ラストも平常運転
Title:PE'Z 終演 EN-MUSUBI 2015 FINAL-おどらにゃそんそん!-
Musician:PE'Z
1999年に結成。渋谷のストリートライブなどで話題を呼び2002年にメジャーデビュー。同年にリリースしたメジャーデビューアルバム「九月の空-KUGATSU NO SORA-」ではジャズインストバンドとしては珍しい、オリコンアルバムチャートでベスト10入りを記録するなど絶大な支持を得た彼ら。その後もコンスタントに活動を続けてきましたが、2014年12月に、2015年いっぱいでの解散を発表。昨年12月19日の東京・人見記念講堂でのライブを最後に、その16年に及ぶ活動に幕を下ろしました。
本作はその人見記念講堂でのラストライブの模様をおさめたライブアルバム。もともとストリートライブ出身でライブにも定評のあった彼ら。それだけに最後のアルバムをライブアルバムで締めくくるというのも彼ららしいといった印象があります。
そんなPE'Zの大きな魅力のひとつが、やはりポップであるということ。ジャズというとイメージとして少々取っつきにくいという印象を受ける方もいるかもしれませんが、彼らの曲に関しては楽曲に一貫としてわかりやすいメロディーラインが流れています。ここらへん、彼らの音楽がジャズインストというジャンルでありながらもアルバムチャートでベスト10入りまで果たした大きな理由のひとつかもしれません。
特に彼らの音楽は、海外での活動の中で「侍JAZZ」なる呼び名があるように、日本人にとってわかりやすい和風のメロが流れているのも特徴的。例えば本作に収録している曲でいえば「フタツノ雲貝~Lumbis Lumbis~」では歌謡曲的な泣きメロを聴くことが出来ますし、「ハナフブキ~花魁道中罷り通る~」も和風なメロディーラインが特徴的だったりします。
その結果なのですが、このライブに収録している曲も1曲あたりが3~4分、長くて5分程度というコンパクトな内容におさまっています。そのためアドリブ的要素は少な目。お互いが自分のパートを主張してようとして、結果、メンバー同士が火花を散らすようなスリリングな演奏みたいなものはあまり感じられませんでしたが、一方ではメンバー全員がまとまってひとつの方向に突き進むような勢いと迫力は感じられました。
特にライブの後半、「SPIRIT」や「Akatsuki」ではフリーキーなピアノやサックスが賑やかに盛り上げるアバンギャルドな楽曲で、ライブとしての勢いは満点。ポップなPE'Zのイメージとはちょっと異なるかもしれませんが、彼らのライブバンドとしての魅力がより強くあらわれている作品と言えるでしょう。
ラストライブの模様を収録したアルバムなのですが、基本的にMCはカットされているのは非常に残念。ある意味、「記録」的な要素も強いアルバムなだけにMCもきちんと入れておいて欲しかったのですが・・・。ただし、アンコール後、最後の曲の前の最後のMCはきちんと収録されており、そしてそのMCは非常に感慨深いものがありました。
さらにラストで演奏したのは彼らのインディーズデビューアルバム「pe'z」の1曲目「HEY!JORDU!」。これで彼らの活動を締めくくるというのもなかなか粋な選曲ですが、メンバーそれぞれの紹介とソロパートが組み込まれており、まさにラストにふさわしい締めくくるとなっています。
バンドとしての一体感があり迫力あるステージを楽しめる点、これで本当に解散?と思ってしまうほど平常通りのステージ。一方では最後の方も含めてよくも悪くもポップにまとまっている点は気にかかりました。評価はラストということもあり、はなむけ的な意味を含んでのもの。メンバーそれぞれこれからのソロ活動に期待したいところです。
評価:★★★★★
PE'Z 過去の作品
1・2・MAX
ギャロップ(pe'zmoku)
ペズモク大作戦(pe'zmoku)
I WANT YOU
向日葵-Himawari-
OH!YEAH!PARTY!!
JumpUP!
血騒-chisou-
Samurai Jazz only one ensemble COVER SELECTION
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