80年代ポップスの魅力あふれる傑作
Title:BLACKBERRY JAM
Musician:NONA REEVES
最近、音楽活動以上に執筆での活動が目立つ西寺郷太率いるNONA REEVE。ただ、西寺郷太のみならずギターの奥田健介もドラムの小松シゲルも様々なミュージシャンのサポートメンバーとしてしょっちゅうその名前を見かけます。それだけにメンバー各々のソロでの活動も目立つ彼らですが、NONA REEVESとしては約2年ぶりとなるオリジナルアルバムがリリースされました。
ただ私、ここ数作、彼らのオリジナルアルバムを聴き逃していてオリジナルをきちんと聴くのは3作前の「GO」以来となります。その間にリリースされたカバーアルバムなどは聴いていたりしたのですが。そんな私にとっては久しぶりに聴いた彼らのオリジナルアルバムですが、まず、NONA REEVESってこんないい音楽をつくっているバンドだったんだ、という驚きを覚えました。
NONA REEVESのメインライターである西寺郷太はマイケルジャクソンやプリンスに関する著作が話題となりました。それだけにNONA REEVESの作品も基本的には80年代のソウルからの大きな影響を感じます。本作でいえば「今夜はレッツ・ダンス!」のようなダンスナンバーや、ファンキーなギターにファルセットボイスが印象的な「スパイシー」あたりはまさにストレートに80年代を感じるポップチューンとなっています。
他にも「HARMONY」やタイトルチューンの「ブラックベリー・ジャム」などのシティポップな作品やバラードチューンの「Crybaby」なども80年代の空気感を強く感じます。「Survive Your Life」のようにギターサウンドを取り入れてほどよくロックな雰囲気を醸し出しているのも80年代テイストといった感じでしょうか。
かせきさいだぁをゲストに迎えた「今夜はレッツ・ダンス!」やサイプレス上野をゲストに迎えた「MAGIC EYES」ではラップを取り入れていたり、「アルマゲドン」では4つ打ちのテクノポップになっていたりとソウルに留まらないバリエーションも見せたりするのですが、基本的にはNONA REEVESらしい作品が集まった今回のアルバム。ただ、奇をてらわず彼らのやりたいことをやり、かつ西寺郷太のメロディーメイカーとしての才を思う存分出すことの出来たアルバムだっただけに、実に魅力的なポップアルバムに仕上がっていました。
他にも魅力的だったのが「You're a big boy now~お兄ちゃんになるまえに~」の歌詞。弟(妹)が産まれることになってお兄ちゃんになる子供に対して父親が語り掛ける歌詞なのですが、とても暖かい内容に思わず胸があつくなります。非常にリアルを感じるのですが、これは実体験でしょうか?非常に素敵な曲でした。
そんな訳で、NONA REEVESの魅力がぎっしりつまったポップスの魔法にかけられたような素敵なアルバムに仕上がっていました。各種著作だけで西寺郷太と人物を知っている人や好きなミュージシャンのサポートメンバーとして奥田健介や小松シゲルを知っている方は、是非ともチェックしてほしい傑作。もちろんポップス好きなら必聴の1枚だと思います。NONA REEVESの実力を再確認した作品でした。
評価:★★★★★
NONA REEVES 過去の作品
GO
Choice
ChoiceII
ほかに聴いたアルバム
LEGEND オブ 特選MIX/LEGENDオブ伝説 a.k.a.サイプレス上野
HIP HOPユニット、サイプレス上野とロベルト吉野でも活動しているサイプレス上野のDJ名義「LEGENDオブ伝説」によるオフィシャルMIX CD。HIP HOPはもちろん、ベタベタなJ-POPからアイドルソングまで並んでいる選曲がユニーク。ちょっとビックリなのはTRFの「survival dance~no no cry more~」なんていう選曲があったりする点。序盤、クレイジーケンバンドの「音楽力」や七尾旅人×やけのはら「Rollin' Rollin'」のようなめちゃくちゃカッコイイメロウなナンバーからどうつなげていくんだろう?と思いながら聴いていたのですが、ちゃんと徐々にベタなJ-POP路線につなげていっている構成が見事。たださすがにSeiho「I Feel Rave」からTRFへのつなぎはちょっと強引に感じられたのですが・・・(苦笑)。全体的にはメロウなソウルテイストの作品が多く、その中にJ-POPチューンなどが混ざりつつ、最後まで楽しめたMIX CDでした。
評価:★★★★
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2016年」カテゴリの記事
- ファンによる選曲がユニーク(2016.12.27)
- パンクなジャケット写真だけども(2016.12.24)
- バンドの一体感がさらに深化(2016.12.23)
- 初のフルアルバムがいきなりのヒット(2016.12.20)
- 10年の区切りのセルフカバー(2016.12.17)
コメント