20年間、変わらず
Title:The Blue Boy
Musician:カジヒデキ
永遠の少年、カジヒデキのニューアルバム。もともとブリッジというバンドでデビューし、その後ソロデビュー。そのソロデビュー作「MUSCAT E.P.」から今年でちょうど20年。その20周年記念のアルバムが本作です。しかしソロから20年。バンドデビューからはもう27年ですか・・・。それ以上に驚いたのはそんなカジヒデキは今年で49歳(!)。来年はもう50歳になるという事実・・・信じられない・・・(^^;;
そんな彼を「永遠の少年」と評する最大の理由、それは20年の間、その音楽性にほとんど変化がないという点でしょう。ご存じの通り、彼の奏でるサウンドは「ザ・渋谷系」とでも言うべきネオアコポップ。私が彼の楽曲をはじめて聴いたのは1997年にリリースされスマッシュヒットを記録した「ラ・ブーム~だってMY BOOM IS ME~」なのですが、そこから本作に至るまで楽曲の音楽性に大きな変化はありません。
もちろん20年間、そのスタイルを大きく変化させずに貫くミュージシャンも珍しくはありません。ただ彼の奏でるネオアコの音楽は渋谷系というある意味90年代を代表する音楽をそのまま体現化するスタイル。時代にピッタリと寄り添ったような音楽で、その後の過程においては「時代遅れ」のように捉えられることも少なくなく、90年代に同じようなネオアコのサウンドを奏でていたミュージシャンの多くは既に活動を休止していたり、あるいはそのスタイルを変えたりしています。
しかしそんな中でもカジヒデキは全くそのスタイルを変えることなく、かつ20年の間、活動を長期間休止することなく楽曲をリリースし続けています。今回のアルバムに関しても例えば「ヒーローは君と僕」など、タイトルからして90年代っぽさを感じさせる甘酸っぱい歌詞の爽快なネオアコチューン。さらに「5時の渋谷で!」なんていう、彼のイメージである「渋谷系」を逆手にとったようなタイトルのナンバーすらあります。20年間、変わっていないという事実を逆にしっかりと受け止めて、それを彼のアイデンティティにすらしている感もあります。正直なところ音楽的な目新しさはほとんどありませんが、いい意味で安心して聴ける、爽やかなポップチューンが並んだ良作になっています。
ただあえて言えば今回のアルバムでは比較的、ギターサウンドが目立った作品が多かったように感じます。「東京CITYセレナーデ」ではガレージっぽいギターサウンドが入っていますし、「はじめての初夏の恋」などもギターサウンドが目立つナンバー。もっとも、少々ロック風というだけで、基本路線、いつものカジヒデキと大きく変わりません。
ま、いうなれば「大いなるマンネリ」といった感じでいつも通り安心して聴けるアルバムになっていたと思います。おそらくこれから先も、彼が50歳、60歳になってもこのスタイルは変わらないんだろうなぁ。それはそれである種の覚悟がいることではあるので、素晴らしいことだとは思います。これからもおそらく珠玉のポップソングを届けてくれるであろう彼の活動に期待です。
評価:★★★★
カジヒデキ 過去の作品
LOLIPOP
STRAWBERRIES AND CREAM
TEENS FILM(カジヒデキとリディムサウンター)
BLUE HEART
Sweet Swedish Winter
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