スガシカオの現在位置
Title:THE LAST
Musician:スガシカオ
2011年にデビュー以来所属していたオフィス・オーガスタを脱退。その後、フリーランスとして活動を続けていましたが、SPEEDSTAR RECORDSと契約を結び、メジャーレーベルでの活動を再開。そして約5年半ぶり、かなり久々となる待ちに待ったニューアルバムがリリースされました。
この5年半の間、何も活動をしなかったわけではなく配信を中心にシングルもコンスタントにリリースしており、そういう意味ではオリジナルアルバムのリリースが5年半ぶりというのはちょっと意外にも感じました。そして今回のアルバム、初回限定盤のみとなりますがインディーズ時代にリリースした楽曲を集めた「THE BEST」が特典CDとしてついてきています。
で、実は今回のアルバムリリースにあわせてかつての所属事務所、オフィスオーガスタよりオーガスタ時代の曲を集めたベスト盤がリリースされています。
Title:THE BEST-1997~2011-
Musician:スガシカオ
まあよくありがちな移籍前のレコード会社が本人の許可を得ずにお小遣い稼ぎ的にリリースするベスト盤。ただ今回、「THE LAST」にもインディーズ時代の「THE BEST」が収録されたことにより、このアルバムと通して聴くことによりスガシカオの音楽的変革がよりわかる結果となりました。
「THE BEST-1997~2011-」を聴いてあらためて感じるのはデビュー当初のスガシカオは耳馴染みやすいポップなメロディーラインの裏で、かなりユニークかつ凝ったサウンドを鳴らしていたということをあらためて実感しました。例えばデビューシングル「ヒットチャートをかけぬけろ」はポップなメロディーラインの裏では実にファンキーなリズムが奏でられていますし、「ドキドキしちゃう」もメロディーは軽快なポップですが、こちらもファンキーなリズムがとても楽しくかつユニークに裏では鳴り響いています。
ところが後期になるとこのユーモラスなサウンドがグッと減ってしまいます。もちろんファンキーなリズムは鳴っていますしインパクトあるメロディーラインもそのままなのですがユーモラスで特には変態性すら感じられたサウンドはなりをひそめてしまいます。良くも悪くもわかりやすくなった、といったところでしょうか。
ところが、インディーズ時代の作品を聴くとデビュー当初で聴かれた独特のサウンドがパワーアップして復活しています。オフィスオーガスタ脱退後、初の配信シングルとなった「Re:you」はファンキーでワウワウ鳴り響くギターサウンドがこの上なくカッコイイサウンドを奏でていますし、本人曰くロックフェス用につくった「したくてたまらない」もファンキーなサウンドがダイナミックに展開し、歌詞も含めてスガシカオのファンクへの愛情が非常に感じる実に黒いナンバーが展開しています。
そしてその流れから、スガシカオの現在位置と言えるのが最新作「THE LAST」。インディーズ時代の楽曲の延長線上にあるとも言える作品はスガシカオがまさに今、演りたい作品ばかりが並んでいるという印象を受けました。
まず1曲目の「ふるえる手」。父親への思いを綴った歌詞もとても心に響く作品なのですが、ストリングスにギターノイズを重ねたアレンジが印象的に残りますし、続く「大晦日の宇宙船」も最初は静かにスタートしながらもB面で雰囲気が一転。ダイナミックなバンドサウンドを聴かせる構成が非常におもしろく感じます。「おれ、やっぱ月に帰るわ」もファンキーなワウワウギターがこれまたカッコいいナンバー。孤独を描いた歌詞もユーモアさを感じつつも切なく胸に響いてくるよう。「愛と幻想のレスポール」のようなホーンセッションを入れたこれぞファンクといったナンバーも挟みつつ、「真夜中の虹」みたいなシングル向きのポップなメロディーラインを奏でつつ、サウンドはHIP HOPやクラブミュージックなどの要素も入っており非常にユニーク。また、この曲、ガンと闘病中の友人に向けて書かれた曲だそうで、歌詞も非常に印象に残ります。
「THE BEST」から「THE LAST」へと続けて聴くと、スガシカオがなぜオフィスオーガスタをやめたのか、痛いほどわかってしまう流れになっています。それと同時に、今、スガシカオは自分のやりたい音楽をやりたいようにやっているんだな、ということも感じられました。スガシカオの最高傑作・・・とまで言えるかどうかは微妙ですが、ただ間違いなくスガシカオの音楽キャリアを代表する重要作であることは間違いありません。これからの活躍が非常に楽しみになってくるアルバムでした。
で、「THE BEST-1997~2011-」の方ですが、これはこれでもちろん悪くありません。ただわずか2年前に「BEST HIT!! SUGA SHIKAO」というベスト盤をリリースしており、わずか2年で、それも対象となる期間が同じ時期のベスト盤をリリースしてくるのはさすがにちょっと・・・。という訳で、評価は★1つマイナスということで。
評価:
THE LAST ★★★★★
THE BEST-1997~2011- ★★★★
スガシカオ 過去の作品
ALL LIVE BEST
FUNKAHOLiC
FUNKASTiC
SugarlessII
BEST HIT!! SUGA SHIKAO-1997~2002-
BEST HIT!! SUGA SHIKAO-2003~2011-
ほかに聴いたアルバム
TOWA/ゆず
途中、ライブ盤などのリリースはあったもののオリジナルとしては約2年ぶりとなるゆずの新作。前作「LAND」はムダにスケール感を出したサウンドに少々違和感を覚えたのですが、今回の作品は残念ながらその傾向を引き継いだもの。分厚いサウンドは心地よいものもありますし、楽曲自体はいつものゆずらしい感じで決して悪くはありませんが、よく言えばスケール感を出した、悪く言えば少々仰々しい楽曲が並んでおり、ゆずらしいシンプルな曲が少なくなってしまっていました。様々な音を取り込むことは決して悪いことではないと思うのですが、横浜スタジアムのライブをほぼアコギのみで成功させた彼らだけに、必要以上に分厚い音でスケール感を出す必要性はないと思うのですが・・・。
評価:★★★★
ゆず 過去の作品
WONDERFUL WORLD
FURUSATO
2-NI-
YUZU YOU[2006-2011]
LAND
新世界
二人参客 2015.8.15~緑の日~
二人参客 2015.8.16~黄色の日~
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