さようなら、オリコンチャート
ちょっと刺激的なタイトルですが・・・6月からシングルのチャート評について使用するチャートを従来のオリコンシングルチャートからビルボードジャパンの「Hot 100」に変更します。
これは端的に言ってしまえば、シングルCDの売上のみでランキングを行っているオリコンのシングルチャートが今の日本のヒットシーンを全くあらわさなくなっているから、です。ご存じのように、既にシングルCDは死に体のメディアとなっています。リスニングの方法としてダウンロードやストリーミングが主流となっている反面、シングルCDはアイドルを中心にタイプ違いのCDを多くリリースしたり、イベントのための事実上のチケットとなってしまっており、いかに同一のユーザーに複数枚のCDを買わせるかという、非常に不健全な状況となってしまっています。
そのため、昨今では「ヒット曲」でありながらもシングルCDとしてリリースされない曲も増えています。例えば「アナ雪」でおなじみの「Let It Go」はサントラ盤こそアルバムチャートで大ヒットを記録しましたがシングルCDではリリースされていないため、オリコンチャートでは全くヒットを記録していません。今年オリエンタルラジオのネタとして話題となった「Perfect Human」も配信のみでのリリースだったため、オリコンチャートでは全く反映されていません。
また、宇多田ヒカルも復帰後第1弾のシングルは配信のみでしたし、Mr.Childrenも昨今の新曲はほとんど配信でありCDでのリリース形態はまばらになってしまっています。このような状況ではもはやシングルCDでの売上はヒットシーンを反映しているとはいえません。それにも関らずオリコンが頑ななまでにCDでの売上を「ヒットチャート」として発表しているのは、CDの売上が最もチャート操作しやすいと考えているレコード会社の思惑があるから、とすら邪推してしまいます。
それに対してビルボードチャートの「Hot 100」は順位にCDの売上のみならずダウンロード、ストリーミングさらにはYou Tubeの再生回数やTwitterでの発言回数、ラジオプレイの回数など反映させています。もちろん、これがベストとは思いません。例えばCDの売上はおそらくオリコンで問題になっている同じCDを複数枚買わせる手法を排除している形跡はありません。また残念ながらビルボードでは売上枚数やダウンロードの回数などを発表しておらず、ヒットの規模についてはわかりません。そういう意味では問題点も多く残されているのも事実です。
それでもオリコンチャートよりはあきらかに今の日本のヒットシーンの状況をあらわしているチャートであることは間違いないと思います。そういうこともあり明日、アップする予定のシングルのチャート評より、ビルボードの「Hot 100」を基準としてヒット曲についてあれこれ語っていこうと思います。ただし、上でも書いた通り、残念ながら売上枚数が公表されておらずヒットの規模についてはわかりません。またなんだかんだいってもビジネス的にシングルCDの売上枚数も重要であることは間違いありません。そのため、初動売上については基本的に従来通り、オリコンチャートの数値を同時に紹介していこうと考えています。
またアルバムチャートについては、日本についてはまだダウンロードやストリーミングのみでのリリースという形態は少ないため、CDでの売上がほぼアルバムのヒットを反映されていると考えられます。そのため、従来通り、オリコンアルバムチャートを紹介していこうと思っています。
そんなわけで引き続き、当サイトをよろしくお願いします。
さて、明日紹介予定のチャート評の下準備として、直近のビルボードジャパンHot100(5月30日付)のうち、オリコンでランクインしていない曲を紹介していきます。
今週のHot 100
http://www.billboard-japan.com/chart_insight/
まず3位に藤原さくら「Soup」がランクインしています。これがシングルではデビュー作となるシンガーソングライター。フジテレビ系ドラマ「ラヴソング」のテーマ曲であり、かつ彼女自身がドラマのヒロイン役に抜擢されており話題となっています。6月8日のCDリリースに先駆けての先行配信。ビルボードではCDリリース、ダウンロード、ストリーミングでの順位で4位になっているほか、ラジオオンエアで7位となっているなど、好成績を記録しています。
また10位にはAAA「NEW」がランクインしています。こちらも6月8日リリースCDからの先行配信。CD・ダウンロード・ストリーミングでは18位ながらもTwitterでのつぶやき数ランキングが2位となっており、ベスト10入りを記録しています。
ほかにも5月30日付のHot 100では安室奈美恵の「Mint」がラジオオンエア数で1位を獲得するなどの影響により2位というオリコンよりも高順位を記録しているほか、西野カナ「あなたの好きなところ」がダウンロード販売が好調な影響でロングヒットを記録し、5月30日付チャートでも7位を記録しているなど、オリコンと大きく異なっています。
そんなHot100のチャート評は明日アップを予定しております。それでは、また明日!
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コメント
リアルタイムで聞かれてる曲ならiTunesやサブスクとかもありでしょうが、一長一短ですね(;´д`)
ともあれ、新しい試み、頑張ってください!
投稿: yono | 2016年6月 1日 (水) 21時35分
まさに正論です。音楽業界は廃れないが、CD業界は廃れてしまった。15年前に業界を引退して良かったとつくづく思います。
投稿: isseikikkawa | 2016年6月 2日 (木) 10時48分
当ブログにおけるヒットチャートのコーナーにおけるオリコンチャートレビューに関しては、個人的にはネタ目的で楽しませて頂いておりましたが(笑)、これ以上レビューを継続する事の困難さに関しては私も分かる気がします。オリコンにおける近年の年間シングルチャートを鑑みても、上位に入ってくる面々はほとんど固定化されて久しくなってきているようにも思われます。しかもそういった曲がどんな感じのものかと聞かれても答えられないものだったりします。思えば2000年代あたりまでは年間シングルチャートの上位に来る曲はテレビやラジオはともかくも、街中でも耳にする機会があったと記憶していますが、近年の曲はどうかとなると疑問符が付けたくなるようなものがあります。朝ドラのような高視聴率ドラマのテーマ曲でも売上がもの凄く良いとは限らなかったりしますので。以前にもコメントしましたが、年末の大型音楽番組で初めてほぼフルコーラスで聴くなんて事もあったりします。
ゆういち様の当ブログ以外の音楽レビュー系サイトでヒットチャートを扱っていた所でもここ数年オリコンチャートのレビューから撤退するような所も見受けられ、私がチェックしている範囲においては当ブログが数少ないサイト(他のサイトを敢えて挙げるとすれば「The Natsu Style」様でしょうか)という感じでしたが、音楽ファンにとってオリコンチャートはヒットの指標とは言えなくなって久しいという事にもなるのでしょうか。もしかしたら2010年代はオリコンのシングルチャートが音楽シーンにおける流行のバロメータから凋落していった時代として後世に記憶されるという事にもなるのかもしれません。
話は変わりますが、私の住んでいる所のFM局であるNack5の金曜日に大御所DJであり小林克也氏がパーソナリティーを務める大型生放送番組「FUNKY FRIDAY」の一コーナーである「All Japan Single Top20」ではオリコンチャートの上位20曲をほぼフルコーラスで流しており、そこではまずNack5では流れる機会の少ないアニメ関係やアイドル系に演歌といった楽曲でも20位内に入ればオンエアされていましたが(故にネットではネタ的に見られていた印象が)、昨年の今頃から配信チャートも加えたランキング構成に変わったようで、オリコンチャートとは異なる番組オリジナルのヒットチャートになってアイドル系が上位独占なんて事は無くなっているようです。
投稿: MoTo | 2016年6月 6日 (月) 23時43分
確かに、特に今年はiTunesや各種配信チャートでロングヒットを続けている楽曲ってみんな配信限定かアルバム曲ですよね。
まあもう世間一般にもオリコンの信頼度のなさやシングルの惨状も広まってますから、いいタイミングだと思います。朝の情報番組の音楽コーナーですらチャートの紹介は配信チャートになってますし。
自分もかつてはチャートファンですが、もうアルバムチャートくらいしか参考にしていません。オリコンの今の状況に関しては社長が変わってからレコード会社のいいなりになって、チャートの存在意義や会社の信念みたいなものを蔑ろにしてきたつけだろうし、特に何も思うこともないですね。
投稿: 亮 | 2016年6月10日 (金) 23時06分
ゆういち様の記事はもとよりも、自分のコメントや他の方のコメントも読んで思った事があったので追加のコメントです。
それは音楽ファンから見てもオリコンのシングルチャートはレコード大賞と同じ末路を辿っているのではないかという事です。
レコ大に関しては、前世紀末くらいから音楽にそんなに興味がある人じゃなくてもレコード会社や芸能事務所のパワーバランスで賞が決められているような事が言われていたと記憶していますが、今世紀に入ってからは音楽界の権威からもすっかり凋落して久しくなったように見受けられます。それを思うと、ゆういち様がおっしゃられているCDの売上をヒットチャートとして発表しているオリコンのシングルチャートにはレコード会社の思惑が絡んでいるのではないかというのも頷けるものがあります。
何気にネットを見ていたら、オリコンが出版していたエンタメ週刊情報誌『オリ★スタ』が今年4月で休刊したとの報が。自分も何代か前の名前の頃の1990年代後半にはたまに購読していました。当時はまだネットがそこまで普及する前の時代でもあったので、洋邦ポップスやロック、タレントやアイドル、アニメ・ゲーム関連に至るまで幅広くエンタメの情報を扱っていただけに重宝していたと記憶しています。21世紀に入ってからは、ネットにおけるエンタメ情報サイトの充実もあってこういった情報誌を買わなくなって久しくなり何が生き残っているのかすら分からなくなりましたが、これも時代の流れという事なのかもしれません。
投稿: MoTo | 2016年6月12日 (日) 23時44分
>yonoさん
iTunesチャートとかも参考にはなるのですが、やはりいまだに配信されていないアイテムもあるのと、配信の販売数がわからないのとでやはり一長一短ですね。ビルボードはそういう意味では一応はバランスが取れていると思います。
>isseikikkawaさん
そう、音楽業界は廃れないけど、CD業界は廃れてしまいました。音楽業界はCDを販売する業界とイコールではないですしね。
>MoToさん
オリコンチャートがヒットシーンの状況を反映していないというのはかなり前から感じていましたが、ブログや、FM局ですら、既にオリコンを見離しているんですね(例にあげていただいた「The Natsu Style」もiTunesチャートを取り上げられているようですし)。そういう意味ではオリコンが日本のナショナルチャートから陥落するのも近いのかもしれません・・・というよりもいまのままなら一日も早くそういうことになってほしいのですが。レコ大同様、レコード会社の思惑が見え隠れするチャートは既に見限られつつある感じでしょうか。
>亮さん
最近、朝の情報番組は見ていないのですが、配信チャートにうつりつつあるんですね。
本当に今のオリコンはレコード会社の顔色ばかりをうかがっている感じで、チャートとしての存在意義はかなり厳しいです。
そしてそういう死に体のオリコンチャートに対抗しようとしているのが国内企業ではなくビルボードという外資なのもまた情けない事実なのですが。
投稿: ゆういち | 2016年6月21日 (火) 01時14分