« まさかの8年ぶりの復活 | トップページ | 20年間、変わらず »

2016年7月10日 (日)

今回のタイトルは短め

Title:『閾』
Musician:te'

ダイナミックなサウンドでリスナーを圧倒しつつ独特の世界観を築き上げているポストロックインストバンドte'。前作からわずか8ヶ月というインターバルでリリースされた新作は彼ら初となるミニアルバム。いままで含蓄のある長いセンテンスによるアルバムタイトルが特徴的だったのですが、本作は漢字1文字によるアルバムタイトル。これで「しきみ」と読むらしいです。

さてこのミニアルバムはわずか5曲、17分という短さなのですが、その間に様々なバリエーションあふれる音の世界が繰り広げられるのが特徴的。まず、アルバムがスタートすると、いきなりエレクトロのサウンドからスタートして驚かされます。もっとも途中からノイジーでへヴィーなギターサウンドがはじまり、te'らしい音が聴こえるのですが、この1分強のイントロ的ナンバー「『眩暈』」では終始エレクトロのサウンドが鳴り響く、te'のイメージからすると少々意外な雰囲気の曲からスタートします。

続く2曲目「雨滴は重力を信仰し、その軌跡は官能を伴い世界を『紗』で覆う。」は複雑な変拍子のリズムが耳を惹く、彼ららしいダイナミックなギターロックナンバー。ただ4分弱の長さといい、はっきりしたメロディーラインといい、その複雑なリズムにも関わらずポップで聴きやすいという印象を受ける楽曲になっています。

この複雑なリズムとは逆だったのが4曲目「具体を脱ぎ捨て潜勢を放てば、有為転変は『虚体』の夢に収斂す。」。テンポよい軽快な16ビートのドラムのリズムが耳を惹くナンバー。ほどよくノイジーなギターサウンドにもポップスさを感じられ、いわば「のりやすい」ナンバーになっています。

そして最後を飾る「彫琢した理念は音に宿り、感受する聴衆を『桎梏』から開放する。」は最初はちょっと幻想的な雰囲気の静かなギターからスタート。徐々に音が大きくダイナミズムさを増していき、最後はギターサウンドを埋め尽くして楽曲は終了。最後は彼ららしいリスナーを圧巻する音世界を展開してアルバムは幕を下ろします。

非常に複雑なサウンドに、インストという取っつきにくい形態ながらも、どの曲も3分程度、長くて5分という短さに、意外とポップなメロディーラインで決して「マニア受け」に留まらないポピュラリティーを持ったアルバム。ただ前作は比較的ポップにまとめあげていたのに対して今回はポップな側面を前に出した作品もあるものの、te'らしい楽曲のダイナミズムさもきちんと発揮していたアルバムになっていました。わずか5曲の長さながらもte'の魅力がしっかり伝わってくる作品。その音世界に思わず釘づけになってしまいました。

評価:★★★★★

te' 過去の作品
まして、心と五感が一致するなら全て最上の「音楽」に変ずる。
敢えて、理解を望み縺れ尽く音声や文字の枠外での『約束』を。
ゆえに、密度の幻想は綻び、蹌踉めく世界は明日を『忘却』す。
其れは、繙かれた『結晶』の断片。或いは赫奕たる日輪の残照。

|

« まさかの8年ぶりの復活 | トップページ | 20年間、変わらず »

アルバムレビュー(邦楽)2016年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 今回のタイトルは短め:

« まさかの8年ぶりの復活 | トップページ | 20年間、変わらず »