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2016年6月26日 (日)

EGO-WRAPPIN'を多面的に知るベスト盤

Title:ROUTE 20 HIT THE ROAD
Musician:EGO-WRAPPIN'

今年、結成から20周年を迎えたEGO-WRAPPIN'のベストアルバム。全3枚組からなるオールタイムベスト。ただしベスト盤なのは3枚のうち2枚のみで残り1枚はカバーアルバムという変則的なベストアルバムとなっています。

ここ最近ベスト盤を紹介しているミュージシャンはいずれもはじめてのベスト盤ではなく、以前ベスト盤をリリースしておきながら短いスパンで新たにベスト盤をリリースするというケースが目立ちます。彼女たちにしても2008年にベスト盤「BEST WRAPPIN' 1996-2008」をリリースしており、その後リリースされたオリジナルアルバムは3枚のみ。うーん、まあ前作から8年の月日はたっているものの、その間、積極的な活動が目立っていたといった感じでもなく、正直、ベスト盤のスパンとしては短いものを感じます。

そのためベスト盤の感想としても基本的にはその前作「BEST WRAPPIN' 1996-2008」と同じ。ジャズやソウル、昭和歌謡曲やあるいはスカなどの要素も取り込みつつ、多彩な音楽性を感じるものの、全体としては良くも悪くもスキのない優等生的な印象。良く言えば初期の作品からEGO-WRAPPIN'サウンドを確立している反面、悪く言ってしまうと楽曲に意外性がないといった印象を受けます。

その点、オリジナルアルバムとしての直近作「steal a person's heart」はそのEGO-WRAPPIN'のパブリックイメージを覆すような挑戦的な作風が多く、非常にユニークだったのですが、さすがにオールタイムベストだとその「挑戦心」を反映されるほどには至っていない感じ。ここらへん、今後のEGO-WRAPPIN'の方向性に注目したいところなのですが・・・ひょっとしたら今回の20周年のベスト盤は、いままでのEGO-WRAPPIN'サウンドに一つの区切りをつけた、という意味もあるのでしょうか。次のオリジナルアルバムに注目したいところです。

さて本作でユニークだったのはDisc3にカバーアルバムをつけてきた点。彼らのルーツとも言える曲をカバーすることにより、よりEGO-WRAPPIN'とはどんなミュージシャンなのか浮かび上がらせようとしたのでしょうか。その選曲も、久保田早紀「異邦人」のようないかにもな選曲からDAVID BOWIE「ZIGGY STARDUST」なとというスタンダードナンバーながらも若干意外性のある選曲も目立ち、さらにはラストはたまの「さよなら人類」というこれまた意外性のある選曲で締めくくっています。

ただカバーはどの曲もいかにもEGO-WRAPPIN'という雰囲気のアレンジ。ジャジーな要素を加えた怪しげで昭和歌謡テイストのアレンジ。このカバーに関してもよく言えばEGO-WRAPPIN'らしさをきちんと確立している、と言える反面、悪い言ってしまえば少々カバーとしての意外な解釈というのは感じられませんでした。

そんな訳でEGO-WRAPPIN'というミュージシャンがどんなミュージシャンなのか、彼女たちの代表曲と彼女たちのルーツとなる曲のカバーで多面的に浮かび上がらせたベスト盤。その試みは非常にユニークだったと感じます。ただ、どんなミュージシャンなのかはよくも悪くもわかりやすい、といった印象が。もっとも最新作ではEGO-WRAPPIN'の意外な一面をのぞかせているだけに、結成から20年を経て、新たな一歩へ進みだそうという意欲も感じます。そういう意味ではこのベスト盤を区切りに次にどんな一歩を踏み出していくのか、楽しみです。

評価:★★★★

EGO-WRAPPIN' 過去の作品
ベストラッピン 1996-2008
EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX
ないものねだりのデットヒート
steal a person's heart

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