« 人気も実力も飛躍 | トップページ | 豪華な参加メンバーも魅力的ですが。 »

2016年3月21日 (月)

まさかの2枚目

Title:セカンド
Musician:初恋の嵐

こちらのサイトでも以前紹介したことがあるのですが、初恋の嵐というバンドをご存じでしょうか。2000年にインディーズからアルバム「バラードコレクション」を、さらに2001年にシングル「Untitled」をリリース。その作品に高い評価が集まり一気に注目のバンドとなったのですが、2002年3月、バンドのギターボーカルでありかつ作詞作曲を手掛けた西山達郎が急逝。同年8月にリリースされたメジャーデビューアルバム「初恋に捧ぐ」がメジャーでの最初で最後のアルバムとなってしました。

その後2012年、スピッツがアルバム「おるたな」で彼らの曲「初恋に捧ぐ」をカバーし大きな話題を呼び、同年6月に、アルバム「初恋に捧ぐ」にスタジオライブ音源を追加した「初恋に捧ぐ プラス」をリリース。さらに昨年、西山達郎の演奏やボーカルが入ったデモ音源が発見され、なんとまさかのセカンドアルバムがリリースされることになりました。

デビュー当初ははっぴいえんどチルドレンとも称されていた彼ら。今回収録されているアルバムでもその傾向は強く感じます。それが特に強いのが後半。叙情的なフォークの色合いが強い「君が待つ場所」「君さえ居れば」はどこか四畳半フォーク的な歌詞の世界観もあわせて彼らの大きな特徴となっています。特に「雨やどり」はマイナーコードのギターサウンドがまんま60年代フォークな楽曲。彼らがデビューした2000年の頃は、ゆずやコブクロがデビューし「ネオフォーク」とも呼ばれる流れが生まれ、60年代フォークが再注目を集めた頃だったのですが、彼らの作風からもそんな時代の流れも感じます。

特に今回のアルバムでおもしろかったのはそんなネオフォーク的な流れとは異なる初恋の嵐の音楽的志向を強く感じた点でした。1曲目「どこでもドア」はノイジーなギターサウンドが覆い尽くすような楽曲。フォーク的な色合いはほとんど感じず、むしろシューゲイザーからの影響すら感じてしまう作品。さらに2曲目「ジョイント」はこのノイジーなギターにシティポップ風のブラックミュージックから影響を強く受けた楽曲になっています。この方向性はかなり意外に感じましたし、むしろシティポップの影響を受けたバンドが次々とデビューしている今の時代には新鮮にすら感じる作風になっていました。

これらの楽曲はフォークロックという初恋の嵐のイメージを超えて新たな可能性を感じさせるような楽曲。西山達郎の音楽的興味がフォークロックという狭い枠組みにとらわれず、あらたな可能性を模索していた跡を感じます。もし彼がいまでも生きていたら初恋の嵐はどんな音を奏でていたのだろうか・・・そんな想像をたくましくさせるような楽曲でしたし、同時にそれがかなわない事実にあらためて非常に悲しくなってくるような作品でした。

ちなみに今回のアルバム、西山達郎のボーカルによる曲もあるのですが、彼のボーカルが残されていない曲に関してはほかのメンバーがボーカルを取っているほか、フジファブリック山内総一郎、スクーピードゥーのコヤマシュウ、そして堂島孝平がボーカルをとっています。同じくメインライターが早世したフジファブリックの山内総一郎が参加している点もぐっと来るものがありますが。堂島孝平はかなり個性のあるボーカリストなのですが、意外と楽曲にマッチしていたのもおもしろかったです。

デビューアルバム同様、まだまだ成長の途上にあることを感じると同時に、その先に光り輝くものを感じる作品だったと思います。そしてその先に光り輝くものが、デビューアルバム以上にはっきりと感じることができるアルバムだったと思います。本当にあまりにも早い西山達郎の急逝をあらためて残念に感じるアルバム。全ポップリスナーにぜひとも聴いてほしいアルバムです。

評価:★★★★★

初恋の嵐 過去の作品
初恋に捧ぐ プラス


ほかに聴いたアルバム

BEST POSITIVE/lecca

女性レゲエシンガーleccaの初となるベストアルバム。基本的には軽快なレゲエをベースにしつつも、「TSUBOMI」のようなラテンのりの楽しいナンバーがあったり、HIP HOP的な要素を入れたりとバラエティーを持たせつつ、全体的には本格的なレゲエというよりはポップ志向の曲が多かったように感じました。また「BEST POSITIVE」というタイトルの通り、前向きの力強い歌詞が多かったのも印象的。レゲエのアルバムというよりも前向きに楽しめるポップアルバムとして聴けた1枚でした。

評価:★★★★

lecca 過去の作品
パワーバタフライ

TWELVE/Mrs.GREEN APPLE

ここ最近、急速に注目を集めている5人組ギターロックバンド。初のフルアルバムとなる本作でいきなりアルバムチャートでベスト10入りを記録し話題となっています。楽曲は軽快で明るいポップスロック。疾走感のあるメロディーラインが心地よく楽しむことが出来ます。また歌詞の方は、前向きな応援歌的な歌詞が特徴的。メロディーライン含めて陽性なバンドといった感じでしょうか。インパクトもあり確かにいい意味で売れそうな要素のあるバンドに感じます。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★

|

« 人気も実力も飛躍 | トップページ | 豪華な参加メンバーも魅力的ですが。 »

アルバムレビュー(邦楽)2016年」カテゴリの記事

コメント

Mrs.Green Appleはボーカルの声質がフランプールのボーカルと似ている為、「フランプールの音楽性が陽気になっていたらこうなっていただろうな」と聞いていて思った僕です。これからが楽しみですね。

投稿: ひかりびっと | 2017年1月 3日 (火) 09時53分

>ひかりぴっとさん
確かにflumpoolのボーカルと似ているかもしれませんね。両者を比較したらおもしろそうです。Mrs.Green Appleもこれからが楽しみなバンドですよね。

投稿: ゆういち | 2017年1月 4日 (水) 23時10分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: まさかの2枚目:

« 人気も実力も飛躍 | トップページ | 豪華な参加メンバーも魅力的ですが。 »