PSB流エレクトロダンスミュージック
Title:SUPER
Musician:PET SHOP BOYS
約3年ぶりとなるPET SHOP BOYSのニューアルバム。前作「ELECTRIC」は今風のEDMを全面的に取り入れた、ある意味、時代の波に乗ったアルバムとなっていました。それから3年。その時のレビューで既に「猫も杓子もEDM」と書いていたのですが、今となっても、確かに3年前からは落ち着いた感もあるとはいえ、EDMというブームはまだ続いているような感もあります。
ここ最近、いわばEDM流行の原点となったような、昔からエレクトロダンスチューンを奏でていたThe Chemical BrothersやUnderworld、あるいはProdigyというグループは最新作ではいずれも、昨今のEDMの流行からはあえて一歩置くような作品を作ってきました。
そんな中発表された彼らの新作は、前作「ELECTRIC」に引き続き、非常にダンスミュージック的な要素が強いアルバムになっていました。例えば「Groovy」などは4つ打ちのリズムが軽快なダンスチューンですし、「Say It To Me」などはトランシーな雰囲気すら感じさせるテンポよいダンスチューンになっています。
ただ、ビートがより強く、今時の要素をより強く取り入れた前作に比べると本作はリズムも軽く、ちょっと懐かしさを感じさせる80年代、90年代的な要素を強く感じます。そういう意味では前作よりもPET SHOP BOYSらしい素朴なシンセポップの色合いが濃くなった、という言い方もできるかもしれません。今風の曲づくりを目指したような前作に比べて、今の時代の音を追及するのは一休みして、肩の力を抜いていつも通りの普段着路線でエレクトロダンスミュージック路線を作り上げた作品と言えるかもしれません。
しかし一方で、PET SHOP BOYSらしいポップなメロディーラインはちょっと後ろに下がってしまったかな、という点がちょっと気になりました。「The Pop Kids」や「Twenty-something」のような、ちょっとベタさすら感じる哀愁感漂うメロディーラインにはPET SHOP BOYSらしさも強く感じるのですが、アルバム全体としてはむしろダンスミュージック的な要素を強く押し出した結果、「歌」の要素がちょっと引っ込んでしまったかな、と感じてしまいました。
そういう意味ではPET SHOP BOYSらしさを感じる要素も強い反面、「歌」という観点からはちょっと物足りなさを感じてしまったアルバムではありました。もっとも、基本的には難しいこと抜きにして楽しめるポップなアルバムであることは間違いないため、心地よく最後まで聴ける作品ではあるのですが・・・。
評価:★★★★
PET SHOP BOYS 過去の作品
Yes
ULTIMATE PET SHOP BOYS(邦題:究極のペットショップボーイズ)
The Most Incredible Thing
Elysium(邦題 エリシオン~理想郷~)
ELECTRIC
| 固定リンク
「アルバムレビュー(洋楽)2016年」カテゴリの記事
- 18年ぶりの新作はラストアルバム(2016.12.26)
- いかにもメタリカらしい(2016.12.25)
- 今後のBON JOVIの方向性を示唆(2016.12.19)
- 中性的なフレンチテクノ(2016.12.13)
- 「映画」のようなアルバム(2016.12.10)
コメント