実験的な曲から王道ナンバーまで
Title:POPMAN'S ANOTHER WORLD
Musician:スキマスイッチ
なぜか毎回ライブ盤のみ熱心にリリースし続けるスキマスイッチ。オリジナルアルバムは前作から2年の月日がたってしまいましたがそんな中リリースされたこのアルバムも企画盤。シングルのカップリング曲を集めたいわゆるカップリングベスト。一部のライブ音源、トークトラックをのぞく(インストは初回盤のみ)すべてのカップリング曲が収録されたアルバム。まあこの手のカップリング曲集はよくある企画なのですが、シングルのカップリング曲は熱心なファンではない限りなかなか追っていないだけに、ファンにとってもうれしいアルバムと言えるでしょう。
彼らに限らずシングルのカップリング曲といえば、シングル曲ともアルバム収録曲とも異なる、ちょっと実験的だったり、ちょっと目新しい感じの曲が多いのが特徴的。熱心なファン以外はなかなか注目したいからこそ、自由度の高い音楽性を試すことが出来るのでしょう。そしてスキマスイッチのカップリングを集めた本作にも間違いなくその傾向が見て取れました。
例えば「電話キ」などはシンセの音色がちょっとサイケ。ポップユニットという彼らのパブリックイメージからすると挑戦的に感じます。「ためいき」もホーンセッションからソウル的な要素を感じ取れ、こちらもスキマスイッチの音楽的ルーツのひとつを垣間見れる感じ。ルーツといえば「夕凪」は思いっきりビートルズ風に仕上げており、これもスキマスイッチの2人が好き勝手にやった影響でしょうか。
そんな彼らの意外な側面を垣間見ることが出来るような曲が多い反面、いかにもスキマスイッチらしい曲も少なくありません。「石コロDays」「トラベラーズ・ハイ」などはシングル曲としても通用しそうなスキマスイッチらしいポップチューン。まあ、ただしどちらの曲も既にベスト盤にも収録されていたりして、ファンにとってはおなじみなナンバーなのでしょうが。
その通常盤2枚組のアルバムの方も楽しめたのですが、個人的に注目していたのが初回盤にのみついてくるDISC3。こちらはカップリングのうちインスト曲やポエトリーリーディングの曲のみ収録されており、ある意味より「実験度」が強い1枚となっています。
その中でも特に聴きたかったのが「天白川を行く」。天白川は彼らの出身地である東海市から名古屋市南東部を流れる二級河川。ここの川の堤防道路、メンバーの常田真太郎の出身高校の学生が、自転車通学で多く利用しているのですが、そんな河川敷を自転車で行く光景が想像できるような爽やかなギターインストチューン。いや、自分の出身地のすぐ近くを流れる川なので、個人的にもとてもなじみのある川なんです。なにげに私も高校時代、自転車通学でここの河川敷をつかっていたりしたので・・・。それだけになじみのある「天白川」を歌った曲というだけにとてもうれしくなってしまいます。
さらにこのDisc3で耳を惹いたのは「Human Relations」。おさななじみとの思い出を綴ったこの曲は、彼ら唯一のポエトリーリーディングという、まさにカップリング曲ならではのナンバー。ただ歌詞の良さは一級品で、十分広いリスナー層にアピールできるポテンシャルを持った作品だと思います。隠れた名曲とすら言っていいかもしれないナンバーではないでしょうか。
なにげにDisc3はそんないかにもカップリング曲らしい挑戦的な曲が収録されているだけに初回盤のみというのはちょっともったいない気がします。ともすればこういう曲が聴けるということこそが、この種のカップリングベストの醍醐味だと思うのですが・・・。
そんな訳で実験的な曲から王道ナンバーまでバリエーションある曲が揃った、いかにもカップリングベストらしいアルバムだったと思います。スキマスイッチが好きなら間違いなく要注目のアルバム。できれば初回盤を是非。
評価:★★★★★
スキマスイッチ 過去の作品
ARENA TOUR'07 "W-ARENA"
ナユタとフカシギ
TOUR2010 "LAGRANGIAN POINT"
musium
DOUBLES BEST
TOUR 2012 "musium"
POP MAN'S WORLD~All Time Best 2003-2013~
スキマスイッチ TOUR 2012-2013"DOUBLES ALL JAPAN"
スキマスイッチ 10th Anniversary Arena Tour 2013“POPMAN'S WORLD"
スキマスイッチ 10th Anniversary“Symphonic Sound of SukimaSwitch"
スキマスイッチ
TOUR 2015 "SUKIMASWITCH" SPECIAL
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