素直なメロディーラインが魅力的
Title:Everything at Once
Musician:TRAVIS
イギリスで国民的人気を誇るロックバンドTRAVISの3年ぶりとなる新譜。チャート1位を連発していた一時期に比べると少々落ち着いた感もあるのですが、それでも本作では全英チャート5位を記録し、まずまずの人気ぶりを発揮しています。
バンドサウンドを多く取り入れようとした結果、失敗に終わった前々作「Ode To J.Smith」、泣きメロ路線に回帰し、見事復活した前作「WHERE YOU STAND」と続いたのですが今作は奇をてらわないポップス路線。そういう意味では前作で戻ったTRAVISの王道路線が続いた方針となったのでしょう。
特に泣きメロ路線として本作で個人的に気に入ったのは「All of the Places」。彼ららしい切ないメロディーラインの美メロがさく裂したポップソング。この曲を挟んで「3 Miles High」「Idlewild」と終盤に泣きメロソングが続いており、TRAVISらしさを満喫できる流れとなっています。
ただアルバム全体としては「泣きメロ」に限定されず、あくまでもポップな作品が目立つ流れとなっています。タイトルチューンとなっている「Everything at Once」も軽快なポップソング。難しいこと抜きとしてポップな楽曲を素直に楽しめるアルバムに仕上がっていた印象が。もちろん、この奇をてらわないポップス路線という意味では初期からのTRAVISファンも納得の作品だったと思います。
また一方では、意外とバンドサウンドも目立つ印象を残した作品にもなっていました。例えば「Radio Song」などはバンドサウンドは意外とへヴィー。「Paralysed」などもストリングスとへヴィーなドラムでダイナミックなサウンドに仕上げています。ここらへん、バンドサウンドを前に押し出した前々作「Ode To J.Smith」の影響も出ているのかもしれません。
ただ、バンドサウンドも聴かせるとはいえ、基本的にはメロディーラインを主軸に据えた構成には変わりありません。例えば「Animals」もノイジーなギターサウンドを聴かせてくれるのですが、メロディーを前に押し出しておりギターの音は比較的控えめ。バンドサウンドとメロディーラインのバランスの妙に上手さを感じさせる作品になっていました。
前作の感想でいい意味でのインディーバンドっぽさが残っている、と書いたのですが、このストリングスやバンドサウンドがあくまでも控えめなバランスとなった結果、今回のアルバムに関してもいい意味でのインディーっぽさも感じさせます。人気的には国民的バンドながらも、楽曲的にはスタジアムではなくそこらへんのライブハウスで聴けそうな、いい意味での親しみやすさを感じる作品になっています。
そんな訳で、実にTRAVISらしい良さを感じさせる傑作。決して派手さはないものの、心に染み入ってくるようなメロディーがとても魅力的な作品でした。
評価:★★★★★
TRAIVS 過去の作品
Ode to J.Smith
WHERE YOU STAND
| 固定リンク
「アルバムレビュー(洋楽)2016年」カテゴリの記事
- 18年ぶりの新作はラストアルバム(2016.12.26)
- いかにもメタリカらしい(2016.12.25)
- 今後のBON JOVIの方向性を示唆(2016.12.19)
- 中性的なフレンチテクノ(2016.12.13)
- 「映画」のようなアルバム(2016.12.10)
コメント