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2016年5月20日 (金)

有名女優とのまさかのコラボ

Title:信じるものなどありゃしない
Musician:室井滋&W.C.カラス

正直言えば、かなり意外な組み合わせでのアルバムがリリースされました。一部で話題となっているブルースシンガーW.C.カラスと女優室井滋の組み合わせによるコラボアルバム。同じ富山出身という共通項はあるものの、W.C.カラスは「知る人ぞ知る」的な、率直に言ってマニアックな部類に入るブルースシンガー。一方、室井滋はその名前をお茶の間レベルでもよく知られている女優。そのコラボにはかなり意外性を感じました。

もともとは室井滋は知り合いのミュージシャンからの情報でW.C.カラスの名前を知り、自身のラジオ番組でゲストに招き、それをきっかけとして今回のコラボにつながったとか。それにしても室井滋は正直シンガーという印象はありませんし、このコラボを知った時はビックリしました。

ただし、室井滋が参加しているのは冒頭の2曲のみ。とはいえ、この2曲がなかなか味わい深い素晴らしい曲が並んでいます。1曲目はタイトルにもなっている「信じるものなどありゃしない」。ブルースな曲風なのですが、哀愁たっぷりのメロディーラインはむしろ歌謡曲の雰囲気も感じられますが、これがまた日本人の琴線にビンビンと響いてくるメロディーに仕上がっています。

そこで歌われる室井滋のボーカルがまたなんとも言えず味があります。はっきりといえば、少々ピッチをはずした感じもある下手ウマなボーカルなのですが、これが哀愁感漂う曲風にピッタリとマッチ。歌詞には「鈍色(にびいろ=濃いねずみ色)」なんて渋い表現も登場してきますが、この言語感覚もまた、楽曲の雰囲気にマッチしています。

2曲目の「夢を見るのを忘れたの」もまたタイトルだけでもブルースな感じ。内容はユニークで、ちょっとエロチックな歌詞が印象に残ります。ただ大変失礼ながらも、エロちっくな歌詞なのですが、ボーカルが室井滋だと「・・・・・・・・・」。いや、でもこちらも味わい深いボーカルをしっかりと聴かせてくれています。

ちなみに室井滋のボーカル、「信じるものなどありゃしない」ではピッチをはずしたような下手ウマなボーカルなのですが、「夢を見るのを忘れたの」ではしっかりとピッチをあわせてきており、1曲目の下手ウマボーカルはわざとだと気がつかされます。なにげに彼女のボーカリストとしての実力も感じることができました。

3曲目以降はW.C.カラスのみの作品。基本的にはギターとブルースハープのみでの構成。ホーンセッションを入れてきたり、楽曲のバリエーションが広がった前作と比べると、比較的似たタイプの曲が並んでいます。楽曲はもちろんブルースなのですが、微妙に歌謡曲的な哀愁が加わったりしており、そこらへんは本場のブルースそのままではなく、「日本のブルース」として彼の解釈が加わった印象を受けました。

歌詞のインパクトとしても正直、前作「うどん屋で泣いた」の方が強かったと思います。ただ、そんな中でも「己を憐れむ唄」のように、少々汚い表現を歌詞に組み込みながらも、それゆえに本音があわられたような描写が非常に印象に残る楽曲もあり、W.C.カラスの魅力はしっかりと伝わってきました。

全6曲でW.C.カラスの魅力がすべて伝わった・・・という感じのアルバムではないのですが、室井滋とのコラボは非常に魅力的で大成功といって間違いないのではないでしょうか。むしろまたこのコラボで作品を聴きたいとも思ってしまいました。心に染み入ってくる6曲が収録されているアルバム。ブルース好きはもちろんのこと、心に響いてくる曲に最近出会っていない、と感じる方是非お勧めしたいアルバムです。

評価:★★★★★

W.C.カラス 過去の作品
うどん屋で泣いた


ほかに聴いたアルバム

Flying Tentacles/Yakushimaru Experiment

相対性理論のやくしまるえつこによるソロアルバム。Amazonのレビューを元にすると、「即興・朗読・数字を扱う実験コンセプト・アルバム」だそうで、「やくしまるが素数を譜面化&聴覚化した楽曲や、やくしまるのオリジナル楽器“dimtakt”をはじめとしたオリジナル楽器演奏者による14分に
もおよぶ大作即興セッション、更にフィリップ・K・ディック賞受賞SF作家・円成塔がやくしまるの朗読の為に書き下ろした特殊な構造のテキストをやくしま
るが朗読+即興演奏した「タンパク質みたいに」などを収録。」

要するに実験的な即興演奏や散文的な朗読がおさめられたかなり前衛的な要素が強いアルバム。で、楽しめたかというと率直に言ってしまうと楽しめませんでした(苦笑)。即興演奏にしても朗読にしても「ポップ」な要素は皆無。はっきりいってしまえば全くわかりません。正直、現代音楽的な観点からも優れているのか自己満足なのかいまひとつわからないアルバム。ただ、非常にわかりにくいアルバムであるのは間違いないので、現代音楽に造詣が深い方か、やくしまるえつこの熱狂的なファン以外は回避推奨かも。

評価:★★

やくしまるえつこ 過去の作品
RADIO ONSEN EUTOPIA

矢野顕子+TIN PAN PARTⅡ さとがえるコンサート/矢野顕子+TIN PAN

矢野顕子の毎年年末恒例のさとがえるコンサート。昨年はおととしから2年続けてTIN PAN(細野晴臣,林立夫,鈴木茂) とのコラボライブ。またアルバムも2年連続でのリリースとなりました。さすがに2年連続ということもあって、かなり慣れた感じは前作以上。TIN PANのサウンドをバックに矢野顕子が自由に歌ってしっかりと矢野顕子の曲になってしまっていたり、逆に矢野顕子が控えめでTIN PANのナンバーとなっていたりと、お互いの良さを上手くいかしつつのステージになっていたように感じます。前作同様、ベテラン同士の底力を感じたライブアルバムでした。

評価:★★★★★

矢野顕子 過去の作品
akiko
音楽堂
荒野の呼び声-東京録音-
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
矢野顕子、忌野清志郎を歌う
飛ばしていくよ
JAPANESE GIRL - Piano Solo Live 2008 -
さとがえるコンサート(矢野顕子+ TIN PAN)
Welcome to Jupiter

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