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2016年3月 8日 (火)

久々のベスト10ヒットに

Title:6×9=53
Musician:KAN

本作でなんと23年ぶりのベスト10ヒットを記録したKAN。ただ、ヒットチャートのコーナーでも書いたのですが、初動売上としては前作を下回っており残念ながら「人気再燃」といった感じではありません。人気が上昇しているというよりも昔から根強い人気を保持しており、その根強い昔からのファンに支えられ見事ベスト10に返り咲いたという見方の方が正しいのでしょう。そういう意味では一時的な人気になるおそれもある「人気再燃」という状況よりも望ましい形でのベスト10入りと言えるのかもしれません。

今回の作品の特徴として数多いミュージシャンがゲストとして参加しています。スタレビの根本要や馬場俊英、SING LIKE TALKINGの佐藤竹善といった、近いフィールドでのミュージシャンも多いのですが、その他にはここ最近親交のあるTRICERATOPSも参加している他、ミスチルの桜井和寿が「安息」での歌詞提供で参加しています。この幅広いミュージシャンとの交流もまた、様々なミュージシャンにも根強い支持を得ている彼ならでは、といった感じでしょう。

さて今回のアルバム、「6×9=53」というタイトルが付けられていたり、ラストに「ロックンロールに絆されて」という曲があったりとロックであることが強調されています。ロックバンドTRICERATOPSが演奏で参加しているのもロック志向を目指している表れなのかもしれません。ただいままでの楽曲でもそうですし、今回のアルバムに関してもそうなのですが、ロックであること以上にポップに対するこだわりを感じます。それは参加ミュージシャンにもあらわれていて、例えばTRICERATOPSはルーツロック志向のバンドである反面、楽曲は全面的にポップ志向のある曲を書いていますし、ミスチル桜井もベスト盤リリース後のツアーで「POPSAURUS」と名付けるなどポップであることに自覚的だったりします。

そんなポップであることへのこだわりを感じたのは今回のアルバム、KANのルーツ志向な側面を強く感じることが出来たからです。サイモン&ガーファンクルテイストの「ポカポカの日曜日がいちばん寂しい」やドナルド・フェイゲン風のAORナンバー「どんくさいほどコンサバ」、最後を締めくくる「ロックンロールに絆されて」はKANちゃんファンにはおなじみのビリー・ジョイルと洋楽テイストの強い曲が並んでいます。もちろんいままでの彼の曲も様々なミュージシャンからの影響を強く感じる曲が多かったのですが、今回のアルバムでは特に強い影響を感じる曲が多かったようい感じます。そしてこれらのミュージシャンはいずれもポップなメロディーラインが魅力的なミュージシャンばかり。そういう意味で彼の持つポップス指向を強く感じる内容になっていました。

もちろんKANちゃんらしいユーモア路線は本作も健在で、タイトルだけで内容が想像できそうな「胸の谷間」や「桜」の側から桜に騒ぎすぎる日本人への疑問を提起した「桜ナイトフィーバー」なんて歌詞がユニークな曲はもちろんなのですが、「ブログ!ブログ!ブログ!」はPerfumeの、というよりも中田ヤスタカの曲真似になっていますし、「scene」はMr.Childrenの曲真似になっています。この「曲真似」はファンの方にも是非聴いてほしいところです。ただ、一種の「ネタ」である「曲真似」が1つのアルバムの中に2曲も入っているのはちょっとやりすぎな感もあるのですが・・・。

あえていえば前作「カンチガイもハナハダしい私の人生」の方がよかったかな、という感じもするのですが、こちらももちろんKANちゃんの魅力がしっかりつまった傑作なのは間違いありません。ユーモア路線から彼の高い音楽性を感じられる曲まで様々、魅力的なポップソングが揃っています。間違いなくお勧めの1枚です。

なお本作、DVDが付属しておりこちらはレコーディングドキュメンタリーとなっていますがこちらも秀逸。普通、この手のレコーディングドキュメンタリーは例えばバンドならメンバーの馴れ合いシーンが多く、ファン以外にはちょっと辛いものがあるのですが、本作のレコーディングドキュメンタリーはきちんとKANちゃんのレコーディングの中でこだわるポイントが収録されており、彼がどういう意図で曲をつくったのかがわかるようになています。こちらもあわせてチェックしたいところでしょう。

評価:★★★★★

KAN 過去の作品
IDEAS~the very best of KAN~
LIVE弾き語りばったり#7~ウルトラタブン~
カンチガイもハナハダしい私の人生
Songs Out of Bounds
何の変哲もないLove Songs(木村和)
Think Your Cool Kick Yell Demo!


ほかに聴いたアルバム

LOVE BEBOP/MISIA

昨年は3年ぶり2度目の紅白出演を果たした彼女による2年ぶりとなるニューアルバム。基本的にはいつも通りのMISIAといった感じなのですが、アルバム全体としてエレクトロサウンドが多く、かつそのサウンドもちょっとチープさが漂う内容に。決して悪い出来ではないのですが、無難といった印象を持ってしまう内容でした。

評価:★★★

MISIA 過去の作品
EIGHTH WORLD
JUST BALLADE
SOUL QUEST
MISIAの森-Forest Covers-
Super Best Records-15th Celebration-
NEW MORNING

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