彼ららしい泣きメロの中でカラッとした雰囲気も
Title:Weezer
Musician:Weezer
おそらく今、Weezerはデビュー14年目にしてまた脂がのりだした状況であるように思われます。特に前作「Everything Will Be Alright In The End」は久しぶりに、いわゆるWeezerらしいもろ手をあげて絶賛できるような傑作に仕上がっていましたし、ボーカルのリヴァース・クオモが参加して2013年にリリースした「スコットとリバース」もとても心地よいポップアルバムに仕上がっていました。
今回のアルバムも、まずはWeezerが好きな方ならば素直に受け入れられ、そして楽しむことができるアルバムだったと思います。特に今回のアルバムでよく指摘されるのが彼らの2ndアルバム「ピンカートン」との類似性。特に哀愁感の強いメロディーラインと分厚いギターサウンドという組み合わせに、「ピンカートン」を彷彿させる部分が大きいように感じます。
例えば「Do You Wanna Get High?」などはマイナーコード主体の哀愁あふれるメロディーライン。そのメロディーがのっかっているギターサウンドの実に分厚いこと・・・。メロディーラインに胸をうちつつ、分厚いサウンドに身体をゆだねるという、まさにWeezerらしい魅力あふれた作品になっています。
個人的に特に気持ちよかったのが「Summer Elaine and Drunk Dori」。Weezerらしい泣きメロのポップに分厚いサウンドがまず心地よいのですが、このメロディーラインもマイナーコードとメジャーコードを行ったり来たりする意外と凝った展開で、明るさと悲しさが同居したようなメロディーラインが実に楽しいポップチューンに仕上がっています。
そんな哀愁感あるポップアルバムになっている本作なのですが、その一方、「LA西海岸をぶらついている時にインスピレーションを受けた」と語っている本作は、本人たち曰く「ビーチ・アルバム」だそうで、確かに哀愁感あふれるメロディーラインとは対照的な、カラッとしたポップなメロディーも聴かせてくれています。
例えば1曲目を飾る「California Kids」は、メロディーラインには彼ららしい切なさを感じさせる一方で、カラッとした陽性の要素も感じ取れたりします。ほかの曲に関しても、アメリカ西海岸らしい、どこかカラッとした雰囲気の要素も交じっていたりして。彼ららしい切ない泣きメロとは対照的な雰囲気をうまく同居させている点、このアルバムのおもしろいところに感じました。
基本的にはWeezerというバンドのパブリックイメージにきちんと答えたアルバムになっており、そういう意味でもファンなら安心して聴ける傑作になっていました。良くも悪くも感じさせるWeezerらしさは、逆に新たな要素は少ないことをあらわしているのかもしれませんが、様々に新しいことに踏み出した結果、「いいアルバムとは思うんだけど・・・」という状況が続いていたことを考えると、彼らの王道路線を行くというスタイルは正解のように思います。最初にも書いた通り、今再び脂がのりだした彼ら。次のアルバムも早く聴いてみたいです!
評価:★★★★★
WEEZER 過去の作品
WEEZER(Red Album)
RADITUDE
HURLEY
DEATH TO FALSE METAL
Everything Will Be Alright in the End
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