様々な顔を見せるピアノ
Title:SPARK
Musician:上原ひろみ THE TRIO PROJECT
上原ひろみがベーシストアンソニー・ジャクソンとドラマーサイモン・フィリップスと組んだトリオ・プロジェクトの第4弾。毎回、傑作アルバムをリリースしているこのTHE TRIO PROJECTですが、今回もまた文句なしの傑作に仕上がっていました。
毎回、ピアノ、ベース、ドラムスでスリリングな演奏を聴かせてくれるのですが、特に今回の作品も序盤の曲が実に緊張感あふれる演奏を楽しむことが出来ます。1曲目のタイトルチューン「SPARK」では最初こそ美しいピアノの音色からスタートするものの、終始ドラムスとピアノが対峙するような演奏に。特に変拍子で複雑に聴かせるドラムの迫力が印象に残ります。2曲目「IN A TRANCE」も同じく疾走感あるピアノとドラムスの絡みが緊張感あふれる作品。終盤にはダイナミックなドラムソロも展開されています。
基本的にはピアノとドラムスがまるでその演奏を競い合うようなダイナミックな演奏を繰り広げつつも、その下ではしっかりとベースが下支えしているような演奏といった感じでしょうか。ジャズという枠組みにとらわれない演奏は、以前の作品もそうなのですがジャズリスナー以上にロックリスナーが楽しめそうな内容。今回も基本的にその方向性を引き継いでいます。
それに続く「TAKE ME AWAY」や「WONDERLAND」はいわゆるジャズのイメージに近い雰囲気の作品。特にピアノの音色がメロディアスにしっかり聴かせる演奏を繰り広げており、ダイナミックで迫力ある演奏だった序盤の曲とは違う顔を見せてくれています。このメロディアスなピアノの音色というのは中盤から終盤にかけての特徴。「DILEMMA」のように、またドラムと対決するかのようなドラマチックな曲も間に入っているのですが、基本、ジャジーなピアノの音色を美しく聴かせてくれるような曲が並びます。
後半に特に印象的だったのが「WAKE UP AND DREAM」。こちら、上原ひろみのピアノソロ曲。トリオ・プロジェクトなのにピアノソロが印象的、という表現は申し訳ないのですが・・・ただ、美しくメロディアスなピアノの音色が心に響く曲。ジャズというよりもクラシック風のピアノ曲といったイメージが強いのですが、この優雅な演奏もまた、上原ひろみの違う顔と言えるでしょう。
そして最後を締めくくる「ALL'S WELL」はドラムスのリズムやピアノの音色も楽しい軽快なナンバー。このアルバムの中で曲をしっかり下支えしてきたベースのソロも披露され、こちらもどこか軽快で楽しげな雰囲気。最後は楽しい雰囲気の中、アルバムは幕をおろします。
このトリオでのアルバムも4作目を迎え息もあってきた感のある彼女たちですが、今回のアルバムは9曲の中で上原ひろみのピアノがいろいろな顔を覗かせてきたのが特に印象に残る内容だったと思います。文句なしに今回も彼女たちの魅力が存分に発揮された傑作でした。ジャズファン以上にロックリスナー必聴の1枚です。
評価:★★★★★
上原ひろみ 過去の作品
BEYOUND THE STANDARD(HIROMI'S SONICBLOOM)
Duet(Chick&Hiromi)
VOICE(上原ひろみ featuring Anthony Jackson and Simon Phillips)
MOVE(上原ひろみ featuring Anthony Jackson and Simon Phillips)
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
ALIVE(上原ひろみ THE TRIO PROJECT)
ほかに聴いたアルバム
Year Book 1971-1979/坂本龍一
坂本龍一がまだ無名だったアマチュア時代からプロデビュー直後の作品をまとめたアーカイブ的な作品。いわゆる現代音楽から、山下達郎の「パレード」のようなポップソングや友部正人の「ひとり部屋に居て」のようなフォークまでジャンルを問わない活動に彼の才能の懐の深さを感じます。ただ現代音楽に関しては少々頭でっかちな部分を感じてしまって、やはり良くも悪くも若さを感じてしまう他、エレクトロサウンドには時代性も感じてしまいました。
評価:★★★★
坂本龍一 過去の作品
out of noise
UTAU(大貫妙子&坂本龍一)
flumina(fennesz+sakamoto)
playing the piano usa 2010/korea 2011-ustream viewers selection-
THREE
Playing The Orchestra 2013
Year Book 2005-2014
The Best of 'Playing the Orchestra 2014'
POSITIVE REMIXS/tofubeats
2枚組のリミックスアルバム。タイトルの最新アルバム「POSITIVE」だけではなく、前作「First Album」のリミックスも収録されています。中田ヤスタカや小室哲哉などの大物から新進気鋭のトラックメイカーまで名前を連ねているなにげに豪華な作品。基本的には原作のイメージを大きく変えるようなアレンジはなかったのですが、どの曲も個性あふれるリミックスになっており最後まで飽きさせないアルバムになっていました。
評価:★★★★
tofubeats 過去の作品
Don't Stop The Music
ディスコの神様
First Album
STAKEHOLDER
POSITIVE
POSITIVE instrumental
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