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2016年4月25日 (月)

そのリリース方法も話題に

Title:The Life Of Pablo
Musician:Kanye West

Thelifeofpablo

Kanye West待望の新作は、まずそのリリース形態が大きな話題となりました。2月に本作を自身も共同オーナーをつとめるストリーミングサイトTIDALで発表。しかしこのサイト、日本からは登録が出来ず、日本のファンを大きく嘆かせる結果となってしまいました。

しかし4月に入りようやくApple Musicでも配信を開始。さらにはダウンロード販売も開始。日本のファンもようやく彼の新作を聴くことが出来るようになりました。またこの際話題になったのが、内容が以前から更新された、ということ。さらにプレスリリースでは今後もさらなるアップグレードされる見込みを公表しており、作品としてこれからリアルタイムで進化していく現場をリスナーが体験できるような仕組みになっています。

またTwitterで、これからはCDではアルバムを発表しない、という発言をしたことも話題に。この話、どこまで本気かは不明なのですが、今の時代を象徴するような発言としても大きく取り上げられました。

さてそんな話題となった今回のアルバム。聴いてみて私がまず感じたのは、どこか捉えどころのないアルバムだな、ということでした。

今回のアルバムに関して、本人は「ゴスペルアルバム」と言っているそうです。確かにゴスペルの要素は強く感じます。例えば冒頭を飾る「Ultralight」ではゴスペル歌手のカール・フランクリンが参加。荘厳さも感じさせるトラックもあわせてゴスペルの要素を強く感じさせる曲となっています。

ただ5分強のこの曲を除き前半はどの曲も2から3分程度の短い曲が並んでいます。ただだからといってわかりやすいポップな楽曲が並んでいる・・・といった感じではなく、ただ、Kanye Westがやりたいことが次々と展開されているような内容になっています。

例えば「Famous」はその歌詞の内容がテイラー・スウィフトを揶揄したとしてゴシップ的な意味でも話題に。ダークなトラックをバックに淡々とラップが続く中、途中、リアーナの力強い歌パートが挟み込まれる展開。ラップのパートとオルガンをバックに少々ゴスペルテイストもある歌パートの対比がユニークな楽曲になっています。

「Low Lights」もシンプルなピアノとエレクトロのトラックの上で、女性ボーカルの力強い説教のような語りが乗るというスタイルもなかなかユニークに感じました(ちなみにこの女性ボーカルの説教?はKings of Tomorrowの「So Alive」という曲からサンプリングしてきたようです)。

「FML」なども音数の少ないエレクトロトラックに力強いボーカルが乗るスタイルが印象に残ります。先日紹介したばかりのThe Weekndが参加したこの曲。途中、ファルセットで聴かせるボーカルのメロディアスな歌が印象に残る作品となっていました。

そんな感じで、2、3分程度の短い曲が次々と展開されていく作風だったため、個人的にはどこか捉えどころのなさを感じた作品。ただそれはCDというフォーマットから自由になったことから、「アルバム」という形態にこだわらず自由に曲作りをしていった結果なのかもしれません。そんなKanye Westの「自由さ」を今回のアルバムからは感じました。

一方でインターリュード的な1分に満たない曲を2曲も挟んだ後の終盤は、インパクトあるポップなナンバーが並んでいました。終盤のこれらの曲に関しては前半に比べてより多くのサンプリング音源を入れつつ、ポップに楽しさも感じさせるようにまとめあげた作品に仕上がっています。エレクトロなトラックが多く、どちらかというとタイトなイメージのある前半に比べて、この終盤はサンプリングをふんだんに盛り込んだ賑やかさすら感じさせる内容になっていました。

今回のリリース形態、スクリーミング先行の販売や未完成ヴァージョンでの発表というスタイルは賛否はありそう。ただ、この自由なリリース体制ゆえなのか、実に自由な曲づくりを感じさせるアルバムでした。最近はいろいろとお騒がせな話題も多い彼。しかし音楽の面でもいい意味で騒がせているのはさすが。捉えどころのなさは感じるものの、アルバム全体としては間違いなく傑作でした。

評価:★★★★★

KANYE WEST 過去の作品
GRADUATION
808s&Heartbreak
MY BEAUTIFUL DARK TWISTED FANTASY
YEEZUS

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