あえて2枚組
Title:noon/moon
Musician:東京カランコロン
東京カランコロンのアルバムは豪華2枚組!まさに勢いにのった今の彼らを象徴するようなボリューミーなアルバムになっています・・・・・・と言いたいところなのですが、今回のアルバム、2枚組といっても2枚あわせて60分弱という内容。もし1枚にまとめても全く問題ない程度の内容になっています。
じゃあ今回のアルバム、なぜあえて2枚組かというと、東京カランコロンの2つの側面にそれぞれフォーカスした構成になっているから。具体的に言うと、Disc1「noon」の方は「歌盤」。彼らの「歌」という側面に重点を置いた作品が並んでいます。一方、Disc2「moon」の方は「遊び盤」。彼らの遊び心がつまった作品が並んでいます。
これまでのアルバムは1枚のCDの中でその2つのタイプの楽曲が並んで収録されていました。しかし本作に関してはその2つのタイプをあえて2枚のCDにわけることによって、東京カランコロンというバンドがどういう要素から構成されているのかが、リスナーにより伝わりやすくなったアルバムになっています。
特にどちらのCDでも最後に同じ曲「ハロー」を収録し、そのアレンジをそれぞれ変えることにより、「noon」と「moon」の違いを際立たせています。アコギとピアノでメロディーラインをしっかり聴かせる「noon」版の「ハロー(終わり)」に対してノイジーなギターにピコピコシンセをからませてユーモラスな「moon」版の「ハロー(始まり)」。東京カランコロンの音楽性の幅広さを感じさせます。
そして今回の試み、より効果的だったのは「noon」だったように感じます。いつものアルバムでは「moon」におさめられているようなユーモラスな作品の影になってしまうような曲をまとめて並べることにより東京カランコロンの書くメロディーの良さをより強く感じることが出来ました。
それだけにこの2枚組という試みは非常におもしろかったと思うのですが・・・ただ、アルバム全体としてみた場合は正直言ってしまうと1枚にまとめた方がおもしろかったかな、と思います。彼らの楽曲はちょっと破天荒な楽曲の中にメロディアスな正統派ポップナンバーが混じっているのが変化に富んでおもしろかったのですが、おなじ方向性の楽曲を並べると、若干そういうおもしろみが減ってしまったように感じます。
とはいえ今回の収録曲もユーモラスを感じさせインパクト十分なワクワク楽しいポップソングばかり。いちろーとせんせいの男女ツインボーカルを上手くいかした「シンクロする」やはちゃめちゃでパンキッシュな「三毒」にエレクトロポップチューンの「ロボコミュ(SZKロボットMIX)」、歌詞自体がミステリ-仕立てなのがユニークな「じゃがいも殺人事件」は在日ファンクをゲストに迎えたカッコいいジャズファンクのナンバー。彼ららしい楽しいポップソングが並んでいます。
まあ1枚にまとめた方が・・・とは思うわけですが、今回のアルバムに関してはあえて別々にした、という意図もあるわけです。またそれはそれである程度は成功したように感じます。そんな訳で東京カランコロンの2つの魅力がよりよくわかるアルバムだったと思います。前作「UTUTU」も素晴らしい傑作でしたが、まだまだ彼らの勢いは続いていることも感じられる傑作でした。
評価:★★★★★
東京カランコロン 過去の作品
We are 東京カランコロン
5人のエンターテイナー
UTUTU
カランコロンのレンタルベスト
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2016年」カテゴリの記事
- ファンによる選曲がユニーク(2016.12.27)
- パンクなジャケット写真だけども(2016.12.24)
- バンドの一体感がさらに深化(2016.12.23)
- 初のフルアルバムがいきなりのヒット(2016.12.20)
- 10年の区切りのセルフカバー(2016.12.17)
コメント