いままでの活動を俯瞰
Title:Chaosmosis
Musician:Primal Scream
Primal Screamといえばアルバム毎にそのスタイルが大きく変化し続けるミュージシャンというイメージが強くあります。最初の頃はガレージロック志向が強かったバンドですが、彼らの名を世に知らしめた名盤「Screamadelica」はアシッド・ハウスを取り入れた傑作。さらに「XTRMNTR」ではエレクトロサウンドを全面的に取り入れるなど、そのスタイルをアルバム毎に大きく変えてきました。
今回のアルバムはいわばそのようなバンド活動を俯瞰したようなアルバムに感じました。冒頭の「TRIPPIN' ON YOUR LOVE」は「Screamadelica」を彷彿とさせるようなファンキーなナンバー。「WHEN THE BLACKOUT MEETS THE FALLOUT」は強いビートのエレクトロナンバーで「XTRMNTR」を彷彿とさせるナンバーになっていました。さらに「GOLDEN ROPE」ではダイナミックなバンドサウンドが展開されるナンバー。Primal Screamのロックバンドとしての側面が強調された曲になっています。
ただ、いままでの活動を俯瞰、といってもいわゆる集大成的な後ろ向きなイメージは、このアルバムからは受けませんでした。おそらくその理由としてはどの楽曲からもしっかりとバンドとしての現役感を感じることが出来るからでしょう。決してこなれた感じでいつもの雰囲気の曲をこなしている、といった感じではなく、既にベテランバンドである彼らですが、楽曲からはいまだに新鮮さを感じることが出来ます。
また、その新鮮さを保っている大きな理由としては、ちゃんと楽曲の中に新しい要素を入れている、という面が大きいのでしょう。例えば今回のアルバムの中では「WHERE THE LIGHT GETS IN」で2013年にリリースしたアルバム「Night Time, My Time」が大きな話題となった女性シンガーソングライターSky Ferreiraとのデゥオに挑戦しておき、楽曲の中に新しい血を取り入れています。
他にもアコギとストリングスでフォーキーな雰囲気を出している「PRIVATE WARS」やエレクトロポップの「AUTUMN IN PARADISE」などバリエーション豊富。この楽曲のバリエーションの多さは、前作「More Light」に通じるものもあります。ただ、「More Light」がいわばバンドとして吹っ切れたものを感じたのに対して今回のアルバムは吹っ切れた、というイメージはありません。むしろバンドとして地に足つけて落ち着いているという印象を受けます。バリエーションが多いながらもPrimal Screamといての統一性が前作以上に感じれたものまた、「落ち着いている」と感じた理由でしょうか。また、70分を超える大作だった前作と対照的に、40分に満たないコンパクトな内容だったという点も、無駄に曲数を増やさずバンドとして落ち着いて感じさせる大きな理由のように感じました。
内容的には今回のアルバムも文句なしの傑作と言えるアルバムでした。上にも書いた通り、バンドとしていまだ新鮮さを保ち、かつ勢いすら感じさせるアルバム。「More Light」に続く傑作として、これからの活躍もまだまだ期待できそうです。
評価:★★★★★
primal scream 過去の作品
Beautiful Future
Screamadelica 20th Anniversary Edition
More Light
ほかに聴いたアルバム
Hive1/Tyondai Braxton
2010年までBATTLESのメンバーとして活躍していたTyondai Braxtonの6年ぶりとなるソロ作。リズムのみを強調して聴かせるような内容で、ポップスさは皆無。ただ音をとことん絞り、様々なリズムが展開していく構成に最後まで耳のはなせない緊迫感あふれるアルバムに仕上がっていました。
評価:★★★★★
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