

全体的には非常に都会的で洗練された大人のサウンドという印象を感じられる今回のアルバム。ゴリゴリしたファンキーなバンドサウンドを求めたとしたら物足りなさも感じられてしまうのではないでしょうか。デンジャー・マウスとナイジェル・ゴッドリッチの起用がもろにサウンドに影響したようなアルバムになっているのですが、それが今回のアルバム、賛否両論となっている大きな理由となっています。

ただ、じゃあ今回のアルバム、レッチリらしい部分が全くないアルバムになってしまったか、と言われるとそうではなく、個人的にはむしろレッチリの良さは間違いなくアルバムの中で強く感じられたアルバムになっていたと思います。

バンドサウンド的に全面に出てきているわけではないのですがファンキーなリズムはアルバム全体でしっかりと貫かれており、非常にグルーヴ感あふれるサウンドを作り上げています。例えば前述の「The Getaway」が典型的。決してバンドサウンドを前面に押し出しているわけではないのですが、しっかりとファンキーなリズムを刻んでおり、そのグルーヴ感は抑えめなサウンドなだけにむしろ強く感じられます。

他にも「Sick Love」「Feasting on the Flowers」などもミディアムテンポのナンバーなのですがレッチリらしいファンキーなサウンドはしっかりと聴かせてくれていますし、最後を締めくくる「Dreams of a Samurai」もそのグルーヴ感が非常に心地よいナンバーになっています。

ちなみにバンドサウンドという意味では「Detroit」のようなへヴィーなバンドサウンドをきちんと聴かせてくれるようなナンバーもありますし、また「Go Robot」のようなディスコ調のナンバーが入っていたりするのもユニーク。全体的にミディアムテンポのナンバーが多く、地味目な印象もあるかもしれませんが、しっかりと聴かせどころも詰まったアルバムになっています。

そんな感じでいかにもなレッチリらしさは薄いもののしっかりと彼らの魅力はつまったアルバムになっている本作。個人的にはむしろレッチリの魅力の部分だけをしっかりと凝縮したアルバムにようにすら感じられ、前作よりもお気に入りかも。賛否両論とはいえ間違いなくレッチリの魅力を強く感じられる傑作です。

評価:★★★★★

Red Hot Chili Peppers 過去の作品
I'm With You
2012-13 LIVE EP

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アルバムレビュー(洋楽)2016年」カテゴリの記事

コメント

子の新作を聴いていてもの悲しさをいつも以上に感じたのは僕だけでしょうか?

投稿: ひかりびっと | 2016年7月31日 (日) 09時53分

>ひかりびっとさん
確かに。このアルバム、メランコリックな雰囲気も感じられ、物悲しさを感じる部分もありますね~。

投稿: ゆういち | 2016年8月 1日 (月) 23時39分

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