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2016年4月

2016年4月30日 (土)

話題の女性3人組

Title:We Are King
Musician:KING

かなり大胆不敵なミュージシャン名がまずインパクトの女性3人組コーラスグループ(というか、この名前だとネット上、すっごく検索しにくい・・・)。プリンス(R.I.P.......)が前座に抜擢したという話があったり、かのエリカ・バドゥが絶賛したというニュースがあったりと、なにかと話題の3人組です。

そんな彼女たちはロサンジェルスの女性3人組。パリス・ストローザーとアンバー・ストローザーの双子姉妹と、コンプトン出身の女性シンガー、アニータ・バイアスからなる3人組ユニットです。

なによりもまず耳を惹くのは、この3人のボーカル。シルキーという表現がピッタリ来るのでしょうか、非常にやわらかい雰囲気のボーカルが耳を惹きます。曲によっては楽曲の中に溶けてしまいそうな雰囲気すらあるボーカルなのですが、そのやわらかさのあるボーカルが幻想的な空気を作り出しています。なによりも、そのシルキーなボーカルが2重3重に重なるコーラスラインの実に美しいこと・・・。まずなによりもこの3人の美しいコーラスワークに聴きほれるアルバムでした。

そんな彼女たちのボーカルがのるサウンドは、今時のR&Bらしい熱量の低いメロウなサウンド。70年代のフィリーソウル、あるいは80年代的なヒュージョン的な雰囲気も取り入れたサウンドは、新しさと同時にどこか懐かしさも感じさせるほど。このメロウなサウンドはボーカルにも非常にマッチしており、ボーカルとサウンドが楽曲の中で溶け合って混じるあっているようにすら感じてしまいます。このサウンドとボーカルが一体となった幻想的ですらある楽曲が、このアルバムの中の大きな魅力に感じました。

エリカ・バドゥの絶賛が「聞いたことのない音楽」という絶賛の仕方をしているため、いったいどんな音楽が繰り広げられるんだろう・・・と期待して聴き始める方も多いかもしれません。しかしサウンド自体は決して奇抜なものではなく、むしろ70年代80年代から地続きになサウンドに今の新しい空気感を取り入れたといったといった感じもしました。なので聴き方によってはむしろある種の懐かしさすら感じさせるサウンドかもしれません。ただ、この新しさの懐かしさの二面性もまた、彼女たちの音楽の大きな魅力に感じました。

その美しいコーラスラインとサウンドに酔いしれる傑作アルバム。大絶賛のアルバムということで身構えるのではなく、素直にそのサウンドとボーカルの美しさを楽しみたい傑作でした。

評価:★★★★★

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2016年4月29日 (金)

PSB流エレクトロダンスミュージック

Title:SUPER
Musician:PET SHOP BOYS

約3年ぶりとなるPET SHOP BOYSのニューアルバム。前作「ELECTRIC」は今風のEDMを全面的に取り入れた、ある意味、時代の波に乗ったアルバムとなっていました。それから3年。その時のレビューで既に「猫も杓子もEDM」と書いていたのですが、今となっても、確かに3年前からは落ち着いた感もあるとはいえ、EDMというブームはまだ続いているような感もあります。

ここ最近、いわばEDM流行の原点となったような、昔からエレクトロダンスチューンを奏でていたThe Chemical BrothersやUnderworld、あるいはProdigyというグループは最新作ではいずれも、昨今のEDMの流行からはあえて一歩置くような作品を作ってきました。

そんな中発表された彼らの新作は、前作「ELECTRIC」に引き続き、非常にダンスミュージック的な要素が強いアルバムになっていました。例えば「Groovy」などは4つ打ちのリズムが軽快なダンスチューンですし、「Say It To Me」などはトランシーな雰囲気すら感じさせるテンポよいダンスチューンになっています。

ただ、ビートがより強く、今時の要素をより強く取り入れた前作に比べると本作はリズムも軽く、ちょっと懐かしさを感じさせる80年代、90年代的な要素を強く感じます。そういう意味では前作よりもPET SHOP BOYSらしい素朴なシンセポップの色合いが濃くなった、という言い方もできるかもしれません。今風の曲づくりを目指したような前作に比べて、今の時代の音を追及するのは一休みして、肩の力を抜いていつも通りの普段着路線でエレクトロダンスミュージック路線を作り上げた作品と言えるかもしれません。

しかし一方で、PET SHOP BOYSらしいポップなメロディーラインはちょっと後ろに下がってしまったかな、という点がちょっと気になりました。「The Pop Kids」「Twenty-something」のような、ちょっとベタさすら感じる哀愁感漂うメロディーラインにはPET SHOP BOYSらしさも強く感じるのですが、アルバム全体としてはむしろダンスミュージック的な要素を強く押し出した結果、「歌」の要素がちょっと引っ込んでしまったかな、と感じてしまいました。

そういう意味ではPET SHOP BOYSらしさを感じる要素も強い反面、「歌」という観点からはちょっと物足りなさを感じてしまったアルバムではありました。もっとも、基本的には難しいこと抜きにして楽しめるポップなアルバムであることは間違いないため、心地よく最後まで聴ける作品ではあるのですが・・・。

評価:★★★★

PET SHOP BOYS 過去の作品
Yes
ULTIMATE PET SHOP BOYS(邦題:究極のペットショップボーイズ)
The Most Incredible Thing
Elysium(邦題 エリシオン~理想郷~)
ELECTRIC

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2016年4月28日 (木)

最高齢の1位獲得

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

なんと68歳7ヶ月での1位獲得です。

今週1位は小田和正のオールタイムベストアルバム「あの日 あの時」が1位獲得です。タイトルはおそらく彼の大ヒット曲「ラブストーリーは突然に」のサビのフレーズですね。小田和正は御年68歳と7ヶ月。アルバム1位を獲得したミュージシャンでは過去最高齢だそうです。

【オリコン】小田和正、最年長68歳7ヶ月でアルバム1位

ただ、50代60代で元気なミュージシャンが数多くいる現在、この記録は近い将来に超えられてしまいそう。もっとも逆に、50代60代のミュージシャンが過去の遺物になってしまうような音楽的に新しい流れが出てきていないという意味では少々寂しさも感じてしまうのですが・・・。

ちなみに初動売上は13万枚。直近作のオリジナルアルバム「小田日和」の7万4千枚(3位)からは大幅にアップ。ただ、ベスト盤としてはこれで5作目となり、2007年にリリースされた前回のベストアルバム「自己ベスト-2」の17万5千枚からはダウンしてしまいました。

2位にはスターダストプロモーション所属の女性アイドルグループ私立恵比寿中学「穴空」がランクイン。初動売上4万2千枚は前作「金八」の3万7千枚(2位)よりアップ。

3位は松野おそ松&松野チョロ松(櫻井孝宏&神谷浩史)名義の「おそ松さん 6つ子のお仕事体験ドラ松CDシリーズ おそ松&チョロ松『TVプロデューサー』」がランクイン。人気アニメ「おそ松さん」から派生的にリリースされたドラマCD。初動売上2万6千枚は前作松野チョロ松&松野十四松(神谷浩史&小野大輔)「おそ松さん 6つ子のお仕事体験ドラ松CDシリーズ チョロ松&十四松『バー』」の3万1千枚(3位)からダウン。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にはアニソンを中心に活動を続ける(ただし最近はロック寄りへのシフトを狙っているようですが)女性シンガーLiSAのミニアルバム「LUCKY Hi FiVE!」が入ってきました。デビュー5周年の日にリリースされた記念盤的なミニアルバム。初動売上1万9千枚は前作「Launcher」の2万5千枚(3位)からダウン。アルバムの形態がミニアルバムだった影響でしょう。

7位にも女性シンガーやなぎなぎ「Follow My Tracks」が入ってきました。彼女もアニソンを中心に活動をする女性シンガー。初動売上1万枚は前作「ポリオミノ」の1万3千枚(7位)からダウン。

9位には男女2人組ユニットEGO-WRAPPIN'「ROUTE 20 HIT THE ROAD」がランクインです。結成から20年を迎える彼女たちがリリースしたのは2枚のベスト盤+カバーアルバム1枚という変則的な3枚組アルバム。ベスト10入りは、2008年にリリースしたこれまたベスト盤「BEST WRAPPIN' 1996-2008」以来4作ぶり。初動売上9千枚は前作「steal a person's heart」の6千枚(14位)からアップ。ただし、前回ベスト10入りしたベストアルバム「BEST WRAPPIN' 1996-2008」の2万6千枚(4位)からは大きくダウンしています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2016年4月27日 (水)

今週はジャニーズ系

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

今週1位はジャニーズ系が獲得。ジャニーズWEST「逆転Winner」が獲得しました。アニメ「逆転裁判 ~その「真実」、異議あり!~」オープニング・テーマ。タイトルはアニメの内容に沿ったものでしょうか。初動売上11万5千枚は前作「バリハピ」の10万枚(1位)からアップです。

2位はハロプロ系女性アイドルグループ℃-ute「何故 人は争うんだろう?」がランクイン。正直、センスないタイトルだなと思ったのですが、作詞は大御所の三浦徳子なんだよなぁ・・・うーん・・・。初動売上5万9千枚は前作「ありがとう~無限のエール~」の6万9千枚(2位)よりダウン。

3位は韓流の女性アイドルグループAOA「愛をちょうだい feat.TAKANORI NISHIKAWA(T.M.Revolution)」が入ってきました。タイトル通り、T.M.Revolutionの西川貴教が参加したシングル。K-POPらしい強いビートのロッキンエレクトロ。初動3万枚は前作「胸キュン」の2万4千枚(6位)からアップ。K-POPの女性アイドルと西川貴教とではあまりファン層がかぶらないような気もするのですが、どうなんでしょうか?

続いて4位以下の初登場曲です。まずはゲームのキャラソンが2曲ランクイン。5位にCafe Parade「THE IDOLM@STER SideM ST@RTING LINE -10 Cafe Parade(Cafe Parade!)」、8位に神速一魂 「THE IDOLM@STER SideM ST@RTING LINE -09 神速一魂(バーニン・クールで輝いて)」がそれぞれランクイン。ゲーム「アイドルマスター SideM」の登場人物によるキャラソン。初動売上は1万3千枚と1万1千枚。同じシリーズで1月に第7弾、第8弾がリリースされていましたが、そのうち10位にランクインしたFRAME 「THE IDOLM@STER SideM ST@RTING LINE -08 FRAME(勇敢なるキミヘ)」の1万2千枚からほぼ横ばいという結果に。

6位には女性アイドルグループDreamのメンバーAmiによるDream Ami名義のソロシングル「トライ・エヴリシング」が入ってきています。ディズニーによるアニメ映画「ズートピア」主題歌に起用された本作。初動売上1万2千枚はソロデビュー作だった前作「ドレスを脱いだシンデレラ」の3万4千枚(5位)から大幅ダウンで映画のタイアップ効果は発揮されなかった模様。ただ映画のヒット次第でロングヒットの可能性もあるかも。

7位には孤軍奮闘のロックバンド[Alexandros]「NEW WALL」が入ってきています。ゲーム「テイルズ オブ ザ レイズ」テーマソング。ストリングスを大胆に入れた爽やかでスケール感あるポップステイストの強い作品。初動売上1万1千枚は前作「Girl A」の1万7千枚(3位)からダウン。こちらもタイアップ効果はいまひとつ。

9位初登場はHoneyWorks meets スフィア「一分一秒君と僕の」。ニコニコ動画で主にボーカロイド曲を手掛けるクリエーター集団HoneyWorksと人気声優によるユニット、スフィアによるコラボシングル。アニメ映画「ずっと前から好きでした。~告白実行委員会~」エンディング・テーマ。初動売上9千枚。HoneyWorks関連では先週、CHiCO with HoneyWorks名義の「恋色に咲け」が14位(初動売上6千枚)にランクインしており、そちらよりはアップ。スフィアとしても前作「DREAMS,Count down」の8千枚(8位)よりアップしています。

最後10位にはばってん少女隊「おっしょい!」がランクイン。スターダストプロモーション所属の福岡に拠点を置く女性アイドルグループ。初動売上9千枚は前作「ばってん少女。」の8千枚(19位)よりアップで初のベスト10ヒット。名前の付け方といい、博多弁を乱発する歌詞といい、いかにも「自分たちのやっていることはユニークでおもしろいでしょ」アピールがスターダストプロモーション所属のアイドルらしい感じ・・・(苦笑)。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日!

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2016年4月26日 (火)

中毒性の強いチープなサウンド

Title:TROTRO
Musician:DJ KATAPILA

アフリカ現地でカセットでしかリリースされないような音源を発掘し、世に紹介し続けているレーベル「Awesome Tapes From Africa」。公式サイトではアフリカでのみ手に入れられるような、濃ゆい音源を無料で聴くことが出来るとあって、アフリカ音楽ファンの間ではよく知られているサイト/レーベルなのですが、今回、そのレーベルから新作がリリースされたということで聴いてみました。

このDJ KATAPILAというミュージシャンは西アフリカはガーナで、DJやプロデューサーとして活躍しているミュージシャン。本作はもともと2009年に地元で自主制作盤としてリリースされていたものの再発盤だそうです。

で、個人的には以前からアフリカ音楽が好きなだけにこのアルバムももちろんチェックしてみたのですが・・・いきなりアルバムは非常にチープなリズムがハイテンポで鳴り響き、そこにガーナ語のチャットが乗るような展開。私自身、「Awesome Tapes From Africa」で紹介されている曲をよく聴いているのですが、そこでよく聴けるような、アフリカ現地の空気感がそのままパッケージされた魅力を感じます。また、ローランドのリズムマシンTR-808をそのまま鳴らしたサウンドには、垢抜けないチープさを感じる一方で、強烈な中毒性も感じさせます。

特に前半は、このチープなトラックが延々と繰り返し続ける展開に。サウンド的にはシカゴ・ハウスの影響を強く受けたサウンドといった感じで、ガーナ語のチャットなどはアフリカ的要素も強く感じさせる一方、アフリカ音楽を聴きなれていない方にもなじみやすさもあったのではないでしょうか。

ただ、序盤のチープな、良くも悪くも似たような雰囲気のサウンドが続いていくのかと思いきや、中盤「Lalokat」ではエレクトロ色の強いビートにハンドクラップのリズムで若干音に厚みが加わった内容に。続く「Ice-Inc」も近未来的な雰囲気のあるメタリックなビートに仕上げており、一本調子ではないサウンドをきちんと聴かせてくれます。

全体的にはやはりアフリカの現地の匂いが強くついた癖の強さは否定できない反面、非常に中毒性の高いサウンドに一度はまればズブズブとはまっていってしまいそうなアルバムだったと思います。アフリカ音楽が好きなら要チェックな1枚。知らず知らずのうちにどんどんとはまってしまいそうです。

評価:★★★★

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2016年4月25日 (月)

そのリリース方法も話題に

Title:The Life Of Pablo
Musician:Kanye West

Thelifeofpablo

Kanye West待望の新作は、まずそのリリース形態が大きな話題となりました。2月に本作を自身も共同オーナーをつとめるストリーミングサイトTIDALで発表。しかしこのサイト、日本からは登録が出来ず、日本のファンを大きく嘆かせる結果となってしまいました。

しかし4月に入りようやくApple Musicでも配信を開始。さらにはダウンロード販売も開始。日本のファンもようやく彼の新作を聴くことが出来るようになりました。またこの際話題になったのが、内容が以前から更新された、ということ。さらにプレスリリースでは今後もさらなるアップグレードされる見込みを公表しており、作品としてこれからリアルタイムで進化していく現場をリスナーが体験できるような仕組みになっています。

またTwitterで、これからはCDではアルバムを発表しない、という発言をしたことも話題に。この話、どこまで本気かは不明なのですが、今の時代を象徴するような発言としても大きく取り上げられました。

さてそんな話題となった今回のアルバム。聴いてみて私がまず感じたのは、どこか捉えどころのないアルバムだな、ということでした。

今回のアルバムに関して、本人は「ゴスペルアルバム」と言っているそうです。確かにゴスペルの要素は強く感じます。例えば冒頭を飾る「Ultralight」ではゴスペル歌手のカール・フランクリンが参加。荘厳さも感じさせるトラックもあわせてゴスペルの要素を強く感じさせる曲となっています。

ただ5分強のこの曲を除き前半はどの曲も2から3分程度の短い曲が並んでいます。ただだからといってわかりやすいポップな楽曲が並んでいる・・・といった感じではなく、ただ、Kanye Westがやりたいことが次々と展開されているような内容になっています。

例えば「Famous」はその歌詞の内容がテイラー・スウィフトを揶揄したとしてゴシップ的な意味でも話題に。ダークなトラックをバックに淡々とラップが続く中、途中、リアーナの力強い歌パートが挟み込まれる展開。ラップのパートとオルガンをバックに少々ゴスペルテイストもある歌パートの対比がユニークな楽曲になっています。

「Low Lights」もシンプルなピアノとエレクトロのトラックの上で、女性ボーカルの力強い説教のような語りが乗るというスタイルもなかなかユニークに感じました(ちなみにこの女性ボーカルの説教?はKings of Tomorrowの「So Alive」という曲からサンプリングしてきたようです)。

「FML」なども音数の少ないエレクトロトラックに力強いボーカルが乗るスタイルが印象に残ります。先日紹介したばかりのThe Weekndが参加したこの曲。途中、ファルセットで聴かせるボーカルのメロディアスな歌が印象に残る作品となっていました。

そんな感じで、2、3分程度の短い曲が次々と展開されていく作風だったため、個人的にはどこか捉えどころのなさを感じた作品。ただそれはCDというフォーマットから自由になったことから、「アルバム」という形態にこだわらず自由に曲作りをしていった結果なのかもしれません。そんなKanye Westの「自由さ」を今回のアルバムからは感じました。

一方でインターリュード的な1分に満たない曲を2曲も挟んだ後の終盤は、インパクトあるポップなナンバーが並んでいました。終盤のこれらの曲に関しては前半に比べてより多くのサンプリング音源を入れつつ、ポップに楽しさも感じさせるようにまとめあげた作品に仕上がっています。エレクトロなトラックが多く、どちらかというとタイトなイメージのある前半に比べて、この終盤はサンプリングをふんだんに盛り込んだ賑やかさすら感じさせる内容になっていました。

今回のリリース形態、スクリーミング先行の販売や未完成ヴァージョンでの発表というスタイルは賛否はありそう。ただ、この自由なリリース体制ゆえなのか、実に自由な曲づくりを感じさせるアルバムでした。最近はいろいろとお騒がせな話題も多い彼。しかし音楽の面でもいい意味で騒がせているのはさすが。捉えどころのなさは感じるものの、アルバム全体としては間違いなく傑作でした。

評価:★★★★★

KANYE WEST 過去の作品
GRADUATION
808s&Heartbreak
MY BEAUTIFUL DARK TWISTED FANTASY
YEEZUS

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2016年4月24日 (日)

彼ららしい泣きメロの中でカラッとした雰囲気も

Title:Weezer
Musician:Weezer

おそらく今、Weezerはデビュー14年目にしてまた脂がのりだした状況であるように思われます。特に前作「Everything Will Be Alright In The End」は久しぶりに、いわゆるWeezerらしいもろ手をあげて絶賛できるような傑作に仕上がっていましたし、ボーカルのリヴァース・クオモが参加して2013年にリリースした「スコットとリバース」もとても心地よいポップアルバムに仕上がっていました。

今回のアルバムも、まずはWeezerが好きな方ならば素直に受け入れられ、そして楽しむことができるアルバムだったと思います。特に今回のアルバムでよく指摘されるのが彼らの2ndアルバム「ピンカートン」との類似性。特に哀愁感の強いメロディーラインと分厚いギターサウンドという組み合わせに、「ピンカートン」を彷彿させる部分が大きいように感じます。

例えば「Do You Wanna Get High?」などはマイナーコード主体の哀愁あふれるメロディーライン。そのメロディーがのっかっているギターサウンドの実に分厚いこと・・・。メロディーラインに胸をうちつつ、分厚いサウンドに身体をゆだねるという、まさにWeezerらしい魅力あふれた作品になっています。

個人的に特に気持ちよかったのが「Summer Elaine and Drunk Dori」。Weezerらしい泣きメロのポップに分厚いサウンドがまず心地よいのですが、このメロディーラインもマイナーコードとメジャーコードを行ったり来たりする意外と凝った展開で、明るさと悲しさが同居したようなメロディーラインが実に楽しいポップチューンに仕上がっています。

そんな哀愁感あるポップアルバムになっている本作なのですが、その一方、「LA西海岸をぶらついている時にインスピレーションを受けた」と語っている本作は、本人たち曰く「ビーチ・アルバム」だそうで、確かに哀愁感あふれるメロディーラインとは対照的な、カラッとしたポップなメロディーも聴かせてくれています。

例えば1曲目を飾る「California Kids」は、メロディーラインには彼ららしい切なさを感じさせる一方で、カラッとした陽性の要素も感じ取れたりします。ほかの曲に関しても、アメリカ西海岸らしい、どこかカラッとした雰囲気の要素も交じっていたりして。彼ららしい切ない泣きメロとは対照的な雰囲気をうまく同居させている点、このアルバムのおもしろいところに感じました。

基本的にはWeezerというバンドのパブリックイメージにきちんと答えたアルバムになっており、そういう意味でもファンなら安心して聴ける傑作になっていました。良くも悪くも感じさせるWeezerらしさは、逆に新たな要素は少ないことをあらわしているのかもしれませんが、様々に新しいことに踏み出した結果、「いいアルバムとは思うんだけど・・・」という状況が続いていたことを考えると、彼らの王道路線を行くというスタイルは正解のように思います。最初にも書いた通り、今再び脂がのりだした彼ら。次のアルバムも早く聴いてみたいです!

評価:★★★★★

WEEZER 過去の作品
WEEZER(Red Album)
RADITUDE
HURLEY
DEATH TO FALSE METAL
Everything Will Be Alright in the End

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2016年4月23日 (土)

ダンスミュージックを通じて見た昭和歌謡史

以前から気になっていた本なのですが、ようやく読んでみました。

大阪大学の准教授で大衆音楽研究家である輪島裕介氏による「踊る昭和歌謡」。以前、彼の著書で「創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史」という本を紹介したことがあるのですが、これが非常に優れた名著だっただけに、この本も発売当初から非常に気になっていました。

最初のイメージではこの新書本、昭和歌謡曲の中のダンスミュージックを羅列的に紹介していく本と思っていました。しかし実際に読んでみるとそれは大きな勘違いでした。この本で輪島氏が提示しているのは、「踊る」という視点を通じて見た、あらたな「昭和歌謡史観」でした。

この本の最初、「はじめに」で著者はいきなりこういう文章から切り出しています。「大衆音楽とは、踊る音楽である。」。大衆音楽は音楽にあわせて歌ったり踊ったり合いの手を入れたりすることが出来る音楽。それと対照的に音だけを集中的に聴き取る音楽を「芸術音楽」として、「大衆音楽」と「芸術音楽」の二項対立論を提示しています。

その前提に基づいて(この「大衆音楽」=「踊れる音楽」という図式は決して著者のオリジナルではないそうですが)昭和歌謡史を論じているのが本作。特に昭和歌謡史がともすれば、欧米の音楽から強い影響を受けたフォーク音楽、ニューミュージック、J-POPという流れと、その対極としての日本的要素が強い演歌、歌謡曲、アイドルポップといったふたつの流れで語られることが多い中、その狭間で語られることがほとんどないラテンからの影響を本書の前半で大きく取り上げて語っています。

特にユニークだったのが1950年代から60年代にかけて、「ニューリズム」と称して海外のリズムを積極的に、そして次々と日本に紹介し取り入れていった流れ。マンボやらカリプソやら南米系のリズムが次々と登場し、日本に大きな影響を与えていったことがわかります。今みたいにパソコンのクリックひとつで世界中の音楽に容易に触れることが出来る時代とは違い、海外の情報がほとんど入ってこなかった時代に、時には「大きな誤解」を含みながらも新たなサウンドが次々と紹介されるという音楽シーンは、いまだに90年代J-POPそのままの音が幅を利かせ、ともすれば停滞気味にすら感じられる今のミュージックシーンと比べてなんともうらやましさも感じてしまいます。

その中でも一章をあてて大きく取り上げられているのが日本生まれのリズム「ドドンパ」。いまでもその名前だけは聞いたことがある、という方も多いかもしれません。リズムを聴けば、「ああ、あれ」と思う方も多いでしょう。この「ドドンパ」が誕生に至った流れや当時の流行、その影響などを詳しく記述しており、この本の中のひとつのハイライトとなっています。

以前紹介した「創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史」の大きな魅力は、1974年生まれで、おそらくリアルタイムで昭和歌謡全盛期を知らない輪島氏が当時の資料や証言などを丹念に拾い上げて、客観的姿勢から当時の音楽シーンを描こうとする姿勢でしたが本作もそのスタンスが貫かれておき、大きな魅力となっていました。おそらくリアルタイムで50年代60年代を経験してきた人ではある意味主観的になりすぎるところを、丁寧に、客観的に描こうとしているからこそ、逆にその時代の空気感がより伝わってきているように思います。

ただちょっと残念だったのが、それ以降の音楽シーンについてはあまり深く切り込んでいなかった点でした。特に80年代から90年代に一世を風靡したユーロビートなど、日本でにも異常なまでにヒットした、という点ではもっと突っ込みがいのあるブームだったと思うのですが・・・著者の専門外だった、ということあでしょうか。もうちょっと切り込んでほしかったな、とも思ってしまいました。

そこらへんはちょっと残念だったのですが、日本の歌謡史に興味がある方には必読の1冊だと思います。特にダンスミュージックといえば、例えば80年代のディスコにしろ90年代のユーロビートにしろ2000年代のトランスにしろ現在のEDMにしろ、とかく音楽の中では軽んじられる傾向にあるジャンル。まあ、時として必要以上に機能的に特化しすぎる傾向にあるだけに、音楽ファンの中で軽視されるのは仕方ない部分もあるのですが、本書を読み、ダンスが音楽シーンに与える影響を強く考えさせられ、かつ踊れる音楽について大いに見直しました。

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2016年4月22日 (金)

新しさと普遍性のバランスが絶妙

Title:Beauty Behind The Madness
Musician:The Weeknd

デビュー作となった前作「Kiss Land」が全米アルバムチャート2位を記録。売上・内容ともに大きな評価を得たアメリカのR&Bシンガーによる2作目。本作はアメリカはもとよりイギリス、カナダ、オーストラリア、スウェーデンのチャートでも1位を記録し、全世界規模での大ヒットを記録。その地位をさらに確固たるものにしています。

さらに今回の作品では今年2月に開催されたグラミー賞で最優秀R&Bパフォーマンスと最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバムの2部門を受賞。こちらも大きな話題となっています。

それだけの大ヒット作品となった本作ですがその理由も納得。まず大きな特徴としてはポップで聴きやすいという点が非常に大きな魅力として感じられました。特に顕著だったのが先行シングルでこれまた全米チャートで1位を獲得した「Can't Feel My Face」。マイケル・ジャクソンからの影響が顕著なファンキーなポップチューン。小難しさ抜きにして楽しめる軽快なナンバーになっています。

他にもポップシンガーとして大人気のEd Sheeranをフューチャーした「Dark Times」やおなじくマイケル・ジャクソンからの影響を感じられる「As You Are」などポップな曲が並んでいます。ここらへん、いい意味で日本人にとっても、普段あまり洋楽を聴かないリスナー層にも聴きやすい内容。また、マイケル・ジャクソンからの影響を感じさせる曲もそうなのですが、「In The Night」などもちょっと80年代っぽい要素が入っており、ここも聴きやすい大きな理由となっています。

ただ一方でこの作品が優れているのは単純にポップだから、という訳ではなく今時のサウンドをその楽曲にうまく取り入れているから。「Often」で聴けるシンプルな低音を強調したタイトなサウンドは、いかにもいまどきのビートミュージックといった感じですし、「Acquainted」などもメロディーは聴かせるバラードナンバーなのですが、細かくリズムを刻む静かなビートを強調したトラックは、いかにも今時の音づくりを感じさせます。

また、そんないかにも今時な音だけではなくアルバム全体として様々なアイディアが詰め込まれたトラックが魅力的。警告音のようなイントロからスタートする1曲目「Real Life」は全体的にダークさを感じさせますし、「Shameless」はエレクトロメインのアルバムの中で珍しくアコースティック風。「Earned It」も弦楽調のストリングスとピアノの音色が叙情的なメロディーラインを盛り上げます。

ここらへんの「今時」のサウンドと「普遍的でポップ」なメロディーラインのバランスが見事。またサウンドの中にも上にも書いた通り、80年代の匂いを感じさせるなじみやすいサウンドを取り入れていたりして、ここらへんのバランス感覚も上手いものを感じさせます。全世界で大ヒットが納得の作品。また、ここらへん、今風のサウンドでありながらポップというのは、いかにもグラミー賞好みな感じがしますが・・・。

それだけに逆に日本においてはようやく国内盤がリリースされ、全世界的なヒットとは無縁だったのが非常に不思議。なんか最近、音楽シーンだけではないのですが、国内が全体的に内向きになっているのが気になっているのですが、そんな最近の日本を象徴するような出来事のような・・・。また、国内盤がリリースされないとろくに取り上げようとしない音楽誌もまた閉口させられますが・・・(って、国内盤がリリースされてようやく聴いた私が言うべき発言ではないのですが(苦笑))。いまからでも遅くないのでR&Bが好きなら間違いなく要チェックの1枚です。

評価:★★★★★

The Weeknd 過去の作品
Kiss Land


ほかに聴いたアルバム

Rebel Heart/Madonna

約3年ぶりとなるマドンナの新作。全編、いま流行のEDMサウンドを導入。エレクトロサウンドは前作からの流れなのですが、ここらへん、今なお時代にアップデートしようとする彼女の挑戦心を感じます。ただ一方、メロディーラインにはどこか80年代の香りが・・・というよりも、往年のマドンナ節がきちんと楽曲の根底に流れているといった感じでしょうか。新しいサウンドを取り入れつつ、一方では昔から変わらない部分も強く感じられた新作でした。

評価:★★★★

MADONNA 過去の作品
Hard Candy
Celebration
MDNA

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2016年4月21日 (木)

区切りのベスト盤が見事1位

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

初のオールキャリア・ベストで1位獲得です。

今週1位は氷室京介のオールキャリアベストアルバム「L'EPILOGUE」が見事1位獲得となりました。聴力悪化のため、4月から5月にかけて行われるライブツアーを最後にライブ活動を休止する彼。その彼のいわば区切りとなるベストアルバムです。3年前にソロ25周年として、ソロとしてのオールタイムアルバムをリリースしたばかりですが、今回のアルバムはBOOWY時代を含めたオールキャリアベストアルバムとなります。

初動売上は8万5千枚。前作はそのオールタイムベストアルバム「KYOSUKE HIMURO 25th Anniversary BEST ALBUM GREATEST ANTHOLOGY」で、こちらの初動6万2千枚よりアップ。やはりライブ活動休止という話題性と、なによりもBOOWY時代の曲が含まれていたのが大きかったのでしょうか。

2位初登場はAfter the Rain(そらる×まふまふ)「クロクレストストーリー」がランクインです。人気動画サイト「ニコニコ動画」の歌ってみたコーナーで人気を博した歌い手そらると、ネット上で数々の作詞作曲などを手掛けるまふまふによるユニット。初動売上3万6千枚を記録し、見事ベスト3入りです。ちなみにそらるのソロとして「夕溜まりのしおり」がチャート10位(初動売上1万枚)を記録していますが、そこより大きくアップしています。

3位には三代目J Soul Brothers from EXILE TRIVE「THE JSB LEGACY」が先週の2位からワンランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場です。まず5位。徳永英明「ALL TIME BEST Presence」がランクインです。最近はすっかりカバーアルバムの活躍が目立っていましたが、こちらはオリジナル曲での3枚組ベストアルバム。初動売上は1万8千枚。直近作はカバーアルバム「VOCALIST6」でこちらの初動5万枚(3位)からは大幅ダウン。ベスト盤としては2008年にシングルベスト「SINGLES BEST」「SINGLES B-side BEST」を同時リリースしており、「SINGLES B-side BEST」の1万2千枚(11位)からはアップしているものの、「SINGLES BEST」の8万7千枚からは大幅ダウンとなっています。

7位初登場はスキマスイッチ「POPMAN'S ANOTHER WORLD」。「アナザーベスト」と名乗っていますが、要するにカップリング曲集。初動売上は1万枚。直近作はライブアルバム「スキマスイッチ TOUR 2015 “SUKIMASWITCH”SPECIAL」で、こちらの初動3千枚(20位)よりアップ。オリジナルアルバムで直近作の「スキマスイッチ」の2万2千枚(6位)からもダウン。ただ売上が落ちる傾向にあるカップリング曲集にしては健闘といったところか。

8位には女性アイドルグループあゆみくりかまきのデビューアルバム「あゆみくりかまきがやって来る! クマァ! クマァ! クマァ!」がランクイン。初動売上は8千枚。直近シングル「心友フォーエヴァー」は初動1万1千枚(17位)。アイドルグループはアルバムでは売上が落ちる傾向があるのでまあ健闘したといった感じでしょうか。

最後、10位にランクインしてきたのは男性2人組のボーカルユニットC&Kのベストアルバム「CK IT’S A JAM ~BEST HIT UTA~」が入ってきました。初動売上7千枚は初のベスト10ヒットとなった前作「CK MUSIC」の8千枚(7位)より若干ダウンしています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2016年4月20日 (水)

今週もAKBグループ

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

今週もまたAKB48関連のシングルが1位獲得です。

今週の1位は福岡・博多を中心に活動を続けるHKT48「74億分の1の君へ」が獲得。彼女たち初のウェディングソングだそうですが、世界の人口(=約74億)の中からたった一人の君を選んだという歌詞は、いくらなんでもありふれすぎているんじゃないか?初動売上23万8千枚はHKT48 feat.氣志団名義の前作「しぇからしか!」の28万枚からダウン。

2位はEXILEの事務所、LDH所属のHIP HOPグループDOBERMAN INFINITY「いつか」。いままではポップ色が強くても基本的には「HIP HOP」な作品になっていましたが最新作は完全にEXILE系のユニットがよく歌っていそうなポップソングになってしまっています。2位は自己最高位ながらも初動売上3万1千枚は前作「JUMP AROUND∞」の3万3千枚(4位)からダウン。

3位には先週1位の欅坂46「サイレントマジョリティー」が2ランクダウンでベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場曲です。4位にはavex所属の男性アイドルグループSOLIDEMO「Landscape」が入ってきています。テレビ東京系アニメ「FAIRY TAIL」エンディングテーマ。アップテンポなエレクトロポップ。ガテン色が薄れたEXILE系ポップといった感じか。初動売上2万5千枚は前作「Girlfriend」の1万9千枚(5位)からアップ。

5位には原駅ステージA/ふわふわ「Rockstar」がランクイン。日テレ系ドラマ「マネーの天使~あなたのお金、取り戻します!~」主題歌。ライジングプロダクションが手掛けるアイドルグループ2組による合同デビューシングルだそうです。表題曲は強いビートでちょっと80年代っぽいEDMチューン。初動売上1万7千枚でデビュー曲でのベスト10入りとなります。

7位はスターダストプロモーション系で大阪を中心に活動している女性アイドルグループたこやきレインボー「ナナイロダンス」がランクイン。avexからのメジャーデビュー作だそうですが、avexらしいユーロビート調のナンバーに。7位は自己最高位で前々作「元気売りの少女~浪花名歌五十選~」以来2作ぶりのベスト10ヒットですが、初動売上1万4千枚は前作「クリぼっち ONE DAY!!」の1万5千枚(11位)よりダウンしています。

もう1組女性アイドルグループが。6位にドリーミュージック所属のアイドルグループDoll☆Elements「Dear Future」がランクイン。昨年1月にリリースした「君に桜ヒラリと舞う」以来3作ぶりのベスト10入り。ただし初動売上1万枚は前作「君のオモイ届けたい」の1万5千枚(11位)から大幅ダウンしています。

9位には人気声優谷山紀章とミュージシャン飯塚昌明によるユニットGRANRODEO「TRASH CANDY」がランクイン。90年代のビジュアル系っぽいハードロック風のデジロックナンバー。アニメ「文豪ストレイドッグス」オープニングテーマ。初動1万枚は前作「メモリーズ」の1万4千枚(6位)からダウン。

最後10位には人気女性声優水瀬いのり「harmony ribbon」が入ってきました。2作目にして初のベスト10ヒット。ピアノとストリングスの爽快な90年代J-POP風ナンバー。初動売上9千枚は前作「夢のつぼみ」(11位)から横ばいです。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2016年4月19日 (火)

WEGらしいライブ音源3曲

Title:LIVE​/​10​/​10​/​2015
Musician:world's end girlfriend

Weg_10102015

今回紹介するアルバムは、world's end girlfriendが先日アップした無料音源。5月28日に開催される、Virgin Babylon Records主催のライブイベント「Virgin Babylon Night 3」を記念して公開されたとか。タイトルの通り、2015年10月10日に行われた東京・WWW公演の模様を収録したもの。そこから3曲がピックアップされていますが、1曲あたり9分を超える内容になっており、ちょっとしたミニアルバム的な内容になっています。

1曲目「yes」はトレモロ気味のギターサウンドが静かに会場に流れ出してスタート。薄くかぶるストリングスの音色も印象に残ります。中盤からはバンドサウンドも加わり、ちょっと物悲し気なメロディーラインがのった「ポップ」といった印象を受けるサウンドに。後半に至ってバンドサウンドが徐々に盛り上がり、最後はギターノイズも加わり一気にダイナミックに・・・ある意味、静から動に展開する非常にオーソドックスな構成にまとまっています。

続く「春日狂想」も、ピアノとストリングスで美しく聴かせるインストのメロディーが印象的。ただ単なる美しいインストではなくここにわずかにノイズが重なるのがWEGらしい感じ。この曲は「ポエムコア」なるジャンルを創設したBOOLというシンガーが参加し、中原中也の「春日狂想」のポエトリーリーディングを披露しています。ちょっとポエトリーリーディングが芝居がかりすぎているような感じなのは気にかかりますが・・・かなりのインパクトがある曲なのは間違いありません。

そして最後は正直ちょっとビックリしたのですが湯川潮音をゲストに迎えたラストの「君をのせて/ナウシカ・レクイエム」。もともと「キラキラジブリ」というクラブ系ミュージシャンによるジブリソングのカバーアルバムに収録されていたそうですが、これが非常に美しい。基本的にはナウシカのテーマソング「君をのせて」のカバーとなっており、終盤に「風の谷のナウシカ」の劇中歌「ナウシカ・レクイエム」に突入する展開。WEGの美しくも狂気を秘めたようなサウンドが、なにげに久石譲の書く曲にピッタリとマッチ。原曲の美しさも残しつつ、WEGの良さも発揮した絶妙なカバーになっていまいた。

3曲とも美しいメロディーラインに美しいサウンドを聴かせつつ、その中にかすかに毒の要素を入れてきており、そのわずかに入れた毒がいつのまにかリスナーに浸食していくという、world's end girlfriendらしい曲が並んだライブアルバムになっていました。ライブ盤としてはもちろん、WEGを聴いたことない方でも無料ダウンロードということでお試し感覚で聴いてほしいアルバムだと思います。これを機に、是非。

参考サイト
world's end girlfriend、ライブ音源を無料配信

ダウンロードはこちらのサイトから。

ダウンロード方法がちょっとわかりにくいのですが、「Buy Now」をクリックしてポップアップで表示される画面の値段の箇所に「0」を入れると、ダウンロード画面が表示されます。

評価:★★★★★

world's end girlfriend(world's end boyfriend)過去の作品
空気人形オリジナルサウンドトラック
Xmas Song(2009年)

SEVEN IDIOTS
Xmas Song(2010年)
Xmas Song(2011年)

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2016年4月18日 (月)

ゲストと選曲も濃い!

お値段もそこそこ張るため、買おうかどうか迷ったあげく結局買ってしまったのが今回紹介する電気グルーヴのライブDVDです。

電気グルーヴ結成25周年を記念して行われたライブツアー「塗糞祭」。本作はその11月8日にZepp Tokyoで行われたファイナルの模様を収録したライブDVDです。本編のDVD(もしくはBlu-ray)2枚組と、初回限定盤ではその模様の音源を収録した2枚組のCDが付いています。

このライブ、25周年の記念ライブということもあって、その内容がとにかく濃い!まずゲストがすごい!彼らと一緒にコラボを行いアルバムもリリースしたことがあるスチャダラパーや、電気グルーヴとの交流のある漫画家天久聖一など、おなじみのメンバーも登場するほか、最初期の電気グルーヴのメンバー、CMJKや90年代に同じく電気グルーヴのメンバーだったまりんこと砂原良徳も参加しています。

選曲も出し惜しみなしのベストな内容。特にCMJKや砂原良徳が参加したパートでは彼らが所属していたころの曲を披露しているだけに全体的には比較的初期の頃の曲が多かったような印象も受けました。そのため、90年代あたりの電気のパブリックイメージである「毒のあるユニークな曲を歌うテクノユニット」といった楽曲が比較的多く披露されていました。

特にラストは25周年のラストを飾るにふさわしい、「N.O.」・・・ならぬその原型である「無能の人」、さらにはインディーズのデビューアルバムの1曲目「電気ビリビリ」で締めくくり。25周年の記念ライブにふさわしい構成になっています。

今回のDVDではライブのMCも(おそらく)ほぼそのまま収録。残念ながら結構な部分、放送禁止となってしまい「P音」が入っているためおもしろさが半減してしまっているのですが(正直、もうちょっと収録できるようにがんばってほしかった・・・)、それでも瀧と卓球の仲の良さが垣間見れる場面があったり、電気らしいユニークなトークを楽しめたり、MC含めてライブの雰囲気を味わうことが出来ました。

ライブ自体はそんな濃ゆい、ベストな選曲での内容なだけにライブ、行きたかったなぁ・・・という気分にさせられる、とても楽しいライブの模様が伝わってくるようでした。ただその反面、正直このライブDVDに関しては不満に感じる点も少なくありませんでした。

まずはライブ映像のカット割り。彼らに限らず最近よくあるパターンなのですが、短い時間で次々とカメラが切り変わっていく映像は個人的にはあまり好きじゃない・・・。あれだけこまかくカメラが切り変わると、ライブの臨場感が薄れちゃうように感じるんですよね。なによりも見ていて疲れてくるし。ま、私が年なだけかもしれませんが(苦笑)。

あと「電気ビリビリ」の歌詞の一部に規制がかかってミュート処理されているのも非常に残念。確かにメジャーからのリリース時に元の歌詞が問題になって改変されたのですが・・・確かにどぎつい歌詞ではあるけども、そんなに規制しないと出せないほどの歌詞かなぁ・・・。

そんな残念な部分も少なくないため、ライブ自体はとても素晴らしかったと思うのですが、DVDの方はちょっと手放しでは絶賛できないような内容でした。とはいえ、ライブ自体が良かったので十分に楽しめたのも事実なのですが。うーん、やはり「塗糞祭」、行きたかったなぁ・・・。

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2016年4月17日 (日)

ラストも平常運転

Title:PE'Z 終演 EN-MUSUBI 2015 FINAL-おどらにゃそんそん!-
Musician:PE'Z

Pezlast

1999年に結成。渋谷のストリートライブなどで話題を呼び2002年にメジャーデビュー。同年にリリースしたメジャーデビューアルバム「九月の空-KUGATSU NO SORA-」ではジャズインストバンドとしては珍しい、オリコンアルバムチャートでベスト10入りを記録するなど絶大な支持を得た彼ら。その後もコンスタントに活動を続けてきましたが、2014年12月に、2015年いっぱいでの解散を発表。昨年12月19日の東京・人見記念講堂でのライブを最後に、その16年に及ぶ活動に幕を下ろしました。

本作はその人見記念講堂でのラストライブの模様をおさめたライブアルバム。もともとストリートライブ出身でライブにも定評のあった彼ら。それだけに最後のアルバムをライブアルバムで締めくくるというのも彼ららしいといった印象があります。

そんなPE'Zの大きな魅力のひとつが、やはりポップであるということ。ジャズというとイメージとして少々取っつきにくいという印象を受ける方もいるかもしれませんが、彼らの曲に関しては楽曲に一貫としてわかりやすいメロディーラインが流れています。ここらへん、彼らの音楽がジャズインストというジャンルでありながらもアルバムチャートでベスト10入りまで果たした大きな理由のひとつかもしれません。

特に彼らの音楽は、海外での活動の中で「侍JAZZ」なる呼び名があるように、日本人にとってわかりやすい和風のメロが流れているのも特徴的。例えば本作に収録している曲でいえば「フタツノ雲貝~Lumbis Lumbis~」では歌謡曲的な泣きメロを聴くことが出来ますし、「ハナフブキ~花魁道中罷り通る~」も和風なメロディーラインが特徴的だったりします。

その結果なのですが、このライブに収録している曲も1曲あたりが3~4分、長くて5分程度というコンパクトな内容におさまっています。そのためアドリブ的要素は少な目。お互いが自分のパートを主張してようとして、結果、メンバー同士が火花を散らすようなスリリングな演奏みたいなものはあまり感じられませんでしたが、一方ではメンバー全員がまとまってひとつの方向に突き進むような勢いと迫力は感じられました。

特にライブの後半、「SPIRIT」「Akatsuki」ではフリーキーなピアノやサックスが賑やかに盛り上げるアバンギャルドな楽曲で、ライブとしての勢いは満点。ポップなPE'Zのイメージとはちょっと異なるかもしれませんが、彼らのライブバンドとしての魅力がより強くあらわれている作品と言えるでしょう。

ラストライブの模様を収録したアルバムなのですが、基本的にMCはカットされているのは非常に残念。ある意味、「記録」的な要素も強いアルバムなだけにMCもきちんと入れておいて欲しかったのですが・・・。ただし、アンコール後、最後の曲の前の最後のMCはきちんと収録されており、そしてそのMCは非常に感慨深いものがありました。

さらにラストで演奏したのは彼らのインディーズデビューアルバム「pe'z」の1曲目「HEY!JORDU!」。これで彼らの活動を締めくくるというのもなかなか粋な選曲ですが、メンバーそれぞれの紹介とソロパートが組み込まれており、まさにラストにふさわしい締めくくるとなっています。

バンドとしての一体感があり迫力あるステージを楽しめる点、これで本当に解散?と思ってしまうほど平常通りのステージ。一方では最後の方も含めてよくも悪くもポップにまとまっている点は気にかかりました。評価はラストということもあり、はなむけ的な意味を含んでのもの。メンバーそれぞれこれからのソロ活動に期待したいところです。

評価:★★★★★

PE'Z 過去の作品
1・2・MAX
ギャロップ(pe'zmoku)
ペズモク大作戦(pe'zmoku)
I WANT YOU
向日葵-Himawari-
OH!YEAH!PARTY!!
JumpUP!
血騒-chisou-
Samurai Jazz only one ensemble COVER SELECTION

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2016年4月16日 (土)

TK流ダンスミュージック(小室哲哉じゃないよ)

Title:Secret Sensation
Musician:TK from 凛として時雨

バンドと同時並行的にコンスタントにソロ活動を続ける凛として時雨のボーカリスト、TKによるソロアルバム。約1年半ぶりとなる新作は全5曲入りのミニアルバム。ただ、1曲目がタイトルチューンとなっており、5曲目はライブ音源なので実質的にはシングルに近い内容と言えるかもしれません。

基本的には収録されている楽曲はいままでのソロと同方向。凛として時雨と同じ雰囲気を醸し出したマイナーコード主体のメロディーラインにTKのファルセットボイスを織り交ぜたボーカルで哀愁感たっぷりに聴かせるナンバー。ただバンドサウンドメインの凛として時雨に対して打ち込みなどを入れることによりソロとしての違う方向性を出しています。

タイトルチューンである「Secret Sensation」は打ち込みメインのダンスナンバー。ただこれも流行のEDMを取り入れました・・・というよりも凛として時雨のサンドにエレクトロサウンドを取り入れたといった感じ。そのダンサナブルなサウンドにもメロディーラインにもインパクトがあるのですが、例えばタイトルをコールした後、一気にブレイクして入るサビの構成といった部分など、ベタといえばベタ。ただこのベタさもインパクトとして心地よい感じがします。

続く「subliminal」もダンサナブルなナンバーという意味では1曲目に続く楽曲。ただこちらはギターサウンドがより前面に出ていてダイナミズムが増している印象。さらに続く「ear+f」はストリングスとピアノを取り入れたナンバー。こちらもノイジーなギターを加えることによりダイナミズムが増し、さらに悲し気なメロディーラインも強調されています。

ここまではダイナミズムなサウンドで押し一辺倒の楽曲が並びますすが続いての「like there is tomorrow」はガラッと雰囲気がかわります。最初はピアノのみでしんみり聴かせるナンバー。中盤以降バンドサウンドが入ってくるのですが、最後まで基本的にはミディアムテンポのメロディーラインを聴かせる楽曲になっています。

そんな訳で基本的に楽曲はダイナミックな「押し」の要素が強い楽曲がメイン。メロディーラインもインパクト満点で、良くも悪くもベタな要素も見受けられます。正直なところ、これが10曲以上続くとお腹いっぱいで食傷気味にもなりそうなのですが、楽曲はライブ音源含めて4曲入り。それもちょうどよい4曲目でバラードナンバーが入ってくるなどほどよい構成に落ち着いていました。前作「Fantastic Magic」のレビューではマンネリ気味なのが気にかかったと書きましたが、確かにエレクトロサウンドの取り入れ方とか新しいサウンドへの挑戦も感じたものの、全体的な雰囲気はいつも通り。ただそれも5曲入りのミニアルバムという長さだっただけに、マンネリというマイナス要素をあまり気にならないうちに終わったアルバムでした。

これがフルアルバムだとどうかなぁ、という感想も持ってしまうのですが、この作品に関しては間違いなく最後まで十分に楽しめた傑作だったと思います。さて、次は時雨の作品になるのか、それとも・・・。

評価:★★★★★

TK from 凛として時雨 過去の作品
flowering
contrast
Fantastic Magic

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2016年4月15日 (金)

忘れらんねえよの魅力が最大限に伝わる

Title:忘れらんねえよのこれまでと、これから。
Musician:忘れらんねえよ

もてない男性の妄想をそのまま歌詞にした曲が話題のバンド忘れらんねえよ。早くも・・・と言っていいかもしれませんが、ベストアルバムがリリースされました。昨年11月にドラムスの酒田耕慈が脱退し2人組となりましたが、そのため活動も一区切り、という意味でのベスト盤リリースといったところでしょうか。

彼らに関してはデビュー当初から気になっており、セルフタイトルとなったデビュー作以来アルバムはすべてチェックしています。ただ過去のレビューを見ていただければわかるようにそれなりに魅力的に感じつつも、大絶賛するにはひっかかる部分があり、いままでの作品では残念ながら「傑作」と言えるアルバムはありませんでした。

ただこの作品はそんな彼らの「ベスト」な内容をピックアップして収録しているだけに忘れらんねえよというバンドの魅力が、マイナスポイントを大きく上回る内容になっていたと思います。

彼らの魅力といえばまずは間違いなくその歌詞の世界観。もてない男性の妄想をそのまま歌詞にしている内容なのですが、その反面、良くも悪くも純粋なその内面にときおりグッとしてしまう部分があるのが魅力的。今回のアルバムは最新作から過去の楽曲へと遡る形で収録されているのですが、その傾向は最近の作品に顕著。結婚していく片想いの女の子に対して「君のペットにしてほしい」と歌う「犬にしてくれ」や「いま吸った空気は2年前に堀北真希が吐き出した空気かもしれない」と歌う「絶対ないとは言い切れない」など、正直男から見てもかなりキモイテーマ性を醸し出しつつ、その中でほろりと来るような歌詞も入ってきていて、ここらへんのバランス感覚がおもしろいな、と思います。

ここらへんの路線はデビュー当初の作品から一貫していますが、ここ最近の作品の方が、よりこの「キモさ」と「ほろり」のバランスがおもしろくなっているように感じます。今回のベスト盤では冒頭3曲が新曲になっているのですが、この3曲がなかなかの名曲。どれもシンプルなギターロックなのですが、最初の「別れの歌」は別れていく友人に対するエール。これはやはり脱退した酒田耕慈に対して歌った曲かなぁ・・・なんてことも考えてしまいます。

また「世界であんたはいちばん綺麗だ」は力強い柴田隆浩のボーカルが胸に突き刺さるのですが、歌詞の方もかなり情熱的でかつストレートなメッセージソング。

「だから
もう生きてる意味なんかないだとか
そんなつまんねえことは言うなよ
あんたが生きてるそれだけ それだけでいいから
世界であんたはいちばん綺麗だ」

(「世界であんたはいちばん綺麗だ」より 作詞 柴田隆浩)

と歌われる歌詞はその心境がどこか切なさも感じられます。そのまま受け取ればラブソングなのですが、日々の生活にくじけそうになっている人たちに対するメッセージソングともとれる内容になっています。

良くも悪くもストレートなパンクロックがメイン。4つ打ちダンスチューンの「愛の無能」やシューゲイザーサウンドからの影響が顕著な「この街には君がいない」などもありますが、そんなにバリエーションは多くはありません。ただ今回のベストで代表曲を聴くと思ったよりも彼らのサウンドって思ったより迫力ありますね。これに関しては昔の曲の方がよりへヴィーなサウンドを聴かせてくれていたのですが・・・。バンドとしての魅力も再認識しました。

メロディーラインに関しては良くも悪くもベタといった感じ。新曲の「バレーコードは握れない」なども売れ線J-POPばりのサビ先の構成ですし、こちらに関してはもうちょっとひとひねり欲しいかな、とも思ったりもします。ただ彼らの持ち味である歌詞を聴かせるという意味では、ある程度ひねりのないメロディーラインの方が良いのかもしれませんが。

そんな訳で、タイトル通り、忘れらんねえよというバンドのいままでと、新曲3曲によってこれからがよくわかるアルバムだったと思います。この「これから」の3曲に関しては彼らの持ち味である「キモさ」がちょっと薄れたような反面、メッセージ性に関してはより力強さを増しており、今後の彼らの方向性を占える作品になっていたように感じました。忘れらんねえよというバンドの魅力を再認識させられたベスト盤。いや、思っていた以上に彼らって素晴らしいバンドですね。独特の歌詞はひいちゃう方もいるかもしれませんが・・・是非とも聴いてほしい1枚です。

評価:★★★★★

忘れらんねえよ 過去の作品
忘れらんねえよ
空を見上げても空しかねえよ
あの娘のメルアド予想する
犬にしてくれ


ほかに聴いたアルバム

Origin/KANA-BOON

メジャー3枚目、約1年ぶりとなるKANA-BOONの新作。いままでの2作は良くも悪くも若さを感じさせる押し一辺倒のアレンジが多かったのですが、本作はちょっと引いた感じのアレンジも。アルバム全体としてはポップス志向が強く、軽くなったアレンジを含め、いままでの2作に比べてもポップな側面がより強調されたように感じます。個人的にはいままで3作の中で一番好きかも。

評価:★★★★

KANA-BOON 過去の作品
DOPPEL
TIME

What's This???/POLYSICS

途中、2枚のミニアルバムを挟んだものの、フルアルバムとしては約2年ぶりとなる新譜。その2年前の前作「ACTION!!!」はパンキッシュな要素が薄くなり、ポップな側面が強くなった作品でしたが今回のアルバムは逆。ポップな側面が薄くなり、パンキッシュな側面が強くなったアルバム。タイトル通り、「なんだこれは?」というようなハチャメチャなサウンドが展開。途中リリースされた2枚のミニアルバムもハチャメチャな雰囲気でしたが新作はその要素を引き継いだイメージの曲でした。さすがに聴いていて最後は疲れてきたのですが・・・ただ非常にPOLYSICSらしい、ともいえるアルバムでした。

評価:★★★★

POLYSICS 過去の作品
We ate the machine
We ate the show!!
Absolute POLYSICS
BESTOISU!!!
eee-P!!!
Oh!No!It's Heavy Polysick!!!
15th P
Weeeeeeeeee!!!
MEGA OVER DRIVE
ACTION!!!
HEN 愛 LET'S GO!
HEN 愛 LET'S GO! 2~ウルトラ怪獣総進撃~

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2016年4月14日 (木)

こちらも女性アイドルグループが1位

今週のアルバムチャート

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約2年半ぶりの新作が見事1位獲得です。

今週1位はPerfume「COSMIC EXPLORER」が獲得。これでオリジナルアルバムとしては5作連続の1位となりました。ただし初動売上は12万2千枚は前作「LEVEL3」の16万5千枚(1位)からダウン。ここ3作で22万6千枚→16万5千枚→12万2千枚と右肩下がりの状態が続いているのが気にかかるところです。

2位は先週1位三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE「THE JSB LEGACY」がワンランクでこの位置をキープしています。

3位には韓国の5人組バンドFTISLAND「N.W.U」が獲得。日本ではメジャー6枚目。インディーズ含めて7枚目となるアルバムです。初動売上2万3千枚は前作「5.....GO」の2万7千枚(3位)よりダウン。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にはご存じB'zのギタリスト、松本孝弘ことTak Matsumoto「enigma」がランクイン。「ミュージックステーション」のテーマ曲としてもおなじみの「#1090」の新バージョンも収録されています。初動売上2万枚は前作「New Horizon」の1万8千枚(3位)より若干のアップです。

6位にはレゲエを取り入れたハードなロックサウンドが人気のSiMの新作「THE BEAUTiFUL PEOPLE」が入ってきました。初動売上1万8千枚。前作はミニアルバムの「i AGAINST i」でこちらの1万5千枚(7位)よりはアップ。ただし、フルアルバムとしての前作「PANDORA」の2万2千枚(5位)よりはダウンしてしまいました。

8位初登場はご存じthe pillows「STROLL AND ROLL」がランクインです。以前所属していたキングレコードに10年ぶりに復帰して初となる約1年半ぶりのアルバム。初動売上は7千枚。直近作はカップリング曲集の「Across the metropolis」で、こちらの初動3千枚(22位)よりはアップ。オリジナルアルバムとしての前作「ムーンダスト」の初動8千枚(5位)より若干のダウン。なにげに彼らもアルバムではすっかりベスト10の常連になってきました・・・。

最後、10位にはヴィジュアル系バンドRoyz「S.I.V.A」が入ってきました。メジャー4作目となるアルバムで、これがアルバムでは初のベスト10ヒットとなります。ただし初動売上5千枚は前作「CORE」の6千枚(17位)から若干のダウンとなっています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2016年4月13日 (水)

今週もまた女性アイドルだらけ

今週のシングルチャート

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なんかここ最近、なぜか女性アイドルグループが目立つチャートが続いています。正直、食傷気味なのですが・・・というか、もうアイドル以外CDなんて媒体をリリースしないということでしょうか・・・。

まず1位初登場はAKB48がらみの新グループ、欅坂46「サイレントマジョリティー」がランクイン。洋服レンタルサービス「メチャカリ」CMソング。位置づけ的には乃木坂46の姉妹グループらしいです。本作がデビュー作。初動売上26万1千枚で1位獲得となりました。

2位はスターダストプロモーションによる名古屋出身女性6人組によるグループチームしゃちほこ「Cherie!」。NHKテレビ「ねこねこ日本史」主題歌。アニメ声のいかにもといった感じの声には正直抵抗感が・・・。初動売上は3万5千枚。前作「怪獣トットト/じりじり夏活委員会 feat.しまじろう」は生産限定盤(初動2千枚(32位))。前々作「天才バカボン」の2万5千枚(4位)からアップ。

3位にはこちらは男性アイドルグループDa-iCE「WATCH OUT」がランクインしています。彼らお決まりの今風のEDMチューン。初動売上3万4千枚は前作「HELLO」の3万5千枚(3位)から微減。

続いて4位以下の初登場ですが、こちらも女性アイドルグループが目立っています。まず5位にアップフロント所属の女性アイドルグループアップアップガールズ(仮)「パーリーピーポーエイリアン」がランクイン。こちらはトランス要素の強いEDMチューン。初動売上2万7千枚は前作「Beautiful dreamer」の1万4千枚(7位)よりアップ。

9位にさくらシンデレラ「未来プロローグ」がランクイン。名古屋駅前の「アイドルステージ」を本拠地としているそうです。初動売上1万1千枚は前作「さくらシンデレラ」の0.5千枚(153位)から大幅にアップ。

ちなみにこの2枚、4月4日月曜日リリースとなっており、水曜日リリースより早いタイミングのリリースでデイリー上位ランクインと、週間売上を伸ばす戦略を取っています。

もう1枚はちょっと毛色の違う曲。8位には松井玲奈とチャラン・ポ・ランタン「シャボン」が入ってきました。TBSテレビ系ドラマ「神奈川県厚木市 ランドリー茅ヶ崎」主題歌。SKE48を卒業した松井玲奈と、ここでも何度か紹介したことある女性2人組ユニットチャラン・ポ・ランタンのコラボシングル。もともと松井玲奈はチャラン・ポ・ランタンと親交があったとか。それだけにアイドルのソロデビューシングルなのですが、予想以上にチャラン・ポ・ランタンの曲になっていてビックリ。というよりも、むしろメインはチャラン・ポ・ランタンの方なのでは?と思うほどの楽曲になっていました。これを機に、チャラン・ポ・ランタンが注目を集めればうれしいのですが・・・。初動売上は1万1千枚。

一方男性アイドルグループもスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループPrizmaX「UP<UPBEAT」が4位にランクイン。最近のアイドルポップではちょっと珍しいファンキーディスコチューン。初動売上2万9千枚は前作「Lonely summer days」の2万5千枚(7位)よりアップしています。

そんなアイドルグループだらけの中、孤軍奮闘だったのが10位初登場T.M.Revolution「Committed RED」。ゲーム「戦国BASARA 真田幸村伝」主題歌。初動売上1万枚は前作「DOUBLE-DEAL」の1万2千枚(9位)からダウン。前作に続いて「戦国BASARA」の主題歌に起用。楽曲も前作同様、ドラマチックな展開になっており、良くも悪くもゲームソングといった感じの曲になっています。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2016年4月12日 (火)

シンプルに女の子の心境を描写

Title:SHISHAMO 3
Musician:SHISHAMO

まずミュージシャン名からしてなんでこんな名前を付けたの?と思ってしまいます女性3人組のロックバンドSHISHAMO。今年1月には初の武道館ワンマンを実施。さらにこのアルバムはアルバムチャートでもベスト10入りするなど着実に人気を伸ばしています。

私は彼女たちについては以前から名前を知ってはいたものの音はノーチェック。このアルバムではじめて彼女たちの音源を聴いてみました。で、まず感じたのは非常にシンプルでわかりやすいバンドだな、ということでした。

まずサウンドの方は基本的によくありがちなオルタナ系のギターロック。特に複雑なことをやっているわけではなく、とてもシンプルなバンドサウンドを奏でています。カントリー風の「推定移動距離」やちょっとシティポップテイストの「熱帯夜」など楽曲によってそれなりにバリエーションも加えていますが基本路線にはあまり違いはありません。基本、スリーピースなサウンドが主体でギター、ベース、ドラムス以外の音を積極的に取り入れているという感じではないのですが、かといってスリーピースにこだわっているわけでもないらしく、このアルバムのラストに収録されている「みんなのうた」ではホーンセッションを取り入れたりもしています。

さらにそんなサウンド以上にシンプルだったのが歌詞。同年代の女の子の心をストレートに歌ったラブソングがほとんどで、歌詞も難しい表現は皆無。具体性ある歌詞の内容になっているため聴いていてもとてもわかりやすさを感じます。

「笑顔のとなり」のような恋愛まっただ中のおのろけの歌詞もあるのですが、基本的には「生きるガール」のような失恋の歌や「君とゲレンデ」のような片想いの曲がメイン。やはりテーマ的に歌いやすいからでしょうか?歌詞はいずれも具体性あるだって主人公の心象描写をしっかりと描いたようなものばかりとなっています。

正直言ってちょっと気にかかるのはメロディーにしても歌詞にしてもいまひとつフックの効いた、という側面ではインパクトが薄いのが気にかかります。そのためアルバムを聴き終わっても、これといったフレーズが浮かびにくいのが残念。ただその反面、わかりやすい歌詞にシンプルなサウンドだからこそ、聴いていてついついメロディーと歌詞に聴き入ってしまうのはプラスの要素。そしてそのあたりが彼女たちの人気の要素なのでしょうか。

変に難しいことをやらずにシンプル路線を突き進んでいる彼女たちの姿勢には素晴らしいものも感じます。良くも悪くも変なこだわりはないのは今時の若者といった感じなのでしょうか。ただ、今後も下手な挑戦をするよりも愚直に今の路線を突き進んでほしいなぁ。いい意味で万人受けしそうな楽曲なので、ロックを聴かなくてもポップス好きでも楽しめそうなアルバムです。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

ダウトの行進/空想委員会

これがメジャー2作目となるギターロックバンド。恋愛敗者の青春群像を描いた歌詞は個人的に心の柔らかい部分を攻め込まれた感じもあって思わず聴きいる部分も。ただメロディーやサウンドについては、エレクトロサウンドを取り入れつつもよくありがちなギターロックといった感じ。メロディーにもそこそこインパクトがあって悪くはないのですが、こちらについてはもうちょっと彼らなりの個性が欲しいように感じてしまいました。前作「種の起源」でももう一皮むけてほしい、と感じたのですが、残念ながらまだまだ成長の途上といった印象。

評価:★★★

空想委員会 過去の作品
種の起源

The World's on Fire/MAN WITH A MISSION

人気のオオカミバンドによる2年ぶりの新作。シンセを主体としたロックサウンドは疾走感あるものの意外と軽くポップ。このちょっと軽めのサウンドに意外とベタなメロディーラインが個人的にはピンと来なかったのですが、本作は楽曲としてのバリエーションも増え、特に英語詞の曲に関してはカッコよさを感じる曲もチラホラ。もうちょっとサウンドの重心が下だとより楽しめる感じがするのですが・・・。

評価:★★★★

MAN WITH A MISSION 過去の作品
Trick or Treat e.p.
MASH UP THE WORLD
Beef Chicken Pork
Tales of Purefly

5 Years 5 Wolves 5 Souls

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2016年4月11日 (月)

脂がのった時期の未発表音源集

Title:Here's One You Didn't Know About-From The RPM&Kent Vaults
(邦題 知られざるキングの秘宝-RPM/ケント未発表音源集)
Musician:B.B.KING

昨年5月、惜しまれつつこの世を去ったブルース界のレジェンド、B.B.KING。その後、よくありがちな話ですが様々な企画が持ち上がっており、この作品もそんな流れでリリースされたアルバムのひとつ。タイトル通り、彼が1950年代から60年代にかけて所属していたレーベル、RPB/ケントに残された未発表音源を収録したアルバムになっています。

50年代から60年代といえば彼が20代から30代の頃。まさに彼が脂にのりまくっていたころの作品。「未発表音源集」ということで、基本的に発表済の音源の別テイクが主。そういう意味でマニア的な聴き方という意味では発表済の音源と聴き比べて、というのが正統派な聴き方なのでしょう。ただ、そのようなマニア的な聴き方をしなくても彼の最盛期の音源を楽しむベスト盤的な聴き方で十分すぎるほど楽しめるアルバムだったと思います。

この時期の彼について一言で言ってしまえばとにかく明るいB.B.KING。全編ホーンセッションも入って陽性な楽曲が並んでいます。ブルースというと詳しくない方にとってはどちらかというと「暗い」というイメージがあるかもしれませんが、そんなイメージをぶっとばすようなエンタテイメント性あふれるダンスミュージックが並んでいます。本作にも収録されている「Sweet Little Angel」などはまさに王道ともいえるブルースナンバーなのですが、そんな曲でも明るさがあふれています。

ボーカルもギターも非常に力強さを感じる曲ばかりでこの点でも脂がのりまくっている彼の姿が見て取れます。ボーカルもギターも20代30代という若さを感じさせる勢いがある一方で、老練されたような表現力も感じることが出来、B.B.KINGの才気あふれる演奏といった表現がピッタリ来るような内容。未発表音源ということでいわゆる「ボツ」テイクなのですが、全くそんなことを意識させられません。

ただ、「ボツ」テイクということで、例えば「Sweet Little Angel(Version2)」などではちょっと演奏のミスがあったりするのもユニークな感じ。ただそういう部分も含めて、ボツテイクならではの肩の力が抜けた感じも楽曲によっては感じられたのもまた魅力だったりします。

そんな訳でB.B.KINGのベスト盤的に楽しめたアルバムでした。「未発表音源集」ということでともすればマニア向けに捉えられそうですが、むしろアルバム1枚に収録されている点も含めて、入門盤的にも使えそうな1枚。若く勢いのあるB.B.KINGの演奏を存分に楽しめた1枚でした。

評価:★★★★★

B.B.KING 過去の作品
LIVE AT THE ROYAL ALBERT HALL 2011

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2016年4月10日 (日)

10年目のベスト盤

Title:"THE BLUE"-AFOC 2006-2015-
Musician:a flood of circle

ガレージロックバンドa flood of circleが活動10周年を記念してリリースされたオールタイムベスト。全17曲入りとなる本作は、1曲目が直近の最新シングル「花」からスタートし、その後は過去の曲から発表順に並んでいる構成となっています。

a flood of circleについてはデビュー直後からアルバムは一通りチェックしています。このサイトでも以前から書いているのですが、彼らの悪い意味での大きな特徴としてアルバム毎に出来不出来の差が大きいというのがあげられます。その最大の理由が佐々木亮介のボーカル。彼の声は線が細くその一方非常に端整。これが彼らの演っているガレージロックというジャンルでは残念ながらマイナス方向に働いてしまっています。エッジの効いたギターをバリバリに聴かせるガレージロックについてはそんなボーカルでも気にならないほどカッコいい音を出している一方、ポップ路線に少しでも走ると一気に平凡なJ-POPに早変わり。もし彼らが売れ線のポップバンドならばプラスの方向に働きそうな要素が彼らの志向する音楽性の中では残念ながら非常にマイナスの要素となってしまっています。

ただし、今回のベストアルバムに関していえば、当たり前ですがさすがベストな選曲である、ということもあってそんな彼らのマイナスな側面がほとんど出ていません。また今回のベストアルバムは比較的最近の曲に偏った選曲になっています。最近のアルバムになればなるほど、彼らがきちんと佐々木亮介のボーカルにあった曲を書いてくるようになったため、彼らのこのマイナス要素が表に出てこなくなっていました。マイナスの側面がほとんど出てこない理由としてはその選曲の時期的な偏りも大きな要因でしょう。

そんな訳で楽曲によって質の差が大きい彼らですが、このベスト盤に関しては彼らの魅力的な側面のみがクローズアップされたアルバムになっていました。特に最新シングルであり1曲目に配置された「花」が素晴らしい出来。疾走感あるガレージロックで、ポップなメロディーラインも特徴的。孤独の中で、それでも世界を信じてひたむきに歌い叫ぶあるシンガーの姿を描いており、その心象風景が心に突き刺さる歌詞になっています。時系列順に並んだ今回のベスト盤の中でこの曲をあえて1曲目にもってきた、という理由もよくわかる名曲ですし、ある意味a flood of circleのテーマとも読み取れる楽曲になっています。また、これだけの名曲を作り出してきた、という意味でもこれからの彼らの活動に大いなる期待を持てる作品だったと思います。

ただ一方で今回のベスト盤を聴いて感じたのが、a flood of circleといえば良くも悪くもガレージロックのバンドというイメージが強いのですが、意外といろいろなタイプの曲を書いてきたバンドだな、ということを再認識させられます。「博士の異常な愛情」ではファンクの要素を、「I LOVE YOU」では軽快なモータウンビートを取り入れていますし、基本的にしゃがれ声のボーカルでミッシェル・ガン・エレファントからの影響の強いバンドなのですが、「I'M FREE」では破壊的な歌詞を含め、どちらかというとBLANKEY JET CITY的な要素も見て取れます。

ここらへんの曲に関しては基本的に「ガレージロック」という範疇での幅広い音楽性なので彼らにとって大きなプラス要素なのですが、例えば「ベストライド」などはむしろメロコア的な要素が強く、彼らにしては方向性がチグハグな印象が。ここに関しても幅広い音楽性の追求が、バンドにとって時としてマイナスに走ってしまっている点が、悪い意味で彼ららしいな、とも感じてしまいました。

とはいえ、ミッシェル・ガン・エレファント解散後、日本では数少ない、愚直にロックし続ける数少ないガレージロックバンドとなってしまった彼ら。それだけに個人的にはかなり期待し聴き続けています。実際、その期待した通りの名曲があるかと思えば、「え?」と思うような曲もあったりしてもどかしい思いをするバンドではあるのですが・・・。ただこのベスト盤に限って言えば、間違いなくa flood of circleというバンドのすばらしさを存分に感じることが出来るアルバムだったと思います。まず最初の1枚としてお勧めの作品。ミッシェル・ガン・エレファントが好きだった、という方にも是非とも聴いてほしいアルバムです。

評価:★★★★★

a flood of circle 過去の作品
泥水のメロディー
BUFFALO SOUL
PARADOX PARADE
ZOOMANITY
LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL
FUCK FOREVER
I'M FREE
GOLDEN TIME
ベストライド


ほかに聴いたアルバム

YCAM LIVE / NYANTORA/Duenn/Hair Stylistics

元スーパーカーの中村弘二によるアンビエントソロユニットNYANTORA、暴力温泉芸者としての活動でも知られる中原昌也のソロユニットHair Stylistics、それに福岡のカセットレーベルDuennのオーナーの3名により、2015年2月に山口で行われたライブの模様を収録したライブアルバム。全31分で1曲入り。前半は不気味な雰囲気の中、ノイズも流れるもののアンビエント色も強いナンバーで、NYANTORA主導といった感じでしょうか。後半は完全にノイズミュージックになり、Hair Stylisticsの世界といった感じ。ノイズミュージックの傾向が強いのでリスナーは選びそうですが、30分間、次々と展開される不気味な音の世界は飽きさせません。

評価:★★★★

Night Rainbow/WEAVER

ピアノ、ベース、ドラムという構成が特徴的な3ピースバンドの約2年ぶりとなる新譜。個人的にはこの手のピアノロックバンドは壺、ということもあってほぼ毎作聴いているのですが、彼らに関してはどうもメロディーラインが平凡というかひねりのないよくありがちなJ-POPになってしまっているのが気にかかります。本作に関しては前半についていえばかなりカッコよかった。ただ、いかにもK-POP亜流的な「クローン」をはじめ中盤以降はいまひとつな印象が。個人的に、もっとピアノ、ベース、ドラムという3ピースというバンドの要素を生かせばおもしろいと思うのですが・・・。

評価:★★★★

WEAVER 過去の作品
Tapestry

新世界創造記・前編
新世界創造記・後編

ジュビレーション
Handmade
ID

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2016年4月 9日 (土)

南半球からあらわれたoasisフォロワー

Title:Hills End
Musician:DMA's

オーストラリアの3人組インディーギターロックバンドのデビュー作。昨年、EP盤がリリースされた時、音楽誌などで「oasis直系のサウンド」と称されていたため気にはなっていたのですが、その時はスルーしていました。そしてはじめて聴いたのが本作。ふてぶてしい感じのジャケット写真もいかにもoasisからの影響を感じるのですがアルバムを聴いて思わず笑ってしまいました。まさしくoasisの1st、2ndあたりの作風をそのまま受け継いだような楽曲が並んでいたからです。

例えば疾走感ある分厚いバンドサウンドでグイグイと押してくる「Too Soon」などはいかにも90年代のoasis近辺のサウンドを彷彿とさせますし、「In The Moment」のミディアムテンポのメロディーの節回しなんかはまさにそのまんまoasis!oasisのファンならおもわずニヤリとしてしまいそうな楽曲が並んでいます。

ただメロディーラインやギターサウンド以上に彼らの楽曲がoasisに似ていると感じさせるのはボーカルの歌い方。高音部に展開する時にしゃくりあげるように歌い上げるスタイルといい、ちょっとしゃがれたボーカルの声色といい、完全にリアム・ギャラガーそのまんま。彼らの音楽がそのまんまoasisに感じられる大きな要因がこのボーカルだと思います。

あえてoasisと違う部分を探すとすれば、oasisよりもポップ志向が強い点でしょうか。「Lay Down」のような軽いメロディーラインはoasisとはちょっと異なるような感じがします。またoasisに比べてアコースティック志向もある点も異なる点。「Delete」「So We Know」のようなアコースティック路線の曲もアルバムの中では聴くことが出来ます。

ただ、そこらへんの相違点はあってもアルバム全体の印象としてはやはりoasisフォロワーというイメージはぬぐえません。ここらへん、口の悪いギャラガー兄弟が彼らのことをどういうのか聴いてみたい気もしないことはないのですが(笑)。

私個人としてはこのアルバム、正直言って素直に最後まで楽しめました。oasisファンとしてはぶっちゃけ壺に入るようなサウンドではありますし、1stや2ndとは違うことをしようと、解散するまでもがいていたoasisと比べると、無邪気に1stや2ndの頃のサウンドをフォローしている彼らの曲は、率直にいってoasisに求めたかった音だったりします。

しかし、単なるフォロワーにとどまってしまっていてDMA'sとしての個性があまり出ていなかったな、と感じたアルバムでもありました。oasisのフォロワーとしてももうちょっとDMA'sらしいプラスアルファが欲しかったですし、現在の視点からの新たな解釈とかが欲しかったと思ってしまいます。難しいこと抜きに、下手に横道にそれず素直なポップ路線を貫いたという意味ではいさぎよさも感じるのですが・・・。次回作はDMA'sだけが持っている何かを聴きたいなぁ。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

Citizen Zombie/The Pop Group

1978年にイギリスブリストルで結成されたポスト・パンクバンド。名盤名高い「Y」「For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?」という2枚のアルバムを残し、1981年に解散してしまいました。そんな彼らがなんと2010年に再結成。さらに35年ぶりにリリースした新作が本作です。

アバンギャルドでパンキッシュな作風はかつての彼らからそのまま。今聴いても古さを感じさせないのはそれほど彼らの作品が先駆的であった証拠でしょう。もともと彼らのバンド名「The Pop Group」は皮肉を込めてつけられたそうですが、本作は意外とポップにまとまっていたのも特徴的。斬新さ、勢いという意味ではかつての2枚の名盤には並びませんでしたが、35年ぶりの新作としてはそれなりに期待に沿えた内容だったのではないでしょうか。

評価:★★★★

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2016年4月 8日 (金)

いままでの活動を俯瞰

Title:Chaosmosis
Musician:Primal Scream

Primal Screamといえばアルバム毎にそのスタイルが大きく変化し続けるミュージシャンというイメージが強くあります。最初の頃はガレージロック志向が強かったバンドですが、彼らの名を世に知らしめた名盤「Screamadelica」はアシッド・ハウスを取り入れた傑作。さらに「XTRMNTR」ではエレクトロサウンドを全面的に取り入れるなど、そのスタイルをアルバム毎に大きく変えてきました。

今回のアルバムはいわばそのようなバンド活動を俯瞰したようなアルバムに感じました。冒頭の「TRIPPIN' ON YOUR LOVE」は「Screamadelica」を彷彿とさせるようなファンキーなナンバー。「WHEN THE BLACKOUT MEETS THE FALLOUT」は強いビートのエレクトロナンバーで「XTRMNTR」を彷彿とさせるナンバーになっていました。さらに「GOLDEN ROPE」ではダイナミックなバンドサウンドが展開されるナンバー。Primal Screamのロックバンドとしての側面が強調された曲になっています。

ただ、いままでの活動を俯瞰、といってもいわゆる集大成的な後ろ向きなイメージは、このアルバムからは受けませんでした。おそらくその理由としてはどの楽曲からもしっかりとバンドとしての現役感を感じることが出来るからでしょう。決してこなれた感じでいつもの雰囲気の曲をこなしている、といった感じではなく、既にベテランバンドである彼らですが、楽曲からはいまだに新鮮さを感じることが出来ます。

また、その新鮮さを保っている大きな理由としては、ちゃんと楽曲の中に新しい要素を入れている、という面が大きいのでしょう。例えば今回のアルバムの中では「WHERE THE LIGHT GETS IN」で2013年にリリースしたアルバム「Night Time, My Time」が大きな話題となった女性シンガーソングライターSky Ferreiraとのデゥオに挑戦しておき、楽曲の中に新しい血を取り入れています。

他にもアコギとストリングスでフォーキーな雰囲気を出している「PRIVATE WARS」やエレクトロポップの「AUTUMN IN PARADISE」などバリエーション豊富。この楽曲のバリエーションの多さは、前作「More Light」に通じるものもあります。ただ、「More Light」がいわばバンドとして吹っ切れたものを感じたのに対して今回のアルバムは吹っ切れた、というイメージはありません。むしろバンドとして地に足つけて落ち着いているという印象を受けます。バリエーションが多いながらもPrimal Screamといての統一性が前作以上に感じれたものまた、「落ち着いている」と感じた理由でしょうか。また、70分を超える大作だった前作と対照的に、40分に満たないコンパクトな内容だったという点も、無駄に曲数を増やさずバンドとして落ち着いて感じさせる大きな理由のように感じました。

内容的には今回のアルバムも文句なしの傑作と言えるアルバムでした。上にも書いた通り、バンドとしていまだ新鮮さを保ち、かつ勢いすら感じさせるアルバム。「More Light」に続く傑作として、これからの活躍もまだまだ期待できそうです。

評価:★★★★★

primal scream 過去の作品
Beautiful Future
Screamadelica 20th Anniversary Edition
More Light


ほかに聴いたアルバム

Hive1/Tyondai Braxton

2010年までBATTLESのメンバーとして活躍していたTyondai Braxtonの6年ぶりとなるソロ作。リズムのみを強調して聴かせるような内容で、ポップスさは皆無。ただ音をとことん絞り、様々なリズムが展開していく構成に最後まで耳のはなせない緊迫感あふれるアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

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2016年4月 7日 (木)

1位はEXILE系

今週のアルバムチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/ja/

1位はEXILEの弟分のあのグループがランクイン。

1位は三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEの約1年ぶりとなるニューアルバム「THE JSB LEGACY」がランクイン。これで4作連続でアルバム1位獲得となりました。ただ、初動売上47万6千枚は前作「PLANET SEVEN」の50万8千枚(1位)からダウンしており、とりあえずは人気は一段落といった感じでしょう。

2位はメタルとアイドルを融合させて話題となったBABYMETAL「METAL RESISTANCE」がランクイン。初動売上13万2千枚。直近作はライブ盤「LIVE AT BUDOKAN ~RED NIGHT~」の2万3千枚(3位)よりアップ。オリジナルとしての前作「BABYMETAL」の3万7千枚(4位)よりアップ。

3位にはいきものがかりのベストアルバム「超いきものばかり~てんねん記念メンバーズBESTセレクション~」が先週の2位からワンランクダウンで3週連続ベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場盤です。4位には韓流の男性アイドルグループB.A.P「Best. Absolute. Perfect」がランクイン。日本では初のアルバム。初動売上は2万4千枚。ちなみに直近のシングル「EXCUSE ME」は初動売上5万枚(2位)を記録しています。

7位には「艦隊これくしょん -艦これ- KanColle Original Sound Track vol.III 雲」がランクイン。ゲーム「艦隊これくしょん」のサントラ。初動売上は1万3千枚。「艦これ」がらみでは直近ではアニメのサントラ「TVアニメーション『艦隊これくしょん -艦これ-』キャラクターソング“艦娘乃歌" Vol.1」の1万6千枚(3位)よりダウン。同じサントラ盤では前作「艦隊これくしょん -艦これ- KanColle Original Sound Track 暁」の9千枚(10位)よりアップしています。

8位初登場はフェロ☆メン「MAGIC MIRROR」。人気男性声優諏訪部順一、鳥海浩輔のユニットで初動売上1万枚。本作がデビュー作となります。

9位には田中秀和「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS ANIMATION PROJECT ORIGINAL SOUNDTRACK」が入ってきました。アニメ「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS」のサントラシリーズでアニメ用に制作された劇中音楽がすべて収録されているそうです。初動売上9千枚。同じ「アイドルマスターシンデレラガールズ」のサントラシリーズのアルバムとしてはCINDERELLA PROJECT「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS ANIMATION PROJECT 00 ST@RTER BEST」が初動1万1千枚(8位)を記録しています。

最後10位には男性シンガーソングライター清水翔太「PROUD」がランクインしています。約2年ぶりのニューアルバムでアルバムのベスト10入りは2012年にリリースされたカバーアルバム「MELODY」以来2作ぶり。ただし初動売上9千枚は前作「ENCORE」の1万2千枚(11位)よりダウンしています。

今週のアルバムチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に。

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2016年4月 6日 (水)

今週も女性アイドルだらけ

今週のシングルチャート

http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/

先週に引き続きAKBグループが1位を獲得です。

1位は名古屋を中心に活動しているSKE48「チキンLINE」が獲得しました。アニメ映画「プリパラみ~んなのあこがれ♪レッツゴー☆プリパリ」主題歌。ラテン風の王道アイドル歌謡曲といった哀愁感あふれるナンバーでアニメのイメージは皆無。初動売上25万7千枚は前作「前のめり」の37万枚(1位)からダウン。

2位も同じくAKBグループ。乃木坂46「ハルジオンが咲く頃」がワンランクダウンでこの位置。

3位には島村卯月(大橋彩香),渋谷凛(福原綾香),本田未央(原紗友里),大槻唯(山下七海),上条春菜(長島光那) 「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS STARLIGHT MASTER 01 Snow Wings」がランクイン。チャートではおなじみのアイドル育成ゲーム「アイドルマスター」の挿入歌。本作は新しいゲームである「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」からのシングルで、新シリーズ第1弾。初動売上は1万9千枚。「アイドルマスター」がらみだと「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER」シリーズの第9弾シングルが4作同時ランクインして以来。その時最高位だった二宮飛鳥(青木志貴) 「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 043 二宮飛鳥(共鳴世界の存在論)」の1万6千枚(7位)からはアップしています。

さて、1位2位はAKBグループの女性アイドルグループが並びましたが、4位以下での女性アイドルグループは3組。6位じぇるの! 「超絶☆はっぴー!じぇねれーしょんっ!」、8位Negicco「矛盾、はじめました。」、10位X21「約束の丘」がそれぞれランクインしています。

じぇるの!は新人アイドル育成を掲げるアイドルグループ。初動売上1万5千枚。デビューシングルでいきなりのベスト10入り。8位Negiccoは新潟を拠点とするローカルアイドル。本作は作詞土岐麻子、作曲さかいゆうを迎えたシティポップ風の楽曲なのですが、雰囲気的には80年代のアイドルソングといった感じ。初動売上1万3千枚は前作「圧倒的なスタイル-NEGiBAND ver.-」の3千枚(26位)からアップし、2作ぶりのベスト10入り。ちなみにこの2曲は発売日を1日繰り上げて、火曜日のリリースとなっています。

X21は「国民的美少女コンテスト」出場者によるグループ。本作は作詞作曲小室哲哉なのですが、これが80年代から90年代初頭の王道小室哲哉路線を彷彿とさせるようなナンバーで、思わずフルで聴いてしまいました(笑)。TM NETWORKにはまったアラフォー世代は聴いて損はないかも。初動売上1万3千枚は前作「マジカル☆キス」の9千枚(10位)からアップ。

他の初登場ベスト10入りは・・・まず4位にスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループM!LK「新学期アラカルト」が入ってきました。一昔前のジャニーズ系のような軽快なアイドルポップチューン。初動売上1万9千枚は前作「反抗期アバンチュール」の1万4千枚(12位)を上回り、初のベスト10ヒット。

5位初登場は演歌歌手、水森かおり「越後水原」がランクイン。新潟県阿賀野市にある白鳥の飛来地・瓢湖(ひょうこ)が舞台だそうですが、歌詞は相変わらずどこの場所でも入れ替え可能な汎用性ある平凡な内容。初動売上1万5千枚は前作「大和路の恋」の1万4千枚(10位)から微増。

7位には名古屋の男性ローカルアイドルグループBOYS AND MENの小林豊によるソロシングル「恋するスイーツレシピ5 ~君が恋に落ちる一つの方法~」がランクイン。元パティシエの彼がオリジナルスイーツ・レシピを作り、それに基づき、漫画家・水城せとなが作詞を手掛けたナンバー。前作の時も書いたのですが、悪い意味で鳥肌が立ってくる企画です。初動売上1万4千枚は前作「恋するスイーツレシピ4 ~君が恋に落ちる一つの方法~」の1万5千枚(10位)より微減。

最後は伸びやかなボーカルが特徴的な男性ボーカル三浦大知「Cry&Fight」が9位にランクイン。流行のEDMチューン。2作ぶりのベスト10ヒットとなりましたが、初動売上1万3千枚は前作「music」の1万4千枚(11位)より若干ダウンしています。

今週のシングルチャートは以上。アルバムチャートはまた明日に!

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2016年4月 5日 (火)

EDMブームへの回答?

Title:Barbara Barbara, we face a shining future
Musician:Underworld

いわゆるEDMというジャンルが流行りとなって久しくなってきました。ある種ブームを超えてひとつのジャンルとして定着した感もあるEDMですが、このブームの「原点」に位置するようなミュージシャンたちはむしろEDMを否定する傾向にあります。The Chemical BrothersにしてもThe ProdigyにしてもEDMがブームとなってからリリースした作品については、あえて意図的にEDMから距離を置いた作品をリリースしてきました。

Underworldといえばロック志向の強かったケミブラやプロディジーよりもよりEDMへの距離が近いミュージシャンだと思われます。しかし彼らもまた今回のアルバムではあきらかにEDMから距離を置いたような作品を仕上げてきました。かなり賛否がわきおこっているのですが、一言で言ってしまうと今回のアルバム、非常に地味な作品になっていたと思います。

前作「Barking」に関しても踊らすよりも聴かせるアルバムになっていましたが今回のアルバムはさらにその志向が強まったように感じます。1曲目「I Exhale」も耳なじみやすいフレーズが繰り返され、ポップさを感じる内容になっていますし、「Motorhome」に至ってはむしろボーカルトラックが主導の、メロディーを聴かせるポップチューンになっていました。「Nylon Strung」もまた女性のコーラスを入れてポップなメロディーが主体となった作品に仕上がっています。

同じくポップ志向だった「Barking」でも高揚感あるいわばUnderworldらしいダンスチューンがあったのですが今回のアルバムに関してはそんな高揚感ある曲もありません。あえていえば「Low Burn」の途中からはライブ映えしそうなダンスチューンになっていたでしょうか。

ただ今回のアルバムに収録されている曲、実はよくよく聴くと後ろでしっかりリズミカルなトラックが鳴っています。「I Exhale」にしてもリズムトラックは四つ打ちでテンポがいいですし、「Ova Nova」にしても静かな雰囲気の曲ながらもテンポの良いリズムはなっています。むしろビートをもっと強くして音のバランスを変えたら高揚感あるダンスチューンに仕上がったのでは?と思わせる曲もチラホラ。今回のアルバム、EDMから距離を取った作品と書きましたが、こんな点からもあえてダンスミュージックであることを意識的に避けたアルバムと言えるのかもしれません。

そんなこともあったので最初聴いていてあまりピンと来ない作品になっていました。ただ2度3度聴くうちに徐々にこのアルバムの魅力に気が付きはじめました。とにかく今回のアルバム、メロディーが良い。上にも書いた「Motorhome」や「Nylon Strung」にしてもそうなのですが、心地よいメロディーラインが心に残る曲が多く、Underworldのメロディーメイカーとしての才を感じるアルバムになっていたと思います。

もちろんサウンド的にもエキゾチックな雰囲気でギアーのアルペジオを静かに聴かせる「Santiago Cuatro」やダークなサウンドとノイジーなギター、警告のように挿入されるボーカルのバランスで不気味な雰囲気をつくりあげている「Twenty Three Blue」など、様々なアイディアの下、ユニークなサウンドを作り上げています。

地味なアルバムではあるものの、間違いなくUnderworldの魅力を感じることの出来るアルバムだったと思います。ある意味EDMブームへの回答とも言える今回の作品。最初は「あれ?」と思うかもしれませんが・・・是非2度3度聴いてみてください。Underworldの魅力が伝わってくると思いますよ。

評価:★★★★★

UNDERWORLD 過去の作品
Oblivion with Bells
The Bells!The Bells!
Barking
LIVE FROM THE ROUNDHOUSE
1992-2012 The Anthology
A Collection

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2016年4月 4日 (月)

よりプログレ度が増した新作

Title:AWO
Musician;UKANDANZ

前作「Yetchalal」リリース後、日本での来日ライブを実施。そのダイナミックなパフォーマンスが大きな評判を呼んだバンドUKANDANZ。もともとギタリストであるフランス人のダミアン・クルュゼルが結成していたバンドに、エチオピア人のボーカリスト、アスナケ・ゲブレイエスが加わり、エチオピアの音楽を取り入れたのがきっかけ。エチオピア音楽にロックを取り入れた独特の作風も話題となりました。

今回のアルバムリリース前にキーボードのフレッド・エスコフィエが脱退。代わりにベーシストのブノワ・ルコントが参加し、新体制での新作となっています。バンド編成がそのため前作とは少々変わっているのですが、結果として前作よりもプログレッシブロックの度合いが強い作品に仕上がっていました。

まずパッとわかるプログレ度が強まった要素。それは曲数が前作の15曲からわずか6曲と縮まった点。一方では1曲あたりの長さが長くなり、最後の曲「Ambassel To Brussel 1/Wubit/Ambassel To Brussel 2」に至っては17分にも至る長い組曲的なナンバーになっています。

楽曲自体もプログレ度が増している・・・という以上に迫力あるバンドサウンドを前に押し出した曲が増えていました。1曲目「Sewotch Men Yelalu」もゆっくりとバスドラのリズムでスタートしたかと思えば分厚いホーンセッションがそれにのっかかりダイナミックに展開するスタイル。続く「Tchuheten Betsemu」もへヴィーなバンドサウンドにダイナミックなホーンセッションがのっかかり大迫力の構成になっています。

一方プログレ度が増したといえば「Ende Iyerusalem」でしょうか。複雑な変拍子のリズムで進んでいく楽曲で独特のグルーヴ感を作り出しています。続く「Gela Gela」も音を抑えめにスタートしながらもパーカッションのリズムやホーンの音色がそれぞれ独自に主張していく展開は最後まで耳がはなせません。

またボーカルアスナケ・ゲブレイエスのこぶしを利かせたボーカルは本作ももちろん健在。ボーカル以上に迫力あるバンドサウンドが前により出てきた影響か、前作のように「民謡風」とまで感じる曲は少ないのですが、最後を締める「Ambassel To Brussel 1/Wubit/Ambassel To Brussel 2」ではどこか和風なサウンドを感じたりして、日本人にとって耳なじみある部分もあったりします。

ミディアムテンポのダイナミックなサウンドが増えたため、前作のようなアップテンポな軽快な曲がなくなった点はちょっと残念。その結果、「UKANDANZ」というミュージシャン名とは裏腹に、あまり踊れなくなってしまったという点は少々マイナスかもしれません。ただそれでもライブではおそらく圧巻の演奏に酔いしれることが出来るんだろうなぁ。また彼らのライブを見たくなってしったことは間違いない新作でした。

評価:★★★★★

UKANDANZ 過去の作品
Yetchalal


Highlife On The Move

西アフリカで一世を風靡したモダンポピュラーミュージック、ハイライフ。本作は50年代から60年代のハイライフの曲を収録したコンピ盤。ラテン、カリプソ、あるいはジャズの要素を取り込んだモダンなナンバーながらも、要所要所にアフリカ的なリズムを取り入れているのがユニーク。ちなみに、かのアフロビートの創始者、フェラ・クティの初レコーディング曲といわれる2曲も収録されて話題となっています。ただこちらはまだアフロビート創設以前の曲なので、過度な期待は禁物かも。

評価:★★★★★

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2016年4月 3日 (日)

重い新作

Title:世界収束二一一六
Musician:amazarashi

amazarashiの新作は、非常に重いアルバムでした。

もともとamazarashiの秋田ひろむの書く歌詞は虚無的な独特の世界観に重さは感じたのですが、いままでの作品は比較的内省的なテーマ性が多く見受けられました。しかし今回の作品ではむしろ社会的なテーマ性を感じられる曲が目立ちます。

例えば1曲目の「タクシードライバー」は疲弊している日本の一郊外を舞台としており、いきなりはじまるこんな風景描写が非常に重苦しくのしかかります。

「ショッピングモール、アウトレット、郊外の黄昏
家族連れ、人いきれ、シャツに聖者の肖像、滲んで
車の牽引ロープを買った伏し目がちな青年 自宅の鴨居にぶら下げて首を括る予定」

(「タクシードライバー」より 作詞 秋田ひろむ)

また「しらふ」でも描かれているのは下流社会の人々。

「事務所前チューハイで乾杯の晴天 古株の面々 まるで現代の蟹工船
妥協でされるがままの搾取 汗を酒で潤す さながらヨイトマケの唄か山谷ブルース」

(「しらふ」より 作詞 秋田ひろむ)

なんていうかなりへヴィーな歌詞も登場してきます。こういう「疲弊した郊外」や「下流社会」というのは今の日本の現在社会の中で重要なテーマのはずですが残念ながらロックバンドの楽曲のテーマとしてはあまり取り上げられません。むしろこの手のキーワードがよく登場するのはHIP HOPの分野。だからこそ、今、日本のロックバンドは今一つ勢いがなく、アイドル勢なんて畑違いの勢力が台頭してきているような結果を招いているのではないか、なんてことを漠然と考えてしまいました。

ただもっともそんなamazarashiの歌にもリアリティーがあるのか、と言われると少々微妙な部分があって、理屈先行な部分は否定できません。だからこそ、彼らは「中二病バンド」なんて言われてしまうかもしれませんが・・・。ただ、彼らがもともと持っていた虚無的な世界観はそんな現代社会のキーワードにピッタリマッチしてしまいます。そういう意味でも現在の世相と彼らの持つ世界観が今回のアルバムではうまくクロスオーバーしたように感じました。

一方でその向こうにある明るさ、希望という部分も明確に描いているのが今回のアルバム。それがはっきりとわかるのはちょうど中盤に位置する「ライフイズビューティフル」でしょう。自分たちのいままでの音楽活動に重ね合わせたような曲で、その最後は

「見ろよもう朝日が昇ってきた 人生は美しい
人生は美しい」

(「ライフイズビューティフル」より 作詞 秋田ひろむ)

と希望たっぷりにしめくくっています。もっとも、そんな曲の直後に「生きる」という意味について強く問いあげる「吐きそうだ」という曲が続き、さらにある意味この曲と対になっているような、音楽活動を続けるために底辺ではいずりまわっている姿を歌った「しらふ」が続いているあたり、かなり皮肉めいたものも感じてしまうのですが。

サウンド的には今回もバンドサウンドにピアノやストリングスが入りダイナミックなサウンド構成の中、秋田ひろむが感情たっぷりに歌い上げるスタイルはいつもと一緒。世相を取り込んだことにより歌詞がより重さを増したため、サウンドもよりダイナミズムさを増したようにも感じました。

そのダイナミックなサウンドを含めて非常に重さを感じたamazarashiの新作。ただ、それは彼らのメッセージが非常にストレートに入って来た、という証拠でもあり、非常に上手くつくられた作品と言えるのかもしれません。正直、歌詞には理屈先行の部分があり、その点は好き嫌いはわかれるかもしれませんが、重いメッセージがズシリと心に残るアルバムでした。

評価:★★★★★

amazarashi 過去の作品
千年幸福論
ラブソング
ねえママ あなたの言うとおり
あんたへ
夕日信仰ヒガシズム
あまざらし 千分の一夜物語 スターライト

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2016年4月 2日 (土)

バンドとしては勢いを感じる新作

Title:両成敗
Musician:ゲスの極み乙女。

昨年末は紅白歌合戦に初出場して話題になったものの、今年に入ってボーカル川谷絵音の不倫騒動で悪い意味で世間を賑わせてしまったゲスの極み乙女。。そんなネガティブなイメージにも負けず、バンドとしては前作から初動売上高も大きく更新し、シングルアルバム通じて初となるチャート1位を獲得しています。

ワイドショーネタ的な話題の部分はともあれ、本作にはまずバンドとしての勢いを感じます。その勢いを感じるのはなんといってもメロディーライン。ゲスの極み乙女。といえば、いままでもちょっと哀愁感の漂う歌謡曲テイストを感じるメロディーラインが魅力的でしたが一方では少々インパクトの弱さを感じてしまっていました。

しかし今回のアルバムではそのメロディーラインの強度がグッと増したように感じます。タイトルチューンとなっている「両成敗でいいじゃない」や続く「続けざまの両成敗」も、「両成敗」というちょっと硬い言葉が上手くメロディーに溶け込んでインパクトを持たせていますし、「ロマンスがありあまる」もサビからスタートするというJ-POPの王道的なつくりなのですが、そのサビの「ロマンスがありあまる」というフレーズが妙に耳に残る内容になっています。

また、いままでの彼らの楽曲で私にとってはマイナス要素となっていたのが妙に斜めから見たような歌詞だったのですが、今回の作品についてはその斜に構えたような雰囲気は少なくなり、比較的ストレートなラブソング、それも失恋を歌ったような曲が多かったのが印象的でした。

先行シングルともなった「ロマンスがありあまる」もどこか終わった恋を感じさせる歌詞なのですが、アルバムの後半「心歌舞く」「セルマ」などはあきらかに別れを歌ったナンバー。「無垢な季節」もおなじく別れを彷彿とさせるような歌詞になっています。これらの歌詞がのるメロディーラインも胸を打つような切ないメロディーラインが魅力的に仕上がっています。メロディーにしても歌詞にしてもいい意味でわかりやすい方向にシフトしたように感じます。このストレートな路線、川谷絵音がやっている別バンド、indigo la Endに近くなったように思いました。

サウンドの方は今回も空間を生かしたタイトさを感じるバンドサウンドが魅力的。ジャズ風なピアノが魅力の「勤めるリアル」やファンキーなギターを聴かせる「心歌舞く」などブラックミュージック的な要素を入れつつ、ラップやあるいは川谷絵音の語りを楽曲の中に取り入れたり、女性メンバーとのからみもいれてきたりと楽曲のタイプも様々。後半、メタリックなサウンドからアバンギャルドに展開する「Mr.ゲスX」など、バリエーションあるサウンド構成で最後まで飽きさせません。

個人的にはいままでに聴いた彼らの作品の中ではベストの内容。少々マニアックな部分もあったいままでの作品と比べて、その「マニアック」な部分を残しつつ、広い層へのアピールポイントも増やしたアルバムだったと思います。

しかしそれにしてもあの不倫騒動、川谷絵音の行動を擁護するつもりは1ミリもないのですが、それとバンドの音楽の内容を混同したような発言が多いのは閉口しちゃいます。彼の行動は問題でも彼の作る音楽には何ら罪はないはず。これからもゲスの極み乙女。の活動と彼の作る音楽を応援していきたいと思います!

評価:★★★★★

ゲスの極み乙女。 過去の作品
踊れないなら、ゲスになってしまえよ
みんなノーマル
魅力がすごいよ


ほかに聴いたアルバム

HOTEL MALIFORNIA/GOKU GREEN

GOKU GREENは北海道旭川在住の若干21歳の男性ラッパー。「MALIFORNIA」というタイトル自体、あきらかに「マリファナ」と「カリフォルニア」を混ぜた造語であり、アルバム自体もマリファナをテーマとしたようなちょっとやばげなナンバーが。サウンドも全体として音を絞った静かな構成の中にダークなサウンドやメロウなトラックが流れてきており非常に耳を惹きます。ドープという表現がピッタリ来るのでしょうか?HIP HOPの大きな魅力である「やばさ」という要素をビンビンと感じてしまうアルバムでした。

評価:★★★★★

最高の仕打/片平里菜

これが2作目となる女性シンガーソングライターの新作。シングルアルバム通じて自身初となるベスト10ヒットを記録しています。内容的にはよくありがちな女の子の本音を歌ったギターロック。ポップなメロはそれなりにインパクトあって決して悪くはないものの、miwaやら矢野真紀やら、要するにここ最近よくありがちなギターを抱えた女性シンガーと差別化できておらず、よくありがちという印象を受けてしまいます。もうちょっと片平里菜だけが持っているような個性が聴ければいいのですが。

評価:★★★

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2016年4月 1日 (金)

セクシーなジャケットも目を惹く

Title:ウィンカー
Mucisian:特撮

特撮結成15周年の記念作としてリリースされた約3年7ヶ月ぶりとなるニューアルバム。クラシックカーの写ったちょっとセクシーな雰囲気のジャケットも魅力的ですが本作はペーパードライバーだった大槻ケンヂが車の運転をはじめたことから、「車」をテーマとしたコンセプト作になっているとか・・・。ただ確かに「車」をテーマとした楽曲は散見されるものの全体的にはさほど目立った感じはなく、「車」というコンセプト性はさほど強くないように感じます。

それ以上に今回のアルバムの特徴として強く感じたのが強度の強くなったバンドサウンドでした。特に今回、バンドのセッションから産まれた楽曲が多く収録されているそうで、いつも以上にバンドサウンドが前面に出てきてインパクトのある楽曲が多くなったように思いました。またサウンド的にもメタルな志向が強かった前作に比べて「愛のプリズン」「アリス」のようにハードコアな作品が多く、個人的には音の方向性は前作より好みだったように思います。

そんなより強くなったバンドサウンドにのっかかるオーケンの歌詞もまた、バンドサウンドに負けないだけの強度を持ったものに仕上がっていたように感じます。「荒井田メルの上昇」「人間消滅」では荒井田メルという少女を狂言回しに、ちょっと不思議な感触の物語りを綴っていますし、「シネマタイズ(映画化)」は人生を醒めた視点で描く歌詞がユニーク。「富津へ」のような旅の風景を描いた情景が浮かんでくるような歌詞も印象的でした。

また歌詞でユニークだったのが「中古車ディーラー」。「車」という本作のテーマ性にもピッタリ来る作品なのですが、妖艶さも感じさせる歌詞が非常に不気味な少々ホラーチックなナンバー。こういう歌詞の世界はオーケンお得意のものでしょうか。

そんなわけで、NARASAKIをはじめとする特撮のバンドメンバーの魅力と、大槻ケンヂの書く歌詞の世界の魅力がほどよいバランスでマッチした特撮らしいアルバムになっていました。ただ残念ながら一方では全体的に「ほどよいバランス」になっていたためいまひっつぶっ飛んだ部分がなく、また、特撮の大きな魅力のひとつ、三柴理のピアノはあまり表に出てこず。後半の「ハンマーはトントン」や、ハードコア路線とはまた異なるムーディーな作風が魅力的な「旅の理由」などでそのピアノは聴かせてくれるのですが・・・あのちょっと変態ちっくな独特なピアノはあまり聴くことが出来ませんでした。

良くも悪くもよくまとまったアルバムといった感じがします。結成15年をむかえ、バンドとしての安定感も出てきたといったところなのでしょうか。まだまだこれからもコンスタンスに特撮としての新譜を聴けそう。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★

特撮 過去の作品
5年後の世界
パナギアの恩恵

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