セクシーなジャケットも目を惹く
Title:ウィンカー
Mucisian:特撮
特撮結成15周年の記念作としてリリースされた約3年7ヶ月ぶりとなるニューアルバム。クラシックカーの写ったちょっとセクシーな雰囲気のジャケットも魅力的ですが本作はペーパードライバーだった大槻ケンヂが車の運転をはじめたことから、「車」をテーマとしたコンセプト作になっているとか・・・。ただ確かに「車」をテーマとした楽曲は散見されるものの全体的にはさほど目立った感じはなく、「車」というコンセプト性はさほど強くないように感じます。
それ以上に今回のアルバムの特徴として強く感じたのが強度の強くなったバンドサウンドでした。特に今回、バンドのセッションから産まれた楽曲が多く収録されているそうで、いつも以上にバンドサウンドが前面に出てきてインパクトのある楽曲が多くなったように思いました。またサウンド的にもメタルな志向が強かった前作に比べて「愛のプリズン」や「アリス」のようにハードコアな作品が多く、個人的には音の方向性は前作より好みだったように思います。
そんなより強くなったバンドサウンドにのっかかるオーケンの歌詞もまた、バンドサウンドに負けないだけの強度を持ったものに仕上がっていたように感じます。「荒井田メルの上昇」「人間消滅」では荒井田メルという少女を狂言回しに、ちょっと不思議な感触の物語りを綴っていますし、「シネマタイズ(映画化)」は人生を醒めた視点で描く歌詞がユニーク。「富津へ」のような旅の風景を描いた情景が浮かんでくるような歌詞も印象的でした。
また歌詞でユニークだったのが「中古車ディーラー」。「車」という本作のテーマ性にもピッタリ来る作品なのですが、妖艶さも感じさせる歌詞が非常に不気味な少々ホラーチックなナンバー。こういう歌詞の世界はオーケンお得意のものでしょうか。
そんなわけで、NARASAKIをはじめとする特撮のバンドメンバーの魅力と、大槻ケンヂの書く歌詞の世界の魅力がほどよいバランスでマッチした特撮らしいアルバムになっていました。ただ残念ながら一方では全体的に「ほどよいバランス」になっていたためいまひっつぶっ飛んだ部分がなく、また、特撮の大きな魅力のひとつ、三柴理のピアノはあまり表に出てこず。後半の「ハンマーはトントン」や、ハードコア路線とはまた異なるムーディーな作風が魅力的な「旅の理由」などでそのピアノは聴かせてくれるのですが・・・あのちょっと変態ちっくな独特なピアノはあまり聴くことが出来ませんでした。
良くも悪くもよくまとまったアルバムといった感じがします。結成15年をむかえ、バンドとしての安定感も出てきたといったところなのでしょうか。まだまだこれからもコンスタンスに特撮としての新譜を聴けそう。これからの活躍も楽しみです。
評価:★★★★
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