暗闇よこんにちは
Title:Hello darkness,my dear friend
Musician:ART-SCHOOL
2014年12月に活動休止を発表。翌年の2月には活動休止前のラストライブを行うものの、その年の年末の「COUNT DOWN JAPAN」では早くも復活。活動休止期間の短さに「何じゃそりゃ?」という感じもしないではないのですが、ただボーカルでバンドの中心メンバーである木下理樹はその間に自主レーベル「Warszawa-Label」を立ち上げており、この2年ぶりとなる新作はその自主レーベルからのリリースとなっています。
そんな自主レーベルからのリリースとなった本作ですが、基本的なスタイルはいつものART-SCHOOLと変わりありません。美しくも切なさを感じさせるメロディーラインとそこで歌われる木下理樹のボーカルは、若干ヘタウマテイストであるものの歌を届けたいという気持ちがストレートに伝わる、自らの心境をストレートに伝えてくるような歌声が印象に残ります。
またご存じの通り2012年からART-SCHOOLは木下理樹と戸高賢史の2人組となっていますが、バンドサウンドは希薄気味。1曲目「android and i」も打ち込みのリズムからスタートしていますが、他にも例えば「Melt」などガレージテイストのへヴィーなギターサウンドが主導しているナンバーながらもストリングスの音色を入れてきていたり、同じく「Luka」もストレートなオルタナ系ギターロックながらもストリングスを入れて音を分厚くしてきたりとバンドにこだわらない自由な音作りを感じます。2人組になって、木下理樹の趣味が反映されたように、楽曲に幅広さが加わりましたが、今回のアルバムも自由度の高さを感じる作品になっていました。
さて、加えて今回のアルバムで印象的だったのがその歌詞の世界。今回のアルバムの歌詞を表現するならば「二人きりの孤独」といったイメージでしょうか。僕と君という2人の存在が、暗闇のような現実の中でお互いに思い合いながら、その向こうにある希望に手を伸ばそうとしている、そんな歌詞が印象に残ります。タイトルを直訳すると「親愛なる友よ、暗闇よこんにちは」といった感じでしょうか。まさにそのタイトル通りの歌詞の世界が繰り広げられていました。
例えば「broken eyes」あたりが典型的でしょうか
「僕等はきっと 偶然きっと
この暗闇に産まれ落ちた
光のほうへ ただ伸ばすんだ
繋いだ手だけ 離さぬ様に」
(「broken eyes」より 作詞 木下理樹)
などという歌詞が心に残ります。全体的に非常に物悲しさと、そして同時に純粋さを感じさせる歌詞が美しいメロディーラインにもマッチ。ART-SCHOOLらしさを強く感じさせてくれました。
ここ数作、ずっと気になっている楽曲のインパクト不足、特にコアになるような曲がないという弱点は残念ながら本作でも残ってしまっておりそこがマイナス点。ただ一方、ART-SCHOOLらしさが良い形でしっかりあらわれた作品だったとも思います。ある種のバンドとしての安定感も感じる良作でした。
評価:★★★★
ART-SCHOOL 過去の作品
Ghosts&Angels
ILLMATIC BABY
14 SOULS
Anesthesia
BABY ACID BABY
The Alchemist
YOU
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