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2016年5月

2016年5月31日 (火)

さようなら、オリコンチャート

ちょっと刺激的なタイトルですが・・・6月からシングルのチャート評について使用するチャートを従来のオリコンシングルチャートからビルボードジャパンの「Hot 100」に変更します。

これは端的に言ってしまえば、シングルCDの売上のみでランキングを行っているオリコンのシングルチャートが今の日本のヒットシーンを全くあらわさなくなっているから、です。ご存じのように、既にシングルCDは死に体のメディアとなっています。リスニングの方法としてダウンロードやストリーミングが主流となっている反面、シングルCDはアイドルを中心にタイプ違いのCDを多くリリースしたり、イベントのための事実上のチケットとなってしまっており、いかに同一のユーザーに複数枚のCDを買わせるかという、非常に不健全な状況となってしまっています。

そのため、昨今では「ヒット曲」でありながらもシングルCDとしてリリースされない曲も増えています。例えば「アナ雪」でおなじみの「Let It Go」はサントラ盤こそアルバムチャートで大ヒットを記録しましたがシングルCDではリリースされていないため、オリコンチャートでは全くヒットを記録していません。今年オリエンタルラジオのネタとして話題となった「Perfect Human」も配信のみでのリリースだったため、オリコンチャートでは全く反映されていません。

また、宇多田ヒカルも復帰後第1弾のシングルは配信のみでしたし、Mr.Childrenも昨今の新曲はほとんど配信でありCDでのリリース形態はまばらになってしまっています。このような状況ではもはやシングルCDでの売上はヒットシーンを反映しているとはいえません。それにも関らずオリコンが頑ななまでにCDでの売上を「ヒットチャート」として発表しているのは、CDの売上が最もチャート操作しやすいと考えているレコード会社の思惑があるから、とすら邪推してしまいます。

それに対してビルボードチャートの「Hot 100」は順位にCDの売上のみならずダウンロード、ストリーミングさらにはYou Tubeの再生回数やTwitterでの発言回数、ラジオプレイの回数など反映させています。もちろん、これがベストとは思いません。例えばCDの売上はおそらくオリコンで問題になっている同じCDを複数枚買わせる手法を排除している形跡はありません。また残念ながらビルボードでは売上枚数やダウンロードの回数などを発表しておらず、ヒットの規模についてはわかりません。そういう意味では問題点も多く残されているのも事実です。

それでもオリコンチャートよりはあきらかに今の日本のヒットシーンの状況をあらわしているチャートであることは間違いないと思います。そういうこともあり明日、アップする予定のシングルのチャート評より、ビルボードの「Hot 100」を基準としてヒット曲についてあれこれ語っていこうと思います。ただし、上でも書いた通り、残念ながら売上枚数が公表されておらずヒットの規模についてはわかりません。またなんだかんだいってもビジネス的にシングルCDの売上枚数も重要であることは間違いありません。そのため、初動売上については基本的に従来通り、オリコンチャートの数値を同時に紹介していこうと考えています。

またアルバムチャートについては、日本についてはまだダウンロードやストリーミングのみでのリリースという形態は少ないため、CDでの売上がほぼアルバムのヒットを反映されていると考えられます。そのため、従来通り、オリコンアルバムチャートを紹介していこうと思っています。

そんなわけで引き続き、当サイトをよろしくお願いします。


さて、明日紹介予定のチャート評の下準備として、直近のビルボードジャパンHot100(5月30日付)のうち、オリコンでランクインしていない曲を紹介していきます。

今週のHot 100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

まず3位に藤原さくら「Soup」がランクインしています。これがシングルではデビュー作となるシンガーソングライター。フジテレビ系ドラマ「ラヴソング」のテーマ曲であり、かつ彼女自身がドラマのヒロイン役に抜擢されており話題となっています。6月8日のCDリリースに先駆けての先行配信。ビルボードではCDリリース、ダウンロード、ストリーミングでの順位で4位になっているほか、ラジオオンエアで7位となっているなど、好成績を記録しています。

また10位にはAAA「NEW」がランクインしています。こちらも6月8日リリースCDからの先行配信。CD・ダウンロード・ストリーミングでは18位ながらもTwitterでのつぶやき数ランキングが2位となっており、ベスト10入りを記録しています。

ほかにも5月30日付のHot 100では安室奈美恵の「Mint」がラジオオンエア数で1位を獲得するなどの影響により2位というオリコンよりも高順位を記録しているほか、西野カナ「あなたの好きなところ」がダウンロード販売が好調な影響でロングヒットを記録し、5月30日付チャートでも7位を記録しているなど、オリコンと大きく異なっています。

そんなHot100のチャート評は明日アップを予定しております。それでは、また明日!

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2016年5月30日 (月)

戦前歌謡の魅力が伝わる

Title:帰ってきた街のSOS! 二村定一コレクション1926-1934
Musician:二村定一

以前から当サイトでも何作か紹介している戦前のSP盤復刻専門レーベルぐらもくらぶ。毎回興味深い企画を連発しており、個人的にも多くのアルバムを購入しているのですが、今回の企画はある意味「待ちに待った企画」でした。戦前、数多くのヒット曲を歌い、一時代を築いた歌手、二村定一。以前、当サイトでも紹介した彼のベスト盤「私の青空~二村定一ジャズ・ソングス」を聴いてすっかり気に入ってしまいました。ぐらもくらぶからは以前、その「私の青空」のアナザーベスト的な、彼が録音したマイナーレーベルからの楽曲をまとめた企画盤「街のSOS!」というアルバムをリリースしていたのですが、気が付いた時には品切れ状態。その後、増産を待っていたのですが、残念ながら増産されることはありませんでした。

しかし、その「街のSOS!」が内容を再編集。さらに曲を増やし2枚組のアルバムとして再リリースされました。タイトルは「帰ってきた街のSOS!」。まさに待ちに待った企画でもちろん即購入。それだけに非常に楽しみにしていた企画盤だったのですが、その内容に個人的にも大満足な内容となっていました。

今回の2枚組の内容はDisc1は「流行歌篇」として当時の流行歌を収録。内容としてはノヴェルティーソングがメインで、非常にコミカルな内容は今聴いても十分楽しめるものとなっています。一方、Disc2としてはジャズソングを1枚にまとめた内容。ただ戦前は「ジャズソング」といっても洋楽風なアレンジの曲をすべて「ジャズソング」と称していた部分があるようで(今日、ギターが鳴っていればどんな曲でも「ロック」と称しているのと似ている部分があります)、今日的イメージのジャズというジャンルにとらわれない幅広いタイプの楽曲が収録されています。

さて戦前SP盤を聴く楽しみのひとつとして、戦前の日本人の風俗を知り、その文化や価値観の今との相違を知るという一種の異文化体験が出来るという部分があります。ある意味、洋楽を聴くのと似たような体験が出来る訳です。そんな戦前の日本人の風俗や価値観を知るにあたって、特にノヴェルティーソングというのはその当時の日本人の「本音」を知ることが出来るという意味でも、実に興味深いものがあります。

例えば今回のアルバムにしても、例えば「怪しいね」みたいに清純派を振る舞う女性に対して「怪しいね」と二村定一が突っ込みを入れる曲など、今でもそのまま通用しそうな内容。「夜から朝まで」も男女の駆け引きについて男女それぞれの本音と建て前を描いており、これも今聴いてもクスリとしてしまう歌詞に。なにげに男女の関係なんていうものは今でも戦前でもそんなに大きく変わらないということを感じさせます。

逆にタイトル曲になっている「街のSOS!」などの

「電車に乗ったら脱線で
バスに乗ったらすぐパンク
省線に乗ったら停電で
円タクに乗ったら衝突だ」

(「街のSOS!」より 作詞 竹内草路)

といった歌詞はインフラ面で未発達だった戦前と今の交通事情の大きな違いを感じます(もっとも「都会は危険がいっぱい」というテーマ性は今でも通じる部分はありますが)。

一方Disc2の方の魅力は上にも書いた通り、海外の様々なタイプの曲を取り入れた幅広い音楽性でしょう。「ストトン」「佐渡おけさ」みたいに日本の民謡風の曲を洋楽風にアレンジしただけ(といってもこれもある意味魅力的なのですが)という曲もあったりするのですが、「ハワイの唄」みたいなハワイアン、「ヴォルガの船唄」のようなロシア民謡、「エスパニョール」のようなラテンまでジャズの枠組みを超えた楽曲が多く収録されています。

また「ブラームスの子守唄」はタイトル通り、今でもおなじみのナンバーのカバーなのですが、冒頭、いきなり「きよしこの夜」からスタートするのがユニークなのと同時に、当時、既にこの曲が日本に入ってきていたというのがちょっと意外にも感じます。もちろん「恋人よかへりませ」のように、今の耳から聴いても「ジャズ」と感じられる曲もあったりして、なにげに戦前の日本の音楽界の懐の深さを感じる選曲になっています。

そしてもちろん本作最大の魅力はこれら様々なタイプの曲を飄々と歌い上げる二村定一のボーカルでしょう。全体的に適度に力の抜けたコミカルな歌い方が特徴的で、その自由度の高いボーカルは今聴いてもあまり古さを感じさせません。またこのボーカルスタイルだからこそ、純和風な曲からコミカルな流行歌、またジャズをはじめとする幅広い西洋の音楽を歌い上げられたのでしょう。一時代を風靡した歌手の魅力を十分に感じることが出来ました。

ちょっとマニア性の高い選曲なだけに個人的には「私の青空~二村定一ジャズ・ソングス」から入った方がお勧めかな、とも思うのですが、その上で本作は実に魅力的な企画盤になっていたと思います。ますます二村定一という歌手の魅力に強く惹かれた作品。また戦前の音楽シーンの奥の深さも感じることが出来る良企画でした。

評価:★★★★★

二村定一 過去の作品
私の青空~二村定一ジャズ・ソングス


ほかに聴いたアルバム

パンチドランク・ラヴ/及川光博

オリジナルでは約1年ぶりとなる新譜。全編ダンスナンバーのアルバムで目新しさは皆無ながらも、ミッチーらしさが良く出ている卒の無いアルバムといった感じ。ある意味、毎年欠かさず行われるライブツアーのために作られたアルバムといった印象。ツアーのためにわざわざ新曲を用意するあたりに彼の人柄も感じられます。

評価:★★★★

及川光博 過去の作品
RAINBOW-MAN
美しき僕らの世界
喝采
銀河伝説
ファンタスティック城の怪人
さらば!!青春のファンタスティックス
男心DANCIN'
20 -TWENTY-

BLACK TRACK/SOIL&"PIMP"SESSIONS

自らを「Death Jazz」と称してアグレッシブなジャズサウンドが特徴的なSOILですが、本作に関してはそんなサウンドは抑え気味。メロウな歌モノやラップを入れた曲が多い、タイトル通り、「黒さ」が前に出ているアルバムになっています。「Death Jazz」的なアグレッシブなサウンドを求めると少々物足りなさを感じるかもしれませんが、これはこれで彼らの別の魅力を強く感じることが出来るアルバムになっていました。

評価:★★★★

SOIL&"PIMP"SESSIONS 過去の作品
PLANET PIMP
SOIL&"PIMP"SESSIONS presents STONED PIRATES RADIO
MAGNETIC SOIL
"X"Chronicle of SOIL&"PIMP"SESSINS
Brothers & Sisters

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2016年5月29日 (日)

「ただいま」のアウトテイク集だけども

Title:粗品
Musician:ズクナシ

女性3人組ソウルバンド、ズクナシの新譜は6曲入りのミニアルバム。今回のアルバムは昨年8月にリリースしたアルバム「ただいま」を制作する際に録音されながらもアルバムに収録されなかった曲を集めたもの。一言で言えば「ただいま」のアウトテイク集といった感じでしょうか。「粗品」というタイトルも謙遜の意味も込められつつも、「ただいま」収録曲に比べると、という意味合いも強いのかもしれません。

ところがこれがアウトテイク集と言ってしまうには惜しいぐらいの名曲揃い。つーか、ぶっちゃけていってしまうと個人的には「ただいま」よりもこちらのアルバムの方が好きかもしれません(^^;;アウトテイク集というよりも「ただいま」の流れの中で入れられなかった曲が多かったのかもしれません。

というのもわずか6曲入りながらも、どれも個性豊かな「濃い」楽曲が並んでいるから。アカペラの「SHIKI」からスタートし、メンバーのコーラスラインを聴かせる「しあわせ」、そしてユニークだったのが「そこまでじゃない けど」「どっちかっていうと」の2曲。この2曲、いわばバージョン1、バージョン2といった感じの同じ曲の別バージョン。ある男性に対する感情をユーモラスに描きつつも、ソウルのリズムにきちんとのせているのが非常におもしろい楽曲で、ソウルフルで彼女たちらしいインパクト満点の曲になっています。

ラストの「たまらない音頭」もユニーク。タイトル通り、日本の音頭を取り入れた楽曲で、歌詞もユニークながら音頭とソウルを上手く融合させたリズム感も見事。日本の伝統的な音頭という音楽とブラックミュージックの根底に流れる共通項を見事すくい出した楽曲となっています。

ある意味非常に濃い作品だったため「ただいま」の中で組み込むと浮いてしまい、そのためアルバム未収録になったのではないか、そう推測したくなるような6曲。楽曲としては間違いなく「ただいま」の収録曲と全く遜色ありません。

若干インパクト不足を感じた「ただいま」に比べて、それだけ濃い曲が並んでいただけにインパクトも十分すぎるほど十分。まあ、わずか6曲入りというコンパクトさゆえに、1曲あたりの印象がより強くなったという面もあるのでしょうが。「粗品」というタイトルや「ただいま」のアウトテイク集ということでパスしている方がいたらもったいない傑作。また、ソウル好きなら間違いなく要チェックの傑作です。

評価:★★★★★

ズクナシ 過去の作品
ただいま


ほかに聴いたアルバム

HEAD ROOMS/tacica

2人組となり2枚目のアルバムとなるtacicaの新作。彼らのストレートなギターロック路線は嫌いではないし本作も「夜明け前」のメロディーラインなどはなかなか良くて期待もしたのですが、アルバム全体としてはやはりこれといった特色のないギターロックといった感じにおさまってしまっています。tacicaだけが持っているような何かが欲しいのですが・・・。

評価:★★★

tacica 過去の作品
jacaranda
jibun
HOMELAND 11 blues
LOCUS

SUMMER TOUR '83 渋谷公会堂~KING OF LIVE COMPLETE~/RCサクセション

1983年6月25、26日、当時絶頂期だったRCサクセションの渋谷公会堂ライブの模様をおさめたライブ盤。もともと「KING OF LIVE」というタイトルでリリースされていたのですが、全セットリストが発掘されたためコンプリート盤としてリリースされたそうです。

さて全盛期の彼らのライブ音源なだけに内容的には文句なしでカッコイイ!特にライブになるとニューオリンズの雰囲気の強いキーボードやホーンセッションが加わり、原曲以上にブラックミュージックの要素を強く感じられ、彼らの音楽的嗜好をより強く感じます。RCサクセションの魅力がよりはっきりと伝わってくるとも言えるかもしれません。本作、DVDでもリリースされているのですが、DVDも見てみたいな・・・。

評価:★★★★★

RCサクセション 過去の作品
悲しいことばっかり
シングル・マン+4

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2016年5月28日 (土)

恋愛至上主義バンドの3作目

Title:メケメケ
Musician:THEラブ人間

メジャーからインディーズに戻り、6人体制となったTHEラブ人間の、3枚目となるフルアルバム。THEラブ人間のアルバムは、メジャー1stの「恋に似ている」以来、基本的にすべてのアルバムを聴いてきました。「恋愛至上主義」を標榜している彼らは、楽曲についてはもちろんラブソングのみ。メロディーやアレンジも基本的に非常にシンプルな内容となっています。

ただそんな中でメジャー期の2作に関しては強いメッセージ性を感じられましたし、恋愛描写の切り取り方も非常にユニーク。それだけに一気に気になるバンドの一組となりました。しかしインディーに戻ってはじめて聴いた2枚のミニアルバムは正直なところ平凡なラブソング。最初、本当にあの「恋に似ている」「SONGS」を書いたバンドなのか?と疑ってしまったほど。悪いアルバムではないかもしれまえんが、メジャー期の2作と比べると1枚も2枚も見劣りがしてしまう内容でした。

今回の作品に関してももちろん「恋愛至上主義」という彼らのスタンスは変わらず、全編ラブソングとなっている作品。非常にシンプルな作風になっている一方、歌詞については恋愛の情景が浮かんでくるようなストーリー性の強い作品になっています。そんな歌詞の世界は片思いや失恋、別れた後の恋人の歌など、「うまくいっていない恋愛模様」がメイン。そんな恋愛模様を描きつつ、最後に来る「花嫁の翼」はタイトル通りのウェディングソング。最後は大団円で終わる構成になっており、この組み立て方にはなかなかの巧さを感じさせます。

ただ、歌詞の内容については「恋に似ている」や「SONGS」のようなメッセージ性も感じさせなければ、恋愛をユニークな切り口で描いている、という歌詞もあまりありません。あえていえばお笑いと恋愛模様を重ねた「コント」などはユニークだったと思うのですが・・・。決して悪い歌詞ではありません。むしろ十分に楽しめる内容でした。しかし、メジャー期の2作に比べると正直なところ物足りなさは否めませんでした。

サウンドについてはメンバーにバイオリン担当がいることもあって、ストリングスを全面的に取り入れた爽やかな雰囲気の曲調がメイン。「クリームソーダ」みたいなラウンジ風な作品でちょっと渋谷系っぽい雰囲気の作品もあったり、「気分を出してもう一度」「FUSHIGI DANCE」のようなギターロック色の強い作品があったりと、基本的にはメロディーと歌詞を重視するシンプルなサウンドがメインなのですが、その中でも最後までリスナーを飽きさせない程度のバリエーションも感じさせます。

そんな訳で、シンプルなメロディーのシンプルなラブソングが楽しめる良作といった感じの本作。ただ、メジャー期の2枚に比べると、前回リリースした2枚のミニアルバムに比べるとよかったものの、物足りなさを感じてしまうのも事実。普通、インディーの頃の方がおもしろい作品をつくって、メジャーに進出すると無難になるというのが一般的なパターンなのですが、彼らの場合なぜか逆なんだよなぁ。次回作はもっと刺激的なラブソングも聴きたいところなのですが・・・。

評価:★★★★

THEラブ人間 過去の作品
恋に似ている
SONGS
きっとずっと彼女は友達
恋は全部まぼろし

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2016年5月27日 (金)

久々の新譜ラッシュ

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

GW中から明けにかけて新譜が少なめのチャートが続いていましたが、今週は久々の新譜ラッシュです。

そんな新譜ラッシュの中、1位を獲得したのがaiko「May Dream」。約2年ぶりの新譜でこれで4作連続1位獲得となりました。ただし初動売上6万8千枚で前作「泡のような愛だった」の初動8万2千枚(1位)からダウン。16万7千枚→13万5千枚→10万1千枚→8万2千枚→6万8千枚と減少傾向が続いているのが気にかかるところです。

2位は日本でも高い人気を確保しているアメリカの女性シンガーAriana Grande「Dangerous Woman」が獲得。キュートなルックスが日本でも人気の彼女。2位は自己最高位となりました。ただし初動売上2万枚は前作「My Everything」の2万6千枚(3位)からダウンしています。

3位は小田和正「あの日 あの時」がベスト3をキープ。ロングヒットを続けています。

続いて4位以下の初登場です。4位には人気男性声優蒼井翔太のベストアルバム「S」がランクインです。4位はシングルアルバム通じて自己最高位ですが、初動売上1万3千枚は前作「UNLIMITED」の1万4千枚(7位)から若干ダウンという結果となりました。

5位には吉川晃司「WILD LIPS」が初登場。今年50歳(!)となる彼が約2年ぶりにリリースしたニューアルバム。初動売上1万1千枚は前作「SAMURAI ROCK」の1万枚(6位)より微増。オリジナルとして前々作「Double-edged sword」も初動1万1千枚を記録しており、固定的なファンがしっかりついている感じが。

6位初登場はロックバンドストレイテナー「COLD DISC」。こちらはオリジナルとしては約1年7ヶ月ぶりの新譜。初動売上は9千枚。直近作はライブアルバム「Behind The Tokyo」の4千枚(14位)からはアップ。オリジナルとしての前作「Behind The Scene」(4位)からは横バイとなっています。

8位にはメロディアスパンクバンドHEY-SMITH「STOP THE WAR」がランクイン。かなりストレートなタイトルですが・・・。途中、メンバーチェンジがあり約3年ぶり久々となる新譜となりました。初動売上7千枚は前作「Now Album」(10位)から横バイ。リリーススパンが開いた中では健闘といった感じでしょうか。

9位初登場はちょっとビックリしました。岡崎体育「BASIN TECHNO」。これがデビュー作となるシンガーソングライターなのですが、このアルバムにも収録されている「MUSIC VIDEO」のPVが大きな話題を呼んでいます。

いわゆるミュージックビデオの「あるあるネタ」をまとめたPVなのですが、音楽的にも比較的しっかりしており、今、もっとも注目を集めているシンガーの一人となっています。初動売上6千枚。デビュー作でいきなりのベスト10ヒットとなりました。

最後10位にはイギリスのギターレジェンド、Eric Clapton「I Still Do」がランクイン。オリジナルアルバムとしては2010年にリリースした「Clapton」以来3作ぶりとなります。初動売上は6千枚。前作「The Breeze: An Appreciation of JJ Cale」の4千枚(19位)からアップしています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評は来週は水曜日から!

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2016年5月26日 (木)

圧倒的強さで1位

すいません、事情により1日遅れのチャート評です。

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

今週1位はやはり圧倒的な強さを見せての1位獲得となりました。嵐「I seek」が1位獲得。日テレ系ドラマ「世界一難しい恋」主題歌。初動売上73万7千枚は前作「復活LOVE」の48万5千枚(1位)よりアップ。前作はDVD付の限定盤+通常盤の2パターンだったのに対して、本作は内容の違うDVD付限定盤が2パターンになったのが初動売上増の大きな要因と思われます。前作に引き続きマイナーコードの歌謡曲の王道路線を行くような丁寧な仕事ぶりが感じられる曲。たださすがに竹内まりや-山下達郎の黄金コンビだった前作に比べると物足りなさも感じるのですが。

2位初登場は韓流の男性アイドルグループSHINee「君のせいで」。初動売上6万枚で、前作「Sing Your Song」の5万枚(5位)からアップ。いかにもK-POPらしい無難なエレクトロポップ。

3位には速水奏(CV:飯田友子),塩見周子(CV:ルゥティン),城ヶ崎美嘉(CV:佳村はるか),宮本フレデリカ(CV:高野麻美),一ノ瀬志希(CV:藍原ことみ) 「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS STARLIGHT MASTER 02 Tulip」がランクイン。ゲーム「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」挿入歌。相変わらずアニソンとアイドルソングを融合させたようなリスナー層を限定しそうなポップ。初動売上は3万1千枚。同シリーズの前作島村卯月(大橋彩香),渋谷凛(福原綾香),本田未央(原紗友里),大槻唯(山下七海),上条春菜(長島光那) 「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS STARLIGHT MASTER 01 Snow Wings」の1万9千枚(3位)よりアップ。

続いて4位以下の初登場曲です。まずは4位、安室奈美恵「Mint」がランクインしてきました。フジテレビ系「僕のヤバイ妻」主題歌。これで22年連続のベスト10入りを記録したそうで、これは史上1位の記録だそうです。(参考サイト【オリコン】安室奈美恵、22年連続シングルTOP10 歴代単独1位の連続記録)彼女らしいエレクトロチューンなのですが、ある種の貫録も感じます。初動売上2万8千枚は前作「Red Carpet」の2万5千枚(2位)より微増。タイアップ効果は微妙ですが、ここ最近、4万2千枚→3万5千枚→2万5千枚と減少傾向が続いていましたが本作で下げ止まりました。

5位初登場はバンドじゃないもん!「キメマスター!」がランクインです。バンドじゃないもん!はもともと、神聖かまってちゃんのドラマー、みさこのサイドプロジェクト的にスタートした、いわばアイドルのパロディー的なユニットだったのですが、大幅にメンバーチェンジして普通のアイドルグループとなってしまいました。楽曲的にも最近よくありがちな、アニメソング風のアイドルポップ。これ、正直、アイドルのパロディーユニットだったからおもしろかったんじゃない?「アイドルとして売った方が売れそう」というレコード会社の思惑が見え見えですごくみっともないし、これをいったら失礼かもしれないけど、みさこはロックバンドの一員としてならかわいいかもしれないけど、アイドルとして売るには・・・・・・・・・。で、それがそれなりに売れちゃうあたりに最近の音楽シーンの薄っぺらさを強く感じます。初動売上2万4千枚は前作「NaMiDa」の1万6千枚(11位)からアップして初のベスト10入り。

7位にはSECRET GUYZ「私のカレーは世界一」がランクイン。SECRET GUYZは元女性のメンバー3人による男性アイドルグループ。トランスジェンダーを標榜するグループだそうですが、正直、そういわれなければわからなくくらい、正統派の男性アイドルグループとなっています。初動売上1万2千枚は前作「SKY MARCH」の1万枚(11位)からアップし、初のベスト10入り。

8位は女性声優Pile「Melody」が入ってきました。NHK教育テレビアニメ「境界のRINNE」オープニング・テーマ。初動売上1万2千枚は前作「ドリームトリガー」の1万1千枚(7位)からアップ。マイナーコードとメジャーコードを行き来しつつ盛り上がるギターポップ路線は良くも悪くもアニソンのステレオタイプ的なナンバー。

9位には、こちらも女性声優小倉唯「ハイタッチ☆メモリー」がランクインしています。テレビ東京系アニメ「カードファイト!!ヴァンガードG ストライドゲート編」エンディング・テーマ。こちらはいかにもなアニメ声。初動売上1万2千枚は前作「Honey♥Come!!」の1万枚よりアップ。ベスト10入りは2013年リリースの「Baby Sweet Berry Love」以来4作ぶり。

最後10位にはソナーポケット「ONE-SIDED LOVE」がランクイン。アニメ「虹色デイズ」主題歌。初動売上1万2千枚は前作「ベストフレンド」(6位)から横バイとなっています。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2016年5月25日 (水)

女性としての名前で

Title:Hopelessness
Musician:ANOHNI

Antony&the Johnsonsの中心人物であり、かつボーカルとして活動していたAntony Hegarty。今回の新作は、そのヘガティが「ANOHNI」名義でリリースしたアルバム。このANOHNIという名前ですが、彼女はトランスジェンダーであることを公表しており、その彼女の女性としての名前がANOHNIということ。このANOHNI名義でのリリースには彼女の主張とそして覚悟も感じることが出来ます。

そのANOHNIとして歌っていることも影響しているのでしょうか、今回のアルバムは非常に社会派な歌詞が目立つことも特徴的でした。まず冒頭を飾る「Drone Bomb Me」はタイトル通り、ドローンによる中東でのアメリカ軍の爆撃を示唆した内容になっています。また「たった4度で世界が煮えたぎるのを見たい」と歌う「4 Degrees」は、その内容の通り、地球温暖化をテーマとした内容。歌詞はいずれもウイットに富みながらも、非常にストレートにその主張が伝わってくる歌詞になっています。

しかし、そんな曲のテーマとは裏腹に、楽曲自体に関してはむしろAntony&the Johnsonsよりもポップなメロディーラインを聴くことが出来ます。「Watch Me」なども非常にポップなメロディーラインがインパクトありますし、「Crisis」などもそのタイトルとは逆にポップなメロディーラインはむしろ明るささえ感じてしまいます。

また、Antony&the Johnsonsとは大きく異なるのはそのサウンド。オーケストラを取り入れたストリングスメインのサウンドだったAntony~と異なりANOHNIとしての曲は全面的にエレクトロサウンドを取り入れています。強いビートを楽曲に取り入れてきたり、分厚いサウンドでダイナミックに仕上げてきたり、ある意味「非ロック」的だったAntony~と異なり、サウンド的にはロック寄りに感じられる作品に仕上がっている、ともいえるかもしれません。

Antony&the Johnsonsとしての作品が決してマニアックで聴きづらかった作品というわけではありませんが、今回の作品、エレクトロなサウンドとポップなメロディーラインで聴きやすいアルバムに仕上がっていたと思います。今回のアルバムをあえてポップに仕上げてきた理由はわからないのですが、あえて女性名を名乗ったスタイルで社会派な歌詞を歌うからこそ、よりそんな彼女の主張が伝わるようにポップな作風にまとめたのかも・・・とも思いました。

もっとも、それではAntony&the Johnsonsとしてのアルバムから大きく異なる内容なのか、と言われるとそうではありません。Antony~のアルバムでの最大の魅力だったAntony Hegarty、いやANOHNIのボーカルは本作でももちろん健在。中性的な、この世のものとは思えないような美しくも力強いボーカルに魅了されること間違いなし。もちろん本作、歌詞やポップなメロディーラインも魅力的なのですが、なによりもANOHNIのボーカルに酔いしれることが出来るアルバムでした。

そんなポップ色の強いアルバムなのですが、その中に異質ともいえる不気味な空気を放っているのが中盤の「Obama」という曲。タイトルの通り、アメリカのオバマ大統領について歌った曲なのですが、彼に対する厳しい糾弾のメッセージとなっています。これがまさに憎悪あふれるボーカルとその感情にあったサウンドが実に不気味。ポップな作風の本作の中でかなり異質な構成となっているのですが、それだけ彼女のオバマ大統領の政策に対する失望感が強かった、ということなのでしょう。

個人的には正直、Antony&the Johnsonsのアルバムの方がよかったかな?とも思うのですが、こちらの作品も文句なしに傑作アルバムだったと思います。今後はこのANOHNIとしての活動を続けていくのでしょうか。彼女のありのままの姿をそのまま映し出したジャケット写真も大きなインパクトな本作ですが、その内容についても非常に大きなインパクトのある作品でした。

評価:★★★★★

ANTONY AND THE JOHNSONS(ANOHNI) 過去の作品
The Crying Light
SWANLIGHT
CUT THE WORLD

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2016年5月24日 (火)

20周年の贈り物

Title:LIVE at MDT Festival 2015
Musician:ROVO

Rovo

「人力トランス」とも呼ばれる圧倒的なステージで多くのファンを魅了し続けるバンド、ROVO。今年はなんと結成20周年を迎える彼ら。それを記念してライブ音源が無料ダウンロードにて配信されています。

今回無料配信されている音源は、昨年5月に日比谷野音で行われた毎年恒例のMDTフェスティバルの模様を収録した全4曲入り55分の音源。公式サイトではMP3形式でダウンロードができるほか、音楽配信サイトOTOTOYではハイレゾ音源でのダウンロードも可能となっています。

そんなお得なライブ音源の内容ですが、率直に言ってしまえばいつものROVO。いや、それは「マンネリ」ということではありません。ライブに定評のある彼らだけにこのアルバムでも圧倒的なステージングを音源からも感じることが出来ます。

1曲目「SPICA」はシンセのサウンドを主軸とした構成。シンセのサウンドで醸し出している未来的な雰囲気が魅力的なナンバー。続く「NA-X」は複雑なドラムのリズムがとてもスリリング。バイオリンの音色とドラムのリズムが前面に出てきているのがROVOらしいサウンド構成。終盤は激しいギターサウンドでロックな雰囲気に仕上げてきています。

「D.D.E.」はまるで警告音のようにシンセが鳴り響く中、ダイナミックなドラムスとバイオリンの音色がスリリングに展開されていきます。後半は一転、シンセの音がどこかユーモラスさを感じてポップなテイストを感じさせる楽曲。そして最後の「SUKHA」は最初はトライバルなパーカッションからスタート。途中から、シンセやバイオリンの音が加わり、一気にサイケな雰囲気になり、最後はダイナミックなサウンドが鳴り響く中、ライブは幕を下ろします。

基本的にシンセのサウンドとバイオリン、そこに強いドラムのリズムが加わる構成ながらも、4曲とも次々とそのスタイルが変化していき最後まで飽きさせることがありません。ライブならば、この音の洪水が気持ちいいんだろうな、と感じつつも、その魅力はきちんとダウンロード音源からも伝わってきました。

ダウンロードは下記のサイトから。ちなみに6月5日までの限定リリースなので、興味のある方は急いで!

http://rovo.jp/download/20th.html

評価:★★★★★

ROVO 過去の作品
NUOU
ROVO Selected 2001-2004
RAVO
PHOENIX RISING
(ROVO×SYSTEM7)
PHOENIX RISING LIVE in KYOTO(ROVO×SYSTEM7)
Phoenix Rising LP(ROVO and System7)

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2016年5月23日 (月)

強いメッセージ性が伝わる傑作

Title:Lemonade
Musician:Beyonce

4月24日に何の予告もなしにいきなりリリースされて大きな話題となったBeyonceのニューアルバム。ビジュアルアルバムという位置づけで1時間以上にも及ぶ映像作品も同時に収録されている作品で、その映像作品の方は、アルバム12曲に対応したPV的な作品が収録されつつ、12曲全体でひとつの作品となっているような内容になっています。

さてそんな突如リリースされたアルバムなのですが、この内容が文句なしにカッコいい!今回のアルバムで話題となっているのが数多くのミュージシャンとのコラボレーション。参加陣にはご存じ元The White StripesのJack WhiteやThe Weeknd、James Blake、さらにはKendrick Lamarといった今を輝く豪華なミュージシャンがズラリと並んでいますが、これがアルバムの中で実に良いスパイスとして機能しています。

アルバムはまずピアノとストリングスを用いた静かで緊迫感あるトラックが印象的な「Pray You Catch Me」「Hold Up」からスタート。この2曲も非常にカッコいいナンバーなのですが、ここから3曲目「Don't Hurt Yourself」へと流れ込む展開が痺れます!この「Don't Hurt Yourself」はJack Whiteがゲストで参加している作品なのですが、Beyonceのシャウト気味なボーカルにへヴィーなバンドサウンドがのるブラックテイストが強いロックなナンバー。Beyonceのいつものイメージとはちょっと異なるだけにアルバムの中で大きなインパクトとして機能しています。

その後の「Sorry」「6 Inch」は今時な雰囲気が強いダークな雰囲気のあるエレクトロトラック。こちらも「6 Inch」ではThe Weekndがゲストとして参加していますが、今時のサウンドを用いつつも基本的にはポップ路線な楽曲がThe Weekndらしさを感じます。

さらにカントリーロック風の「Daddy Lessons」なんていうちょっと意外性あるナンバーを挟みつつ、「Sandcastles」はピアノをバックに力強いボーカルを聴かせる正統派のソウルバラード。ソウルシンガーとしてのBeyonceの実力をこれでもかというほど感じさせるナンバーになっています。

そして後半のハイライトとも言えるのがKendrick Lamarがゲストで参加している「Freedom」。強いビートを前に出したパワフルなトラックに彼女のボーカルも非常に力強いものを感じるナンバー。歌詞の内容はストレートにはわからないのですが、サビの「Freedom」という力強いフレーズの繰り返しに楽曲のメッセージ性が伝わってきそうなナンバー。さらに最後に入るKendrick Lamarのラップも強い印象に残ります。

最近のR&Bから昔ながらのソウル、エレクトロにロック、HIP HOPやカントリーまで幅広い音楽性をちゃんと自分のものとして取り込み、かつ1枚の作品としてまとめあげている傑作アルバム。ただ今回、ここまで「音楽的」な側面のみ取り上げてきましたが、このアルバム、そこに込められたメッセージ性も大きな話題となっています。

まずゴシップ的な側面として話題となったのが夫であるJay-Zの浮気をテーマとしているという話題。1曲目「Pray You Catch Me」は浮気夫への糾弾を歌詞のテーマとしていますし、「Sorry」の中に出てくる「Becky」なる人物がその浮気相手ではないか、と話題となっています。

ただこのアルバムがすごいのは単なる「夫の浮気」というパーソナルなテーマをアルバムの中でアフリカン・アメリカンの女性の問題へと昇華しているという点。

「I break chains all by myself
Won't let my freedom rot in hell」
(鎖を自ら壊して 自由を勝ち取ろう)

と歌う「Freedom」などは非常にストレートながらもアフリカン・アメリカンとしての力強いメッセージ性を感じますし、そのメッセージ性は映像作品からもより強く感じます。特に「Don't Hurt Yourself」では楽曲の中でマルコムXの「アメリカで最も評価されていない人間は黒人女性だ。アメリカで最も危険にさらされている人間は黒人女性だ」というスピーチをサンプリングしつつ、黒人女性たちの笑顔を映し出すという構成には、Beyonceの主張を強く感じることが出来ます。

これらのメッセージ性は比較的わかりやすく、今回このレビューを書くにあたってはいろいろなサイトの情報を参考にはしたのですが、何も情報を得ていなくても、英語のよくわからない私たちでも映像作品を見ればBeyonceのメッセージは何かは伝わってくるのではないでしょうか。

ただそれでも日本人の私たちにとってはメッセージがダイレクトに伝わってこないのはとても残念。それは今回のアルバムがとてもメッセージ性の強い内容なだけに特に感じます。ここ最近、Kanye WestにJames Blake、Radioheadなど突然、配信のみでアルバムをリリースする大物ミュージシャンが続いていますが、CDでのリリースならば歌詞カードについてくる和訳等で彼らのメッセージが伝わってくるものの配信のみのリリースでは歌詞の内容がほとんどわからないのが非常に残念に感じると同時に、このままではますます日本人の洋楽離れが進んでしまうのではないか、と危惧します。和訳を載せているサイトもいろいろとあるにはあるのですが・・・。

今回のBeyonceのアルバムも後日、国内盤がCDでリリースされる予定のようですが、そのリリース時期は今年の夏頃とかなり遅れる見込み。例えば和訳をした歌詞カードだけでダウンロードで先に発売とかできないのでしょうか?500円くらいまでなら買ってもよいと思うのですが。

もっともこの作品、Beyonceのメッセージもさることながらも音楽的な面だけでもすごさを感じることが出来る傑作アルバムだったと思います。間違いなく今年のベスト盤候補と言える傑作。国内盤がリリースされる夏まで待ってもよいとは思いますが・・・全音楽ファンがチェックすべき作品だと思います。これはすごい!

評価:★★★★★

BEYONCE 過去の作品
I Am...Sasha Fierce

I AM...WORLD TOUR
Beyonce

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2016年5月22日 (日)

良くも悪くも正統派ポップスシンガー

Title:超いきものばかり~てんねん記念メンバーズBESTセレクション~
Musician:いきものがかり

2006年にメジャーデビューしてから今年で10周年を迎える男女3人組ポップスデゥオ、いきものがかり。デビュー作「SAKURA」からヒットを放ち、その後もコンスタントにヒットを放ち続け、今や日本を代表するポップスシンガーとなった彼ら。今回、その10周年を記念してベスト盤がリリースされました。

全3枚組となる本作はメンバー自身が選曲した40曲に新曲5曲を収録した全45曲入り。さらに初回盤にはもう1枚組が追加となっており、こちらは「超B面ばかり+メンバー泣きの三曲」と題され、タイトル通りのカップリング曲集に、メンバー選曲の3曲が収録されているボーナスディスクになっています。

そのベスト盤はデビュー作「SAKURA」からスタートし、必ずしも順番通りという訳ではないのですが、概ね発売順に並んでいる構成になっています。ちなみに彼女たち初のベスト10ヒットとなった「HANABI」は未収録。こちら、以前リリースしたベスト盤「いきものばかり」にも未収録となっていて、彼女たちにとってはブレイクポイントとなる曲なのですが、必ずしもお気に入りではない、ということなのでしょうか。

さて、そんないきものがかりの活動を網羅したベスト盤となっているのですが、ご存じの通り、彼らは2010年に既にベスト盤は一度リリース済。それからアルバムはわずか3枚しかリリースしておらず、率直に言って、ベスト盤のリリーススパンが短いと思ってしまいます。もっとも、ここ最近、この手のリリーススパンが短いベスト盤は彼女たちに限らず目立っているのですが。

そのため基本的には感想といっても前回のベスト盤の時の感想と大きくはかわりません。90年代J-POPの正統派後継者というイメージ。前回のベスト盤「いきものばかり」の時も直近の作品になるにしたがって彼女たちが成長していく姿を感じることが出来たのですが、そのベスト盤の後にリリースされたアルバム3枚にしても彼女たちの大きな成長を感じさせるアルバム。特に2013年にリリースされた「I」は彼女の最高傑作と言える作品に仕上がっていました。

それでも正直、代表曲だけピックアップすると「いきものばかり」の時とイメージは大きく変わりません。愚直に歌とメロディーを聴かせるというスタイルはほとんど変わりなく、最近のポップソングにありがちな軽くラップを入れるという手法もありません。むしろここ最近の曲に関しては意識的か無意識か、より歌謡曲的なスタイルの曲が増えてきたという印象すらあります。お茶の間に広く愛される正統派ポップスユニットとしての強い自覚が、広く日本人の琴線にふれる歌謡曲という路線によりシフトさせたのでしょうか。

あまり変わらないという意味では初回盤についてきたカップリング曲集も同様。シングルのカップリングと言えば、シングルやアルバム曲では聴けないような実験的な曲、一風変わった曲を披露するミュージシャンも少なくないのですが、彼女たちに関してはカップリング曲についても基本的にはそのスタンスをほとんど崩していません。良くも悪くもカップリング曲を聴いて彼女たちに関してのイメージが変わることはありませんでした。

そんな訳で良くも悪くも正統派ポップスシンガーな彼女たち。何かポップソングを聴きたい、という方に素直にお勧めできる反面、いきものがかりのイメージからあまり聴いてこなかった方にはお勧めしがたい作品といった感じでしょうか。ただ最近、一皮むけた感の強い彼女たちなだけに、次にリリースされるベスト盤はもうちょっと印象が変わっているのかも。もっとも、次はもうちょっとスパンをあけた方がいいと思うのですが。

評価:★★★★

いきものがかり 過去の作品
ライフアルバム
My Song Your Song
ハジマリノウタ
いきものばかり
NEWTRAL
バラー丼
I
FUN! FUN! FANFARE!

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2016年5月21日 (土)

デビュー10年目にして・・・

Title:southview
Musician:MONKEY MAJIK

在日カナダ人の兄弟2人と日本人2人からなる、洋邦混合バンドMONKEY MAJIK。2006年のデビュー後、10周年となる今年にリリースされた10枚目となるアルバムが本作。本作は「心躍らす」をテーマに、ダンスミュージックを主軸に据えたテーマ性あるアルバムに仕上げてきています。

MONKEY MAJIKについてはデビュー当初よりほぼ全てのアルバムを聴いてきました。「良質なポップソング」というイメージの強いバンドで、派手さはないもののグッドミュージックを書いているバンドという印象がある一方でインパクトという面ではちょっと薄く、特にここ最近のアルバムに関してはマンネリ気味では?という感想を抱いていました。

それだけに今回のアルバムに関してもさほど高い期待はしていなかったのですが・・・しかし聴いてみてビックリ。本作、MONKEY MAJIKというバンドのイメージはそのままながらも、非常に魅力的な傑作アルバムに仕上がっていました。

メジャーデビュー10年目、十分中堅の域に達している彼らがここに来てこれだけの傑作をリリースしてきたのが驚きなのですが、まずひとつ傑作だと感じられる大きな理由がいままでのアルバムと比べて洋楽テイストが強く出たアルバムだった、という点があげられると思います。

英語詞の作品も多く、また、今回はダンスミュージックをテーマとしているためダンサナブルでスタイリッシュな作風の曲がメイン。いままでの作品も洋楽テイストが強い反面、アルバム全体では悪い意味でのJ-POPらしさが出てしまっていて、どうも野暮ったさが目立ってましたが、今回の作品は野暮ったさをあまり感じることはありません。

今回のアルバムに関してもそういうJ-POPらしさを感じる曲はあります。例えば最後を飾る「The Mistakes I've Made」などはわかりやすいポップなメロディーラインにJ-POPっぽさを感じますし、「Splash」などはグループサウンドからの影響を感じさせるような、実に歌謡曲らしい作品になっているなど、MONKEY MAJIKらしさである「和風」の要素は強く感じます。

ただ一方でエレクトロサウンドを取り入れたディスコチューン「Delicious」や、同じく四つ打ちダンスチューン「Undercover」など、英語詞のダンスチューンに関してはかなり垢抜けた感があり、「J-POPらしい」という言葉に内包されている、悪い意味での野暮ったさは感じません。他にも「Breathe」も80年代的なにおいを感じるファンキーな、実に心地よいナンバーに仕上がっています。

今回のアルバム、おそらく洋楽っぽくあか抜けていると感じるのはリズム感の良さなんでしょうね。いままでの彼らのアルバムでももちろん、そのリズム感の良さを感じる側面もあったのですが、今回、ダンスミュージックを前面に取り入れたことにより、そんな彼らの良さが、より表に出てきたアルバムに仕上がっていたように感じます。

他にもレゲエの要素を取り込んだ「Utopia」

「囚われている
姫を救え
山駆けて
海を渡れ
きのこ食べて
大きくなって
いくぞ決戦
跳び越せ
GAME OVER」

(「Gamer」より 作詞 Maynard/Blaise/TAX)

なんていう、あきらかに特定のゲームを彷彿とさせるような歌詞もユニークな「Gamer」なんて曲もあったりと、最初から最後まで聴きどころの多い作品に仕上がっています。

デビュー10年目にして(こう言うと失礼かもしれませんが)まさかの最高傑作!いや、申し訳ないけどもここまでの傑作がいまさら聴けるとは思ってもいませんでした。また、MONKEY MAJIKというバンドの実力を再認識したアルバムになっていました。一時期に比べると人気という面では若干落ちてきたのは否めない彼らですが・・・昔、聴いたことがある、という方も是非とも聴いてほしい傑作。これはこれからの活動も楽しみになってきます。

評価:★★★★★

MONKEY MAJIK 過去の作品
TIME
MONKEY MAJIK BEST~10years&Forever~
westview
SOMEWHERE OUT THERE
DNA
Colour By Number

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2016年5月20日 (金)

有名女優とのまさかのコラボ

Title:信じるものなどありゃしない
Musician:室井滋&W.C.カラス

正直言えば、かなり意外な組み合わせでのアルバムがリリースされました。一部で話題となっているブルースシンガーW.C.カラスと女優室井滋の組み合わせによるコラボアルバム。同じ富山出身という共通項はあるものの、W.C.カラスは「知る人ぞ知る」的な、率直に言ってマニアックな部類に入るブルースシンガー。一方、室井滋はその名前をお茶の間レベルでもよく知られている女優。そのコラボにはかなり意外性を感じました。

もともとは室井滋は知り合いのミュージシャンからの情報でW.C.カラスの名前を知り、自身のラジオ番組でゲストに招き、それをきっかけとして今回のコラボにつながったとか。それにしても室井滋は正直シンガーという印象はありませんし、このコラボを知った時はビックリしました。

ただし、室井滋が参加しているのは冒頭の2曲のみ。とはいえ、この2曲がなかなか味わい深い素晴らしい曲が並んでいます。1曲目はタイトルにもなっている「信じるものなどありゃしない」。ブルースな曲風なのですが、哀愁たっぷりのメロディーラインはむしろ歌謡曲の雰囲気も感じられますが、これがまた日本人の琴線にビンビンと響いてくるメロディーに仕上がっています。

そこで歌われる室井滋のボーカルがまたなんとも言えず味があります。はっきりといえば、少々ピッチをはずした感じもある下手ウマなボーカルなのですが、これが哀愁感漂う曲風にピッタリとマッチ。歌詞には「鈍色(にびいろ=濃いねずみ色)」なんて渋い表現も登場してきますが、この言語感覚もまた、楽曲の雰囲気にマッチしています。

2曲目の「夢を見るのを忘れたの」もまたタイトルだけでもブルースな感じ。内容はユニークで、ちょっとエロチックな歌詞が印象に残ります。ただ大変失礼ながらも、エロちっくな歌詞なのですが、ボーカルが室井滋だと「・・・・・・・・・」。いや、でもこちらも味わい深いボーカルをしっかりと聴かせてくれています。

ちなみに室井滋のボーカル、「信じるものなどありゃしない」ではピッチをはずしたような下手ウマなボーカルなのですが、「夢を見るのを忘れたの」ではしっかりとピッチをあわせてきており、1曲目の下手ウマボーカルはわざとだと気がつかされます。なにげに彼女のボーカリストとしての実力も感じることができました。

3曲目以降はW.C.カラスのみの作品。基本的にはギターとブルースハープのみでの構成。ホーンセッションを入れてきたり、楽曲のバリエーションが広がった前作と比べると、比較的似たタイプの曲が並んでいます。楽曲はもちろんブルースなのですが、微妙に歌謡曲的な哀愁が加わったりしており、そこらへんは本場のブルースそのままではなく、「日本のブルース」として彼の解釈が加わった印象を受けました。

歌詞のインパクトとしても正直、前作「うどん屋で泣いた」の方が強かったと思います。ただ、そんな中でも「己を憐れむ唄」のように、少々汚い表現を歌詞に組み込みながらも、それゆえに本音があわられたような描写が非常に印象に残る楽曲もあり、W.C.カラスの魅力はしっかりと伝わってきました。

全6曲でW.C.カラスの魅力がすべて伝わった・・・という感じのアルバムではないのですが、室井滋とのコラボは非常に魅力的で大成功といって間違いないのではないでしょうか。むしろまたこのコラボで作品を聴きたいとも思ってしまいました。心に染み入ってくる6曲が収録されているアルバム。ブルース好きはもちろんのこと、心に響いてくる曲に最近出会っていない、と感じる方是非お勧めしたいアルバムです。

評価:★★★★★

W.C.カラス 過去の作品
うどん屋で泣いた


ほかに聴いたアルバム

Flying Tentacles/Yakushimaru Experiment

相対性理論のやくしまるえつこによるソロアルバム。Amazonのレビューを元にすると、「即興・朗読・数字を扱う実験コンセプト・アルバム」だそうで、「やくしまるが素数を譜面化&聴覚化した楽曲や、やくしまるのオリジナル楽器“dimtakt”をはじめとしたオリジナル楽器演奏者による14分に
もおよぶ大作即興セッション、更にフィリップ・K・ディック賞受賞SF作家・円成塔がやくしまるの朗読の為に書き下ろした特殊な構造のテキストをやくしま
るが朗読+即興演奏した「タンパク質みたいに」などを収録。」

要するに実験的な即興演奏や散文的な朗読がおさめられたかなり前衛的な要素が強いアルバム。で、楽しめたかというと率直に言ってしまうと楽しめませんでした(苦笑)。即興演奏にしても朗読にしても「ポップ」な要素は皆無。はっきりいってしまえば全くわかりません。正直、現代音楽的な観点からも優れているのか自己満足なのかいまひとつわからないアルバム。ただ、非常にわかりにくいアルバムであるのは間違いないので、現代音楽に造詣が深い方か、やくしまるえつこの熱狂的なファン以外は回避推奨かも。

評価:★★

やくしまるえつこ 過去の作品
RADIO ONSEN EUTOPIA

矢野顕子+TIN PAN PARTⅡ さとがえるコンサート/矢野顕子+TIN PAN

矢野顕子の毎年年末恒例のさとがえるコンサート。昨年はおととしから2年続けてTIN PAN(細野晴臣,林立夫,鈴木茂) とのコラボライブ。またアルバムも2年連続でのリリースとなりました。さすがに2年連続ということもあって、かなり慣れた感じは前作以上。TIN PANのサウンドをバックに矢野顕子が自由に歌ってしっかりと矢野顕子の曲になってしまっていたり、逆に矢野顕子が控えめでTIN PANのナンバーとなっていたりと、お互いの良さを上手くいかしつつのステージになっていたように感じます。前作同様、ベテラン同士の底力を感じたライブアルバムでした。

評価:★★★★★

矢野顕子 過去の作品
akiko
音楽堂
荒野の呼び声-東京録音-
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
矢野顕子、忌野清志郎を歌う
飛ばしていくよ
JAPANESE GIRL - Piano Solo Live 2008 -
さとがえるコンサート(矢野顕子+ TIN PAN)
Welcome to Jupiter

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2016年5月19日 (木)

再メジャーデビュー作!

Title:ブリトラ依存症
Musician:ブリーフ&トランクス

復帰後3作目、さらにメジャーからの再デビュー作となるブリーフ&トランクスの新作。「半径5メートル以内の日常」をテーマとしたコミカルな楽曲が特徴的な彼らですが、今回の作品もそのスタンスが1ミリもぶれることがありませんでした。

タイトル通りな内容の「ケータイ依存症」や世代間ギャップ(?)をコミカルに描いた「良くなくない?」、夢と現実をコミカルながらもシビアに描いた(?)「タイムカプセル」など、あるあるネタ・・・というよりもユーモラスな描写の中に、そのテーマ性に微妙に共感できる内容が特徴的。テーマとしてもあくまでも「半径5メートル以内の日常」という彼らのスタンスの通り、実に身近な・・・というよりも身近すぎてなかなか曲のネタになりそうもないテーマをあえて取り上げています。

また今回のアルバムでちょっと目立ったのが下ネタ。手術の時に下の毛を剃ることをテーマとした「剃毛」なんて曲もありましたし、また「パチンコ」「まんげつ~ブリトラバージョン~」は歌詞にするとなんてことない普通の歌詞の曲にも関わらず、歌い方によって非常に卑猥な内容に聴こえる、というかなり笑える楽曲。ただ、非常につボイノリオ臭がしてくるような内容なのですが(苦笑)。

そんな訳で今回の作品も実にブリーフ&トランクスらしいユニークな作品に仕上がっていました。ただ、デビュー当初のような勢いを取り戻した前々作、前作と比べると、3作目となってしまって若干ネタ切れ感が否めないかな?とも思ってしまう部分も感じてしまいました。

それこそ上にも書いた「まんげつ」などはもともと伊藤多賀之ソロ作のブリトラバージョンですし、「パチンコ」も基本的にその延長線上。他にもコミカルさはあるものの真面目なネタが多かったにも気になりましたし、「幻の宝」なども出だしは非常にユニークながらも「え、落ちがそれ?」と感じてしまうような中途半端な終わり方になってしまっていて残念に感じました。

再メジャーデビュー決定ということで、前作からわずか1年というスパン。ネタがたまる前にリリースが決まってしまったのかな、なんて邪推すらしてしまいたくなってしまいました。全体的にはもちろんブリトラらしさはきちんと出ていますし、それなりに楽しめる内容ではあったのですが・・・。ここ2作が非常に出来のよい傑作だっただけにちょっと残念。次はあまり急がずに、またユーモラスなネタを聴かせてほしいです。

評価:★★★★

ブリーフ&トランクス 過去の作品
グッジョブベイベー
ブリトラ道中膝栗毛


ほかに聴いたアルバム

TOKYO BLACK HOLE/大森靖子

一部で高く評価されている女性シンガーソングライター大森靖子のメジャー2枚目となるフルアルバム。その独特の世界観が評判のシンガーで、これで彼女のアルバムを聴くのは3作目なのですが、どうもいまひとつピンと来ない・・・。その歌詞やスタイルがいかにも狙ってます的な感じが否めず、正直、ハイプという言葉が頭に来ています。今回の作品はメジャー2作目ということでかなりポップで聴きやすい内容にはなっていたのですが・・・。

評価:★★★

大森靖子 過去の作品
洗脳
トカレフ(大森靖子&THEピンクトカレフ)

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2016年5月18日 (水)

GW明けのチャート

今週はGW明けのチャートでアルバムチャートは新譜少な目。またシングルアルバム同時更新です。

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

先週に引き続き今週もジャニーズ系が1位獲得。Hey!Say!JUMP「真剣SUNSHINE」が獲得。 コーセーコスメポート「サンカット(R)」CMソング。ラテンノリのアップテンポなサマーダンスチューン。初動売上26万6千枚は前作「キミアトラクション」の20万3千枚(1位)よりアップ。ちなみに「マジサンシャイン」と読むそうです。

2位初登場はモーニング娘。'16「泡沫サタデーナイト!」。作詞作曲は赤い公園の津野米咲が担当。ある意味非常にベタなディスコチューン。うーん、正直、モーニング娘。の作曲はやはりつんく♂がいいよなぁ。初動売上11万3千枚は前作「冷たい風と片思い」の14万3千枚(1位)からダウン。

3位初登場はワルキューレ「一度だけの恋なら」。アニメ「マクロスΔ」オープニングテーマ。ワルキューレはそのアニメ「マクロスΔ」に出てくる架空の軍部隊だそうです。マイナーコードでアップテンポという悪い意味でベタなアニソン。初動売上は3万5千枚。これが初のシングルとなります。

続いて4位以下の初登場です。4位は韓国の4人組ポップスバンドCNBLUE「Puzzle」がランクイン。もともとアイドル色の強いバンドでしたが、前作に引き続き、エレクトロアレンジのダンサナブルなナンバーはバンド色は皆無で完全にアイドルポップスになっています。初動売上2万8千枚は前作「WHITE」の2万5千枚(4位)からアップ。

5位初登場は6人組の女性ボーカルグループLittle Glee Monster「My Best Friend」。ゴスペル風なコーラスも入れて歌唱力に重点を置いているグループ。「ラウンドワン」CMソング。初動売上2万3千枚は前作「好きだ。」の9千枚(6位)からアップしています。

6位にはCYaRon!「元気全開DAY!DAY!DAY!」がランクイン。アニメキャラによるアイドルプロジェクト「ラブライブ!サンシャイン!!」登場キャラクターによるユニット。アップテンポの電波系アニソン。相変わらずいかにもなアニメ声は聴いていて途中から辛くなります・・・。初動売上2万2千枚。

8位には男装の女性アイドルグループTHE HOOPERS「ラブハンター」が初登場。PVからして完全に宝塚ノリ。楽曲は王道の歌謡曲路線。初動売上2万枚は前作「情熱は枯葉のように」の1万8千枚(6位)から若干のアップとなりました。

続く9位に女性シンガーAimer「ninelie EP」がこの位置。フジテレビ系アニメ「甲鉄城のカバネリ」エンディング・テーマ。スケール感あるミディアムチューン。ちょっと幻想的な雰囲気を醸し出しているあたりがアニソンっぽい感じ。初動売上1万9千枚。前作「Brave Shine」の2万枚(4位)から微減(ちなみに、この「Brave Shine」と本作の間に、「Brave Shine」のアナログ限定盤がリリースされており初動1千枚(79位)を記録しています)。

最後10位には女性声優3人によるユニットTrySail「High Free Spirits」が入ってきました。アニメ「ハイスクール・フリート」オープニング・テーマ。初動売上1万9千枚は前作「whiz」の1万2千枚(4位)からアップしています。


今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

20周年のベスト盤が見事1位獲得です。

今週1位はT.M.Revolution「2020 -T.M.Revolution ALL TIME BEST-」が獲得しました。デビュー20周年を記念してリリースした3枚組のオールタイムベスト。デビュー時をリアルタイムで知っているだけに、彼がデビューしてからもう20年もたつのか・・・と思ってしまいます。初動売上は4万4千枚。直近のオリジナルアルバム「天」の3万3千枚(2位)よりアップしていますが、ベスト盤としての上積みは1万枚程度でオールタイムベストとしてはちょっと寂しい感じ。ちなみに彼の1位獲得は10年前にリリースした同じくベスト盤「1000000000000」以来で、その時の初動6万8千枚よりはダウンしています。

2位には小田和正のベスト盤「あの日 あの時」が先週からワンランクダウンながらもまだ2位にとどまっています。

3位初登場は「『ガールズ&パンツァー 劇場版』ドラマCD5 新しい友達ができました! 」。アニメ「ガールズ&パンツァー 劇場版」での初登場キャラによるドラマCDだそうです。初動売上は1万2千枚。ガールズ&パンツァー関係のアルバムでは前作「ガールズ&パンツァー タンソンミニアルバム」の1千枚(65位)より大幅アップ。

続いて4位以下の初登場盤。まずは4位に原田知世「恋愛小説2~若葉のころ」が入ってきました。ユーミンの「やさしさに包まれたなら」や「木綿のハンカチーフ」などのラブソングをカバーしたアルバム。昨年3月に同じく洋楽のカバーアルバム「恋愛小説」をリリースしましたが、それに続く第2弾です。初動売上6千枚はその前作「恋愛小説」の2千枚(30位)よりアップ。なんと原田知世のアルバムベスト10入りは1997年の「Flowers」以来18年8ヶ月ぶり(!)。枚数的にはかなり低水準なのですが、それでも久々の返り咲きという快挙となりました。

5位にはイトヲカシ「捲土重来」がランクイン。人気動画サイト「ニコニコ動画」で人気を博した伊東歌詞太郎と宮田“レフティ”リョウによるユニット。初動売上は5千枚。伊東歌詞太郎としては直近作「二律背反」の1万4千枚(6位)から大幅にダウンしてしまっています。

最後、7位には奥田民生「秋コレ~MTR&Y Tour 2015~」がランクイン。2015年に行ったツアー「秋コレ」の模様をおさめたライブアルバム。初動売上5千枚は直近のオリジナルアルバム「O.T.Come Home」の1万9千枚(8位)から大幅ダウン。まあライブアルバムなのでこんなものでしょう。

今週のチャート評は以上。また来週の水曜日に!

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2016年5月17日 (火)

素直なメロディーラインが魅力的

Title:Everything at Once
Musician:TRAVIS

イギリスで国民的人気を誇るロックバンドTRAVISの3年ぶりとなる新譜。チャート1位を連発していた一時期に比べると少々落ち着いた感もあるのですが、それでも本作では全英チャート5位を記録し、まずまずの人気ぶりを発揮しています。

バンドサウンドを多く取り入れようとした結果、失敗に終わった前々作「Ode To J.Smith」、泣きメロ路線に回帰し、見事復活した前作「WHERE YOU STAND」と続いたのですが今作は奇をてらわないポップス路線。そういう意味では前作で戻ったTRAVISの王道路線が続いた方針となったのでしょう。

特に泣きメロ路線として本作で個人的に気に入ったのは「All of the Places」。彼ららしい切ないメロディーラインの美メロがさく裂したポップソング。この曲を挟んで「3 Miles High」「Idlewild」と終盤に泣きメロソングが続いており、TRAVISらしさを満喫できる流れとなっています。

ただアルバム全体としては「泣きメロ」に限定されず、あくまでもポップな作品が目立つ流れとなっています。タイトルチューンとなっている「Everything at Once」も軽快なポップソング。難しいこと抜きとしてポップな楽曲を素直に楽しめるアルバムに仕上がっていた印象が。もちろん、この奇をてらわないポップス路線という意味では初期からのTRAVISファンも納得の作品だったと思います。

また一方では、意外とバンドサウンドも目立つ印象を残した作品にもなっていました。例えば「Radio Song」などはバンドサウンドは意外とへヴィー。「Paralysed」などもストリングスとへヴィーなドラムでダイナミックなサウンドに仕上げています。ここらへん、バンドサウンドを前に押し出した前々作「Ode To J.Smith」の影響も出ているのかもしれません。

ただ、バンドサウンドも聴かせるとはいえ、基本的にはメロディーラインを主軸に据えた構成には変わりありません。例えば「Animals」もノイジーなギターサウンドを聴かせてくれるのですが、メロディーを前に押し出しておりギターの音は比較的控えめ。バンドサウンドとメロディーラインのバランスの妙に上手さを感じさせる作品になっていました。

前作の感想でいい意味でのインディーバンドっぽさが残っている、と書いたのですが、このストリングスやバンドサウンドがあくまでも控えめなバランスとなった結果、今回のアルバムに関してもいい意味でのインディーっぽさも感じさせます。人気的には国民的バンドながらも、楽曲的にはスタジアムではなくそこらへんのライブハウスで聴けそうな、いい意味での親しみやすさを感じる作品になっています。

そんな訳で、実にTRAVISらしい良さを感じさせる傑作。決して派手さはないものの、心に染み入ってくるようなメロディーがとても魅力的な作品でした。

評価:★★★★★

TRAIVS 過去の作品
Ode to J.Smith
WHERE YOU STAND

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2016年5月16日 (月)

素直なギターロックが魅力

Title:勇気も愛もないなんて
Musician:NICO Touches the Walls

途中、アコースティックアルバムやベスト盤のリリースはあったのですが、純然たる新譜としては約3年ぶりとなるNICO Touches the Walls6枚目のアルバム。正直なところ以前からミスチルの亜流的な「よくあるギターロックバンド」という彼ら。それなりにポップなメロディーは魅力的だったものの、プラスアルファがない、という印象を強く持っていました。

このミスチルとの類似性についてはベスト盤のレビューの時に書きました。低音のメロディーから徐々に上がっていき、サビでは一気に高音部で展開していく構成。今回のアルバムにもその要素は少なからずあります。

ただ、3年前にリリースされた前作「Shout to the Walls!」は、そんな枠組みの中でもメロディーに垢抜けた印象を受け、絶賛するような傑作とまではいかないものの、NICO Touches the Wallsというバンドの印象がグッと良くなった作品でした。また直近のアコースティックアルバム「Howdy!! We are ACO Touches the Walls」も彼らの曲のメロディーラインの良さを素直に感じられる作品になっていました。

それに続く今回のアルバムに関しても、「Shout to the Walls!」の流れに続くような、NICO Touches the Wallsというバンドが一皮むけたように感じたアルバムになっていました。正直言ってしまえば本作に関してもいままでのニコの曲調が大きく変わったといった感じはありません。特にこれといって大きな特徴もないシンプルなギターロック。上にも書いた通り、あいかわらずミスチルとの類似性を感じる部分もありますし、個性的なバンドサウンドを奏でるわけでもありません。

しかし、個性的ではないかもしれませんがある意味全く奇をてらわないようなシンプルなバンドサウンドとメロディーが、結果として彼らの魅力となったのが本作。特に前作から感じられるようにメロディーラインが垢抜けてきてインパクトが出てきたのが一番大きな要素かもしれません。

例えば「ローハイド」などは、シンプルでサビの出だしなどいかにもミスチルっぽさを感じるものの、サビのメロディーの強いインパクトが印象的。「渦と渦」のように、それなりにへヴィネスさもあるバンドサウンドを入れてきたりするのも魅力的だったりします。

素直でシンプルなメロディーライン。Aメロ→Bメロからサビで盛り上がるといった、J-POP的なわかりやすい構成。目新しさはありませんが、難しいこと抜きにギターロックを楽しめるアルバムに仕上がっていました。デビューから6作目。ある意味、目新しいことをやりたがる時期でもあるのですが、この素直なギターロック路線は潔さも感じます。また、バンドとしての勢いも感じさせる本作。幅広い層にお勧めできそうな1枚です。

評価:★★★★★

NICO Touches the Walls 過去の作品
Who are you?
オーロラ
PASSENGER
HUMANIA
Shout to the Walls!
ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト
Howdy!! We are ACO Touches the Walls

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2016年5月15日 (日)

生誕50周年記念のベストアルバム

Title:シルシ
Musician:浜崎貴司

FLYING KIDSのボーカルとしてデビュー。FLYING KIDSとしても人気を博する一方でバンド活動と並行し俳優業などでもソロ活動。さらには1998年のFLYING KIDS解散後は音楽でもソロ活動を続ける浜崎貴司。本作は、その彼の生誕50周年を記念してリリースされた初のソロベストアルバムです。

FLYING KIDSといえばファンクロックというカテゴリーで語られるバンド。もちろん、彼のソロ活動でもファンク、あるいはブラックミュージックからの影響も顕著。例えば「オンナLIFE」は非常にファンキーなナンバーですし、「サンクチュアリ(SEIなるふたり)」なども基本的にはポップな作品ながらもファンクの要素をリズムから感じられるFLYING KIDSらしさも感じるナンバー。また「時はただ今だけを乗せて」もゴスペル風なコーラスが入るなど、ソウル的な要素の強いナンバーになっています。

ただ、基本的にはファンクあるいはブラックミュージックの要素を前面に押し出した楽曲というよりもストレートなポップスロックなナンバーがメイン。メロディーライン的にも十分にフックが効いており、ヒットポテンシャルがある曲が並んでいます。もっと売れてもいいと思うんですが・・・って、FLYING KIDSは十分に売れたバンドといえばバンドなんですが。

また彼の楽曲で特徴的なのはその声。ちょっと渋みのあるこの声色はなかなか独特で、FLYING KIDSの曲でもそうなのですが、この声で歌えばなんでも浜崎貴司の曲になるような、彼の楽曲でも大きなインパクトとなっています。

今回のベスト盤でもうひとつ特徴的だったのが他のミュージシャンとのコラボ曲が多く収録されている点でした。FLYING KIDSを敬愛するKICK THE CAN CREWのMCUと組んだ「オンナLIFE」や「サーフライダー」、斉藤和義と組んだ「オリオン通り」や奥田民生と組んだ「君と僕」などといった楽曲が並んでいます。

もともと2013年に数多くのシンガーとのコラボ曲を収録した「ガチダチ」という企画盤をリリースした影響も大きいのですが、なによりもFLYING KIDSとしての長年の活動や音楽に留まらない幅広い活動が、様々な交友関係を築いてきたということでしょう。

そしてこのコラボでもやはり生きてきたのが彼の声。どんな楽曲でも彼の声が入ればきちんと浜崎貴司の曲として機能しているのはさすが。例えば斉藤和義と組んだ「オリオン通り」は、楽曲的には斉藤和義らしい曲調なのですが、彼の声が入ることでこのアルバムの中でも全く違和感ありませんし、「サーフライダー」も基本的にはMCUのラップがメインなのですが、その中でも浜崎貴司のボーカルはきちんと響いてきています。

FLYING KIDSは個人的にも好きなバンドなのでこのソロベストも期待していたのですが、期待以上に名曲が揃った素晴らしいアルバムでした。ちなみにFLYING KIDSは現在、再結成し、ライブを中心にコンスタントに活動を続けているようですが、次はFLYING KIDSとしてのニューアルバムを期待したいところ。ただ、浜崎貴司ソロとしてもFLYING KIDSとしてもまだまだ名曲を期待できそうと感じるベストアルバムでした。

評価:★★★★★

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2016年5月14日 (土)

アイドル勢などへの楽曲提供も経験に?

Title:純情ランドセル
Musician:赤い公園

最近、SMAPの「JOY!」をはじめ、他のミュージシャン、アイドル勢への楽曲でも名前を見かけることが多くなったガールズバンド赤い公園のメインライター津野米咲。本作は、そんな中リリースされた約1年半ぶりになる赤い公園のニューアルバム。本作では會田茂一、亀田誠治、島田昌典、蔦谷好位置、PABLO a.k.a. WTF!?の5名の豪華プロデューサーがプロデュースを担当したことでも話題となっています。

赤い公園といえばポップなメロディーラインと、それと反するようなサイケやアバンギャルド、パンキッシュなアレンジとの対比がユニークなバンド。楽曲のジャンルもパンクから歌謡曲、アイドルポップ風の曲からソウル風な曲までバリエーション富んだ作風が楽しいアルバムをいままでリリースしてきましたが今回の作品も、そんな赤い公園の特徴がそのまま引き継がれたような作品でした。

特に今回のアルバムで印象に残ったのがポップなメロディーライン。最近では楽曲提供によってJ-POPの中心にて活動をしている津野米咲ですが、例えば「東京」「あなたのあのこ、いけないわたし」などのメロディーラインなど実にJ-POP的。このJ-POP的なメロディーラインは以前から彼女たちのアルバムの中に顔をのぞかせていたのですが、いままでの作品についてはこのJ-POP風なメロディーラインが悪い意味での「ベタ」さを感じさせていました。しかし今回のアルバムに収録されている楽曲については、ベタといえばベタなのですが、それが変に鼻につかなくなり、いい意味で垢抜けたようにも感じます。

楽曲のバリエーションの広さも相変わらず。「Canvas」のようなギターロック路線もあるかと思えば、「ショートホープ」などはメロウなソフトロック風。かと思えば「ハンバーグ!」は非常に明るいポップソングになっていますし、さらに「黄色い花」はブラコン風の軽快なポップチューン。若干ルーツレスな部分を感じる部分もあり、それがまた「J-POP的」なのですが、ただ、それが気にならないほど、様々なジャンルの音楽を上手く取り込んでいます。

そんな中でも「ボール」のようなサイケなサウンドを取り込んだ曲もあったり、「喧嘩」のようなパンキッシュでアバンギャルドさを感じさせる曲があったりと挑戦的な作風もチラホラ感じられたりするのもまた彼女たちの非常におもしろいところ。

またメロディーラインの側面でユニークさを感じたのは先行シングルにもなった「KOIKI」。正義の味方の苦悩を描いたような歌詞もユニークなのですが、サビに入る展開の妙が実にユニークで耳に残りました。

音数の多いサウンドは少々詰め込みすぎで整理されていない感じもしないではなく、そういう意味でも前々作、前作同様、まだまだ伸びしろを感じる部分はあるのですが、前作に比べてメロディーラインが垢抜け、一歩前へ進んだように感じた傑作でした。今後もヒットチャートの中心でも津野米咲の名前はさらによく見かけそうですが、赤い公園としても是非ともさらなるヒットを期待したいところ。これからの活躍にも期待です。

評価:★★★★★

赤い公園 過去の作品
透明なのか黒なのか
ランドリーで漂白を
公園デビュー
猛烈リトミック


ほかに聴いたアルバム

飾りのない明日/熊木杏里

ヤマハへの移籍第1弾となる女性シンガーソングライターの新作。基本的に奇をてらわないような素直なポップスソングが魅力的な彼女。今回の作品でも切なさを感じるメロディーラインをしんみりと聴かせるようなポップソングがメイン。目新しさはありませんが、いい意味で安心して聴けるポップソングが並んでいました。

評価:★★★★

熊木杏里 過去の作品
ひとヒナタ
はなよりほかに
風と凪
and...life
光の通り道

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2016年5月13日 (金)

映画を見た人でも必見

以前、映画も見たのですが、DVDも買ってしまいました。今年はじめに公開されて話題となった電気グルーヴのドキュメンタリー映画「DENKI GROOVE THE MOVIE?-石野卓球とピエール瀧-」です。

とりあえず映画本編の方の感想はこちらをご参照のこと。今回、わざわざDVDを購入したのは、もちろん映画本編がよかったこともありますし、また初回盤特典としてついてきたライブ映像集も目当てだったりするのですが、最大のお目当ては副音声としてついているコメンタリー。これが非常におもしろいと評判だったがために、ついついDVDを購入してしまいました。

そしてこのコメンタリーが予想していた以上によかった!コメンタリーでは電気グルーヴの2人と監督の大根仁が映画をみながらいろいろとコメントしていくのですが、映画の内容に沿ったコメントがゆえに、電気グルーヴが自らの活動を振り返るような形になっていてとても興味深いコメントが多く収録されていました。

特に映画では電気グルーヴの2人があえて全くコメントをしていなかっただけに、このコメンタリーは非常に貴重。ノリとしてはまるでラジオを聴いているかのような自由なトークで、P音も入りまくりという、ある意味電気グルーヴらしいトークなのですが、音楽に関しては真剣な物言いだったのも印象に残ります。

映画では、ある意味「映画である」がゆえの少々演出がかった構成も電気グルーヴにより突っ込みを入れられていたりして、彼らの自らの作品に対する本音が語られているのもおもしろかったです。例えば「VITAMIN」では「N.O.」を入れるかどうかについて、セールスのために「N.O.」を入れようとするレコード会社側と、それを拒絶する電気グルーヴ側という対立構造を強調していましたが、コメンタリーでは「今となっては入れてよかったと思っている」と卓球が語っていたり、「ORANGE」では「評判も悪ければセールスも奮わなかった」という映画の説明に対して、「そんなに悪かったか?そこそこ売れたぜ」と卓球が突っ込んでいたり(それに対して「映画の演出なので・・・」と大根監督がちょっとタジタジしていましたが)、電気グルーヴ側から見た視点が語られたのもとてもおもしろく聴くことが出来ました。

映画の内容を補完してあまりあるような内容で、映画を見たから十分・・・というにはあまりにもったいないコメンタリーになっていました。そういう意味でも映画を見た方にこそ要チェックなDVD。むしろこのコメンタリーを含めて電気グルーヴのドキュメンタリーとして完成形なのでは?とまで思えるほどの充実した内容になっていました。

初回盤は特典映像として、映画でつかわれた貴重なライブ映像を未公開部分を含めて収録したDVDがついてきています。それも88分という、これだけで別の商品として成り立つのでは?とすら思うほどの豪華な内容に。特に89年から90年あたりの活動最初期の映像は、かなり時代を感じさせるもので、今とはかなり異なる初期の電気グルーヴの様子を実に興味深く見ることが出来ました。

また、デビューライブから昨年実施されたライブまで時系列順に並んでいるだけに、電気グルーヴの歩みをライブという側面から知ることもできるという意味でも貴重な映像集になっています。映画のコメンタリーで、1997年の第1回フジロックでのライブを「瀧の立ち位置が決まったステージ」と言っていましたが、この映像集を見ると、この頃、電気グルーヴのライブのスタイルもかなり変わったことに気が付きました。

第1回フジロック以前のステージは、基本的にまりんの前に機材が配置され、卓球と瀧はステージでラップ(あるいは歌)を歌っているようなスタイルだったのに対し、フジロック以降は卓球とまりんが機材をいじりつつ、瀧はステージの前で曲にあわせて踊るという、今に続く電気グルーヴのライブのスタイルになっていました。

ドキュメンタリーでは電気グルーヴの音楽的な分岐点として「VITAMIN」をあげていましたが、ライブ的には、この第1回フジロックのあたりに大きな分岐点があったんだな、ということを感じた映像集となっており、そういう意味では「ライブ」という側面から電気グルーヴの歴史を感じることの出来た映像集となっていました。

さらにおもしろかったのがDVDについていたブックレット。こちらは最初期から最近までの電気グルーヴのアーティスト写真が掲載されており、これもまたユニークかつ興味深い内容になっていました。

そんな訳で映画を見た方も、むしろ映画を見た方にこそ必見なDVD。予想以上に充実しており、大満足な内容でした。

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2016年5月12日 (木)

デビュー35周年!

Title:スタ☆レビ-LIVE&STUDIO-
Musician:スターダストレビュー

1980年代より活動を続け、今なお根強い人気を誇るロックバンド、スターダストレビュー。「夢伝説」「木蘭の涙」などのスマッシュヒットはあるものの、いわゆるミリオンクラスの大ヒット曲はありません。それでも高い評判を得ているライブを中心に根強い人気を維持しています。さらにここ最近では(ランキングの全体的な売上が落ちてきた影響もありますが)アルバムがコンスタントにベスト10ヒットを記録。その人気のほどをうかがわせます。

そんな彼らがデビューしたのが1981年。そう、なんと今年でデビュー35年を迎えた彼ら。そのデビュー35周年を記念してリリースされたのがこのベストアルバムです。ただ今回のベスト盤がユニークなのは「LIVE&STUDIO」というサブタイトル通り、2枚組となっており1枚目がライブベスト、2枚目がスタジオ録音の曲を集めたベスト盤という形になっています。ライブが高い評判を得ている彼ららしい構成といったところでしょう。ちなみに私はこの2枚のみの通常盤を聴いたのですが、初回限定盤はCD4枚組になっており、カップリング曲集と、さらにライブでのMCのみをCDに収録したMC集という構成になっています。

さて今回のアルバム、1983年にリリースした「トワイライト・アヴェニュー」や84年リリースの「夢伝説」など80年代の曲と、「おぼろづき」「Crying」といった最近の曲が並んで収録されています。しかし、80年代の曲に全く古さを感じさせません。それは彼らが昔から普遍的なポップソングを歌ってきたから、というのが大きな理由でしょう。また、安易に流行に流されることなく(「と・つ・ぜ・ん Fall In Love」のようなディスコチューンもありますが)彼らのスタイルを守り続けたことも大きな理由でしょう。

ただ今回のアルバムに関していえば昔の代表曲に関してはライブベストに収録し、スタジオ盤は最近の曲を収録している、というのも、昔の曲と最近の曲が並んでも違和感のない大きな理由であり、かつこのアルバムを楽しませるための「工夫」と言えるかもしれません。昔の曲に関してはライブによって今の音にアップデートされているため、音的な部分で古さを感じず、ポップなメロディーラインの普遍的な部分だけが表に出てきている内容となっていました。

さて、今回のアルバムのひとつの目玉ともいえる彼らのライブベスト。上にも書いた通り彼らのライブは非常に高い評価を得ています。しかし・・・残念ながらこのライブベストでは彼らのライブがなぜそれだけ高い評価を得ているのか、あまりピンと来ませんでした。いや、確かに非常に安定感ある演奏でその実力は感じます。ただ良きにつけ悪しきにつけ無難といえば無難な演奏。迫力ある演奏に圧巻されるとか、思わず聴き入るとか、そういった感じではありません。おそらく、その現場で味わうと全く違う印象を抱くのかもしれませんが・・・残念ながらCDではさほどその魅力は伝わってきませんでした。

またスタジオ盤の方も、2009年に2枚同時リリースのオールタイムベストがリリースしていたり、それ以前にも何枚もベスト盤をリリースしている影響でしょうか、最近の曲にかなり偏って収録。そのため全体的には若干バランスの悪さも感じてしまいました。

そんな気になる点がありつつも、全体的にはやはり「良質な大人のポップス」が並んでいるといった印象。安心して聴けるポップソングが並んでいます。ある意味、35年という長きにわたって人気を維持しているのも納得といった感じも。最近、何を聴いていいかわからないような30代40代にお勧めしたいベスト盤です。

評価:★★★★

スターダストレビュー 過去の作品
31
ALWAYS
BLUE STARDUST
RED STARDUST

太陽のめぐみ
B.O.N.D.
Stage Bright~A Cappella & Acoustic Live~
SHOUT

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2016年5月11日 (水)

GW中のチャート

今週は対象期間がGW中ということで初登場が、特にアルバムチャートで非常に少なくなっています。そのため、シングルアルバム同時更新です。

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

まず今週1位はジャニーズ系、Sexy Zone「勝利の日まで」がランクイン。「2016リオデジャネイロオリンピック バレーボール世界最終予選」イメージソング。タイトルだけ見ると、どこぞの新興宗教のスローガンみたいなのですが・・・。リオデジャネイロ五輪がらみということでラテン調の爽やかなナンバー。初動売上9万3千枚は前作「カラフルEyes」の17万3千枚(1位)から大幅減となっています。

2位初登場は東海地区のローカル男性アイドルグループMAG!C☆PRINCE「Spin the Sky」。初動売上3万8千枚は前作「絶対☆アイシテル!」の1万4千枚(9位)からアップし、初のベスト3入り。サビをユニゾンで聴かせる平凡な90年代J-POP風ナンバー。

3位も男性アイドルグループ。w-inds.「Boom Word Up」がランクイン。爽快なR&Bダンスチューンで、ベテランらしい底力を感じます。初動売上3万枚は前作「In Love With The Music」の1万7千枚(6位)よりアップ。ただし前作はアルバムの先行シングルで売上を落としていた影響。前々作「FANTASY」の3万4千枚(4位)からはダウンしています。

続いて4位以下の初登場曲です。4位5位には女性アイドルグループ。4位には9nine「愛 愛 愛」、5位にはBiSH「DEADMAN」がランクインしています。9nineは川島海荷が所属している・・・と書いていたのですが、その彼女が脱退を発表。5人組では最後のシングルだそうです。流行のEDMチューン。初動1万9千枚は前作「MY ONLY ONE」の1万3千枚(10位)よりアップ。5人でのラストシングルという影響か?BiSHは別名「楽器を持たないパンクバンド」を標榜してこの曲もパンク風のナンバーなのですが、サビの部分のメロや歌い方など完全にアイドルで、以前から感じられるスノッブ臭が非常に鼻につきます。初動売上1万9千枚は前作「OTNK」の9千枚(10位)からアップ。

初登場最後は6位に読者モデルが集まった男性アイドルグループXOX「Ex SUMMER」がランクイン。初動売上1万1千枚は前作「XXX」の7千枚(11位)からアップし、初のベスト10ヒットとなりました。

今週の初登場は以上。今週は加えて返り咲きが1枚。乃木坂46「ハルジオンの咲く頃」が先週の12位から9位にランクアップし、ベスト10に返り咲いています。ただし売上は先週の8千枚から7千枚にダウンしています。

 


今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

見事1位返り咲きです。

今週1位は小田和正「あの日 あの時」。先週の2位からワンランクアップで2週ぶりの1位返り咲きとなりました。ただし売上は先週の7万3千枚から5万4千枚にダウン。続く2位も三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE「THE JSB LEGACY」が先週の7位からランクアップしベスト3返り咲き。こちらも売上は先週の1万4千枚から1万枚にダウンしています。

そして3位はようやく初登場。「ラブライブ!」で人気を博し、μ'sにも参加している女性声優楠田亜衣奈「Next Brilliant Wave」が入ってきました。初動売上9千枚は前作「First Sweet Wave」の8千枚(5位)より若干のアップ。しかし、売上1万枚未満でベスト3入りですか・・・。

続いて4位以下の初登場ですが、今週、初登場は残り1枚のみ。7位に韓流の男性アイドルグループ防弾少年団「花様年華 Young Forever」がランクイン。韓国でのアルバムの輸入盤。初動売上は6千枚。前作も同じく韓国からの輸入盤「花様年華 Pt.2」で、こちらの初動7千枚(15位)からダウンしています。

今週、初登場は以上ですが、初登場が極端に少ない週だったため、ベスト10返り咲き組が多く見受けられました。

4位 AI「THE BEST」(先週 ベスト50圏外)
6位 いきものがかり「超いきものばかり~てんねん記念メンバーズBESTセレクション~」(先週15位)
9位 Perfume「COSMIC EXPLORER」(先週16位)
10位 BABYMETAL「METAL RESISTANCE」(先週18位)

ただし、AIを除く3枚はいずれも先週から売上枚数を落としています。

この中で目立つのはAIのベスト盤。これは未発表曲やベスト盤に収録されなかった人気曲をまとめたCDと2枚組にした「DELUXE EDITION」がリリースされた影響。昨年11月にリリースされたばかりで、ファンに同じCDの2枚買いを強いる行為は全く感心しないのですが、最近、この手の売り方をするミュージシャンが少なくないんですよね。そりゃあ、CDも売れなくなるはずだよ・・・。

今週のチャート評は以上。また来週の水曜日に!

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2016年5月10日 (火)

見ざる 言わざる 聞かざる

Title:Three wise monkeys
Musician:ECD

90年代初頭の日本のHIP HOPシーン黎明期から活動を続けるラッパーECD。いわば日本のHIP HOPシーンにおける重鎮的な存在である彼。活動当初よりコンスタントにアルバムをリリースし続けていますが、そんな彼の17枚目となるオリジナルアルバムが本作です。

ECDといえば最近では反原発の活動や反レイシズムの活動など社会派的な活動が目立っています。そして本作。「見ざる言わざる聞かざる」というタイトルに、手術にのぞむ医者のような井出達の上に動画を示すような矢印を重ねた意味深なジャケット写真。それなので当然本作も、かなり社会派的な色合いが強いアルバムなのかな?と思いながらアルバムを聴いてみました。

ところが予想に反して今回の作品、彼がかかわった社会的な活動に直接からむようなリリックはほとんどありませんでした。あえていえば「LUCKY MAN」のリリックは話題のSEALDsのメンバーがモデルになったのではないか、と推測できる程度でした。

一方で今回のアルバムで感じたのはECDのラッパーとしての決意でした。「DAMARANE」はかなりストレートなラッパーとしての決意表明が述べられていますし、「YOSOMONO」もアウエーでのステージの体験の中でラッパーとしての決意を感じさるリリックが耳を惹きます。さらに「MUDANATEIKOU」

「民主的じゃないぜ この音楽は
俺がつくったCD お前聴くだけ
誰の意見も反映されない 当然
何言われても 聞く耳持たない独善」

なんて歌詞も彼の音楽に対するスタンスを強く感じることが出来ます。またこのスタンスが、アルバムタイトルである「三猿」につながっているのでしょうか。

自分の風貌について歌った「METSUKIWARUIOTOKO」みたいなユーモラスな曲もまじえつつ、全体的にはパーソナルなテーマが多かったように感じた本作。ただ一方では例えば

「2015じゃなかったら よかった今
こんな時代が俺 大キライだ」

というリリックからスタートする「1980」といい、パーソナルな内容でありつつもどこか社会への皮肉を感じさせるような歌詞もチラホラ。そういう意味では個人的な歌詞の内容でありつつも、聴く人にとっては実は社会派的な要素を感じるとる人もいそうなそんなアルバムだったように感じます。リリックは比較的具体性がありわかりやすい内容でありつつも、解釈に幅を持たせる部分があり、そこらへんはECDの才能なのかもしれません。

アルバムを聴くと比較的リリックが印象に残る作品なのですが、トラックの方は今風の強いビートのエレクトロチューンがメイン。「DANCE」のエレクトロビートなどかなりカッコいい仕上がりになっており、こちらも耳を惹く内容になっていました。

社会派的活動から癖が強いアルバムになっているのではないか、と敬遠してしまいそうな人でも、逆に彼の社会派的側面に期待する人にも満足がいくアルバムになっていたようにも感じます。そういう意味では彼のラッパーとしての懐の深さも感じさせた作品。さすがのその実力を感じさせる1枚でした。

評価:★★★★★

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2016年5月 9日 (月)

the pillowsからの影響も強いが・・・

Title:SPADE3
Musician:WHITE ASH

これがフルアルバムとしては4作目となる4人組ロックバンドの新作。彼らの名前は以前から知っていたのですが、正直いかにも今時のロックバンドというイメージで、よくありがちなロケノン系バンドという印象があったため(実際、ロッキンロンのアマチュアミュージシャンオーディション出身ですが・・・)若干敬遠気味でいままでチェックしてきませんでした。ただ、最近は徐々に話題になってきており、一度くらい聴いてみようかな、といった感じではじめて彼らのアルバムをチェックしてみた次第です。

で、これがちょっと予想と違って、個人的な好みにかなりドンピシャなバンドでした(笑)。

まずは感じたのは、あれ、the pillowsにちょっと似てない?といった印象。適度にノイジーなギターサウンドに要所要所にギターリフを入れてくるスタイル。ガレージやパンクの影響を受けつつ、基本的にポップなメロディーラインを聴かせるオルタナ系のギターロックに仕上げてくる楽曲。どこかthe pillowsに近い雰囲気をまずは感じました。

なんてことを考えつつ彼らについて調べていくと、そもそも「WHITE ASH」というバンド名自体、the pillowsの楽曲から取っているなど、the pillowsから強い影響を受けているバンドということを知りました。そういえば、the pillowsのトリビュートアルバムにも参加していましたね。このアルバムでも特に「Spade Three」はthe pillowsからの影響を強く感じますし、「Don't Stop The Clocks」のインストやギターサウンドもまんまthe pillowsといった感じもします。

ただ、それだけでは単なるthe pillowsのフォロワーに終わってしまいます。今回のアルバムで彼らに関して気に入ったのは、もちろんthe pillowsっぽい音が私の好みだったということもあるのですが、その上で彼らなりの個性をしっかりと感じることが出来たからです。

まず要所要所でthe pillowsからの影響を感じる一方、メロディーラインについては明るくポップな印象の強いthe pillowsに対して、もうちょっとダークな雰囲気も感じます。バンドサウンドに関してももっとへヴィー寄り。「Emperor」などはかなりハードロック寄りに感じます。

今回のアルバムでもっともカッコよかったのが中盤「Snow Falls In Lavender Fields」から続く「Dumbass」への展開。静かに、ちょっとドリーミーな雰囲気で聴かせる「Snow Falls~」から、「Dumbass」では一気にガツンとへヴィーなギターから入ってくる展開。こういった静から、一気にガツンと動へ入る展開は本当に聴いていてゾクゾクするカッコよさがあります。

また基本的に英語詞という点も日本語詞メインで歌詞も聴かせるthe pillowsとは大きく異なるところ。英語詞がゆえに、より洋楽テイストが強い楽曲になっていたと思います。

そんな訳で聴く前の予想をいい意味で裏切り、非常に楽しめた私好みのアルバムになっていました。ま、もっともこの手のギターバンドも「よくありがちなロケノン系バンド」といえばその通りなのですが(笑)。ただ非常に心地よいバンドサウンドに、ロックを聴いたな、という満足感をとても強く覚えるアルバムになっていました。WHITE ASH、いままであまり注目していなかったのですが、今後の活躍に俄然期待したくなったアルバムでした。

評価:★★★★★

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2016年5月 8日 (日)

CD化は日本のみ

Title:Levon Vincent
Musician:Levon Vincent

あのPitchfork のレヴューでも"Best New Music"を獲得する超高評価! リリースするアナログは即完売! NY ハウス/テクノ・シーンにおける真のアンダーグラウンド・ヒーロー、レヴォン・ヴィンセントが 今年の頭にアナログのみでリリースしたデビュー作が日本限定で初CD 化!

・・・というのはAmazonに記載されたこのアルバムの売り文句なのですが、かなり煽り気味の文句が気になるのは、煽り文通り、ニューヨークのアンダーグラウンドハウス/テクノシーンで活躍するミュージシャン、Levon Vincent。もともと、Music Magazine誌のテクノ/ハウス部門で年間1位を獲得したことから気になっていのですが、遅ればせながらアルバムを聴くことが出来ました。

アルバムは最初、メタリックなサウンドが耳を惹く「The Beginning」からスタート。どこかダークな雰囲気を感じさせつつもスペーシーなサウンドは近未来的という雰囲気を感じます。「The Beginning」というタイトルはアルバムの1曲目という意味なのでしょうが、それ以上に楽曲から「何かがはじまる」という期待感を覚える作品になっています。

このダークな雰囲気とメタリックなサウンドというキーワードは、このアルバムをひとつ貫く特徴のように感じました。例えば「Her Light Goes Through Everything」などもメタリックなサウンドで奏でるフレーズが流れる中、抑え気味なリズムとプロペラの羽音のようなサウンドが不気味でダークな雰囲気を作り上げています。他にも最後を締めくくる「Woman Is An Angel」なども、ストリングス調のダークなサウンドにメタリックなリズムが特徴的な、リズミカルな楽曲に仕上がっていました。

まあそんな雰囲気のサウンドと聞き、なおかつ「アンダーグラウンド」という言葉を聞いてしまうと取っつきにくく感じてしまうかもしれません。ただこのアルバム、ほとんど取っつきにくさを感じませんでした。基本的に四つ打ちのテンポのよい踊りやすいリズムが展開されているというのも大きいのかもしれません。またそれと同時に、意外とポップなメロディーラインが展開される、というのも取っつきやすい大きな要素に感じました。

例えば「Phantom Power」に流れるミニマルなメロディーラインはポップで耳なじみやすいですし、最後を締める「Woman Is An Angel」もテンポよくポップな雰囲気の楽曲となっています。もちろん、わかりやすいキャッチーなメロディーといった感じではありませんし、ライブなどでみんなで盛り上がりそうなアゲアゲなサウンド・・・という訳でもありません。ただ彼の楽曲からは非常に実験的な作品で難解・・・といったイメージはあまりありませんでした。

今回のアルバム、最初の煽り文の通り、CD化は日本のみ。海外ではアナログ盤でのリリースだったそうですが、そのアナログ盤も4枚組という内容。そのため基本的には作品をまとめて続けて聴くというよりは4枚のアナログ盤で別々に聴く、という意図だったのでしょうか。アルバム全体としては少々まとまりが悪いようにも感じました。ただ逆に、それだけバラエティーある内容になっていたということ。マリンバっぽいリズムに爽快さすら感じる「Launch Ramp To The Sky」や、時折入るシンセが女性の声のようでエロチックさすら感じる「Confetti」など、所々に入るアイディアがなかなかユニーク。飽きることなく最後まで楽しむことが出来ました。

これは聴いたことない音だ!というような目新しさはなかったのですが、ただユニークなアイディアがいろいろとつまり、最後まで楽しむことが出来る作品だったと思います。日本のみでCD化というのは、今の世界における音楽事情とその中での日本の特殊性を感じるのですが・・・ただ私たちにとってはCD化してくれればグッと手に入りやすくなったのも事実。煽り文はちょっと煽りすぎな気もしないではないのですが・・・聴いて損のないアルバムなのは間違いありません。

評価:★★★★★

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2016年5月 7日 (土)

毒舌OLのメジャー第2弾

Title:愛泥C
Musician:Charisma.com

OLの等身大の視点から、世間をDISするラップが評判を呼んだ2人組女性ラップデゥオCharisma.com。ミニアルバムの前作「OLest」でメジャーデビューを果たしましたが、本作はそれに続くミニアルバムの第2弾。本作も強烈なDISがさく裂・・・というよりも、働く女性の本音ベースでのつぶやきをラップに綴った歌詞が強いインパクトとなっています。

様々なダイエットに手をつけるだけ手をつけるような、まあよくいるタイプの女性を痛烈に皮肉った「サプリミナル・ダイエット」に、いわゆる腰掛けOLを皮肉った「腰掛けラップ」、さらに強烈なのは、いわゆる「お客様は神様です」という「GODcustomer」

「調子に乗ってるcustomer お客様は神様
それはリクエストじゃない わがまま お姉さん達何様?」

(「GODcustomer」より 作詞 いつか)

なんてあまりにストレートな歌詞がエッジが効いていて楽しかったりします。

また今回のテーマは「愛」だそうですが、これらの強烈な皮肉を込めた歌詞も、彼女たちなりの愛情表現といった感じなのでしょうか。彼女たちにしては珍しいラブソング(?)、「骨抜きに恋して」なんて曲も収録されていたりします。

そしてそのラップがのるエレクトロのビートがめちゃくちゃカッコいい!「骨抜きに恋して」など典型的な今時のEDMですし、正直言ってしまうとサウンド的には比較的ベタで目新しさはありません。ただ、強いリズムでエッジを効かせたサウンドは、強烈な皮肉を込めている彼女たちのラップにピッタリとマッチ。また、彼女たちの感情を抑えたようなクールなラップにもマッチしており、歌詞、サウンド、ラップが見事にリンクしたような内容に仕上がっていました。

ただ一方ちょっと気になったのは、これはインディーズ時代の作品から指摘していたことなのですが、エレクトロ一本調子のトラックはちょっと単調さも。もっとも本作では「PH4」では幻想的な雰囲気に仕上げてきたり、「ベルサッサ」では歌謡曲テイストなメロを入れてきたりと、それなりに一本調子にならない工夫も感じられました。もちろん、下手に新しいサウンドを取り入れて迷走するよりも、エレクトロ路線を貫いた方が良い、という考え方もあるとは思うのですが・・・ここらへんは難しいところ。もっとも本作に関しては全8曲入りのミニアルバムということでそんな飽きることがないまま最後まで楽しめる内容になっていました。

女性の等身大の本音、という意味では、ある意味「男性が望む女性像」を演じているヒットチャートで跋扈している女性アイドルグループとは対極的な位置にいるシンガー。そういう意味でも、この男性中心社会の中でもっともっとがんばってほしいところです。これからもどんどんこの社会に毒を吐いてほしいところ。これからの活躍にも期待です。

評価:★★★★★

Charisma.com 過去の作品
DIStopping
OLest


MISIA 星空のライヴ SONG BOOK HISTORY OF HOSHIZORA LIVE/MISIA

MISIAが15年間にわたって開催しているライブ「MISIA星空のライブ」のベストアクトを収録したライブアルバム。力強い歌声にMISIAのボーカリストとしての実力がよくわかるライブ盤。全体的に収録曲がちょっとバラードに偏っている感じはするのですが、MISIAのベスト盤的にも楽しめるアルバムだと思います。なにげに一度も彼女のライブは見たことないだけに、一度MISIAのライブも体験したいな・・・。

評価:★★★★

MISIA 過去の作品
EIGHTH WORLD
JUST BALLADE
SOUL QUEST
MISIAの森-Forest Covers-
Super Best Records-15th Celebration-
NEW MORNING

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2016年5月 6日 (金)

45年のキャリアを網羅

Title:謀らずも朝夕45年
Musician:鈴木慶一

日本語ロックの先駆的バンド、はちみつばいのメンバーとしてデビュー。その後、主にムーンライダーズとして活躍する傍ら、THE BEATNIKSやTHE SUZUKIなどといった数多くのユニットでも活動。さらには映画音楽にCMソング、さらにはアニメソングやゲーム音楽など幅広い音楽活動を続ける鈴木慶一。彼が音楽活動を開始45周年を記念して、その幅広い彼の活動のすべてを網羅し総括した、オールキャリアベストがリリースされました。

3枚組のアルバムとなっている本作は、Disc1、2は彼が活動いていたムーンライダーズやTHE BEATNIKS、はちみつぱいやソロ作などを集めたベスト盤。Disc3は彼が他のシンガーに楽曲提供をした曲を集めています。彼の幅広いキャリアを物語るフルボリュームの内容になっていました。

そのうちDisc1については、時代に寄り添った雰囲気の曲が並んでいます。ある意味、その時代の先端を行くような実験的、挑戦的な曲といった感じでしょうか。おもいっきり70年代の空気を感じるはちみつぱいの「塀の上で」から、ムーンライダーズの「欲望」はシンセの音に時代を感じてしまいます。挑戦的な曲も多いという意味でも、鈴木慶一のアーティスティックな側面を強く感じる内容だったと思います。

逆にDisc2は軽快なギターロックの秩父山バンド「未来のラブ・オペレーション」からはじまり、比較的シンプルなポップスが並んでいる印象を受けます。時代に寄り添ったDisc1は曲によっては正直、ちょっと古臭さを感じてしまう部分があったのに対して、こちらのDiscに収録されている曲は時代を超えた普遍的な魅力を感じました。それはやはりあくまでもポップなメロディーラインを主軸に置いた作品が並んでいるからでしょう。アーティスティックな部分を強く感じたDisc1に比べると、こちらはポップス職人としての鈴木慶一を強く感じる内容だったと思います。

そしてDisc3は他のシンガーへの提供した曲を並べた内容。CMソングとしてスタンダードナンバーとも言える(今でも「懐かしのCM」みたいなテレビ番組が行われた場合には必ずといっていいほど流される)斉藤哲夫の「今のキミはピカピカに光って」からはじまり、PANTA&HALや有頂天といったロックミュージシャンから杏里、野田幹子といった女性シンガー、さらには演歌歌手の細川たかしに、直近ではうどん兄弟という女性アイドルグループにまで楽曲を提供しています。

こちらの楽曲のバリエーションの豊富さもまた、鈴木慶一の職人技を感じます。ポップスからロック、St.Paul's Cathedinal Choirへ提供した「EIGHT MELODIES」は宗教音楽的な雰囲気を感じますし、原田知世の「さよならを言いに」ではレゲエの要素も感じます。さらには最後のうどん兄弟の「ママが歌うアイドルの歌」ではラップも取り入れたりします(ただこのラップはかなり癇に障るようなひどいラップで、本作の後味を悪くしているのですが・・・)。

そんな鈴木慶一の幅広い才能を感じられる本作。様々なミュージシャンや伴奏音楽への楽曲提供で見られるように基本的に鈴木慶一の個性をあまり表に出さないような職人的な作品も多いのですが、そんな中で共通項として感じたのは、どこかエキゾチックな雰囲気を感じさせる曲が多いな、ということでした。

ムーンライダーズとしての作品にもどこかトライバルな雰囲気を感じさせるリズムを入れてきたりもしているんどえすが、Disc3に収録されている曲でも南国風な杏里の「マウイ・ムーン」、エキゾチックな雰囲気の鈴木さえ子「ガールスカウト」など、どこか異国的な雰囲気を感じさせる曲が多く、それが彼の大きな魅力にも感じました。

ムーンライダーズも鈴木慶一の曲も、そんなに積極的に聴いてこなかった私ですが、このオールタイムベストで、あらためて彼の魅力を感じることが出来たと思います。鈴木慶一というミュージシャンの実力と多くのミュージシャンから慕われる理由が嫌というほどわかるベスト盤でした。

評価:★★★★★

鈴木慶一 過去の作品
シーシック・セイラーズ登場!
ヘイト船長回顧録


ほかに聴いたアルバム

5/80kidz

途中、ミニアルバムを挟みつつ、フルオリジナルアルバムとしては約1年ぶりとなる新譜。いかにもなロッキンエレクトロチューン「Five」からはじまり、メロディアスなメロディーラインを入れつつ、気持ちよいEDMナンバーが楽しめるという意味では80kidzへの期待へそのまま応えたような作品。目新しさみたいなものは薄かったのですが、難しいこと抜きで楽しめる作品でした。

評価:★★★★

80kidz 過去の作品
THIS IS MY SHIT
THIS IS MY WORKS
WEEKEND WARRIOR
TURBO TOWN
80:XX-01020304
FACE
Gone EP

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2016年5月 5日 (木)

今週は韓流

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

これで4作連続の1位獲得となりました。

1位は韓流の男性アイドルグループ2PM「GALAXY OF 2PM」が獲得。初動売上9万5千枚は前作「2PM OF 2PM」の4万3千枚(1位)から大幅アップ。ここ数作、初動売上の減少傾向が続いていましたが本作で一気に盛り返しました。もっとも、ハイタッチ会など、来日ツアーにからむイベント効果も大きいようですが。

2位は先週1位を獲得した小田和正のベスト盤「あの日 あの時」がワンランクダウンで2位をキープしています。

3位は女性アイドルグループでんぱ組.inc「GOGO DEMPA」が獲得。初動売上は3万7千枚。直近作はライブ盤「WORLD TOUR 2015 in FUJIYAMA」で、こちらの4千枚(15位)からは大きくアップ。直近のオリジナルアルバム「WWDD」の3万2千枚(3位)よりアップしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に「劇場版KING OF PRISM by PrettyRhythm Song&Soundtrack」がランクイン。初動売上1万9千枚。アニメ映画「劇場版KING OF PRISM」のサントラ盤です。

5位には(まあミュージシャン名義から一目瞭然ですが)EXILEからのソロ、EXILE SHOKICHI「THE FUTURE」がランクインです。これがアルバムとしては初の作品。初動売上は1万9千枚。シングルとしての直近作「IGNITION」は初動3万1千枚(6位)。まあ、アルバムの初動としてはこの程度でしょうか。

6位初登場はGACKT「LAST MOON」。オリジナルアルバムとしては約6年5ヶ月ぶりというかなり久々となる作品となりました。もっともその間、ベスト盤やリミックスアルバムの発売はありましたが。初動売上は1万6千枚。直近作はリミックスアルバム「GACKTracks -ULTRA DJ ReMIX-」で、こちらの2千枚(35位)からは大幅にアップ。その6年5ヶ月前のアルバム「RE:BORN」の1万9千枚(9位)からは若干のダウン。長いスパンの割にさほど初動が落ちていないあたりに根強い人気を感じます。

8位にはタレント上地雄輔こと遊助「あの・・こっからが楽しんですケド。」がランクイン。相変わらず「あの・・・~ケド。」で統一されたタイトルなんですが、いい加減、癇に障るタイトルな上に、これをカッコイイと思っているところが寒い・・・。初動売上は1万4千枚。直近作はベスト盤「遊情BEST」で、こちらの1万枚(6位)からはアップ。オリジナルアルバムとしては前作となる「あの・・旅の途中なんですケド。」の2万3千枚(4位)からはダウンしています。

最後はもう1枚、韓流男性アイドルによるアルバム。SENENTEEN「FIRST ‘LOVE & LETTER’」が9位に入っています。初動売上は1万1千枚。こちらは韓国発売のアルバムの輸入盤。前作はミニアルバム「BOYS BE」で、最高位35位で、その週の売上が1千枚となり、売上は大幅増となっています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2016年5月 4日 (水)

相変わらずのアイドル勢の中、非アイドル勢も目立つ

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

今週もまた、女性アイドルグループが目立つチャートとなりました。

まず1位はAKB48系。大阪を中心に活動を続けるNMB48「甘噛み姫」。初動売上23万枚は前作「Must be now」の30万7千枚(1位)からダウン。AKB48総選挙前の買い控えが原因のようですが、ここ数作、37万1千枚→30万7千枚→23万枚と急落傾向なのが気になります。

2位も女性アイドルグループ。ハロプロ系のアンジュルム「次々続々」がランクイン。今風なEDMチューン。初動売上5万2千枚は前作「出すぎた杭は打たれない」の3万9千枚(2位)からアップ。

女性アイドルグループは4位以下にもランクインしており、8位に夢みるアドレセンス「おしえてシュレディンガー」、9位にまねきケチャ「きみわずらい」がそれぞれランクイン。「おしえてシュレディンガー」はドレスコーズの志磨遼平作詞作曲だそうで、またその手のサブカル狙いですか(苦笑)。ただ歌謡曲志向が強い志磨遼平は意外とこの手の楽曲提供ははまるのかも。Aメロ部分やサビに入る直前のブリッジの部分は彼らしさを感じますが、サビは平凡で売れ筋を狙いすぎた感も。夢みる~は初動1万5千枚で前作「舞いジェネ!」の2万2千枚(4位)からダウン。まねきケチャは初動1万3千枚でこれがデビュー作となります。

3位もある意味アイドル系に近いものがあります。アニメキャラによるアイドルプロジェクト「ラブライブ!サンシャイン!!」のAqours「恋になりたいAQUARIUM」がランクイン。初動売上4万6千枚は前作「君のこころは輝いてるかい?」の4万8千枚(3位)から微減となっています。

そんな相変わらずの女性アイドルグループの中、今週は非アイドル非アニメキャラ勢も目立つチャートとなっていました。

まず4位にゴールデンボンバー「水商売をやめてくれないか」がランクイン。タイトル通りのユニークな内容の歌詞に彼ららしい歌謡曲路線のメロディーが特徴的。初動売上は3万4千枚。前作「死 ん だ 妻 に 似 て い る」は雑貨扱いだったためチャート対象外。前々作「ローラの傷だらけ」の4万2千枚(2位)から減少。一時期ほどの勢いはなくなりましたが、アイドル勢以外ではコンスタントな人気を持続している彼ら。「女々しくて」の一発屋的に思われている向きもあるのですが、今年の紅白は別の曲を歌ってほしいところ(・・・だけど「ネタ」として今年の年末もまた「女々しくて」で出場するんだろうなぁ)。

5位には西野カナ「あなたの好きなところ」が入ってきています。大塚製薬「MATCH」CMソング。タイトル通り、恋人の好きなところを羅列する歌詞はいかにも彼女らしい感じ。初動売上2万2千枚は前作「トリセツ」の2万5千枚(6位)から若干のダウン。

6位はスピッツの新曲「みなと」が入ってきました。NTT東日本CMソング。約3年ぶりとなるシングル。ただその間、配信限定シングルは2作リリースしており、彼らのようなバンドはもうCDではシングルなんてほとんど出さなくなってきているんですね。初動売上は1万8千枚で、前作「さらさら」の2万3千枚(5位)からダウン。

さらに10位にはヴィジュアル系バンドthe GazettE「UNDYING」が入ってきました。前々作「FADELESS」以来2作ぶりのベスト10入りですが、初動売上1万1千枚は前作「UGLY」の1万2千枚(16位)から微減となっています。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2016年5月 3日 (火)

ボーカリスト安藤裕子の実力

Title:頂き物
Musician:安藤裕子

約1年1ヶ月ぶりとなる安藤裕子のニューアルバムはなかなかユニークな企画盤的な内容。「頂き物」というタイトルからわかるように彼女と親交があるミュージシャンたちにより楽曲提供を受けた曲を収録したアルバム。数曲、彼女自身が作詞を手がけて最後の「アメリカンリバー」は彼女が作詞作曲をつとめているのですが、その他の曲に関しては、他のミュージシャンたちがすべて作詞作曲を手掛けています。

また楽曲の提供を受けたミュージシャンたちもなかなかユニーク。堀込泰行や世武裕子、Charaや小谷美紗子あたりは予想の範疇といった感じですし、TK from 凛として時雨や銀杏BOYZの峯田和伸も彼女とはジャンルはちょっと異なるものの、まあありうるかなといった人選ですが、スキマスイッチや大塚愛あたりは普段、安藤裕子のファン層とはあきらかに異なる感じでかなり意外に感じましたし、DJみそしるとMCごはんなんかも、彼女のあの個性的な曲をどうカバーするんだ??なんてことを思ってしまいました。

しかし出来上がったアルバムを聴いてみるときちんと安藤裕子のアルバムに仕上がっていました。特に興味深かったのはどの曲もパッと聴いただけだと、誰から提供してもらった曲であるのかわかりにくかった点。まあ、歌詞も含めて強烈な個性があって、かつそのまんまだったDJみそしるとMCごはんが提供した「霜降り紅白歌合戦」はすぐにわかりましたが(笑)。

例えばスキマスイッチの提供した「360°サラウンド 」なども、まあタイトルからしてそのまんまスキマスイッチなのですが、サビにむかって徐々に盛り上がっていく展開からサビ前に1音符置いてサビでは高音部のメロディーラインで盛り上がる構成などまんまスキマスイッチなのですが、安藤裕子が歌うときちんと安藤裕子の曲になっています。

今回の楽曲の中で一番安藤裕子のボーカルにあっていると思ったのがCharaが提供した「やさしいだけじゃ聴こえない」。こちらもネチッとした歌い方を要求するメロディーラインはいかにもCharaらしいのですが、このメロディーラインが安藤裕子のボーカルにもピッタリマッチ。なにげにCharaの曲との相性の良さを感じました。

峯田和伸が提供した「骨」も、フィルスペクターばりのポップソングながらもどこかノイズが混じる楽曲が峯田らしい楽曲。こちらも安藤裕子は見事歌いこなし、自分の曲としています。

そんな訳で、アルバムには様々なタイプの曲が並んでいるにも関わらず、アルバム全体としてはひとつの作品としてしっかりとまとまっていました。いつもはシンガーソングライターとしての活躍も見える安藤裕子ですが、歌手としての実力を強く感じることの出来るアルバムだったと思います。もちろん、参加しているミュージシャンのファンも是非ともチェックしてほしい傑作。逆に安藤裕子のファンは、これを機に、参加ミュージシャンの曲を聴いてみてもおもしろいかも。

評価:★★★★★

安藤裕子 過去の作品
クロニクル
THE BEST '03~'09
JAPANESE POP
大人のまじめなカバーシリーズ
勘違い
グッド・バイ
Acoustic Tempo Magic
あなたが寝てる間に

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2016年5月 2日 (月)

古巣への復帰作

Title:STROLL AND ROLL
Musician:the pillows

彼らの古巣、キングレコードへ復帰。本作は復帰後初となる約1年半ぶりのニューアルバムです。本作でひとつ話題となっているのがベーシスト。昨年、長くサポートベーシストとして参加していた鈴木淳が離れた本作では、数人のベーシストがゲストとして参加していますが、そのうち一人がGLAYのJIRO。ご存じ、山中さわおとはTHE PREDETORSで共に活動をしており、その繋がりでしょう。

たださらに驚いたのは上田ケンジがゲストとして参加していること。上田ケンジといえばthe pillowsのオリジナルメンバーで初代リーダー。まさかの13年ぶりの復帰は驚き。さらにこちらもかつてサポートメンバーとしてthe pillowsをささえた鹿島達也もゲストとして参加しています。

この複数のゲスト体制は鈴木淳がthe pillowsのサポートから離れて、少々後続を決めかねているようにも感じます。実際、ベーシストを複数迎えたからといって、ベースが大きく目立つといった感じはありません。今回、複数参加させたゲストベーシストから次回以降は徐々にサポートメンバーを固定していくのでしょうか?

そんなthe pillowsのキングレコード復帰第1弾となるアルバムですが、まずは実にthe pillowsらしいギターロックのアルバムに仕上がっていました。ノイジーなギターサウンドにポップなメロディーラインが彼ららしいオルタナ系のロックナンバー「デブリ」からスタート。続く「カッコーの巣の下で」では

「昨日に笑われても
明日と笑っていよう
傷痕はもうただの
トレードマークだろ」

「カッコーの巣の下で」より 作曲 山中さわお)

なんて歌詞もいかにもthe pillowsらしさを感じますし、爽やかさとへヴィネスを兼ね備えたギターロックが心地よい「ロックンロールと太陽」のようなロック賛歌も彼ららしいといった感じでしょう。

中盤はアップテンポながらマイナーコード主体のメロに哀愁味を感じる「エリオットの悲劇」やミディアムチューンの「ブラゴダルノスト」など少々抑え気味のナンバーが続きますが、タイトルチューンである「Stroll and roll」はリズミカルで軽快なロックンロールチューン。

「仲間と出会って居場所が出来た今
気ままなリズムで踊り続けたいな
敵がいたって味方もいる
ヘイ 信じたい 信じるよ」

(「Stroll and roll」より 作曲 山中さわお)

こちらの歌詞は逆に、昔のthe pillowsから考えると意外にすら感じられる歌詞。この歌詞に限らずかつてのthe pillowsに感じた「孤独さ」という要素は非常に薄くなったように感じます。

そして最後はへヴィーなギターサウンドが心地よい「Locomotion,more!more!」で締めくくり。最後まで心地よいギターロックチューンを聴かせてくれます。

上に書いた通り、若干the pillowsとしての変化を感じる部分もあるのですが、基本路線はいつも通り、いかにもなthe pillowsらしいナンバー。ここ数作感じる、大いなるマンネリ路線に良くも悪くも片足突っ込んでいる部分は否定できないのですが、それを打ち消すだけの心地よさと、いまだに続く勢いも感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★★

the pillows 過去の作品
LOSTMAN GO TO YESTERDAY
PIED PIPER
Once upon a time in the pillows
Rock stock&too smoking the pillows

OOPARTS
HORN AGAIN
トライアル
ムーンダスト
Across the metropolis


ほかに聴いたアルバム

CHOCOLAT&AKITO MEETS THE MATTSON 2/Chocolat&Akito

Great3の片寄明人とショコラの夫婦によるデゥオ、Chocolat&Akitoの新作。Chocolatをボーカルに据えつつ、シティポップ色の強い作品を聴かせた段階ではポップなアルバムかと思いきや、へヴィーでノイジーなギターサウンドを重ねてきて、全体的には「ロック」な色合いも強いアルバムに。へヴィネスとスウィートの両面がユニークなアルバムでした。

評価:★★★★

The Last~Live~/東京スカパラダイスオーケストラ

ベストアルバム「The Last」をひっさげて昨年3月に行われた日本武道館でのライブの模様を収録したライブ盤。10-FEETやMONGOL800、ASIAN KUNG-FU GENERATION、亀田誠治といった豪華ゲストも参加し、かなりにぎやかな内容になっています。楽曲的にはベスト盤のライブらしいスカパラの定番曲が並んでいる内容に。良くも悪くも「こなれた」感はあるのですが、それを含めてもライブの楽しさが感じられるアルバムでした。

評価:★★★★

東京スカパラダイスオーケストラ 過去の作品
Perfect Future
PARADISE BLUE
WILD SKA SYMPHONY
Goldfingers
HEROES
Sunny Side of the Street
on the remix
Walkin'
欲望
Diamond In Your Heart
SKA ME FOREVER
The Last
TOKYO SKA Plays Disney

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2016年5月 1日 (日)

次のステップへ

Title:海賊盤
Musician:中村一義

約4年ぶりとなる中村一義のニューアルバム。インタビューなどで前作「対音楽」で音楽的キャリアを総括したと答えており、今回のアルバムはその「総括」の先を行くアルバムということになります。いわば中村一義がミュージシャンとして次のステップを踏み出したアルバムと言えるかもしれません。

ただこのアルバムを最初に聴いた時、ちょっと「あれっ?」と感じました。それは中村一義のアルバムとしてはあまりにシンプルなポップアルバムだったからです。いままでの彼のアルバムは作品の中に一工夫というか、単なるポップスではなく彼らしいアイディアを込めた曲が収録されていました。例えば前作「対音楽」ではベートーベンをコンセプトとしたアルバムでしたし、前々作「100s」はバンドという要素を強く入れたアルバム。さらにその前の「ERA」などは彼ならではの遊び心というか実験的な作品が詰まった作品でした。

これらの作品と比べると今回の作品は非常にシンプルに感じます。いわば「普通」のポップアルバム。もちろん、普通であること自体は悪いことではありませんが、中村一義の新たなステップの第一歩としてはちょっと意外な感じがしました。

そんな今回のアルバムですが、シンプルなポップアルバムである、ということの次に感じたのは、本作が非常に明るく、そして前向きな楽曲が並んでいるということでした。1曲目の「スカイライン」もアコギとピアノで軽快にスタートするのですが、途中から合唱も入って祝祭色の強い作品になっています。「世界は笑う」もタイトル通りユーモラスさも感じられる前向きな応援歌に仕上がっていました。

もちろん彼らしいポップなメロディーラインは本作も健在。「GTR」のような軽快なメロディーはとても楽しいものがありますし、「あれやこれや」なども女性ボーカルも入り、美しく聴かせるメロディーラインが耳を惹きます。中村一義のポップス職人としての面は間違いなく本作でも冴えわたっていました。

もっとも「普通」のアルバムとはいっても中村一義っぽさは健在。彼らしい、語感をいかしつつ、あまり歌詞に選ばれないような言葉も巧みに取り入れた歌詞の手法は本作でも見られますし、バンドサウンドにピアノやストリングスを入れてスケール感を出す・・・というとよくありがちな陳腐な手法のようにも感じるのですが、バンドサウンドとピアノ、ストリングスの音の組み方も絶妙で、彼の才能が光ります。

最初、「普通」に感じてしまいちょっと戸惑ったのですが、よくよく聴くと、非常に楽しいポップスアルバムと要所要所に感じる中村一義らしさに多いに楽しめたアルバムだと気が付きました。「天才」と呼ばれて過剰なまでに期待を集めたいままでの重圧からのがれて作り出した、素直で彼らしさが出たポップスアルバムに仕上がっていたように感じます。まさに次のステップにふさわしい1枚と言えるでしょう。これからの彼の活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

中村一義 過去の作品
最高宝
6 REMIX'N BIRDS
対音楽


ほかに聴いたアルバム

DEEPER/ヒトリエ

ボカロPとしても活躍しているwawoka率いるロックバンドの新作。情報量を詰め込んだハイテンポな楽曲が多いというのはボカロ出身らしい特徴的な感じ。以前からその傾向が強く、1曲1曲は悪くないのですが、アルバム全体を聴くと疲れてしまう・・・という印象がありました。残念ながら今回もその傾向が続いており、楽曲も全体的に似たタイプの曲が並んでいます。そろそろもう一皮むけてほしいところなのですが・・・。

評価:★★★

ヒトリエ 過去の作品
イマジナリー・モノフィクション
モノクロノ・エントランス

Butterfly Effect/DJ KRUSH

なんと11年ぶりとなるDJ KRUSHの新作はいきなり1曲目、あの佐村河内騒動で話題となった新垣隆をフューチャー。しかしこれが森の中で響いてくるようなメロディアスなピアノが実に素晴らしい作品に。それ以降も静かで美しい雰囲気のトラックが並ぶ作品に。その中に入っているラップを取り入れた作品や歌モノの作品はどれもインパクト十分な、いい意味でポップさのある内容になっており、幅広いリスナー層へのアピールも可能と思われる作品になっていました。

評価:★★★★★

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