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2016年3月 4日 (金)

話題の現役高校生ラッパー

Title:hollow world
Musician:ぼくのりりっくのぼうよみ

最近話題の男性ラッパーによるメジャーデビュー作。現在高校3年生。若干17歳という年齢も大きな話題となりましたし、またもともとは動画サイトの投稿から音楽活動をスタートしているという話も、いかにも今時の若者といった感じもします。すべてひらがなというちょっと珍しいミュージシャン名も逆に今時らしいという感じもしますし。

そんな話題のアルバムですがまず耳に残ったのがトラックでした。基本的にシンプルで音数を絞ったようなアレンジ。曲によってはストリングスを入れてきたり、ブラックミュージック的な要素を入れてシティポップ風に入れてきたり。特に「Venus」のスペーシーなトラックなどサウンド自体に奥深さも感じられて強いインパクトを感じられます。

ただこのトラック自体は彼自身の作品ではなく、彼の楽曲に対するイメージを伝えたうえで第三者によって作成されたトラックだとか。様々なトラックメイカーに自分のイメージを上手く伝えて楽曲を組み立てていくプロデュース的能力も彼の才能、と言えるかもしれません。

楽曲的には本格的なラップというよりもメロディーラインがはっきりとした歌とラップ「風」なフレーズが交互に入るようなポップス色が強いもの。トラックに歌詞を載せていくというスタイルだったりライムを踏んでいる部分があったりとそれなりにHIP HOPマナーに沿った楽曲構成になっているものの特定のジャンルにはこだわらないような自由さもあり、その点も今時といった印象も受けます。

また一番話題になっているのが歌詞の世界で、抽象的な部分が多く、いわゆる「深読み」を誘うような歌詞も特徴的。歌詞はイメージ的には強い自意識を抱えたような若者が現実社会をネガティブに描いたような楽曲が多いという印象。例えば「CITI」の

「世界はもうとっくに色褪せた
仕方なしに網膜をも濁らせた
明日にしか希望を見出せない
きっとそこに待つのは淀んだ未来」

(「CITI」より 作詞 ぼくのりりっくのぼうよみ)

などという歌詞も今への失望と未来への不安を描いていますし、

「全て未来は決まってる
そんな振りをした
そして夜が訪れた
悲しみが空を覆った
放り出されたまっくらやみ」

(「sub/objective」より 作詞 ぼくのりりっくのぼうよみ)

という歌詞もまたシニカルな現実描写を感じさせます。ここらへんはまだ思春期の高校生らしいといった感じでしょうか。

ただ一方でちょっと気になるのは彼の歌い方。端整な歌声も印象に残るのですが、必要以上に巻き舌を使った歌い方のためせっかくの歌詞が聴き取りにくいものとなっています。またその歌詞もインパクトあるフレーズをメロディーと上手く組み合わせているような部分は少なく、巻き舌を多用した歌い方と含めて歌詞が聴いていてストレートに響いてこない点が気になりました。

そんな訳で様々な部分で「今時」な部分、あるいは「現役高校生」らしさを感じられるアルバムになっていました。確かに絶賛されるように才能が感じられるのは間違いありません。ただ一方で強い自意識を抱えた歌詞の世界は良くも悪くも高校生らしい青さも感じますし、また歌詞をリスナーに伝えようとする部分についてはもう少し工夫が必要かも、と思う部分も少なくありません。そういう意味ではまだこれからといった点も否めませんが、それを差し引いても今後が非常に楽しみなミュージシャンなのは間違いないでしょう。今後の活躍が楽しみになってくる1枚でした。

評価:★★★★

で、そんな彼のデビューEP。本作リリースにあたって、クリスマス限定でTwitter上、無料ダウンロードされていたのでダウンロードして聴いてみました。

Title: Parrot's paranoia
Musician:ぼくのりりっくのぼうよみ

Folder

基本的なイメージは新作と同じ印象。特にこの作品では非常に美しいトラックが耳を惹きます。巻き舌のラップのため歌詞がちょっと聴きとりにくいという点も同様。デビュー作としては非常に完成度の高いという意味では間違いないかと思います。一般発売されていないようなので公式サイトなどでのリリースは現状ありませんが・・・「hollow world」が気に入った方なら機会があれば、是非。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

15th ANNIVERSARY TOUR-THE BEST-LIVE/LOVE PSYCHEDELICO

昨年2月にリリースしたベストアルバムに伴うライブツアーの模様を収録したライブ盤。ベスト盤直後のライブツアーを収録したアルバムなだけにこちらもベスト盤的な内容。そういう意味で2月にリリースされたベスト盤の延長的な作品といった感じでしょうか。ライブは非常に完成度の高い内容なために、良くも悪くも安心して聴けるといった印象。もっともライブ演奏はスタジオ録音以上に洋楽志向が強くなっている感じもしますし、ベスト盤同様、彼女たちの魅力をしっかりと伝えてくれるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

LOVE PSYCHEDELICO 過去の作品
This Is LOVE PSYCHEDELICO~U.S.Best
ABBOT KINNEY
IN THIS BEAUTIFUL WORLD
LOVE PSYCHEDELICO THE BEST I
LOVE PSYCHEDELICO THE BEST Ⅱ

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