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2016年4月22日 (金)

新しさと普遍性のバランスが絶妙

Title:Beauty Behind The Madness
Musician:The Weeknd

デビュー作となった前作「Kiss Land」が全米アルバムチャート2位を記録。売上・内容ともに大きな評価を得たアメリカのR&Bシンガーによる2作目。本作はアメリカはもとよりイギリス、カナダ、オーストラリア、スウェーデンのチャートでも1位を記録し、全世界規模での大ヒットを記録。その地位をさらに確固たるものにしています。

さらに今回の作品では今年2月に開催されたグラミー賞で最優秀R&Bパフォーマンスと最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバムの2部門を受賞。こちらも大きな話題となっています。

それだけの大ヒット作品となった本作ですがその理由も納得。まず大きな特徴としてはポップで聴きやすいという点が非常に大きな魅力として感じられました。特に顕著だったのが先行シングルでこれまた全米チャートで1位を獲得した「Can't Feel My Face」。マイケル・ジャクソンからの影響が顕著なファンキーなポップチューン。小難しさ抜きにして楽しめる軽快なナンバーになっています。

他にもポップシンガーとして大人気のEd Sheeranをフューチャーした「Dark Times」やおなじくマイケル・ジャクソンからの影響を感じられる「As You Are」などポップな曲が並んでいます。ここらへん、いい意味で日本人にとっても、普段あまり洋楽を聴かないリスナー層にも聴きやすい内容。また、マイケル・ジャクソンからの影響を感じさせる曲もそうなのですが、「In The Night」などもちょっと80年代っぽい要素が入っており、ここも聴きやすい大きな理由となっています。

ただ一方でこの作品が優れているのは単純にポップだから、という訳ではなく今時のサウンドをその楽曲にうまく取り入れているから。「Often」で聴けるシンプルな低音を強調したタイトなサウンドは、いかにもいまどきのビートミュージックといった感じですし、「Acquainted」などもメロディーは聴かせるバラードナンバーなのですが、細かくリズムを刻む静かなビートを強調したトラックは、いかにも今時の音づくりを感じさせます。

また、そんないかにも今時な音だけではなくアルバム全体として様々なアイディアが詰め込まれたトラックが魅力的。警告音のようなイントロからスタートする1曲目「Real Life」は全体的にダークさを感じさせますし、「Shameless」はエレクトロメインのアルバムの中で珍しくアコースティック風。「Earned It」も弦楽調のストリングスとピアノの音色が叙情的なメロディーラインを盛り上げます。

ここらへんの「今時」のサウンドと「普遍的でポップ」なメロディーラインのバランスが見事。またサウンドの中にも上にも書いた通り、80年代の匂いを感じさせるなじみやすいサウンドを取り入れていたりして、ここらへんのバランス感覚も上手いものを感じさせます。全世界で大ヒットが納得の作品。また、ここらへん、今風のサウンドでありながらポップというのは、いかにもグラミー賞好みな感じがしますが・・・。

それだけに逆に日本においてはようやく国内盤がリリースされ、全世界的なヒットとは無縁だったのが非常に不思議。なんか最近、音楽シーンだけではないのですが、国内が全体的に内向きになっているのが気になっているのですが、そんな最近の日本を象徴するような出来事のような・・・。また、国内盤がリリースされないとろくに取り上げようとしない音楽誌もまた閉口させられますが・・・(って、国内盤がリリースされてようやく聴いた私が言うべき発言ではないのですが(苦笑))。いまからでも遅くないのでR&Bが好きなら間違いなく要チェックの1枚です。

評価:★★★★★

The Weeknd 過去の作品
Kiss Land


ほかに聴いたアルバム

Rebel Heart/Madonna

約3年ぶりとなるマドンナの新作。全編、いま流行のEDMサウンドを導入。エレクトロサウンドは前作からの流れなのですが、ここらへん、今なお時代にアップデートしようとする彼女の挑戦心を感じます。ただ一方、メロディーラインにはどこか80年代の香りが・・・というよりも、往年のマドンナ節がきちんと楽曲の根底に流れているといった感じでしょうか。新しいサウンドを取り入れつつ、一方では昔から変わらない部分も強く感じられた新作でした。

評価:★★★★

MADONNA 過去の作品
Hard Candy
Celebration
MDNA

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