よりプログレ度が増した新作
Title:AWO
Musician;UKANDANZ
前作「Yetchalal」リリース後、日本での来日ライブを実施。そのダイナミックなパフォーマンスが大きな評判を呼んだバンドUKANDANZ。もともとギタリストであるフランス人のダミアン・クルュゼルが結成していたバンドに、エチオピア人のボーカリスト、アスナケ・ゲブレイエスが加わり、エチオピアの音楽を取り入れたのがきっかけ。エチオピア音楽にロックを取り入れた独特の作風も話題となりました。
今回のアルバムリリース前にキーボードのフレッド・エスコフィエが脱退。代わりにベーシストのブノワ・ルコントが参加し、新体制での新作となっています。バンド編成がそのため前作とは少々変わっているのですが、結果として前作よりもプログレッシブロックの度合いが強い作品に仕上がっていました。
まずパッとわかるプログレ度が強まった要素。それは曲数が前作の15曲からわずか6曲と縮まった点。一方では1曲あたりの長さが長くなり、最後の曲「Ambassel To Brussel 1/Wubit/Ambassel To Brussel 2」に至っては17分にも至る長い組曲的なナンバーになっています。
楽曲自体もプログレ度が増している・・・という以上に迫力あるバンドサウンドを前に押し出した曲が増えていました。1曲目「Sewotch Men Yelalu」もゆっくりとバスドラのリズムでスタートしたかと思えば分厚いホーンセッションがそれにのっかかりダイナミックに展開するスタイル。続く「Tchuheten Betsemu」もへヴィーなバンドサウンドにダイナミックなホーンセッションがのっかかり大迫力の構成になっています。
一方プログレ度が増したといえば「Ende Iyerusalem」でしょうか。複雑な変拍子のリズムで進んでいく楽曲で独特のグルーヴ感を作り出しています。続く「Gela Gela」も音を抑えめにスタートしながらもパーカッションのリズムやホーンの音色がそれぞれ独自に主張していく展開は最後まで耳がはなせません。
またボーカルアスナケ・ゲブレイエスのこぶしを利かせたボーカルは本作ももちろん健在。ボーカル以上に迫力あるバンドサウンドが前により出てきた影響か、前作のように「民謡風」とまで感じる曲は少ないのですが、最後を締める「Ambassel To Brussel 1/Wubit/Ambassel To Brussel 2」ではどこか和風なサウンドを感じたりして、日本人にとって耳なじみある部分もあったりします。
ミディアムテンポのダイナミックなサウンドが増えたため、前作のようなアップテンポな軽快な曲がなくなった点はちょっと残念。その結果、「UKANDANZ」というミュージシャン名とは裏腹に、あまり踊れなくなってしまったという点は少々マイナスかもしれません。ただそれでもライブではおそらく圧巻の演奏に酔いしれることが出来るんだろうなぁ。また彼らのライブを見たくなってしったことは間違いない新作でした。
評価:★★★★★
UKANDANZ 過去の作品
Yetchalal
Highlife On The Move
西アフリカで一世を風靡したモダンポピュラーミュージック、ハイライフ。本作は50年代から60年代のハイライフの曲を収録したコンピ盤。ラテン、カリプソ、あるいはジャズの要素を取り込んだモダンなナンバーながらも、要所要所にアフリカ的なリズムを取り入れているのがユニーク。ちなみに、かのアフロビートの創始者、フェラ・クティの初レコーディング曲といわれる2曲も収録されて話題となっています。ただこちらはまだアフロビート創設以前の曲なので、過度な期待は禁物かも。
評価:★★★★★
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