豪華メンバーが参加
Title:Valentine
Musician:ACO
オリジナルアルバムとしては2年ぶりとなるACOのニューアルバム。今回のアルバムの大きな特徴がその強力なバンド勢。ベースはおなじみ元NUMBER GIRLの中尾憲太郎、ギターにはトクマルシューゴのライブメンバーとしても活躍している岩谷啓士郎、ドラムスはtoeやthe HIATUSとしても活躍している柏倉隆史、キーボードには塚本亮と豪華なメンバーが参加していることでも話題になりました。
今回のアルバムは全10曲入りですが、うち2曲はインターリュード的な曲。その2曲に区切られた3部構成のような内容になっています。まず「1部」である1曲目から3曲目はへヴィーなバンドサウンドを前面に出したブルースロックの曲が並びます。まさに今回の豪華メンバーを参加させた真骨頂ともいうべきへヴィーで緊張感あふれるサウンドが特徴的。さらにそこへ負けず劣らずなのがACOのボーカル。しゃがれた声で力強く歌うボーカルが楽曲の雰囲気にピッタリマッチ。どこかくすんだ雰囲気が実に魅力的な曲が並んでいます。
「2部」である5曲目から8曲目はピアノやストリングスを主軸としてしんみりと聴かせるパート。「Say Goodbye」や「Diamond」などピアノやストリングスの音を美しく聴かせつつ、「鳥になった男」のような悲しいメロディーラインで歌を聴かせる曲もあり、「1部」よりも歌の部分、ACOのボーカルの部分がより前に押し出され魅力を発揮されている楽曲になっています。
そして最後、「3部」にあたるのがくるりの岸田繁が参加した「未成年」。メロディーラインにもインパクトのあるシングルカットもできそうな作品なのですが、なによりも歌詞が印象的。「未成年」に対しての愛情あふれるメッセージ性の強い曲で、もし私が未成年だったらかなり心に響いてきそうな楽曲になっています。
そんな「3部」構成だった今回のアルバムですが、どの曲に関してもバンドサウンドが実に力強く魅力的。「2部」にあたる曲たちにもピアノやストリングスに対峙した分厚いサウンドを響かせますし、ラストの「未成年」もピアノを入れつつそのサウンドで印象的なメロディーをしっかりと下支えしています。
一方、そんなバンドサウンドに負けずしっかりと魅力を伝えているのがACOのボーカル。曲によって優しく聴かせるような曲から、ハスキーボイスでくすんだ雰囲気を醸し出している曲までバラエティー豊富。ボーカリストとしての魅力をしっかりと感じられるアルバムになっていました。
そんな訳で今回のアルバム、ACOの最高傑作じゃないか?とすら思うほどの素晴らしい作品だったと思います。サウンドもしっかりと聴かせつつ、ロック色の強い作品から「鳥になった男」や「未成年」のようなポップとしてのインパクトも十分な作品までいろいろな色彩を感じさせる傑作アルバム。ACOの作品としてもというものもちろんのこと、今年を代表する年間ベストクラスの傑作だったと思います。デビュー20年目を超えたベテランの彼女ですが、ベテランらしさをいい意味で感じられない実に意欲的な作品でした。
評価:★★★★★
ACO 過去の作品
devil's hands
LUCK
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