キュートなポップスと思いきや
Title:Have You In My Wilderness
Musician:Julia Holter
2015年に評判の高かったアルバムの後追いシリーズ。今回紹介するのはロサンジェルス出身の女性シンガーソングライター、Julia Holterの新作。イギリスMOJO1位、イギリスQ 2位、イギリスアンカット1位、MUSIC MAGAZINE誌ロック(アメリカ/カナダ)部門4位などを記録しています。「音響派」とカテゴライズされるようなミュージシャンだそうで、いままでの作品も評論家筋には評価が高かったようですが、少々マニアックな作品となっていたようです。
なんてことを書いていますがそんな私は今回の作品で彼女のアルバムを聴くのもはじめてなら名前を聞くことすらはじめて。前情報全くなしで今回のアルバムを聴いてみました。
そんな私がまずこのアルバムに持った感想は、非常にキュートでポップなアルバムということ。まず1曲目「Feel You」はチェンバロの音色にファルセットのコーラスが重なるのですが、そこにのっかかるボーカルとメロディーはとてもキュートでポップ。続く「Sihouette」も爽快さを感じるメロディーとかわいらしさを感じるボーカルが印象に残るナンバーでした。
その後もミディアムチューンでしっかりメロディーを聴かせる「Sea Calls Me Home」や軽快でリズミカルな「Everything Boots」などポップな楽曲が続きます。実際、このアルバムに関するレビューなどを読むと、いままでのアルバムに比べてポップな度合いがグッと増したそうで、いままでのイメージから少々異なったアルバムと言えるのかもしれません。逆にこのポップなイメージで過去のアルバムを聴いてみると、期待外れに感じてしまう方もいるのかもしれないですね。
ただ一方、彼女のことを「音響派」というカテゴリーで語られることを知っても意外という印象は受けませんでした。確かに今回のアルバムにしてもポップであることは間違いないのですがどこか単純なポップアルバムとは異なるサウンドがどの曲に感じても流れていました。
楽曲からはどれもどこかドリーミーな色合いを感じたのも印象的でした。例えば「Lucette Stranded on the Island」なども静かなボーカルが歌うポップなメロディーが流れている一方、ストリングスとピアノを軸に様々な音が織りなすサウンドが幻想的でかつ不思議な雰囲気を醸し出していましたし、ラストを飾るタイトルチューンの「Have You In My Wilderness」も静かなストリングスとピアノで静かながらもどこか緊張感を覚えるサウンドがユニーク。どの楽曲も単純にポップスと割り切れない複雑さを感じました。
ポップスさとマニアックさを見事両立した傑作で、聴けば聴くほどあらたな発見のある作品。そういう意味で高評価も納得の1枚でした。
評価:★★★★★
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