aikoらしいアルバム
Title:May Dream
Musician:aiko
aikoの2年ぶりとなるニューアルバム。「May Dream」という今回のタイトルはどこかで聴いたことあるようなないような微妙なタイトルなのですが、これは彼女の造語だとか。「May」という単語には「可能」という意味があるので、これに「Dream」=「夢」という言葉をくっつけ「夢がかなう」という意味の造語だそうです。
そんな彼女のニューアルバムですが、一言で言ってしまうとaiko節がさく裂しているアルバムに仕上がっていました。aiko節というのは彼女の大きな特徴であるブルーノートを駆使した独特の節回しのこと。彼女の音楽的遍歴やアレンジからは全くブラックミュージックの影響を感じないのにも関わらず、彼女の書くメロディーラインは実にブルース的なのがaikoの大きな魅力のひとつと思っています。
今回のアルバムでいえば1曲目を飾る「何時何分」などはまさにいかにもaiko節の節回しが特徴的。出だしはアカペラからスタートするのですが、この出だしのフレーズだけで非常にaikoらしさを感じます。
そういう観点からすると「夢見る隙間」などもaikoらしいメロディーラインが特徴的。アレンジは裏打ちのリズムで軽快なジャズ風のサウンドを奏でる楽しいナンバーなのですが、aikoらしい独特の節回しが耳を惹きます。
こういう彼女らしいブルーノートを多用したメロディー展開は今回のアルバムに限らず彼女の曲には要所要所に聴かれ、aikoらしさを構成する大きな要素となっています。ただ今回のアルバムに関してはそんな彼女の特徴がより多くの曲で目立ったように感じました。それはまたすなわち、実にaikoらしい作品であった、ということだと思います。
もちろんそんなメロディーライン以外にも魅力となる部分はたくさん。例えば前述のジャズ風の「夢見る隙間」やロックに仕上げた「あたしの向こう」、ピアノバラードの「愛だけは」などバリエーションのあるサウンド。歌詞にしても切ない恋人との別れをストレートな心境でつづった「もっと」や生きていくことの不安、そして希望を歌った歌詞が印象的な「かけらの心」など心に残る歌詞の曲も多く収録されています。
良質なポップソングのアルバムとしていい意味で卒の無い内容。aikoらしい魅力のあふれる傑作だったと思います。安心してくれるポップアルバムながらも独特の節回しに気が付けばはまってしまう、そんな傑作でした。
評価:★★★★★
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