御年69歳のパンクロッカー
Title:POST POP DEPRESSION
Musician:IGGY POP
ご存じパンクロックのゴッドファーザーの異名を持ち、THE STOOGESとしての活動でも知られるIGGY POPの、ソロとしては7年ぶりとなる作品。御年69歳となる彼ですが、本作ではQUEENS OF THE STONE AGEなどで活動するJOSHUA HOMME、Arctic MonkeysのMATT HELDERS、The Dead Weatherなどで活動するDEAN FERTITAという現役感あふれるメンバーを迎えての新作となりました。
そんな彼の創作への意欲を感じる久々の新作。「POST POP DEPRESSION」というタイトルさながら、全体的にはひねくれたポップソングがメイン。サウンドの方は比較的スカスカで、序盤の「Break Into Your Heart」にしろ「Gardenia」にしろメロディーが前に出ている構成になっていました。また「DEPRESSION」=うつ病というタイトルさながら、全体的にどこかくらい影の漂う雰囲気になっているアルバムでもありました。特に終盤の「Chocolate Drops」「Paraguay」あたりはかなり哀愁感が漂うメロディーになっていました。ただ、この雰囲気もまたアルバムの魅力でもあったのですが。
サウンドの方は上にも書いた通りスカスカ。ピアノやストリングス、シンセの音など入れつつの自由な音作りが目立ちました。今回のジャケット写真は参加したメンバー4人が並んだジャケットになっているのですが、いかにもな「バンドサウンド」といった感じではありません。ただ、音作りとしてはIGGY単独ではなく、4人台頭で作り上げたという主張でしょうか?一方では中盤の「In The Lobby」や「Sunday」ではギターサウンドを前に押し出したガレージ風な音作りも目立ちます。特にノイジーなギターでけだるい雰囲気の「Sunday」あたりは個人的にはかなりの壺。ここらへんはロックという視点からかなりカッコよさを感じさせる展開になっていました。
そんな意欲作である本作ですが、現役ミュージシャンとしての勢いと若々しさを感じるアルバムか・・・と言われるとそんな雰囲気はなく、むしろ良くも悪くもベテランらしい貫録を感じるアルバムになっていたと思います。自由度の高いスカスカなサウンドも、ある種の「余裕」を感じましたし、哀愁感あるメロディーラインもある種の年相応な雰囲気も感じます。なによりも彼のボーカル。しわがれた渋さを感じるボーカルは、重ねられた経験を感じるもの。もちろん、非常にカッコいいものを感じるのですが、それと同時にベテランとしての貫禄も感じました。
そんな訳で、アラセブン(?)を迎えた彼からの、70歳手前のパンクシンガーのひとつの在り方を提示したようにも感じたアルバム。一言で言ってしまえば「渋い」という感じなのですが。ただまだまだその意欲的な創作活動は続きそう。70代となるイギーの活躍も楽しみです。
評価:★★★★
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