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2016年7月

2016年7月31日 (日)

aikoらしいアルバム

Title:May Dream
Musician:aiko

aikoの2年ぶりとなるニューアルバム。「May Dream」という今回のタイトルはどこかで聴いたことあるようなないような微妙なタイトルなのですが、これは彼女の造語だとか。「May」という単語には「可能」という意味があるので、これに「Dream」=「夢」という言葉をくっつけ「夢がかなう」という意味の造語だそうです。

そんな彼女のニューアルバムですが、一言で言ってしまうとaiko節がさく裂しているアルバムに仕上がっていました。aiko節というのは彼女の大きな特徴であるブルーノートを駆使した独特の節回しのこと。彼女の音楽的遍歴やアレンジからは全くブラックミュージックの影響を感じないのにも関わらず、彼女の書くメロディーラインは実にブルース的なのがaikoの大きな魅力のひとつと思っています。

今回のアルバムでいえば1曲目を飾る「何時何分」などはまさにいかにもaiko節の節回しが特徴的。出だしはアカペラからスタートするのですが、この出だしのフレーズだけで非常にaikoらしさを感じます。

そういう観点からすると「夢見る隙間」などもaikoらしいメロディーラインが特徴的。アレンジは裏打ちのリズムで軽快なジャズ風のサウンドを奏でる楽しいナンバーなのですが、aikoらしい独特の節回しが耳を惹きます。

こういう彼女らしいブルーノートを多用したメロディー展開は今回のアルバムに限らず彼女の曲には要所要所に聴かれ、aikoらしさを構成する大きな要素となっています。ただ今回のアルバムに関してはそんな彼女の特徴がより多くの曲で目立ったように感じました。それはまたすなわち、実にaikoらしい作品であった、ということだと思います。

もちろんそんなメロディーライン以外にも魅力となる部分はたくさん。例えば前述のジャズ風の「夢見る隙間」やロックに仕上げた「あたしの向こう」、ピアノバラードの「愛だけは」などバリエーションのあるサウンド。歌詞にしても切ない恋人との別れをストレートな心境でつづった「もっと」や生きていくことの不安、そして希望を歌った歌詞が印象的な「かけらの心」など心に残る歌詞の曲も多く収録されています。

良質なポップソングのアルバムとしていい意味で卒の無い内容。aikoらしい魅力のあふれる傑作だったと思います。安心してくれるポップアルバムながらも独特の節回しに気が付けばはまってしまう、そんな傑作でした。

評価:★★★★★

aiko 過去の作品
秘密
BABY
まとめI
まとめII

時のシルエット
泡のような愛

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2016年7月30日 (土)

雰囲気はいつものレッチリと異なれど

Title:The Getaway
Musician:Red Hot Chili Peppers

賛否両論。レッチリのニューアルバムに関してはまさにそんな言葉がピッタリ来るアルバムになっています。約5年ぶりとなる新作で話題となったのはまずそのスタッフ勢。プロデューサーにはGorillazやBeckなどのプロデュースで知られるデンジャー・マウスを起用。さらにミックスにRADIOHEADのプロデューサーとしても知られるナイジェル・ゴッドリッチを起用しています。

そんな非常に豪華な顔ぶれが参加した今回のアルバムが賛否両論なのは何よりもいかにもなレッチリらしさがあまり感じられないという点が大きいのではないでしょうか。レッチリといえばこれでもかというほどのファンキーなバンドサウンド。さらには否応なく耳を惹くインパクトあるメロディーライン。そんなレッチリらしい雰囲気がこのアルバムではあまり感じられません。

今回のアルバムに関してまず感じるのは楽曲が非常に落ち着いているという点でした。1曲目はタイトルチューンの「The Getaway」からスタートするのですが、バンドサウンドにしろメロディーラインにしろかなり抑えめという印象。2曲目の「Dark Necessities」にしてもメロディー主体でバンドサウンドは控えめ。その後も例えば「The Longest Wave」にしてもメランコリックで静かなギターサウンドで聴かせるナンバーになっています。

全体的には非常に都会的で洗練された大人のサウンドという印象を感じられる今回のアルバム。ゴリゴリしたファンキーなバンドサウンドを求めたとしたら物足りなさも感じられてしまうのではないでしょうか。デンジャー・マウスとナイジェル・ゴッドリッチの起用がもろにサウンドに影響したようなアルバムになっているのですが、それが今回のアルバム、賛否両論となっている大きな理由となっています。

ただ、じゃあ今回のアルバム、レッチリらしい部分が全くないアルバムになってしまったか、と言われるとそうではなく、個人的にはむしろレッチリの良さは間違いなくアルバムの中で強く感じられたアルバムになっていたと思います。

バンドサウンド的に全面に出てきているわけではないのですがファンキーなリズムはアルバム全体でしっかりと貫かれており、非常にグルーヴ感あふれるサウンドを作り上げています。例えば前述の「The Getaway」が典型的。決してバンドサウンドを前面に押し出しているわけではないのですが、しっかりとファンキーなリズムを刻んでおり、そのグルーヴ感は抑えめなサウンドなだけにむしろ強く感じられます。

他にも「Sick Love」「Feasting on the Flowers」などもミディアムテンポのナンバーなのですがレッチリらしいファンキーなサウンドはしっかりと聴かせてくれていますし、最後を締めくくる「Dreams of a Samurai」もそのグルーヴ感が非常に心地よいナンバーになっています。

ちなみにバンドサウンドという意味では「Detroit」のようなへヴィーなバンドサウンドをきちんと聴かせてくれるようなナンバーもありますし、また「Go Robot」のようなディスコ調のナンバーが入っていたりするのもユニーク。全体的にミディアムテンポのナンバーが多く、地味目な印象もあるかもしれませんが、しっかりと聴かせどころも詰まったアルバムになっています。

そんな感じでいかにもなレッチリらしさは薄いもののしっかりと彼らの魅力はつまったアルバムになっている本作。個人的にはむしろレッチリの魅力の部分だけをしっかりと凝縮したアルバムにようにすら感じられ、前作よりもお気に入りかも。賛否両論とはいえ間違いなくレッチリの魅力を強く感じられる傑作です。

評価:★★★★★

Red Hot Chili Peppers 過去の作品
I'm With You
2012-13 LIVE EP

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2016年7月29日 (金)

まさかのメジャーデビュー作

Title:UMA
Musician:水曜日のカンパネラ

個人的に昨年来、もっともはまっているミュージシャン、水曜日のカンパネラ。昨年リリースされたアルバム「ジパング」も、2015年の私的ベストアルバムNo.1としましたが、そこからわずか8ヶ月、早くも新作がリリースされました。それも今回の作品でなんとメジャーデビュー!本作はそんなまさかのメジャーデビューアルバムとなります。

彼女たちの作品はインディーズではかなり挑戦的な作品を続けてリリースされてきました。そんな彼女たちがメジャーデビュー。その作風はどのように変化するのだろう・・・と期待半分不安半分で聴いてみた本作なのですが、これがメジャーデビューで「売れ線」にひよることは全くなし。むしろインディーズ時代の作風以上に挑戦的なアルバムに仕上がっていました。

水曜日のカンパネラといえばいままでの作品でまず目立ったのはコムアイが歌うユーモラスなラップでした。例えば代表曲ともいえる「桃太郎」にしても「千利休」にしても音楽的な出来にも注目は集まっていましたが、コミカルなその歌詞にまずは注目が集まっていました。

それが前作「ジパング」ではケンモチヒデフミのつくるトラックがグッと前に出てきていままで以上に「音楽的」な作品になっていました。さらに今回の作品ではコムアイのユーモラスなラップが後ろ下がり、むしろケンモチヒデフミのトラックがアルバムに主人公に躍り出てきました。

そして1にも2にも、このケンモチヒデフミの作るトラックがカッコイイ!今風の分厚くリズミカルなエレクトロサウンドなのですが、1曲目「チュパカブラ」ではエッジの利いたリズムはファンク的な要素すら感じますし、続く「ツチノコ」もトランシーなリズムながらも音数を絞ったサウンドがスケール感を覚えるナンバーになっています。

3曲目の「雪男イエティ」は序盤とは一風変わり、幽玄なサウンドに和風な雰囲気を感じるトラック。さらに「ユニコ」はピアノを主導としたアコースティックな雰囲気も感じさせるナンバー。悲しげなメロディーラインを前に押し出した「歌モノ」なのですが、それを支えるトラックにもメロディアスな哀愁感を感じさせます。

さらにそのトラックに圧巻されたのが「バク」。序盤はトライバルなビートで盛り上げつつ、途中から複雑さを増すビートに終始惹きつけられます。ケンモチヒデフミがこれでもかというほど好き勝手に作り上げた、という印象を受けるサウンドが実に魅力的でした。

一方残念ながら今回のアルバム、コムアイのユーモラスなラップは影をひそめます。確かにところどころにコムアイが強烈な個性を醸し出しているのは間違いありませんし、「チュパカブラ」や「雪男イエティ」にはユーモラスな歌詞も見受けられます。ただ、「ジパング」以前の作品のような歌詞を期待すると正直肩すかしをくらってしまうようなアルバムだと思いますし、水曜日のカンパネラのポピュラリティーの源泉だったコムアイのラップが後ろに下がってしまったことにより、メジャーデビュー作でありながらもインディー時代の作品よりもポピュラリティーはむしろ後退してしまったという事態が生じています。

しかし、こんなマイナスポイントを補ってあまりがありすぎるほど、本作に収録している楽曲はすごいことになっています。最初から最後までそのサウンドの世界から耳を離せない展開になっていますし、もちろんコムアイの聴かせどころも要所要所にあり、いい味を出しています。そしてそれ以上に水曜日のカンパネラにケンモチヒデフミあり、を主張しているアルバム。いや、まさかこんなにも挑戦的なアルバムをメジャーデビュー作でリリースしてくるとは思いませんでした。

前作からわずか8ヶ月という短いスパンながらも大きな変貌を遂げ、なおかつこれほどレベルの高い作品を2作続けてリリースしてくるとは驚きです。前作に続き間違いなく今年の年間ベスト候補の傑作。水曜日のカンパネラ、とんでもないミュージシャンになりつつあるなぁ。ポップスファン必聴の大傑作です。

評価:★★★★★

水曜日のカンパネラ 過去の作品
私を鬼ヶ島へ連れてって
ジパング

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2016年7月28日 (木)

2週連続1位

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

見事2週連続1位を獲得です。

今週1位は先週に引き続き西野カナ「Just LOVE」が獲得。先週の12万6千枚から4万7千枚に売上を落としましたが、新作が少ない週であったことから見事2週連続の1位獲得となりました。

新作で最高位はJUNHO(From 2PM)「DSMN」で2位初登場。韓流のアイドルグループ2PMのメンバーによるソロ作。日本盤としては4作目となる6曲入りのミニアルバムとなります。初動売上4万5千枚で前作「SO GOOD」の4万8千枚(3位)より若干のダウンとなります。

3位初登場はジャニーズ系のアイドルグループA.B.C.-Z「ABC STAR LINE」。「旅」をテーマとした3枚目となるオリジナルアルバム。初動売上3万1千枚は前作「A.B.Sea Market」の初動4万7千枚(1位)よりダウン。ジャニーズ系のグループとしてはちと寂しい売上枚数となっています。

続いて4位以下の初登場盤です。上にも書いた通り、今週は初登場盤が少なく、初登場はあと2枚のみ。それも次の初登場は9位。GLIM SPANKY「Next One」がランクインです。GLIM SPANKYはシングルアルバム通してこれが初のベスト10入りとなった男女2人組のロックデゥオ。ルーツロック志向のサウンドを奏でており、ちょっとSuperflyに重なる部分が・・・。初動売上は6千枚。前作「ワイルド・サイドを行け」は初動3千枚(31位)だったので倍増で見事ベスト10ヒットとなりました。映画「ONE PIECE FILM GOLD」の主題歌「怒りをくれよ」が収録されており、タイアップ効果が大きかった模様です。

初登場最後は10位。柴咲コウ「続こううたう」がランクインです。柴咲コウによるカバーアルバム第2弾。井上陽水の「少年時代」や坂本九の「上を向いて歩こう」のようなちょっとベタな選曲もあるのですが、個人的に目をひいたのがELLISの「千の夜と一つの朝」。わぁ、懐かしい!大ヒットは記録しなかったのですが、「ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!」のテーマ曲として話題になったんですよね。好きな曲だったんですよね。この選曲だけで気になってしまいます。アルバムのベスト10入りは2011年の「CIRCLE CYCLE」以来3作ぶり。ただし初動売上は6千枚は前作のカバーアルバム第1弾「こううたう」の7千枚(12位)からダウンしています。

今週、初登場は以上ですがベスト10圏外からの返り咲きが2枚ランクインしています。まず6位に韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「FIRST ‘LOVE & LETTER’」が先週の29位からランクアップしベスト10入り。売上も2千枚から9千枚に大幅アップ。これはもともとのアルバムに新曲を加えた「リパッケージアルバム」が7月14日にリリースされた影響のようです。

また8位には「HiGH & LOW ORIGINAL BEST ALBUM」が先週の11位からランクアップで2週ぶりにベスト10返り咲き。ただし売上は8千枚から7千枚にダウンしており、新譜が少なかったことから相対的に順位をあげてきた模様です。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2016年7月27日 (水)

3週続けてジャニーズ系

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

これで3週連続ジャニーズ系が1位となりました。今週1位はKinki Kids「薔薇と太陽」。作詞作曲はTHE YELLOW MONKEY再結成でも話題の吉井和哉。彼らしい哀愁感たっぷりの歌謡曲テイストの強いナンバー。タイトルも吉井和哉っぽいですね。CD・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)で1位、PCによるCD読取数及びTwitterのつぶやき数も2位。CD発売にあわせて先週の65位からランクアップし、3週目にして1位獲得です。オリコンでも1位獲得。初動売上19万3千枚は前作「夢を見れば傷つくこともある」の15万4千枚(1位)からアップしています。

2位にランクインしたのはEXILEの事務所LDH所属女性アイドルグループによる合同ユニットE-Girls「E.G.summer RIDER」がランクイン。実売数2位、ラジオオンエア3位、PCによるCD読取数、Twitterつぶやき数4位、You Tube再生回数5位と万遍なく上位にランクイン。先週の52位からランクアップし、CD発売にあわせて5週目にしてベスト10入りです。オリコンでも2位初登場。初動売上5万9千枚は前作「Merry × Merry Xmas★」の3万1千枚(4位)からアップ。

3位はAqours「青空Jumping Heart」が初登場にしてベスト3入り。アニメキャラによるアイドルプロジェクト「ラブライブ!サンシャイン!!」登場キャラによるユニット。アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」オープニング・テーマ。典型的な90年代J-POPなアイドルチューン。実売数は1位ですがPCによるCD読取数では見事1位獲得。一方、ラジオオンエア数は圏外というあたりがこの手のアニソンらしい感じ。オリコンでは初登場4位。初動売上4万7千枚は前作「恋になりたいAQUARIUM」の4万6千枚(3位)から微増。

続いて4位以下の初登場ですが、まずは4位。男性アイドルグループDa-iCE「パラダイブ」がこの位置。軽快なラテン調ダンスチューン。実売数4位ながらもPCによるCD読取数が82位というあたり複数枚買いが多いような印象。オリコンでは初動4万7千枚で3位初登場。前作「WATCH OUT」の初動3万4千枚(3位)からアップ。

5位は藍井エイル「翼」がランクイン。TBSテレビ系アニメ「アルスラーン戦記 風塵乱舞」オープニング・テーマ。サビからスタートしインパクト満点でダイナミックなマイナーコード主体のメロディーラインは良くも悪くもいかにもアニソンといった感じ。実売数5位に対してPCによるCD読取数が56位と奮いませんが、こちらはiTunesでのチャートが好調なようで、ダウンロードによる売上も多い模様。オリコンでは9位初登場。初動売上1万2千枚は前作「アクセンチュア」の7千枚(14位)から大幅アップ。シングルでのオリコンベスト10入りは2014年の「IGNITE」以来6作ぶり。

6位にはロックバンド10-FEET「アンテナラスト」が入ってきました。先週の72位からランプアップし、3週目にしてベスト10入り。4年9ヶ月ぶりという久々となるシングル。10-FEETの一般的なイメージからちょっと異なるようなしっかりと歌を聴かせる泣きメロのミディアムチューンのナンバー。実売数6位の他、PCによるCD読取数8位を記録。オリコンでは5位初登場。初動売上2万9千枚は前作「その向こうへ」の1万4千枚(8位)よりアップ。シングルのリリーススパンは空きましたが、ライブ活動を中心に確実に人気を伸ばしています。

7位8位は同一シンガーによる配信限定シングルが2作並んでラインクインです。AAAのメインボーカルNissyこと西島隆弘の「ハプニング」が7位、「まだ君は知らない MY PRETTIEST GIRL」が8位にランクイン。いずれも8月24日リリースのアルバム「まだ君は知らない MY PRETTIEST GIRL」からの先行配信となります。「ハプニング」は軽快なR&Bのダンスナンバー、「まだ君は知らない~」はドゥーワップも取り入れた楽しいポップチューンとなっています。実売数は前者が24位、後者が14位ながらも、Twitterのつぶやき数が前者は1位、後者は3位を獲得しており、Hot100では見事ベスト10入りを果たしています。

最後10位には乃木坂46「裸足でSummer」がランクイン。先週の20位からランクアップし、チャートイン4週目にしてベスト10入り。実売数18位を記録しており、先行配信の影響が大きい模様。また他にもTwitterのつぶやき数で7位、You Tube再生数で6位を記録しています。7月27日にCDもリリースされており、来週は1位獲得が予想されます。

今週のHot100は以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2016年7月26日 (火)

KANのアナザー・サイドの魅力

Title:弾き語りばったり #19 今ここでエンジンさえ掛かれば
Musician:KAN

KANのライブといえば、最初から最後まで演出たっぷりに練りこまれた非常にエンタテイメント性高いステージが魅力的です。ここのサイトでも何度かライブレポートで紹介しましたがファンでなくても楽しめる抱腹絶倒のショーとなっています。その一方、そんなライブツアーの合間合間に行われているのが彼がひとりだけでのステージ。「弾き語りばったり」と名付けられたライブシリーズは彼のピアノの弾き語りにより曲をしっかりと聴かせるライブ。通常のライブツアーとはまた異なる魅力あふれるステージも高い人気を呼んでいます。

今回リリースされたアルバムはそのライブツアーの模様を収録したライブアルバム。2008年には同じ「弾き語りばったり」シリーズからのライブアルバムをリリースしていますが、それに続くライブアルバムとなります。通常のライブツアーは映像作品としてリリースされる一方、このようなライブアルバムの形態では発売されていません。一方「弾き語りばったり」シリーズは早くも2枚目となるライブアルバム。それほどKANがこの単身弾き語りライブを重要視しているかもわかります。

このライブアルバムの最大の魅力は、なんといってもピアノ1本での弾き語り。例えば本作でいえば「世界でいちばん好きな人」のようなもともとピアノでの弾き語りバラードナンバーなんかがあったりして、そういう曲ももちろん魅力的なのですが弾き語りライブならではの新しさはありません。その一方、この弾き語りライブならではなのがバンドアレンジの曲をピアノ1本で聴かせるナンバーでしょう。本作で典型的なのが「桜ナイトフィーバー」。原曲はディスコアレンジのダンスナンバーなのですが、こちらはピアノ1本での弾き語りでかなり意外性があります。その結果、バンドアレンジでは見えにくかった楽曲のメロディーラインや歌詞の魅力をより感じることができるライブアルバムになっています。

そのためこのアルバムは単なるライブアルバムというよりは、ピアノ1本でのアレンジによるリミックスアルバムという見方もできるかもしれません。原曲とはまた違う、ピアノのみのアレンジだからこそ感じられるKANの曲そのものの魅力をよりよく感じられるアルバム。このライブシリーズからのアルバムが早くも2作目となる理由はそんなところにもあるのかもしれません。

またこのライブアルバムのもうひとつの魅力がカバー音源が収録されていることでしょう。前のライブアルバムでもBilly Joelの「ALLENTOWN」とMr.Childrenの「抱きしめたい」のカバーが収録されていましたが、本作でも再びBilly Joelの「Laura」、そして秦基博の「アイ」が収録されています。KANちゃんの音楽的ルーツと、また邦楽の中で「KAN」的な要素を感じる楽曲のカバー。この2曲のカバーの間に彼のオリジナル作品「MAN」が挟まっているのですが、まったく違和感がありません。それだけKANの楽曲の雰囲気に近い曲を選んでいるということでしょうし、また彼なりにしっかりと彼の楽曲としてアルバムの中で調理しているということなのでしょう。

ライブ音源としては途中、手拍子が入ったり、客を盛り上げたりするシーンはあり、MCは収録していないものの、会場の臨場感を伝えるような録音状態となっています。実は私、彼の通常のライブツアーは何度か足を運んでいるものの、この「弾き語りばったり」シリーズは一度も行ったことがなかったりします。そんな私にもライブの魅力が伝わってくるような1枚・・・うーん、やはり一度「弾き語りばったり」ツアーに行かなくては!KANの魅力の一面を伝えるライブ盤だけに「最初の1枚」としてはお勧めしにくいのですが、一度彼のオリジナルアルバムを聴いて気に入った方にはぜひともチェックしてほしいライブ盤です。

評価:★★★★★

KAN 過去の作品
IDEAS~the very best of KAN~
LIVE弾き語りばったり#7~ウルトラタブン~
カンチガイもハナハダしい私の人生
Songs Out of Bounds
何の変哲もないLove Songs(木村和)
Think Your Cool Kick Yell Demo!
6×9=53

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2016年7月25日 (月)

今、もっとも話題のミュージシャン・・・ですが・・・。

Title:BASIN TECHNO
Musician:岡崎体育

最近、もっとも話題となっているミュージシャンの一人、岡崎体育。ミュージックビデオのあるあるをまとめた、本作にも収録されている「MUSIC VIDEO」のPVがYou Tubeでも大ヒットを記録。星野源やセカオワのFukase、きゃりーぱみゅぱみゅといったミュージシャンがTwitterで評価していたりしたことも話題。本作はチャート的にもベスト10入りしてくるなど、ブレイクを果たしています。

Amazonのレビューでも高評価を受けていますし、各種音楽メディアでも絶賛。まさに評価、人気面いずれにおいてももっとも勢いのあるミュージシャンのひとりといっていいでしょう。

でもごめん、そういう状況をわかっていてはっきり言わせてもらうんだけど

これ、本当におもしろい??

正直な話、聴いていてイラっと来ました。

彼の歌詞の大きな特徴として「メタ視点」というのがあげられます。「MUSIC VIDEO」におけるあるあるネタなどは典型例ですし、ただ楽曲の構成を歌詞にしただけの「Expain」という曲もありますし、ライブ中のミュージシャンの心の声を歌詞にした「Voice of Heart」なんて曲もあります。

でも、この「メタ視点」的な歌詞が非常にイラっと来ます。そもそもメタ視点からの笑いということ自体、まったく目新しさはありませんし、ミュージックシーンでもマキタスポーツが既に取り組んでいるネタで、もっと言えばここでもよく取り上げるKANがよくやる特定のミュージシャンの特徴を曲に取り込んだ「物まね」ネタもまさにメタ視点。そういう意味では「よくありがち」という印象を受けます。

さらに「メタ視点」というネタ、ともすれば「私はこんなに客観的に物事を見れるんだよ」という上から目線を感じてしまうのですが、彼の楽曲に関して感じたのはまさにこれ。ちょっと慣れ慣れしいような歌い方もどこか上から目線を感じますし、聴いていてかなりイラっと来ました。

よくよく考えれば昨今の音楽シーン、この「自分はわかってますよ」的な「メタ視点」の論評が目立つような感じがします。よくも悪くも一歩さがって醒めたような見方。特にネットが普及して万人が評論家と化した現在、こんなサイトを運営している私が言うのも何なのですが、リスナーがどこか一歩下がったような評価で曲を聴いていて、昔のように「ロックこそ最高」のようなある種のこだわりを持った聴かれ方をするケースが少なくなってしまったように感じます。

個人的には以前からそんな音楽に対する一歩下がったような見方に関して疑問を抱いている部分があったのですが、まさに彼の書く「メタ視点」の歌詞は私が疑問に思っている音楽に対する「聴き方」を体現化してしまっている内容。正直、「MUSIC VIDEO」のようなあるあるネタも食傷気味ですし、ほかの曲に関しても最初から最後までクスリともできませんでした。

サウンドに関しては彼曰く「盆地テクノ」と命名したテクノポップよりのエレクトロサウンド。比較的、トランスの要素も多いように感じます。こちらは歌詞に関してしっかりと真面目に作りこまれたサウンドになっているのですが、歌詞で感じた「イラっ」を解消できるほどのインパクトは残念ながらありませんでした。

最後の2曲「スペツナズ」「エクレア」は真面目な内容でメロディアスなポップソングになっていて好印象だったのですが・・・こちらに関してもアルバム全体の印象を覆すほどの内容ではありませんでした。

このアルバムの印象を一言で言ってしまうと、私がここ最近のミュージックシーンに対して感じている違和感を凝縮して体現化してしまったアルバム。最初から最後まで違和感のぬぐえないアルバムでした。

評価:★★

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2016年7月24日 (日)

安定感の5枚目

Title:Vキシ
Musician:レキシ

前作、本作と連続でベスト10ヒットを記録し、すっかりメジャーミュージシャンの仲間入りを果たした池田貴史のソロプロジェクト、レキシ。デビュー作がリリースされた時は、インパクト重視の一発ギャグ的な企画モノというイメージがあったのですが、その後もまさかに第2弾、第3弾とリリースを続け、気が付けば5枚目のオリジナルアルバムとなる本作。すっかりレキシとしての活動も定着してきました。

そんなレキシとしての作風も、前作から本作にかけてかなり安定してきた感じがします。デビュー当初はより強かったファンク的な要素が後退し、変わりに楽曲のバリエーションが増し、インパクトあるポップな作品が増えたような印象を受けます。例えば本作にしてもニューオリンズ風で軽快な「古今 to 新古今」や歌謡ロックテイストの「SHIKIBU」、森の石松さんこと松たか子がボーカルに加わり感情たっぷりに歌い上げるポップナンバー「最後の将軍」など、1曲1曲が別々のスタイルでリスナーを楽しませてくれるバラエティーに富んだ構成となっています。

豪華なゲストはもちろん本作でも健在。また本作ではむしろゲストミュージシャンの音楽性を取り込んだ楽曲も目立ちました。一番顕著なのがネコカミノカマタリことキュウソネコカミが参加した「KMTR645」。楽曲的にはアレンジふくめてまんまネコカミなパンクロックになっています。ハッピー八兵衛ことASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文が参加している「やぶさめの馬」もアジカンらしい太いサウンドのギターロックに仕上がっています。このゲストの音楽性も積極的に取り入れているあたりはレキシとして方向性が定まり、安定感が出てきたという証拠なのではないでしょうか。

歌詞の方も日本史ネタを上手く取り込むスタイルも板についてきています。デビュー当初のような日本史の学術的知識も取り込んだような「知らず知らずに日本史の知識が身につく」ような楽曲は残念ながらほとんどなくなってしまいましたが、ネタの選び方と曲への組み込み方にも安定感を覚えます。ここらへん、既に職人技の域かも(笑)。

日本史をさほど詳しくなくても笑えるネタも多いし(とはいえ、中学レベルの日本史の知識は欲しいところですが)、なにより日本史をネタにしながらも堅苦しくなく難しいこと抜きで楽しめるポップソングに仕上げている点は見事。日本史ネタという同一コンセプトながらも、5枚目になってまだまだ「マンネリ感」もなく、歌詞にしろサウンドにしろこれだけのバリエーションを取り込んでくるあたりにもすばらしさを感じます。

まさに「安定感の5枚目」というにふさわしい、いい意味でのレキシのひとつの完成形を感じさせるとともに、これからの活動を見据えることが出来るアルバムになっていたと思います。これからもまだまだユニークで楽しい傑作が聴けそうです。

評価:★★★★★

レキシ 過去の作品
レキツ
レキミ
レシキ

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2016年7月23日 (土)

まずは美メロとストリングスが耳を惹く

Title:A MOON SHAPED POOL
Musician:RADIOHEAD

デジタル配信により突如リリースされ世間を騒がしたRADIOHEADのニューアルバム。私はCDでのリリースを待っての購入となったので聴くタイミングがちょっと遅れてしまいました。そんな訳で待ちに待ったRADIOHEAD5年ぶりとなる新作。しかし最近は本当に大物ミュージシャンでも配信先行でCDリリースまで時間がかかるアルバムが増えたなぁ。個人的にはやはり歌詞の和訳が欲しいので、そういうスタイルを取られるといろいろと厳しい面が大きいのですが・・・。

RADIOHEADのアルバムといえばアルバム毎に方向性を定め、いつもリスナーを驚かせるような新しい試みのアルバムを次々とリリースしてきました。例えば前々作「In Rainbows」では名盤「OK Computer」との類似性を指摘されるような作品となっていましたし、前作「THE KING OF LIMBS」では当時最先端の流行となっていたダブステップの影響を強く取り込んだ作品となっていました。

しかし今回のアルバムに関していえば、まず捉えどころがない、というのが大きな感想としてあります。今回のアルバムもおなじみナイジェル・ゴドリッチがプロデュースを手掛けていますが、全体的に非常に緻密で凝ったプロデュースワークの作品が多く、楽曲毎に様々なアイディアを詰め込んだような作品になっています。一度聴いただけだと「何だこれは?」といった奇抜なアレンジがないように感じるだけに比較的抑え気味のダウナーなサウンドに感じるのですが、2度3度聴くうちに印象が変わっていく作品となっていました。

まず感じるのはこれまでにないほど美しいメロディーライン。「Desert Island Disk」「Identikit」「Present Tense」とアコースティックベースのアレンジによりトム・ヨークによる美しい「歌」を前に押し出した曲がアルバムの中の要所要所に組み込まれています。決して派手ではないこれらの曲は「核」になるような作品ではないにも関わらず、非常に心に残る作品になっていて、アルバムの中のキーのようにも感じました。

もうひとつ大きなポイントに関したのはストリングスの導入。ロンドン・コンテンポラリー・オーケストラによるストリングスを本作では導入しています。ストリングスというと一歩間違えるとただ壮大さを醸し出そうとするだけの大味なアレンジになってしまうのですが、そこは心配無用。ストリングスが目立つ「Glass Eyes」にしろ「Tinker Tailer Solder Sailor Rich Man Poor Man Beggar Man Thief」にしろギターサウンドやエレクトロサウンドと上手く組み合わせることにより荘厳さを感じさせつつも、非常に繊細さを感じさせるサウンドに仕上げてきています。

そんな美メロとストリングスをアルバムの軸としつつも、エレクトロなサウンドにアコースティックなギターやピアノの音色などを組み合わせつつ、1曲1曲実に繊細な作品に仕上げている今回のアルバム。アルバム全体として派手さはないのですが、それだけに聴けば聴くほど深みにはまっていくような魅力があります。特にアルバムの中でひとつの核に感じたのが中盤の「Ful Stop」。6分に及ぶ楽曲の中で最初から最後までがひとつにつながっているような構成でリスナーをグイグイと惹きこむような楽曲。抑え気味なサウンドながらもダイナミズムを感じさせる作品で、今回、「ロック」なテイストの薄めの作品の中では珍しく「ロック」的な要素を強く感じる楽曲になっています。

またアルバムの最後を締めくくる「True Love Waits」も実に見事。トム・ヨークの歌をしっかりと聴かせるピアノバラード曲なのですが、物語の美しい終幕を感じさせるようなナンバー。アルバムの最後を締めくくるには実にふさわしい楽曲に仕上がっていました。

いわゆる「ロック」的要素は薄く、最初はちょっと地味目にも感じたのですが、2度3度聴くうちにはまっていくようなそんなアルバム。彼らの最高傑作、といった感じではないものの、間違いなく5本の指には入りそうな傑作アルバムだったと思います。もちろん今年を代表する名盤の1枚になりそうな傑作でした。

評価:★★★★★

RADIOHEAD 過去の作品
In Rainbows
The Best Of
ROCKS:Live In Germ
THE KING OF LIMBS
TKOL RMX 1234567
Radiohead Live at Tramps June 1,1995

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2016年7月22日 (金)

バラエティー富んだ作風

Title:レインボー
Musician:在日ファンク

朝ドラへの出演の話題となり昨今ではすっかり俳優としての活躍が目立つハマケンこと浜野謙太。でももちろんミュージシャンとしての活動も忘れていません!彼率いる在日ファンクの約1年8ヶ月ぶりとなる作品が本作。もちろんミュージシャンとしての勢いは本作でも止まっていません。

在日ファンクといえばジェイムス・ブラウン直系のファンクミュージックに日本語の歌詞をのせているスタイルなのですが、その日本語の歌詞は歌詞の意味よりも言葉の響きを重視した言葉選びをしており、その結果、非常にユーモラスな歌詞になっている曲が大きな特徴です。

今回のアルバムに関しても「むくみ」なんかが完全にそのパターンでしょう。ファンキーなリズムにハマケンのシャウトがのるカッコいいファンクナンバーなのですが、歌詞の内容よりも「むくみ」という言葉をファンクに歌い上げることを主眼としたようなナンバー。在日ファンクらしいユーモラスを感じるナンバーです。

ただ一方でファンクなリズムにのせるというよりもきちんと歌詞に意味を持たせた曲も目立つ本作。例えば「ぼくきみ電気」などもユニークな歌詞ながらも恋人との別れを描いたその内容が心に響く歌詞になっています。

というのは基本的にメジャーデビュー作となった「笑うな」でも見られた方向性。メジャー2作目となる本作はJB直系ファンク一本調子だったいままでの作品から一歩進んで、楽曲自体にバラエティーが増えた作品となっています。

例えば「きみのいいところ」「それぞれのうた」はファンクのリズムは入っているのですが、JBバリにゴリゴリとリズム主導で押してくるような作風ではなくメロディーラインを聴かせるポップな内容に仕上がっています。また「ぬるまゆファンク」などもタイトル通り、脱力感のある楽曲になっており、こちらもある意味「押し」の強かった在日ファンクからするとちょっと意外性あるナンバーになっています。

メジャーデビュー作「笑うな」では歌詞に意味を持たせることによって音楽の幅をグッと広げバンドとしての可能性を持たせた作品になっていました。そして続く本作では今度は楽曲のバリエーションを広げ、さらにバンドとしての可能性を広げたアルバムになっています。前作「笑うな」同様、楽曲のインパクトという意味ではインディーズ期の彼らの作品よりも若干薄れてしまったという面は否めないかもしれません。しかし一方で、今後のバンド活動を考えると非常に重要な作品という点は間違いないでしょう。前作「笑うな」同様、彼らの今後の可能性を広げる作品になっていました。

俳優としての活動が目立つハマケンですがミュージシャンとしてもまだまだ積極的な活動が続きそう。これからの在日ファンクとしての作品にも期待できそうな傑作でした。

評価:★★★★★

在日ファンク 過去の作品
在日ファンク
爆弾こわい
ベスト・オブ・在日ファンク~覗いてごらん見てごらん~

連絡
笑うな

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2016年7月21日 (木)

何気に安定した人気

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

これでアルバムでは5作目となる1位獲得です。

今週1位は約2年ぶりとなる西野カナのニューアルバム「Just LOVE」が獲得。オリジナルでは前作「with LOVE」に引き続きの1位獲得となります。初動売上は12万6千枚。直近作は昨年11月にリリースしたカップリング曲やアルバム収録曲をまとめたアナザーベスト「Secret Collection ~GREEN~」「Secret Collection ~RED~」でそれぞれ6万5千枚(2位)、6万1千枚(3位)が初動売上でしたのでそこからは大きくアップ。オリジナルアルバムとしては前作の「with LOVE」の10万枚(1位)からもアップしており、何気に根強い人気を見せつけた結果となりました。

2位は先週1位のDreams Come Trueの裏ベスト「DREAMS COME TRUE ウラBEST! 私だけのドリカム」がワンランクダウンでこの位置。ちなみに今週10位には昨年リリースされたドリカムのベスト盤「DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム」が先週の11位からランクアップし見事ベスト10に返り咲き。こちらも根強いドリカム人気を感じさせる結果となっています。

3位には絢香のベスト盤「THIS IS ME~絢香 10th anniversary BEST~」がランクイン。こちらタイトル通り、2006年のデビューから今年で10年目を迎える彼女のベストアルバム。初動売上は2万9千枚。直近のオリジナルアルバム「レインボーロード」の3万3千枚(3位)からダウン。また2009年にリリースしたベスト盤「ayaka's history 2006-2009」の初動34万枚(1位)からは大きくダウンしており厳しい結果となっています。

続いて4位以下の初登場盤です。4位には人気女性声優南條愛乃「Nのハコ」がランクインです。これが2作目となるオリジナルアルバム。初動売上2万5千枚は前作「東京 1/3650」の1万9千枚(5位)からアップ。

5位にはウカスカジー「Tシャツと私たち」が入ってきています。ご存じミスチルの桜井和寿とEAST ENDのメンバーであるラッパーのGAKU-MCによるユニット。2014年にリリースしたアルバム「AMIGO」以来2作目となるアルバムで、初動売上1万7千枚は前作の初動4万4千枚(2位)よりダウン。さすがにデビュー作ということで話題性があった1枚目の初動売上は大きく下回る結果となってしまいました。

続く6位初登場は藤井フミヤ「大人ロック」。ちょっと狙いすぎな感じもするタイトルですが、藤井フミヤももう54歳・・・。初動売上は1万6千枚。直近作はライブアルバム「FUMIYA FUJII SYMPHONIC CONCERT」でこちらの5千枚(20位)よりはさすがに大幅アップ。オリジナルアルバムとしての前作「Winter String」の9千枚(8位)よりもアップしています。

最後、8位初登場はシオカラーズ「SPLATOON LIVE IN MAKUHARI-シオカラライブ-」。ゲーム「Splatoon」に登場するイカの世界のアイドルグループという設定だそうです。初動売上1万枚。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2016年7月20日 (水)

2週続けてジャニーズ系

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週に続きジャニーズ系が1位を獲得しました。今週の1位はNEWS「恋を知らない君へ」。日テレ系ドラマ「時をかける少女」テーマ曲。CD売上・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)では2位となったのですが、PCによるCD読み取り数、Twitterのつぶやき数で1位を獲得。先週の42位からランクアップ。CD発売にあわせ、チャートイン3週目にして1位獲得となりました。ちなみにオリコンでも1位獲得。初動売上15万3千枚で前作「ヒカリノシズク」の14万8千枚(1位)からアップしています。

2位はEXILE THE SECOND「YEAH!!YEAH!!YEAH!!」が獲得。CD発売にあわせて先週63位からランクアップで4週目にしてのベスト10入り。いままではTHE SECOND from EXILEとして活動していましたが本作から改名したそうです。でもこの名前だとまるでEXILEの2軍みたい・・・実際にそうなのかもしれないけど・・・。楽曲はEXILE系らしいオラオラ系のサマーダンスチューン。ラテンのリズムやEDMっぽい要素を取り入れたライブでも盛り上がりそうなナンバー。実売数ではこちらが1位を獲得。ただPCによるCD読み取り数では6位と伸び悩み、1位はNEWSに譲っています。なおオリコンでも初登場2位。初動売上は7万4千枚とCD売上数ではNEWSの約半分ですが、ビルボードの実売数ではこちらが上ということはダウンロードでの売上数が大きかったのでしょうか。THE SECOND from EXILE名義でリリースされた前作「SURVIVORS feat.DJ MAKIDAI from EXILE」の8万2千枚(2位)からダウンしています。

3位は水樹奈々「STARTING NOW!」。TBSテレビ系アニメ「この美術部には問題がある!」オープニング・テーマ。彼女にしては珍しい明るい雰囲気のギターロックナンバー。サウンド的には90年代初頭のバンドブーム自体を彷彿とさせます。実売数で3位、PCによるCD読み取り数で4位を記録し初登場でこの位置。オリコンでも3位初登場で初動売上3万枚は前作「Exterminate」の3万8千枚(3位)からダウンしています。

続いて4位以下の初登場です。まず4位に西野カナ「Have a nice day」が入ってきました。アルバム「Just LOVE」収録曲でシングルリリースはないもののダウンロードでランクインしてきたものと思われます。タイトルから容易に想像できる前向きな自分への応援歌。実売数4位でこの位置。ただラジオオンエア数87位、Twitterつぶやき数74位と伸び悩んでいるのはシングルカットされていないからでしょうか。先々週は94位に、先週はランク圏外になったものの今週は一気にベスト10入りしてきました。

5位にはYUKI「ポストに声を投げ入れて」が初登場で入ってきました。実売数で6位を記録しているほか、ラジオオンエア数が4位と好調。映画「ポケモン・ザ・ムービーXY&Z「ボルケニオンと機巧のマギアナ」」主題歌という好タイアップですが、楽曲はいつものYUKIらしいミディアムテンポのポップソングに仕上がっています。オリコンでは初動9千枚で9位。シングルのベスト10入りは2012年の「わたしの願い事」以来5作振りですが、初動売上は前作「tonight」(11位)から横ばいとなっています。

初登場もう1曲は10位アルスマグナ「サンバDEわっしょい! feat.九瓏幸子」がランクイン。アルスマグナは「ニコニコ動画」で活躍するコスプレダンスユニット。ちなみに九瓏幸子はあの小林幸子が扮するキャラクターだそうで、確かにこぶしの利いた彼女のボーカルが入っています。彼女は完全にこのネットコミュニティーに生きる道を見出していますね。この曲はリオデジャネイロオリンピックへの出場が決まった猫ひろしのオフィシャル応援ソングだそうです。なお実売数は5位だったものの、ラジオオンエア数、PCによるCD読み取り数はいずれも圏外という結果になっており、そのため順位的にはギリギリベスト10入りという結果に。オリコンでは初動売上2万2千枚で4位。前作「マシュマロ」の2万8千枚(4位)からダウンしています。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2016年7月19日 (火)

いつも通り!

Title:チラノザウルス四畳半
Musician:ギターウルフ

3年ぶりとなるギターウルフの新作。このアルバムを聴くためにプレイボタンを押して、まず感じるのが音の悪さでしょう。ハイレゾ音源なる言葉が当たり前に使われるようになった現在、割れてしまってさえいるこの音の悪さはある意味衝撃的ですらあります。もちろん、彼らにとってこの音の悪さは意図したところ。この音の悪さゆえに逆に凶暴的ともいえるギターのサウンドが耳をつんざくアルバムに仕上がっています。今回のアルバム、初回限定盤ではなんとカセットテープが同封されているのですが、あえて音質を悪くすることにより音の迫力を増そうとする彼らの意図を強く感じます。

ギターウルフといえばご存じのように耳をつんざくように最高レベルまで音量をあげたギターサウンドをガンガン鳴らしつつ、シンプルなガレージロックを奏でる3ピースバンド。また歌詞についても意味よりもインパクトを重視した歌詞でこれでもかというほどハイテンションのサウンドを展開していくバンド。このスタイルは基本的にデビュー当初から全く変わりません。

今回の作品ももちろんそのスタイルは全く変わっていません。タイトルチューンの「チラノザウルス四畳半」は若干ロックンロールの色合いが強かったり、「バミューダの女王」ではへヴィーなギターリフを入れてきたりと若干曲によってバリエーションがあったりするのですが、基本的な路線はシンプルなガレージロックから大きく変わっていません。

歌詞にしても意味よりもインパクトを重視した内容という点も変わらず。「アランドロンの逆襲」やら「忍者のシーズン」やら、とにかく一度聴いたらタイトルを忘れなさそう。「ソ連のヒロシ」なんて曲も「ヒロシはいきなり ソ連に逃げた」なんて歌詞が飛び出して、いったいいつの時代の曲だよ!なんて感じてしまったりして。

ただ一方で、タイトルチューンでもある「チラノザウルス四畳半」などはタイトルだけでもインパクト十分な歌詞なのですが

「チラノザウルス
四畳半に住む
チラノザウルス
四畳半に住む
この屋根を、いつ、ぶち破ろうか、考えてるところさ」

(「チラノザウルス四畳半」より 作詞 ギターウルフ)

と、世の中で埋もれながらもいつか世間でブレイクすることを夢見ている人たちをテーマとして扱っており、なにげにインパクトだけの歌詞ではない点が興味深かったりします。

そんな聴きどころもありつつも、アルバム全体としては難しいこと抜きにしてギターの爆音に身をゆだねる作品。まあ変わり映えしないといえば変わり映えしないのですが、いい意味で「大いなるマンネリ」な作品だと思います。ロックのカッコよさを体現化しているという点は間違いありません。まだまだ彼らの勢いは止まらなさそうです。

評価:★★★★

ギターウルフ 過去の作品
宇宙戦艦ラヴ
野獣バイブレーター

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2016年7月18日 (月)

軽快なパンクロックに骨太なメッセージ

Title:STOP THE WAR
Musician:HEY-SMITH

2014年、メンバーのうち2人が脱退。その後、新メンバーが加入し、3年ぶりとなったメロパンクバンドHEY-SMITHのニューアルバム。久々の新譜でしたがチャート的には前作の10位を上回る初登場8位を記録。初動売上も7千枚で横バイと、メンバーチェンジ+久々の新譜という不利な条件の中では健闘した結果となっています。

私自身がHEY-SMITHのアルバムを聴くのはこれがはじめて。イメージ的にはよくありがちなメロディアスパンクバンドというイメージで正直なところそれほど良いイメージはありませんでした。しかし実際に聴くとメロディアスパンクバンドにありがちな「勢いがあってポップなだけ」といった感じではなく、思ったよりもバラエティーに富んで、かつ骨太な部分を感じさせるパンクロックを聴かせてくれました。

彼らの奏でる楽曲は基本的には軽快なパンクロック。メンバーの中にサックス、トランペット、トロンボーンの担当がいるように基本的にはすべての曲にホーンセッションが入り、それが軽快で楽しい雰囲気を作り出しています。

そんな楽曲がベースとなりつつ、「Dandadan」ではレゲエの要素を取り入れたり、「2nd Youth」ではスカのリズムを取り入れたりと、ラテン系の要素も強く感じますし、一方では「States Of War」ではデス声を取り入れてハードコアの影響を受けていたりとへヴィーなバンドサウンドを聴かせる曲もチラホラ入ってきています。

またメロディーラインはマイナーコードを主体の哀愁感漂う曲も少なくありませんが、あまり歌謡曲っぽさは感じず、いい意味で垢抜けたバタ臭さを感じます。そんな哀愁感あるメロディーを書く一方でカラッとした洋楽テイストの強いポップな作品も多く、それが悪い意味でも歌謡曲臭を出さない要因になっているのでしょう。「Don't Worry My Friend」「Alive And Lucky」あたりのポップでメロディアスなギターロック路線の曲はライブでも広いリスナー層を巻き込んで盛り上がりそうなポピュラリティーを感じます。

また意外と骨太な部分を感じるのが歌詞。タイトルになっている「Stop The War」はその名前の通りストレートな反戦歌。アルバムのラストも「States Of War」で締めくくられておりアルバムのひとつのテーマとなっています。また「Now we'll stand up」とリスナーを鼓舞する「What They Hide」などもタイトルからしても社会派なメッセージ性の強い曲。軽快なメロディーとはまた異なる骨太なメッセージ性を感じました。

もっともそういう骨太なメッセージを入れつつもアルバム全体としては軽快なパンクロックが楽しめる内容。バラエティー富んだサウンドでライブ会場も盛り上がりそう。この夏も様々な夏フェス会場を盛り上げてくれそうです。

評価:★★★★

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2016年7月17日 (日)

自主レーベル第1弾

Title:秋コレ~MTR&Y Tour 2015~
Musician:奥田民生

奥田民生メジャーレーベルを脱退し、自主レーベル「ラーメンカレーミュージックレコード」設立へ・・・昨年5月に発表されてファンをビックリさせたニュースです。その後、残念ながらしばらく新譜リリースの情報はなかったのですが(レコード会社移籍に際してはしばらく新譜のリリースが出来なくなるというお約束のせいでしょうか?)「ラーメンカレーミュージックレコード」第1弾となるアルバムがようやくリリースされました。

それが本作、奥田民生として約4年ぶりとなるライブアルバムです。昨年実施されたライブツアー「秋コレ」の模様をおさめた作品。MTR&Yは2005年以来の奥田民生のライブバンドの名前でメンバーは斎藤有太(キーボード)、小原礼(ベース)、湊雅史(ドラムス)の3名に奥田民生を加えた4人組。バンド名はメンバーそれぞれの名前の頭文字から取られたんでしょうね。

今回のライブアルバムは複数の会場から音源をひっぱってきているライブベスト的な内容。また途中のMC等も省略されており、ライブの臨場感という意味ではちょっとマイナスになっています。ただし曲順はライブツアーのセットリストに沿っているようで、ライブの雰囲気を伝えようとしている構成であることは間違いありません。

さてそんな自主レーベルへの移籍後初となるアルバムなのですが、その影響なのでしょうか、ライブの内容は非常に趣味性を高く感じました。

もともと奥田民生といえばルーツ志向のロックを音楽の中にうまく取り込んでいましたが、今回のライブ音源では様々なタイプのロックを強く感じるアレンジになっています。例えば「チューイチューイトレイン」は60年代の陽気なロックンロールナンバー。「まんをじして」ではブルースからの影響が色濃いギターサウンドをじっくりと聴かせてくれています。

さらにダウンタウンブギウギバンドの「スモーキン ブギ」のカバーなんていうちょっと意外性ある(でもライブの流れにピッタリマッチした)選曲があったり、さらに後半の「手紙」「鈴の雨」ではハードロック志向の強いへヴィーなバンドサウンドを前に押し出しており、ロックバンドとしての真骨頂を発揮。この様々なスタイルのロックを取り入れて自由に演奏する姿に、高い趣味性を感じます。

そこから終盤は歌モノの曲が続き、最後は「イージュー★ライダー」「さすらい」というおなじみのヒットナンバーで締めくくり。趣味性が高いといっても最後はきちんとファンが聴きたいと思うような曲を聴かせて締めくくり。趣味性が高いといっても決して独り善がりではなく、きちんと聴かせるところは聴かせる構成になっていました。

趣味性の高い楽曲は自主レーベルならでは、と言いたいところなのですが、もっとも奥田民生も参加しているユニコーンの方は依然としてキューンレコードからCDをリリースしている訳で、ユニコーンがちゃんとメジャーレーベルからコンスタントにアルバムをリリースしているからこそ、奥田民生はソロとしてこれだけ自由に活動が出来るんでしょうね。「ラーメンカレーミュージックレコード」からはこれからもどんどん自由度の高い楽しい音楽が聴けそうな予感。これからが楽しみです。

評価:★★★★★

奥田民生 過去の作品
Fantastic OT9
BETTER SONGS OF THE YEAR
OTRL
Gray Ray&The Chain Gang Tour Live in Tokyo 2012
O.T.Come Home

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2016年7月16日 (土)

43年のオールキャリアベスト

Title:あの日 あの時
Musician:小田和正

1970年のオフコースとしてのデビューから46年目を迎える小田和正。オフコースとしてのベスト盤はもちろん、ソロとしても以前にベスト盤を何作かリリースしている彼ですが、今回は「初のオールタイムベスト」と銘打ってリリースされたベスト盤。1973年のオフコース時代に発表された「僕の贈りもの」から、新曲2曲まで3枚組のフルボリュームな内容に収録されています。

オフコース時代の作品も「さよなら」「YES-YES-YES」「秋の気配」などといった代表曲はしっかり収録。そういう意味でも小田和正というミュージシャンのキャリアを網羅的に把握する絶好のベスト盤と言えるでしょう。ただし、基本的にオフコース時代の作品はセルフカバーによるもの。また以前リリースしたベストアルバム「自己ベスト」でもカバーアルバムからの選曲という形でオフコース時代の作品が収録されており、そういう意味では若干目新しさは薄かったようにも思います。もっとも、そのベスト盤「自己ベスト」及びその第2弾「自己ベスト2」を網羅したベスト盤、という位置づけのようですが。

さて、先日ここで紹介したカジヒデキ、あるいはT.M.Revolutionの楽曲が20年間ほとんど変わらない、ということを紹介させていただきました。小田和正の作品もそういう意味では20年間・・・どころかここに収録されている43年間、著しい変化はありません。ただし、全く何も変化がなかったのか、と言われると微妙なところで、43年間、少しづつその音楽性には変化を感じます。

今回のアルバムに関していえばちょうど発表順に並んでおり、その少しづつの変化を感じることが出来ます。あえていえば初期の作品、ここで言えばDisc1に収録されている作品はアコースティック色が強く、もうちょっとフォークの色合いが濃かったように感じます。もっとも本作に収録されているのはセルフカバーなので、もうちょっとここ最近の雰囲気に近い音にはなっているのですが。

一方、Disc1の後半からDisc2にかけての作品に関してはギターの音を積極的に入れてきており、バンドサウンドも積極的に取り込んだ作品になっています。例えば彼の代表曲としておなじみの大ヒットした「ラブ・ストーリーは突然に」などはイントロのギターなどあらためて聴くとカッコいいですね。こういうギターサウンドを聴かせる曲も目立ったように思います。

ただこれがDisc3になるとある意味小田和正のカラーが完全に確立し、ある意味様式美的な様相すら感じられる作品になっているようにも思いました。もちろんメロディーラインには一定以上のインパクトがあるし、聴いていて良い意味でも安心できるのですが意外性のような面白味はかなり薄れたかも。もっとも、意外性という観点は初期の彼の作品から、あまり大きな要素ではないのも事実ですが・・・。

そんな訳で小田和正の魅力を網羅的に感じることが出来たベスト盤。良くも悪くも予想通りの「らしい」ベスト盤だったと思います。現在68歳の彼。本作はオリコンアルバムチャートの史上最年長1位を記録するなど今なお根強い人気を獲得しています。まだまだこれからも彼らしい名曲を届けてくれそう。前人未踏ともいえる70代での音楽活動がどのようなものになるのか・・・このベスト盤を区切りに新たな活動を開始しそうです。

評価:★★★★

小田和正 過去の作品
自己ベスト2
どーも
小田日和

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2016年7月15日 (金)

楽しそうな雰囲気が伝わる

Title:女たちの残像
Musician:チャラン・ポ・ランタン

最近、ちょっと事情がありライブから足が遠ざかっているのですが、そんな中でもなんとかライブに足を運びたいなぁ、と思っているようなミュージシャンが何組かいます。彼女たちもそんな一組。ここ最近、サーカスの音楽のような独特で楽しい音楽性が一気に脚光を浴びているミュージシャン。先日も、元SKE48の松井玲奈と組んでリリースしたシングル「シャボン」がベスト10入りするなどして話題となりました。

そして本作はそんな彼女たちのライブアルバム。映像作品も同時にリリースされているようですが、そちらは未見ですので今回紹介するのはCD作品の方。2枚組となっている本作では昨年5月の上野恩賜公園野外ステージでのライブ、同じく12月の浅草公会堂でのライブ、今年3月の新宿文化センター大ホールでのライブの模様が収録されています。

彼女たちのライブはまだ一度も足を運んだことがないのですがこのアルバムを聴くと、その楽しさが嫌というほど伝わってきます。アコーディオンやホーンセッションを取り入れた、上にも書いたようなサーカスの音楽のような、とにかくワクワクする楽しい音楽。どこかファンタジックな雰囲気を感じる非日常性が、サウンドやメロディー自体からも感じられますし、また歌詞からも強く感じられます。

ボーカルももの歌も、スタジオ音源に比べるとより感情たっぷりの歌いぶりとなってライブを盛り上げています。ただこれはプラスの面とマイナスな面があって、雰囲気たっぷりのMCを含めて会場を盛り上げている一方、ちょっと芝居じみているかな、と感じてしまう部分もあり、個人的にはマイナスポイントでした。

もうひとつ残念だったのはライブ会場が細切れ状態に収録されていた点でした。ある意味ライブベスト的に楽曲通しの繋がりを考えての曲順だったのかもしれません。ただやはりライブアルバムとしてライブの雰囲気をそのままパッケージするという意味ではひとつの会場の音源をまるまる収録してほしかったなぁ。その点はちょっと残念でした。

そういう残念な部分はチラホラあったのですが、その点を差し引いても彼女たちのライブの楽しさが十二分に伝わってくる傑作でした。これはやはり一度彼女たちのライブに行きたいなぁ・・・そう強く感じさせてくれるライブアルバムです。

評価:★★★★★

チャラン・ポ・ランタン 過去の作品
テアトル・テアトル
女の46分

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2016年7月14日 (木)

「裏」でも1位

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

1年前のベスト盤に続き「裏」でも1位獲得です。

Dreams Come True「DREAMS COME TRUE THE ウラBEST! 私だけのドリカム」が見事1位を獲得。ちょうど1年前にオールタイムベストをリリースした彼女たちですが、本作はそのベスト盤から漏れた曲を収録した「裏ベスト」。昨年のベスト盤同様7月7日にリリース。木曜日発売とチャート上、不利なリリースでしたがそれを物ともせず1位獲得となりました。

初動売上は10万8千枚。前作はそのちょうど1年前にリリースされたベスト盤「DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム」で、その初動34万4千枚(1位)からはさすがに大幅にダウンしてしまっています。

続く2位にはワルキューレ「Walkure Attack!」がランクインです。アニメ「マクロスΔ」に登場する音楽ユニットで、これが初のアルバム。初動売上7万7千枚は直近のシングル「一度だけの恋なら」の3万5千枚(3位)よりアップしています。

3位初登場はロックバンドUNISON SQUARE GARDEN「Dr.Izzy」が入ってきました。約2年ぶりとなるニューアルバム。初動売上3万7千枚で、直近作「DUGOUT ACCIDENT」の2万5千枚(2位)よりアップ。またオリジナルアルバムとしての前作「Catcher In The Spy」の1万6千枚(5位)から倍増以上という結果になっており、バンドとしての勢いを感じさせます。

続いて4位以下の初登場盤です。4位には平井堅のニューアルバム「THE STILL LIFE」がランクイン。途中、カバーアルバム「Ken's Bar III」のリリースはあったもののオリジナルとしては5年ぶり、かなり久々となる新譜です。初動売上は3万4千枚。直近作「Ken's Bar III」の3万枚(3位)よりはアップしましたが、5年前のオリジナルアルバム「JAPANESE SINGER」の6万枚(3位)からは大きくダウン。少々厳しい結果となっています。

5位初登場はthe HIATUS「Hands Of Gravity」。ご存じELLEGARDENの細美武士がはじめたバンドで、彼は昨年、MONOEYESとしての活動もスタート。the HIATUSはどうなるのかな、と思っていたのですが、きちんと並行して活動を続けるようですね。本作は2年ぶりとなる新作。初動売上2万4千枚は前作「Keeper Of The Flame」の2万7千枚(8位)からダウン。ちなみに昨年リリースされたMONOEYESのアルバム「A Mirage In The Sun」の3万4千枚(3位)よりもダウンしています。

6位には家入レオ「WE」が入ってきました。初動売上1万8千枚は前作「20」の2万枚(6位)よりダウンしています。

7位にはくるり「琥珀色の街、上海蟹の朝」がランクイン。今回は、全6曲入りの彼ら初となるEP盤。初動売上は1万1千枚。直近のオリジナルアルバム「THE PIER」が初動1万9千枚(4位)だったので、まあ健闘といった感じでしょう。

最後9位にはDef Tech「Eight」が入ってきました。タイトル通り、彼ら8枚目となるニューアルバム。初動売上9千枚は前作「Howzit!?」の1万枚(8位)から若干のダウンとなりました。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2016年7月13日 (水)

ジャニーズ系のサマーソング

今週のHot 100

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今週の1位はジャニーズ系。関ジャニ∞「罪と夏」がランクインです。タイトル通りのサマーソングで、ラップなども入れてどちらかというと暑苦しさを感じるナンバー(苦笑)。CDがリリースとなり、先週の60位からチャートイン3週目にしての1位獲得となりました。CD売上・ダウンロード・スクリーミング数(以下「実売数」)で1位を獲得した他、PCによるCD読取数でも1位を獲得しています。ちなみにオリコンでも1位を獲得。初動売上27万5千枚は前作「侍唄(さむらいソング)」の14万7千枚(1位)からアップしています。

2位にはナオト・インティライミ「Overflows~言葉にできなくて~」が初登場でランクイン。ピアノメインのメロディーも歌詞もかなりベタなJ-POPナンバーになっています。実売数で2位を獲得しているほか、PCによるCD読取数で10位獲得。ちなみにオリコンでは初動売上1万5千枚で6位にランクイン。ビルボードチャートがオリコンを上回っていることからダウンロードが好調だった模様。ちなみに初動売上は前作「together」の9千枚(14位)からアップしています。

3位初登場はIDOLiSH7「NATSU☆しようぜ!」。ゲーム「アイドリッシュセブン」登場キャラクターによるユニットによるシングル。実売数で4位を記録した他、PCによるCD読取数で5位、Twitterつぶやき数で6位を獲得していますがラジオオンエア数が圏外なのが、キャラソンらしいところ。オリコンでは4位初登場で初動2万1千枚を記録。前作「ソーシャルゲーム『アイドリッシュセブン』「MONSTER GENERATiON」」の1万4千枚(7位)からアップしています。

続いて4位以下の初登場曲です。4位にはEXILE ATSUSHI「Beautiful Gorgeous Love」がランクイン。大人の雰囲気を醸し出そうとするジャジーな雰囲気のナンバーですが、大人の雰囲気に何か足らないと思ったら彼のボーカリストとしての色気が足らないように感じます。実売数で3位を獲得したもののラジオオンエア数が84位と伸びず。オリコンでは初動売上4万2千枚で2位初登場。直近作はEXILE ATSUSHI+AIの「No More」でこちらの1万5千枚(7位)からはアップ。EXILE ATSUSHIソロ名義では「桜の季節」以来で同作の1万7千枚(3位)からもアップしています。

6位にはロックバンドSuchmos「MINT」が先週の24位からランクアップし、チャートイン3週目にしてベスト10入りしてきました。サッチモというバンド名はルイ・アームストロングの愛称から取られたようで、ちょっとジャジーな要素を加えたロックサウンドが魅力的なバンド。実売数は19位でしたがラジオオンエア数で1位を獲得し、見事ベスト10入りです。いかにもラジオ受けしそうなナンバー。ちなみにオリコンでは初動9千枚で14位初登場。前作「LOVE&VICE」の5千枚(25位)からアップしています。

7位初登場は刀剣男士 team三条 with加州清光 「キミの詩」。ミュージカル「刀剣乱舞」キャラクターソング。特にひねりのないJ-POPバラード。実売数が5位、PCによるCD読取数が3位ながらもラジオオンエア数で圏外となり総合順位はこの位置。ちなみにオリコンでは3位初登場となっておりビルボードと差がついています。初動売上4万1千枚は前作「刀剣乱舞」の2万1千枚(2位)よりアップ。ただし前作は収録曲の関係でCDの販売形態によりシングルとアルバムに泣き別れの状態でランクインしており、両者をあわせると初動4万1千枚を売り上げており、本作は事実上、前作から横バイという結果となっています。

さらに今週8位にはまたもやSMAP「世界で一つだけの花」がランクインしてきました。先週の39位からランクアップで6月20日付の6位から4週ぶりのベスト10返り咲き。実売数で27位を獲得しているほか、Twitterのつぶやき数で1位を獲得した影響が大きい模様。これはメンバーの草彅剛の誕生日7月9日にあわせたファンによる購買活動が影響しているようで、オリコンでも今週12位にランクインしています。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2016年7月12日 (火)

20年全く変わらないサウンド

Title:2020 -T.M.Revolution ALL TIME BEST-
Musician:T.M.Revolution

今回紹介するのはいつもここで紹介しているようなミュージシャンからするとちょっと意外な感じのセレクトかもしれません。デビュー20周年を迎えるT.M.Revolutionのオールタイムベスト。最初期の作品については聴いていたこともあり、またベスト10入りしてくるようなシングルについては一応はチェックしていたのですが、彼の作品をまとめて聴くのはこれがはじめてとなります。

さて、T.M.Revolutionといえば作曲及び編曲は一貫して浅倉大介が手掛けています。それでひとつ強く思うのはデビュー時から今に至るため楽曲が一貫しておりほとんど変化がない、という点。もともと浅倉大介といえばTM NETWORKのサポートメンバーとしてデビューしており、そのためTM NETWORK時代の小室哲哉の影響を強く受けています。そしてその音楽性は一言で言ってしまえばTM初期の小室哲哉の亜流。もっとも私自身、TM NETWORKのファンであるため、浅倉大介の仕事ぶりが気になったというのが今回のベスト盤を聴いてみた大きな要因なのですが、その音楽性は予想以上に変化がありませんでした。

確かに若干変わっている部分もあるといえばあります。例えば「crosswise」をはじめ2000年代後半の曲あたりからはトランス色が濃くなりますし、「Summer Blizzard」あたりはビートも強く、この頃日本でも流行り出したEDMからの影響も感じます。ただ全体的にはスクエアな四つ打ちのデジタルビートにハードロック風なギターが軽く重なりロック調を醸し出したサウンドというスタイルはデビュー当初から今に至るまでほとんど変化はありません。

これは浅倉大介が強い影響を受けた小室哲哉と比べると実に対照的。小室哲哉といえばTM時代から小室系がブレイクした時代、さらにその後と、その時代時代の音楽性を積極的に取り入れていきました。ただその結果としてあれだけ一世を風靡した小室系人気は一気に下火に。一方大いなるマンネリ路線の浅倉大介の楽曲は20年経った今でもT.M.Revolution人気もあり支持を受けています。

もっともこれだけ音楽性を変えないというのは他のタイプの楽曲がつくれない・・・ということもあるのかもしれませんが、それ以上に逆に覚悟がいること。そしてまたこの良くも悪くも変化のない音楽性が20年に及ぶ長いT.M.Revolutionの人気を支えてきたのも事実でしょう。

また、今回あらためて彼の楽曲について思うのは、実にJ-POPらしいJ-POPだな、ということでした。上にも書いたスクエアなリズムパターンやギターサウンドもそうなのですが、なにげに歌謡曲テイストが強いメロディーラインやらベタに盛り上がるサビやらムダにエフェクトを入れて分厚くなったサウンドやら、まさに売れ線J-POPの典型といった様相となっています。

そしてそれは同時にアニソンとの親和性の高さを感じました。実際、彼の楽曲はガンダムの主題歌となったりしてアニメソングも多く歌っているのですが、彼の楽曲の持つベタなダイナミックさや歌謡曲的なマイナーコードを入れてくるメロディーラインは実にアニソン的。実際、人気声優の水樹奈々とのコラボ作を歌っており、本作でもそこで発表された2曲が収録しているのですが、どちらもT.M.Revolutionの曲としても水樹奈々の曲としても全く違和感ありません。

さてそんな彼のベスト盤。では普段あまり浅倉大介やらT.M.Revolutionやらを聴かないような方にお勧めできるのか、と言われると正直微妙です。一般的なイメージそのままですし。ただ愚直なまでに自分のスタイルを貫きとおす浅倉大介サウンドに関しては敬意を感じますし、なにげに聴きやすくインパクトあるサウンドは全3枚というボリュームでもあまりダレずに聴きとおすことが出来ました。そういう意味で下のような評価に。これからもこのサウンドで30年40年と続いていきそう・・・。

評価:★★★★

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2016年7月11日 (月)

20年間、変わらず

Title:The Blue Boy
Musician:カジヒデキ

永遠の少年、カジヒデキのニューアルバム。もともとブリッジというバンドでデビューし、その後ソロデビュー。そのソロデビュー作「MUSCAT E.P.」から今年でちょうど20年。その20周年記念のアルバムが本作です。しかしソロから20年。バンドデビューからはもう27年ですか・・・。それ以上に驚いたのはそんなカジヒデキは今年で49歳(!)。来年はもう50歳になるという事実・・・信じられない・・・(^^;;

そんな彼を「永遠の少年」と評する最大の理由、それは20年の間、その音楽性にほとんど変化がないという点でしょう。ご存じの通り、彼の奏でるサウンドは「ザ・渋谷系」とでも言うべきネオアコポップ。私が彼の楽曲をはじめて聴いたのは1997年にリリースされスマッシュヒットを記録した「ラ・ブーム~だってMY BOOM IS ME~」なのですが、そこから本作に至るまで楽曲の音楽性に大きな変化はありません。

もちろん20年間、そのスタイルを大きく変化させずに貫くミュージシャンも珍しくはありません。ただ彼の奏でるネオアコの音楽は渋谷系というある意味90年代を代表する音楽をそのまま体現化するスタイル。時代にピッタリと寄り添ったような音楽で、その後の過程においては「時代遅れ」のように捉えられることも少なくなく、90年代に同じようなネオアコのサウンドを奏でていたミュージシャンの多くは既に活動を休止していたり、あるいはそのスタイルを変えたりしています。

しかしそんな中でもカジヒデキは全くそのスタイルを変えることなく、かつ20年の間、活動を長期間休止することなく楽曲をリリースし続けています。今回のアルバムに関しても例えば「ヒーローは君と僕」など、タイトルからして90年代っぽさを感じさせる甘酸っぱい歌詞の爽快なネオアコチューン。さらに「5時の渋谷で!」なんていう、彼のイメージである「渋谷系」を逆手にとったようなタイトルのナンバーすらあります。20年間、変わっていないという事実を逆にしっかりと受け止めて、それを彼のアイデンティティにすらしている感もあります。正直なところ音楽的な目新しさはほとんどありませんが、いい意味で安心して聴ける、爽やかなポップチューンが並んだ良作になっています。

ただあえて言えば今回のアルバムでは比較的、ギターサウンドが目立った作品が多かったように感じます。「東京CITYセレナーデ」ではガレージっぽいギターサウンドが入っていますし、「はじめての初夏の恋」などもギターサウンドが目立つナンバー。もっとも、少々ロック風というだけで、基本路線、いつものカジヒデキと大きく変わりません。

ま、いうなれば「大いなるマンネリ」といった感じでいつも通り安心して聴けるアルバムになっていたと思います。おそらくこれから先も、彼が50歳、60歳になってもこのスタイルは変わらないんだろうなぁ。それはそれである種の覚悟がいることではあるので、素晴らしいことだとは思います。これからもおそらく珠玉のポップソングを届けてくれるであろう彼の活動に期待です。

評価:★★★★

カジヒデキ 過去の作品
LOLIPOP
STRAWBERRIES AND CREAM
TEENS FILM(カジヒデキとリディムサウンター)
BLUE HEART
Sweet Swedish Winter

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2016年7月10日 (日)

今回のタイトルは短め

Title:『閾』
Musician:te'

ダイナミックなサウンドでリスナーを圧倒しつつ独特の世界観を築き上げているポストロックインストバンドte'。前作からわずか8ヶ月というインターバルでリリースされた新作は彼ら初となるミニアルバム。いままで含蓄のある長いセンテンスによるアルバムタイトルが特徴的だったのですが、本作は漢字1文字によるアルバムタイトル。これで「しきみ」と読むらしいです。

さてこのミニアルバムはわずか5曲、17分という短さなのですが、その間に様々なバリエーションあふれる音の世界が繰り広げられるのが特徴的。まず、アルバムがスタートすると、いきなりエレクトロのサウンドからスタートして驚かされます。もっとも途中からノイジーでへヴィーなギターサウンドがはじまり、te'らしい音が聴こえるのですが、この1分強のイントロ的ナンバー「『眩暈』」では終始エレクトロのサウンドが鳴り響く、te'のイメージからすると少々意外な雰囲気の曲からスタートします。

続く2曲目「雨滴は重力を信仰し、その軌跡は官能を伴い世界を『紗』で覆う。」は複雑な変拍子のリズムが耳を惹く、彼ららしいダイナミックなギターロックナンバー。ただ4分弱の長さといい、はっきりしたメロディーラインといい、その複雑なリズムにも関わらずポップで聴きやすいという印象を受ける楽曲になっています。

この複雑なリズムとは逆だったのが4曲目「具体を脱ぎ捨て潜勢を放てば、有為転変は『虚体』の夢に収斂す。」。テンポよい軽快な16ビートのドラムのリズムが耳を惹くナンバー。ほどよくノイジーなギターサウンドにもポップスさを感じられ、いわば「のりやすい」ナンバーになっています。

そして最後を飾る「彫琢した理念は音に宿り、感受する聴衆を『桎梏』から開放する。」は最初はちょっと幻想的な雰囲気の静かなギターからスタート。徐々に音が大きくダイナミズムさを増していき、最後はギターサウンドを埋め尽くして楽曲は終了。最後は彼ららしいリスナーを圧巻する音世界を展開してアルバムは幕を下ろします。

非常に複雑なサウンドに、インストという取っつきにくい形態ながらも、どの曲も3分程度、長くて5分という短さに、意外とポップなメロディーラインで決して「マニア受け」に留まらないポピュラリティーを持ったアルバム。ただ前作は比較的ポップにまとめあげていたのに対して今回はポップな側面を前に出した作品もあるものの、te'らしい楽曲のダイナミズムさもきちんと発揮していたアルバムになっていました。わずか5曲の長さながらもte'の魅力がしっかり伝わってくる作品。その音世界に思わず釘づけになってしまいました。

評価:★★★★★

te' 過去の作品
まして、心と五感が一致するなら全て最上の「音楽」に変ずる。
敢えて、理解を望み縺れ尽く音声や文字の枠外での『約束』を。
ゆえに、密度の幻想は綻び、蹌踉めく世界は明日を『忘却』す。
其れは、繙かれた『結晶』の断片。或いは赫奕たる日輪の残照。

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2016年7月 9日 (土)

まさかの8年ぶりの復活

Title:Everything You've Come To Expect
Musician:The Last Shadow Puppets

アークティック・モンキーズのアレックス・ターナーと、元ラスカルズのマイルズ・ ケインによるサイドプロジェクト。2008年にアルバム「Age of the Understatement」をリリース。全英チャートで1位を獲得するなど大きな話題を呼びましたがその後プロジェクトは活動休止状態となりました。

それから8年の歳月を経て、まさかの復活!正直、「The Last Shadow Puppets」という名前自体、ちょっと忘れかけていた状態だったので、今回の復活劇はビックリしてしまいました。どんな音を奏でていたか、ということも今回、このアルバムを聴いて「ああ、そうだった」と思い出したくらいで・・・(^^;;

そんな彼らの新作は、その8年前の「Age of the Understatement」の路線を引き継いだもの。前作のアルバム評で「60年代のイギリスのギターロックバンド、The AnimalsやThe Zombiesあたりを彷彿とさせます」と書いたのですが、まさにそれ。60年代あたりのガレージロックの影響を強く感じるサウンドが特徴的。哀愁感あふれるメロディーラインは、グループサウンド風と以前書いたのですが、まさにその通りで、日本人にとってもなじみやすい音ではないでしょうか。

またそんな懐かしさを感じさせるサウンド以上に本作を聴いて強く感じたのは、その美メロとも言えるメロディーラインの美しさ。「Miracle Aligner」などは胸を締め付けられるような切なさを感じるメロディーが実に美しい作品になっていますし、60年代の色合いを強く感じる「The Bourne Identity」も素朴ながらもポップなメロディーがインパクトとなっています。

懐かしさを感じるシンプルなサウンドに美メロが魅力なのですが、そんな中にもバリエーションを感じさせる構成も魅力的。例えばタイトル曲である「Everything You've Come To Expect」は優雅なチェンバロの音色でちょっとバロックな雰囲気を感じますし、「She Does The Woods」などは幻想的な雰囲気も感じさせる曲になっています。

すいません、ラスカルズに関しては聴いたことがないのですが、アークティック・モンキーズとは一方違うメロディーとサウンドを楽しめるバンド。前作のレビューで「ロックを再解釈しようとする試み」と仰々しいことを書いたのですが、本作を聴くと、そんな難しいことよりもむしろサイドプロジェクトとして素直にポップを楽しもうとする姿勢を感じました。

それだけに素直なポップアルバムとして楽しみたい1枚。特にメロディーの美しさを楽しみたい傑作に仕上がっていたと思います。久しぶりの新作でしたが、その長いインターバルを感じさせない魅力的なアルバムでした。

評価:★★★★★

The Last Shadow Puppets 過去の作品
Age of the Understatement

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2016年7月 8日 (金)

今、最も話題のラッパーの一人

Title:Coloring Book
Musician:Chance The Rapper

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シカゴ出身のラッパーによる3枚目のアルバム。若干23歳にもなる彼は、今、世界で最も騒がれているラッパーの一人です。彼が注目されている理由、それはもちろんその楽曲自体も話題なのですがそれ以上に注目を集めているのがリリース形態。彼はいままで3枚のアルバムをリリースしていますが、そのいずれもフリーダウンロードによる作品。商業ベースでのアルバムは1枚もリリースしていません。

それにも関わらずアルバムはいずれも大ヒットを記録。本作も、もともとはApple Musicのストリーミングのみでのリリースだったにも関わらず、史上初、ストリーミングのみでビルボードのトップ10入りを果たしています。さらにあまりの話題の大きさから、ノミネートの基準として商業ベースの作品のみとしていたグラミー賞のノミネーション基準すら揺るがそうとしています。

確かにここ最近、フリーダウンロードでアルバムをリリースするミュージシャンも少なくありません。特にHIP HOPでは数多くのミュージシャンが「ミックステープ」という形でフリーダウンロードでのアルバムをリリースしていますし、またU2がニューアルバムをiTunesに無料で先行配信した(そして多くの批判をあびた)ことは記憶に新しいのではないでしょうか。

ただフリーダウンロードでアルバムをリリースするミュージシャンも基本的には商業ベースのアルバムがまずあって、その上で話題づくりや、あるいはミックステープなどはサンプリングなどの権利処理の都合などから無料でアルバムをリリースするケースがほとんどです。しかし彼の場合は意図的に無料でアルバムを公開しています。彼曰く、音楽産業は既に死んだ産業であり、音楽は誰にでも開かれたものである、という明確な意思を持ってアルバムをリリースしています。

ただ、リリース形態には挑戦心を感じさせる一方、アルバムの内容自体は至ってポップ。形態は間違いなくHIP HOPなのですが、はっきりしたポップなメロディーラインを持った楽曲が多く、アルバム自体はいい意味で聴きやすさを感じさせる内容になっています。

例えば「Same Drugs」などはピアノの静かなサウンドをバックに、ソウル風のメロディアスな曲調を聴かせるナンバーになっていますし、「All Night」もラップ部分以外は女性シンガーによるポップなメロディーが流れる作風が軽快で楽しい作品となっています。

またサウンド的にはHIP HOPのみならずソウルやゴスペルからの影響も感じさせる曲もチラホラ。「Summer Friends」の重厚なコーラスラインはゴスペルからの影響を感じさせますし、「Blessings」の核となっている女性ボーカルやエレピのサウンドはスムーシーなコンテンポラリーソウルの雰囲気を感じます。

さらに無料だからといって全く馬鹿にできないのが参加ミュージシャンの豪華さ。1曲目の「All We Got」ではかのカニエ・ウエストがプロデューサーとして参加。重厚なサウンドを聴かせてくれますし、続く「No Problem」ではLil Wayneも参加。さらには「Finish Line Drown」ではT-Painも参加と、豪華な顔ぶれがずらりと揃っています。

このアルバムの出来に関して無料であるということは全く関係ありません。全14曲入り1時間弱。実に聴きどころも多く、いい意味でポップに楽しめるアルバムだと思います。1時間弱という収録時間も非常にちょうど良い長さに感じます。無料ダウンロードあるいはスクリーミングで是非。間違いなく今年を代表する話題作の1枚だと思います。

評価:★★★★★

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2016年7月 7日 (木)

またもキャラソンが1位

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

またアイマスがらみが1位獲得です。

今週1位を獲得したのは「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER Cool jewelries! 003」。ゲーム「アイドルマスター シンデレラガールズ」からリリースされたキャラソンをタイプ別に収録したアルバムだそうです。「アイドルマスター」がらみでは先週のシングルチャートでキャラソンが1位を獲得しましたが、それに続く1位獲得。初動売上は5万2千枚。「アイドルマスター」関連のアルバムとしては直近作は姫川友紀(CV:杜野まこ)、市原仁奈(CV:久野美咲)、片桐早苗(CV:和氣あず未)、大槻唯(CV:山下七海)、相葉夕美(CV:木村珠莉)「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER Passion jewelries! 003」で、こちらの初動3万6千枚(3位)よりアップしています。

2位初登場は浜崎あゆみ「M(A)DE IN JAPAN」。初動売上3万枚は前作「sixxxxxx」(2位)から横バイ。本作は、リリースの1ヶ月半前の5月11日から定額制の音楽配信サイト「AWA」で先行配信されて話題となりました。ただ売上枚数を見ると、先行配信の影響はプラスにもマイナスにもならなかったということでしょうか・・・。この手のストリーミングサイトへの先行配信は、海外では最近でもカニエ・ウエストやビヨンセのアルバムが例としてあげられるように珍しい話ではなくなりました。ただ日本ではまだまだ挑戦的な試み。今後はこういうリリース形態を取るアルバムが日本でも増えていくかもしれません。

3位には女優としても活動している女性シンガー大原櫻子「V」がランクイン。「V」と書いて「ビバ」と読ませるそうです。これが2枚目となるアルバム。初動売上2万8千枚は前作「HAPPY」の3万2千枚(2位)よりダウン。

続いて4位以下の初登場盤です。4位初登場はロックバンドMY FIRST STORY「ANTITHESE」が入ってきました。これがアルバムとしては4作目でシングルアルバム通じて初のベスト10ヒットとなります。ちなみにボーカルのHiroはONE OK ROCKのTakaの弟。ということは要するに森進一、森昌子の息子ということになります。また彼も以前はジャニーズ事務所に所属していてジャニーズJr.として活動していた経歴の持ち主だそうです。初動売上1万8千枚は「虚言NEUROSE」の8千枚(14位)よりアップ。

6位にはユナク from 超新星「REAL」がランクイン。ミュージシャン名義通り、韓国のアイドルグループ超新星のメンバーによるソロアルバム。初動売上1万6千枚で前作「STARTING OVER」の1万1千枚(5位)からアップ。

最後、9位にはヴィジュアル系バンド己龍「百鬼夜行」がランクインです。初動売上1万3千枚は前作「暁歌水月」の1万枚(7位)よりアップ。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2016年7月 6日 (水)

ベスト3は男性シンガー

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は上位3位に男性シンガーによる曲が並んでいます。

まず今週の1位はEXILE系。GENERATIONS from EXILE TRIBE「涙」がランクイン。90年代J-POP風の王道バラードナンバー。CDのリリースにより先週の34位からランクアップし、チャートイン5週目にして1位獲得となりました。CD売上・ダウンロード・ストリーミング数(以下「実売数」)で1位を獲得した他、PCによるCD読取数及びTwitterつぶやき数で4位、ラジオオンエアで10位と軒並み高順位を記録しています。ちなみにオリコンでも初動9万3千枚で1位獲得。前作「AGEHA」の3万7千枚(2位)から大幅増となっています。ただし前作はアルバムの先行リリースだったため売上を落としていた影響。前々作「ALL FOR YOU」の15万3千枚(1位)よりはダウンしています。

2位初登場は桑田佳祐「ヨシ子さん」が入ってきました。こちらもCDリリースにあわせて先週の12位からランクアップし、ランクイン3週目にして1位獲得。ちょっとチープなエレクトロリズムとエキゾチックな雰囲気のサウンドでB級でエロチックな匂いがプンプン漂う桑田佳祐らしい独特でかつ非常にユニークなナンバー。実売数とPCによるCD読取数で2位を獲得した他、ラジオオンエアでは1位を獲得しており、高い人気を伺わせます。オリコンでも2位初登場。初動売上8万1千枚はソロでの前作「Yin Yang」の6万8千枚(2位)からアップしています。

3位は韓流の男性アイドルグループVIXX「花風」。バラードナンバーなのですが、こちらも90年代J-POPの王道を行くようなナンバーで、ちょっと1位のGENERATIONS「涙」と雰囲気が似ている感じも。初登場で3位獲得。実売数で4位を獲得しているほか、Twitterつぶやき数で1位を獲得していますが、ラジオオンエア数、PCによるCD読取数でランク圏外というあたり、K-POPらしいファン層の狭さを感じます。オリコンでも3位初登場で、初動売上2万5千枚は前作「Can't Say」の3万枚(4位)よりダウンしています。

続いて4位以下の初登場曲です。6位に作曲家澤野弘之によるソロプロジェクトSawanoHiroyuki[nZk]「Into the Sky EP」が初登場でランクイン。テレビ朝日系アニメ「機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096」オープニング・テーマ。今風の太いエレクトロビートに鮮やかなピアノが乗るサウンドがカッコいいナンバー。実売数は3位でしたが、PCによるCD読取数が13位の他、ラジオオンエア数が圏外になるなど他の順位が伸びませんでした。あまりアニソンっぽい雰囲気がないのでラジオオンエアでも受けそうな雰囲気なのですが。オリコンでも初動1万5千枚で6位初登場。前作「X.U.」の1万枚(10位)よりアップ。

7位はavexによる男女混合ダンスグループlol「spank!!」が入ってきています。こちらは2000年代初頭あたりの小室系フォロワーっぽいトランシーなダンスナンバー。AAAの2匹目のどじょう的なユニットでしょうか。オリコンでは5位初登場。初動売上2万3千枚は前作「ladi dadi」の2万9千枚(3位)からダウンしています。

初登場最後は9位に女性シンガーソングライター井上苑子「ナツコイ」がランクイン。実売数では30位と奮いませんでしたが、ラジオオンエア数で3位という高順位が影響し、先週の21位からランクアップし、チャートイン5週目にしてベスト10入り。いかにも学生受けしそうな学生時代の純粋な恋愛を描いた歌詞が印象的。イメージとしてmiwaをもっと幼く、楽曲はポップにした感じでしょうか。オリコンでは初登場17位。初動売上3千枚で、前作「だいすき。」の1千枚(48位)よりアップしています。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に。

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2016年7月 5日 (火)

脱力ガールズロック

Title:Leave Me Alone
Musician:HiNDS

今年、最も注目を集めているバンドのひとつHiNDS。スペイン・マドリードを拠点に活躍している女性4人組のガールズバンド。2014年に発表したデモ音源が話題となった後、2015年のワールドツアーも大きな評価を得て、そしてついに今年に入り初となるアルバムがリリースされました。

彼女たちの奏でる楽曲はローファイのガレージサウンド。カルロッタ・コシアルスとアナ・ぺロタのふたりのツインボーカルにシンプルでかつ粗さも感じられるギターロックサウンドが特徴的。HiNDSを紹介しているサイトでは似ているタイプのバンドとしてMac DeMarcoがあげられていましたが、個人的にはボーカルのカルロッタ・コシアルスが好きなミュージシャンとして名前をあげているVelvet Undergroundとの類似性も強く感じます。

またタイプ的にはバンドサウンドをゴリゴリと押し出す感じではなく、ポップなメロディーラインが前に出ており、いい意味で聴きやすさを感じます。例えば「Fat Calmed Kiddos」などはローファイなガレージサウンドにけだるさも感じるボーカルで、HiNDSのイメージを体現化しているような楽曲なのですが、ツインボーカルがユニゾンで奏でるメロディーラインにはポップスさとキュートさを感じます。またポップスさといえば「San Diego」。こちらもガレージサウンドにユニゾンのボーカルが印象に残るのですが、飛び跳ねるようなリズムが軽快な明るいポップチューンに仕上げていますし、また2014年にデモ音源をリリースして話題となった「Bamboo」などはちょっと60年代のガールズポップ的な雰囲気を感じられるキュートなポップチューンとなっています。

さらに彼女たちの楽曲の特徴として、上にも書いていますがユニゾンのツインボーカルという点があげられます。そこで彼女たちの曲を聴いて思い出すのがPUFFY。脱力感のある楽曲にユニゾンのツインボーカルという側面で共通点を感じます。また、同じく女性ボーカルでローファイなガレージロックという観点からは少年ナイフとの共通項も感じます。そういう意味でも日本人へのなじみやすさを感じるバンドでもありました。

リリースが1月だったのに対して国内盤リリースが3月とちょっと遅れてしまったのですが、日本でも十分売れそうなバンドですし、なによりキュートさも感じるボーカルやメロディーラインは幅広く受け入れられそうな素地を持ったバンドだと思います。この手のバンドはサマソニあたりが真っ先に呼びそうなのですが、今年のサマソニには呼ばれていない模様・・・先物買いが好きなロックファンは間違いなく要チェックの1枚です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

SATURNS PATTERN/Paul Weller

御大の約3年ぶりとなる新作。そのいい意味でベテランのキャリアを彷彿とさせないような若々しいサウンドが毎回魅力的ですが、今回も現役感あふれる若々しさを感じます。今回は比較的ストレートなロックを基調としたへヴィーなサウンドが目立つ作品。そういう意味でも彼の「若さ」がより強調されているように感じました。

評価:★★★★

Paul Weller 過去の作品
22 DREAMS
Wake Up The Nation
Sonik Kicks

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2016年7月 4日 (月)

メッセージ性強い反戦歌も話題に

Title:COLD DISC
Musician:ストレイテナー

1年7ヶ月ぶりとなるストレイテナーのニューアルバム。この1年7ヶ月の間もライブアルバムをリリースしていたり、シングルを4枚もリリースしていたりと、かなり精力的な活動が目立ちます。

ストレイテナーといえばここ最近の作品は日本語詞の曲と英語詞の曲で楽曲の雰囲気がかなり異なるという印象がありました。具体的に言えば英語詞の曲はへヴィーなバンドサウンドを前面に押し出し、洋楽テイストも強いカッコいいギターロックの色合いが濃い作品となっている一方、日本語詞の曲に関しては良くも悪くも少々ベタなメロディーラインでポップ色が強く、J-POP的な側面を強く感じる曲が目立ちます。

今回の作品に関してはその傾向がより強く目立ちます。例えば英語詞の曲で言えば「Dark City」などノイジーな疾走感あるメロディーラインがカッコいいナンバー。意外とポップなメロも印象に残ります。同じ英語詞の「The Place Has No Name」は哀愁感あるメロディーラインが目立つものの、ギターサウンドが前に押し出されたバンドサウンドが強く印象に残る作品に仕上がっています。

一方、残る日本語詞の曲に関してはメロディアスなメロディーラインが目立ち、ロックというよりもポップな側面が際立つアルバムになっているように感じました。例えば「シーグラス」などはポップなメロディーラインもさることながら、「去りゆく夏のラブソング」というテーマ性にもある種のJ-POP的な部分を感じます。

もちろん日本語詞の曲が英語詞の曲に比べて必ずしもダメといった訳ではなく、ポップな側面が前に出たような曲でもカッコいい曲も少なくありません。今回のアルバムでも「Alternative Dancer」などはちょっとディスコチューンのテイストが入ったファンキーでダンサナブルなサウンドが心躍るナンバーになっています。

また先行シングルになっている「NO~命の跡に咲いた花~」も印象的。ミディアムテンポで聴かせるメロディーラインが美しいナンバーですが、この曲、「NO」というストレートなタイトルの通りの強烈な反戦歌。彼らの強いメッセージを聴くことが出来ます。

ここ最近の彼らのアルバムに関して共通していることなのですが、個人的には日本語詞の曲に関しても、もうちょっとガツンとしたインパクトのあるロックを聴きたいなぁ、と思っているのですが・・・「DAY TO DAY」など出だしのダイナミックなギターのイントロなど、なかなかいい線を言っているとは思うのですが、楽曲全体としてはおとなしいポップなギターロックにとどまっているのが惜しい感じ。アルバム全体としてのバランスは良く、ほどよくポップな曲も耳に惹くだけに、惜しさも感じられるアルバムでした。

評価:★★★★

ストレイテナー過去の作品
Immortal
Nexus
CREATURES
STOUT
STRAIGHTENER
21st CENTURY ROCK BAND
Resplendent
Behind The Scene
Behind The Tokyo

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2016年7月 3日 (日)

暗闇よこんにちは

Title:Hello darkness,my dear friend
Musician:ART-SCHOOL

2014年12月に活動休止を発表。翌年の2月には活動休止前のラストライブを行うものの、その年の年末の「COUNT DOWN JAPAN」では早くも復活。活動休止期間の短さに「何じゃそりゃ?」という感じもしないではないのですが、ただボーカルでバンドの中心メンバーである木下理樹はその間に自主レーベル「Warszawa-Label」を立ち上げており、この2年ぶりとなる新作はその自主レーベルからのリリースとなっています。

そんな自主レーベルからのリリースとなった本作ですが、基本的なスタイルはいつものART-SCHOOLと変わりありません。美しくも切なさを感じさせるメロディーラインとそこで歌われる木下理樹のボーカルは、若干ヘタウマテイストであるものの歌を届けたいという気持ちがストレートに伝わる、自らの心境をストレートに伝えてくるような歌声が印象に残ります。

またご存じの通り2012年からART-SCHOOLは木下理樹と戸高賢史の2人組となっていますが、バンドサウンドは希薄気味。1曲目「android and i」も打ち込みのリズムからスタートしていますが、他にも例えば「Melt」などガレージテイストのへヴィーなギターサウンドが主導しているナンバーながらもストリングスの音色を入れてきていたり、同じく「Luka」もストレートなオルタナ系ギターロックながらもストリングスを入れて音を分厚くしてきたりとバンドにこだわらない自由な音作りを感じます。2人組になって、木下理樹の趣味が反映されたように、楽曲に幅広さが加わりましたが、今回のアルバムも自由度の高さを感じる作品になっていました。

さて、加えて今回のアルバムで印象的だったのがその歌詞の世界。今回のアルバムの歌詞を表現するならば「二人きりの孤独」といったイメージでしょうか。僕と君という2人の存在が、暗闇のような現実の中でお互いに思い合いながら、その向こうにある希望に手を伸ばそうとしている、そんな歌詞が印象に残ります。タイトルを直訳すると「親愛なる友よ、暗闇よこんにちは」といった感じでしょうか。まさにそのタイトル通りの歌詞の世界が繰り広げられていました。

例えば「broken eyes」あたりが典型的でしょうか

「僕等はきっと 偶然きっと
この暗闇に産まれ落ちた
光のほうへ ただ伸ばすんだ
繋いだ手だけ 離さぬ様に」

(「broken eyes」より 作詞 木下理樹)

などという歌詞が心に残ります。全体的に非常に物悲しさと、そして同時に純粋さを感じさせる歌詞が美しいメロディーラインにもマッチ。ART-SCHOOLらしさを強く感じさせてくれました。

ここ数作、ずっと気になっている楽曲のインパクト不足、特にコアになるような曲がないという弱点は残念ながら本作でも残ってしまっておりそこがマイナス点。ただ一方、ART-SCHOOLらしさが良い形でしっかりあらわれた作品だったとも思います。ある種のバンドとしての安定感も感じる良作でした。

評価:★★★★

ART-SCHOOL 過去の作品
Ghosts&Angels
ILLMATIC BABY

14 SOULS
Anesthesia
BABY ACID BABY
The Alchemist
YOU

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2016年7月 2日 (土)

「ヤポネシア」という視点から

Title:JaPo
Musician:UA

最近、漠然とあまり名前を聞かないなぁ・・・と思っていたのですが、なんと約7年ぶりとなるUAのオリジナルアルバム。音源としても2010年にリリースされたカバーアルバム「KABA」以来となるだけに、本当に久しぶりとなる新作となりました。

そんな長い間音楽活動を休んでいてどうしたんだろう、と思っていたのですが東日本大震災の後、沖縄に移住、さらにそこで第3子を出産するなどの出来事が重なった結果、長いインターバルが開いてしまったようです。

さて今回のアルバム、タイトルの「JaPo」の元となったのは「ヤポネシア」という言葉。この言葉は作家島尾敏雄によって考案された造語だそうで、日本を「日本国」としてとらえるのではなく、南西諸島を含んで島の連なりとして捉える概念。一般的には沖縄や奄美を礼賛する文脈で使われれることが多く、また日本も太平洋に広く分布する諸島群であり、ミクロネシアやポリネシア地域などの太平洋の島との文化的なつながりを捉える概念として使用しているというイメージもあります。

そんなどこかエキゾチックなイメージの漂うアルバムタイトルですが、楽曲的にもポリリスティックなリズムが展開されるトライバルな楽曲が目立ちます。例えば事実上のタイトルチューンである「JAPONESIA」「ISLAND LION」などが特徴的でしょう。ポリリズムが展開されるという意味ではアフリカ音楽的とも言えるのかもしれませんが、どこか南国の民俗音楽な雰囲気の漂うユニークなリズムが大きな特徴となっています。

ただこのアルバムが非常にユニークなのは、単純にトライバルなアルバムとだけではとらえられないような様々な音楽的要素を感じさせてくれる点でした。具体的に言うとリズムはトライバルである一方、その他のサウンドについては非常にスタイリッシュなものを感じます。例えば「JAPONESIA」についてもポリリスティックなリズムに対して、そこに加わるピアノの音色には実に洗練されたものを感じますし、「KUBANUYU」もトライバルなパーカッションが大きなインパクトとなっていますが、同時に流れるピアノの音色には都会的な雰囲気すら感じます。トライバルなリズムとスタイリッシュなサウンドという音楽的な多面性が、ヤポネシア=日本の多様な文化性を表現しているようにも感じました。

また印象に残ったのが中盤の「あいしらい」。ピアノとアコギをベースにとても優しい雰囲気のシンプルなポップソング。子供に対する愛情いっぱいの母の視点で歌われた歌詞が非常に心に残ります。リズム主体の他の曲とは雰囲気が異なる楽曲ですが、UAのやさしさと魅力が伝わってくる逸品となっています。

久々のアルバムだったのですが、UAのパワーの衰えも全く感じさせない傑作アルバムだったと思います。「ヤポネシア」という視点から音楽を捉えたアルバムとも言えるかもしれません。その多様な音楽性に聴けば聴くほど新たな魅力が見つかる、とても素晴らしいアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

UA 過去の作品
ATTA
ハルトライブ
KABA

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2016年7月 1日 (金)

新体制での新たなる一歩

Title:天声ジングル
Musician:相対性理論

約2年9ヶ月ぶり、ちょっと久しぶりとなる相対性理論のニューアルバム。2010年にリリースしたアルバム「シンクロニシティーン」はチャートで最高位3位を記録するなど一時期、爆発的な人気を見せていたものの、2012年に真部脩一と西浦謙助が脱退。特に相対性理論のメインライターであった真部脩一は影響も大きく、残念ながらその後、人気は下降気味である点は否めません。今回のアルバムは残念ながらベスト10入りを逃してしまっています。

そんな久々となる新作は全編ティカ・αことボーカルのやくしまるえつこが楽曲制作に参加。そのためアルバム全体としては統一性があったように思います。また前作「TOWN AGE」はまるで相対性理論の物まねバンドが歌っていたかのような物足りなさを感じたアルバムでしたが、そこから3年弱。前作に比べるとプラスとなった面とマイナスであった面がわかれたアルバムだったように感じます。

まずマイナス面ですが、歌詞の側面。歌詞に関していえば「シンクロニシティーン」以前のぶっとんだような歌詞にいろいろな想像を掻き立てられる歌詞が特徴的でしたが、前作「TOWN AGE」では表面的にはぶっとんだ歌詞ながらも、どこか理屈づいた普通の歌詞にとどまっていました。本作に関しても歌詞に関しては確かにパッと聴いた感じは耳に残るユーモラスな歌詞が目立ちます・・・が、「シンクロニシティーン」以前のような一度聴いたら忘れられないようなインパクトは皆無。正直、前作「TOWN AGE」と同様の平凡な歌詞が目立ちます。

一方、プラス面はサウンド。エレクトロやポストロック的な要素も入ったようなバンドサウンドが耳を惹くアルバムになっていました。例えばサウンドからファンキーさも感じる「ケルベロス」、軽快なエレピを聴かせるシティーポップの「わたしがわたし」、細かいリズムの打ち込みにポストロック的な要素を感じつつ、一方で和風なサウンドも顔を見せる「弁天様はスピリチュアル」も非常にユニーク。

他にもダンサナブルなディスコチューンに仕上げた「とあるAround」や、シンプルなサウンドながらもその中で奏でられるストリングスにどこか荘厳さを感じる「FLASHBACK」までユニークなサウンドメイキングが並んでおり、バンドとしての底の深さを感じます。

全体的にポップ的な要素の強かったいままでの作品と比べると、全体的には良くも悪くもサブカルに寄ったような印象を受けるアルバムではあったと思います。またやはりデビュー直後の作品と比べるとインパクトという面では弱い点も否定できません。

ただ一方、結成から10年が経ち、中堅バンドとしての安定感に余裕、またバンドとしての奥の深さも感じられたアルバムでした。そういう意味ではいまひとつだった前作「TOWN AGE」から2年9ヶ月を経て、新メンバーとしてようやく新しい一歩を踏み出したアルバムと言えるのかもしれません。新生相対性理論が今後どんな成長を見せてくれるのか・・・次回作以降が楽しみです。

評価:★★★★

相対性理論 過去の作品
ハイファイ新書
シンクロニシティーン
正しい相対性理論
TOWN AGE


ほかに聴いたアルバム

Out of Control/MAN WITH A MISSION x Zebrahead

ご存じオオカミバンドMAN WITH A MISSIONとアメリカのロックバンドZebraheadとのスピリットEP。MAN WITH A MISSIONのアルバムよりもよりミクスチャーロック色が強くなり、へヴィネスさも増し、かつ、洋楽テイストが強まった感じ。MAN WITH A MISSIONのアルバムだとどうも物足りなさを感じるバンドサウンドがこのアルバムではずっしりと重厚感を持って主張している感じ。MAN WITH A MISSIONのアルバムも、このくらいカッコよければ文句ないんですけどね・・・。

評価:★★★★★

MAN WITH A MISSION 過去の作品
Trick or Treat e.p.
MASH UP THE WORLD
Beef Chicken Pork
Tales of Purefly

5 Years 5 Wolves 5 Souls
The World's on Fire

Zebrahead 過去の作品
Phoenix

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