シンプルでハッピーなポップソングたち
Title:VERY YES
Musician:堂島孝平
2015年は堂島孝平にとってデビュー20周年というアニバーサリーイヤーとなりましたが、その1年の最後にリリースされたのが本作。7月には「オモクリ名曲全集」というテレビの企画から産まれたアルバムもリリースしているものの、純然たるオリジナルとしては1年ぶりとなる新作となりました。
既にデビュー20年を迎えるベテランミュージシャンの彼ですが、ここ最近の彼の作品を聴くと、20年目を迎えた今むしろ脂がのった状況であることを感じます。連作となった「A.C.E.」「A.C.E.2」も傑作でしたし、前作「フィクション」も好き勝手やったハチャメチャな展開が楽しいアルバムになっていました。そして企画盤的だった「オモクリ名曲全集」にしてもDVDは「・・・」だったものの楽曲については美しいメロディーラインを聴かせる名曲揃いとなっていました。
今回のアルバムについてもその勢いは止まることがありません。彼らしい明るいポップスがズラリと並んだアルバム。堂島孝平といえば以前から明るいポップソングがひとつの売りでしたが、本作に関してはインタビューで「ついにハッピーなアルバムを作るときが来たぞ」と語っていました。そして今回のアルバムはその言葉を裏付けるようなとても楽しいアルバムに仕上がっていました。
まさに「ハッピー」という言葉そのままの「H.A.P.P.Y」というタイトルのモータウンビートが楽しい曲があったりしますし、免許を取った後の恋人とのドライブを想像する素朴なラブソングの「免許を取ったら」なんかも聴いているこちらまで楽しくなってきます。また「アルコール&レスポンス」などはお酒をのみはじめる前のワクワク感を歌ったもの。こちらもいわば小市民的な楽しさなれど、小さな幸せにウキウキしてくるようなポップソングとなっています。
そんな楽しいポップソングが並んだ今回のアルバムですが、本作のもうひとつ大きな特徴が、ひねりのないシンプルなポップソングばかりということ。これは様々なバリエーションのあった前作「フィクション」とは対照的な内容。ホーンセッションとピアノで盛り上がる「きみのため」みたいな曲があったりするのですが、基本的には「ワンダーサレンダー」のような明るいシティポップな楽曲がメイン。ここらへんもインタビューで「わざとわかりにくくすることはもうやめた」と語っていましたが、いい意味で無駄なひねりのないストレートなポップソングが並んでいたと思います。
まさに「VERY YES」というタイトルがピッタリの、現状を圧倒的に肯定するようなハッピーな曲たちが並んでいました。いつもの堂島孝平と同様、今回のアルバムもわくわくするような珠玉のポップソング揃い。さらにシンプルなポップソングが並んでいるという点でもデビュー20年を迎え、ポップシンガーとしての一種の自信も感じさせます。
20年目を迎えてますます脂ののった勢いを感じる堂島孝平。21年目からの活躍も非常に楽しみになってくる傑作でした。
評価:★★★★★
堂島孝平 過去の作品
UNIRVANA
VIVAP
Best of HARD CORE POP!
A.C.E.
A.C.E.2
シリーガールはふり向かない
フィクション
オモクリ名曲全集 第一集 堂島孝平篇
ほかに聴いたアルバム
柴田聡子/柴田聡子
ここ最近、注目度が増している女性シンガーソングライター。アコースティックなサウンドをメインに爽やかなポップソングを奏でつつも、歌詞には強烈な毒を混ぜてくるあたりがユニーク。ただ、全編山本精一プロデュースの作品となった結果、ギターの音が完全に山本精一になってしまっていますし、メロディーもどこか山本精一っぽさが漂ってしまっているのが残念。セルフタイトルの作品ながらも、柴田聡子の個性がいまひとつ表に出ていないように感じてしまいました。
評価:★★★★
METAL MONSTER/SEX MACHINEGUNS
あいかわらずメタルとはかけ離れたテーマをへヴィーなメタルサウンドにのせてユーモアたっぷりに歌い上げるSEX MACHINEGUNS。1曲目「メタル経理マン」では「減価償却」といった難しい会計用語がメタルのサウンドにのってしまうあたり彼ららしさを感じます。ネタ的にはいつも通りのマンネリ気味なのは間違いないのですが、「大いなるマンネリ」路線でこれはこれで楽しめる内容。デビュー当初のようなインパクト満点の切れっ切れのネタこそなくなりましたが、なんだかんだいってもいろんなネタで続くなぁ、と感心しつつもしっかり楽しめるアルバムでした。
評価:★★★★
SEX MACHINEGUNS 過去の作品
キャメロン
SMG
LOVE GAMES
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2016年」カテゴリの記事
- ファンによる選曲がユニーク(2016.12.27)
- パンクなジャケット写真だけども(2016.12.24)
- バンドの一体感がさらに深化(2016.12.23)
- 初のフルアルバムがいきなりのヒット(2016.12.20)
- 10年の区切りのセルフカバー(2016.12.17)
コメント